真剣で嘘つきを騙してみろ   作:棚上げ侍

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話がなかなか進まない……


朝飯会

「んで?やっぱ今無職のプーすけなんだ」

「るせっ、天職っつーもんじゃなかっただけだ」

「無職はみんなそう言うんだよオッサン」

 

ヒュームを追い払った後、釈迦堂と真とその弟子たちと朝飯会になった。真の片手にぶら下がっていたビニール袋に入っている飯と、ヒュームの魔の手(?)から助けられたこともあり、すんなりと仲良くなることが出来た。むしろ感謝されている。

 

「じゃ、俺から見て右側から順に自己紹介よろしく」

「私は板垣亜巳。こいつらの一番上の長女だよ」

「私はね~板垣辰子。次女だよ~」

「俺は板垣竜兵。辰とは双子で長男だ。そんで板垣姉弟唯一の男だ」

「……………うぅ……」

 

三人目まで順調に自己紹介してきたが、最後の四人目の紹介が聞こえてこない。ふと見ると、なぜか顔がうつむいており、顔がすごい勢いで赤くなっていっている。自己紹介程度で、こんなにも(恥ずかしがっているのか怒っているのかは分からないのでともかく)顔を赤くする人物を今まで真は見たことがない。

 

「ふんふんなるほど。……そんで、末っ子っぽいツインテールのお前は?」

「…!!」ビクッ!

 

真が声をかけた瞬間、その子の体全体が大きく上下に揺れ、その後は小刻みに震えている。真は訳が分からなくなり、本人に追及するのではなく、隣でビニール袋の中をあさりながら「ビールとか酒とかはねえのかよ……」とうめいている釈迦堂の後頭部をでこピンではじき、こっちに振り返らせて聞いた。

 

「どうしたんだよあのガキ。自己紹介恐怖症なのか?めちゃくちゃ震えてんぞ」

「あ~天か。天はちょっと止むを得ない事情ってもんがあるんだよ」

「止むを得ない事情ねえ……………よしそんじゃいっちょ読みますか……」

「『眼』ぇ使うんじゃねえぞ」

「使うまでもねえよ………オイ天っつったっけ?、こっち向け」

「ふぇえ!?」/////

 

真はうつむいている天と呼ばれた少女の顎を自分の右手の親指と人差し指の間に挟み、自分の方に向けさせ、ほぼ無理矢理自分の目と目を合わせた。しかも、勝手に目を合わせられただけでも驚きなのに、お互いの眼と眼の間が異様に近すぎる。少しでもどちらかの顔が前に出てしまうと、唇が重なり合いそうだ。

目が合った瞬間、天と呼ばれた少女は顔を一秒足らずで赤面させ、顔から蒸気が上がり始めた。

 

「ふぁ……へひゃあぁぁ………」/////

「……ふむふむ………なるほどなるほど……ああ、そういうことか」

 

真は右手をぱっと放し、天と呼ばれた少女の顔をあっさり解放した。その後独り言の様に何かをつぶやき、一人で何やら納得してしまったようだ。

 

「おおおおおお前ええなななな何しててて……」//////

「おい、俺お前のこと天って呼ぶぞ。お前、本名にコンプレックス持ってんだろ」

「「「!!??」」」

「カハハハハッ!やっぱお前はおもしれえな!」

 

板垣姉弟は(ウトウトしていた辰子以外)全員が絶句した。彼女らが真と会うのは今回が完全に初めてでしかも天の名前については姉弟もましてや釈迦堂でさえもしゃべってはいないからだ。もしかしたら以前に話を釈迦堂から聞いているのかもとも思ったが、それならわざわざ聞く必要はないだろう。(辰子を除いた)姉弟全員が、答えを求めるように師匠である釈迦堂の方を一斉に向いた。真の方を見なかったのは深い意味はないだろうが、実際その判断は正解であった。

 

「んあ?……ああ、そいつはな、むちゃくちゃココがキレんだよ」

 

釈迦堂はそう言うと、自分のこめかみ辺りを右手の人差し指でコンコンと軽く小突いた。それはおそらく頭の中身……脳みそのことを指しているのだろう。

 

「そんでついでに、ココもとんでもなくすげえ」

 

そのまま人差し指を自分の目の前に運ぶと、人差し指を右目に、折りたたまれていた中指を開き左目に突かせた。実際には突いてはいないが、見方によると目に接触しているのではないかと思えるほどの距離に指はあった。指と目の間の距離は、もはやミリメートルの単位ほどまでだ。

 

「……目?どういうことだよ師匠」

「正しくは観る能力だな。そいつは観察眼っつーのがとんでもなくすげーんだ。眼を観察するだけでも、人の目線の動きやどれだけ遠くを見ようとしてるか。あとまぶたの開き方や瞬きの回数、それに速さにタイミング。そういうのを独自に分析、計算、解析、そんでもって最後にはそれらの情報を一つにまとめ、そいつの考えてることや気にしてることとかを知ることが出来るらしいんだよ」

「ほええぇぇ……」

 

天の真への心情は今、驚きを通り越してもはや関心の域に達している。そんなことできるのだろうか、と思わず考えてしまったが、実際それを自分が対象にされて目の前で起きたのだ。信じるよりほかあるまい。

 

「つーか真。ちょいと久方ぶりに戦り合わねえか?俺が見たところ、『眼』にさらに磨きがかかってるみてえだな。前よりも確実に強くなってるなお前」

「そう言うオッサンは、前より確実に強くなってないな。『才能が泣いてるぞ』なんてどこぞのジジイみてえなことは言わねえけどよう。やっぱ多少の鍛錬は必要不可欠だろ。今の時代だと、停滞は退化と同義ってもんだ」

「………うるせえよ……」

 

渋い顔で顔をそらす釈迦堂。実際図星なので、本人には痛い所を突かれたのだろう。その証拠に、一言も言い返せないでいた。

 

「…ふう…………ちなみに前より確実に強くなっていないっていうのは嘘だ」

「なんだ?『実は弱くなってますねー』とか言うのか?」

「いや、ハエの体重程度には増えてるな、戦闘力とか武力とか」

「……そんぐらいだけしか強くなってるなら、いっそ弱くなったって言われた方がましだなこりゃ」

 

深い溜息を吐く釈迦堂。顔から不愉快という言葉が浮かんでくるように見えるほど表情と心情が沈んでいる。

 

「いや、バカにしているつもりはない。馬鹿だとは思ってるけどな」

「オイコラ」

「けど多かれ少なかれ、確実に強くなってる。多分、そこの弟子にきちんとした稽古や修行をさせてるからであり証拠だろ。意外な一面を発見ってか」

「………チッ…」

 

小さな舌打ちの後、今度は浅い溜息を吐いた釈迦堂は、板垣姉弟と全く逆の方向を向いて、真が買ってきていたコンビニの握り飯をほうばった。もう片方の手には、真が来た時からあった鍋が盛られた器を持っており、味噌汁をすするようにすすった。

朝食を食べていると、ふと何かに気が付いたように竜兵が口を開いた。

 

「そういやよう、さっきアンタ録音して会話のアレ。『別にこれ壊してもいいけどよう、もう俺んちのパソコンに転送したから意味ねーぞ』っつってたじゃんねーか。それならそれをネ

 

タにして色々と要求できんじゃねえのか?」

 

という、思いつきそうで思いつかないことを言う竜兵。確かに保存されているのならば、脅迫に脅しに恐喝。何でもできそうな気がする。天下の九鬼財閥も会社。悪評は出来るだけ避け

 

たいことの一つだろう。だがしかし。

 

「ハア?。おン前頭ン中パーだろ」

 

真のことばで一蹴される。

 

「パソコンに保存したなんて嘘に決まってんだろ。わざわざそんなモンとってたら、マジで九鬼と全面戦争になっちまうだろうが。つーかそもそもカセットテープに録音だってしてねえよ。あの時出た機械音の会話は、最初から最後まで俺の裏声だ。あんなに簡単に再生出来るワケねーだろ」

「…………………え?……」

「九鬼と全面戦争して負けるつもりはねえけど、勝てるともいえねえ。それにリスクがでかすぎなんだよな。さらに言ってしまうと得すること何もなし。そんな相手とどないせえっちゅーんじゃ。……ってことだ」

「じゃ、じゃああの超余裕みたいな態度も……」

「見かけ倒しのハッタリだ」

「全面戦争上等みたいなセリフも……」

「俺の演技力はホリウッド級☆」

「ま、マジかよオイ…………ウチらギリッギリだったんじゃんかよ」

 

つまり、ブラフにハッタリ、ネゴシエーション。すべて真の大嘘だったのだ。もちろんあのまま戦うことになれば、おそらく負けていたかもしれない。いや、負けている可能性の方が高いだろう。それなのに真は、そんな状況下で、プロ顔負けの演技力とよく回る脳、そして長年(?)培ってきた度胸であれだけのことをやりのけたのだ。呆れをとおり越して恐怖さえ感じてしまう。というよりも、失敗したりバレてしまっていたらどうしてたんだよオイコラ、という疑問さえ浮かんでくる。真もそう思っていた。が、

 

「やっぱあんたスゲーー!!!」

「肝が据わってんな。うちの奴らに見せてやりてーな」

「アンタらうるさいよ。……とはいえ、なかなかやるじゃないのアンタ」

「zzzz~~~~~~(爆睡中)」

「………へえ……」

 

真の経験上、多少の実力を持っていたとしてもこんなカミングアウトをしたらある程度のクレームや文句が飛んでくるものなのだが、今回はそれがなかった。それは単にこの姉弟に肝が据わっているのか、それとも懐が深めなのか、どちらにしろ真にとっては好印象だった。

 

「オッサン、いい弟子を持ったな」

「……………応…………そうかもな…………」

「お前らも、変な師匠持ったもんだな」

「テメエ、いっぺんぶっ殺す!」

「殺れるもんなら殺ってみろや!」

 

お互い食べ物に土や砂がつかないように地面に置き、板垣姉弟から少し離れたところで相対した。その姿を見た亜巳はため息をし、姉弟と共に朝飯を再開した。

ちなみに喧嘩は、真の『文句があるならさっきの飯代を払え』に釈迦堂が撃沈したところで決着がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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