真剣で嘘つきを騙してみろ   作:棚上げ侍

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今回ちょっと早めに投稿できました。





「真君、なんで友達付き合いは苦手だって言ったのにあんなに仲間がいるの?」

「それはね、『友達』じゃなくて『仲間』だからだよ」

「屁理屈ー」

「褒め言葉だ

ってことで始まるぞ」




すき焼きかカレーライスか

 

 

「はあ……はあ……ク………ッソが……………ブザマだな………グゥ!」

 

百代から逃げきった真はなんとか猫荘に帰宅。そのまま自室に直行し、玄関の戸を閉めた瞬間に前のめりに倒れこんだ。下の階からは、わいわいがやがやと夕食の準備が始まっている。猫荘では時々、住民皆で集まってご飯を食べるときがある。ペースで言うと一か月で1~2回ほどだ。

ふと時計を見ると、六時前をさしていた。

 

「はあ……こんなことでなよなよしてるなんて、ホントブザマな俺だ」

 

真をそうつぶやくとゆっくりと立ち上がり、激しい頭痛を抑えながら自室に入っていった。そこにあるのは大小八つのディスプレイと、四つのキーボード。まだ電源はついていないようで、暗い画面には苦い顔をしている真が鏡のように映し出されている。

その後玄関から戸が開く音が聞こえ、画面に大きめの木箱を持った薬馬が現れた。それを見た真は振り返ることなく、後ろに問いかける。

 

「……仲間でも基本的には無干渉。それがここの決まりだったと思ったんだが?」

「ここに居るのは医者と患者。今は仲間同士って仲じゃない」

「屁理屈だ」

「どうとでも言え」

 

薬馬はそっぽを向きながら木箱あけた。様々な薬や注射器があることから、どうやら薬箱のようだ。そのいくつかのから注射器から、無色透明の液体が入っている注射器を取り出すと、何も言わず真の後ろ首筋に突き刺した。真は気にすることもなくただじっとその場で動かずにいた。薬馬はそのままゆっくりと中の薬を注入すると、すぐに注射器を抜いて小さな絆創膏を張り付けた。

 

「鎮痛剤を打ち込んだ。これは俺が無理矢理した治療だから金はいい」

 

そう言い放った薬馬は、空の注射器を木箱の中に入れて立ち上がった。瞬間にまだ空いていた木箱に突如半分に折り曲げられた五万円の札束が飛んできて、木箱の中に納まった。薬馬がふと真の方を見ると、真はまるでこちらの方に何かを投げた後のようなポーズをしている。

 

「それは俺の手が滑ってしまった金だ。もうお前のもんだから返金不可能だ」

「……はいはい、ありがたくもらっておきますよ」

 

薬馬は木箱の中にある金を自分の懐の中にしまい込み、木箱を閉めた。

 

「もうすぐ夕飯だ。今日は久々にみんなで食べるから、早く下に来いよ」

「ヘイヘイ」

「ああ、今日はすき焼き……」

「わかってるっつの」

「……風カレーライスらしいぞ」

「……………………………」

 

真は「?」という顔をして薬馬の方に振り帰った。薬馬の顔には苦笑が浮かんでおり、顔をポリポリと指で軽く掻いていた。どうやら薬馬にもどのような品が出来るか知らされていないようだ。一体どんな料理なのだろうか………。真にも想像がつかなかった。というよりも、存在などしてよいのだろうかそんな料理。

 

「鳥頭目から聞いたのか」

「ああそうだ………で、どうだ具合は」

「前に使ったときに比べればかなりいい方だ。お前の鎮痛剤のおかげでかなり楽になったし、この調子で行けば明後日くらいには『眼』も使える」

「そうか、随分速いな」

「初めて使ったときは一か月くらい三途の川を行ったり来たりしてたからな」

「おい待て。そんなことあったなんて聞いてねえぞ!」

「まあ話してねえしな」

 

その後二人は軽く談笑すると、下から閨が二人を呼ぶ声が聞こえた。どうやら夕食の準備が出来たようだ。

 

「薬馬、先行っててくれ。俺も着替えてから行く」

「分かった」

 

薬馬は薬箱を持つと、部屋から出ていった。真もさっそく着ていた制服を脱ぎ、普段の私服に着替え始めた。黒を基調としたカジュアルな服はなぜか真の白い髪の毛よく似合い、互いの色を主張させ合っている。

その後真は何やら紙に女性の人物の絵を描きこむ。まるで写真のような人物画だ。それをポケットにしまい込み、そのまま下の階へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「あ、真さん遅いですわよ。みんなもう食べてます」

 

見ると、みんな自分の皿に好みの量のカレーとご飯を持っており、すでに食べ始めているようだ。岩清と際刃と蝶左と薬馬は大体皆同じ量で普通盛り、鳥頭目と九十九は大盛りに盛って早食い競争をしている。おそらく鳥頭目が変に挑発したのだろう。黒羽と閨は少し小盛りで、みなもはそれよりも少なめだ。しかし、そこに控の姿はなかった。が、特に気にすることなく真は自分の椅子に座った。

 

「悪い悪い………ってなんだこりゃ。これがすき焼き風カレーライスか」

 

真の器には普通盛りでカレーライスが盛られていた。見た目は普通のカレーライスなのだが、臭いからはすき焼き特有の甘辛い香りが漂ってくる。ルーの中に入っている具にはすき焼きのものも交じっているようで、ジャガイモ人参玉ねぎ牛肉、白滝焼き豆腐シイタケ長ネギ。玉ねぎと長ネギを同時に入れる必要性は果たしてあったのだろうか。しかし料理としては成り立っているようで、周りのみんなはおいしそうに食べている。

 

「……い……………いただきます……」

 

おそるおそるスプーンで救い上げられたルーと米を口に運ぶ。

これが何と以外においしかったのだ!

 

 

 

 

………ということは一切なく、とてつもないほどの辛さとインパクトが真の舌を襲った。からしにわさびに黒コショウ。様々な香辛料や辛薬味が舌と頭の中で飛び交う。なんとか顔には出さなかったが、頭の激痛が吹き飛ぶほどの衝撃だった。

そんなパニック寸前の頭で一つの疑問が浮かんだ。それは、

 

………カレーライスにもすき焼きにも、わさびとかからしとか必要なくね?

だった。

気付くと、

周りの人は皆こちらの様子をじろじろ観察している。まるでこれから起きる何かの現象を楽しみにしているように感じる。

これらの情報から導き出される結論。

ドッキリだ。

 

「………首謀者は誰だ」

 

ジロリと前に居る仲間たちをにらみつける真をクスクスと笑うのは、隣でカレールーとごはんのおかわり番をしている閨と際刃の隣に座っている黒羽だ。その二人の笑いはだんだん周りに伝染していき、ついには真以外の全員が大爆笑し始めた。どうやら初めに言い出したのは閨と黒羽のようで、それ以外の者は協力者のようだ。

 

「どうだい、僕と閨君が君だけのために造った特製すき焼き風カレーライスわさびからし黒コショウデスソース超大盛りは」

「……すでに覚めてる目がまた覚めた感じがしたぞコンチクショーが。っつーか造ったってなんだよ造ったって。せめて作ってくれよ」

「スミマセン真さん。でもしょうがないんですわよ?真さん、また勝手に【百々の眼】を使ったんですもの。それのお仕置きですわ」

 

閨は少し頬を膨らませて、怒っているしぐさをした。そんな姿もかわい……ゲフンゲフン!………愛らしいです。

 

「お仕置きですって………俺がそれ使った後頭痛が酷いってこと知っててやってるだろ」

「はい。だから薬馬さんに頼んで鎮痛剤をうってもらって、私たちのお仕置き分を作ってもらったんですの」

「薬馬、金返せ」

「もうみんなに配った」

「…善意の第三者、かよ……」

 

怨みのこもった目で薬馬をにらみつけるも、当の薬馬には全く効いていないようで、素知らぬ顔をしている。

 

「はいはい悪かったよ。勝手に本気出しちまって、わるうござんした。ハンセーしておりまーす」(笑)

「黒羽さん、わさびとかのほかに何入れましたっけ?」

「超強力下剤」

「うぐぉあぁ!」

 

一瞬の早業で腹を抑えると、真はすぐに最寄りのトイレに向かった。猫荘は個人の部屋のほかに、ここのみんなで集まれるダイニング近くに共同のトイレがひとつある。のだが、

 

「すまんのう真君。年寄りが使っておるんじゃ」

「このクソジジイがあああぁぁぁぁああ!!!!!」

 

目の前の罠と現実に絶叫すると、二階である自分の部屋のトイレに目的地を瞬時に変更し、ダッシュで階段を駆けあがった。自分の部屋に到着すると、すぐにトイレに駆け込んだ。

 

「……ふう、俺が騙されるわけねえだろ」

 

真は口の中に入っていたカレーライスをトイレの便器の中に吐き出した。真は最初からこのドッキリを見抜いており、それにわざと乗っかってやったのだ。さすがに毒は言ってないと思ったが、念の為飲み込まないでいた。その判断が今回見事に的中し、無事下剤を飲み込むことを阻止したのだ。

が、あの辛さだけは真の予想をはるかに上回っていた。過去これほど辛いものは食べた事は無い。それほど強烈な味だった。

 

「………水……」

 

真は蛇口をひねって水を出すと、そのままかぶりつくように水を貪った。

 

 

 

 

 

 

 

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「黒羽」

「どうしたんだい?」

 

夕食後、ちゃんとしたすき焼き風カレーライス(こっちは普通に美味しかった)を食べた後、真は黒羽と(そばに際刃も居るが)話していた。

 

「ちょっと頼みがある」

「なんだい、言ってみてくれ」

 

ポケットから夕食前に書いた人物画を差し出す真。

 

「こいつのことを調べてほしい」

「……こんな事、君が調べてもいいと思うけど?」

「今の俺にか?」

「ははは、確かにね。で、いつまでに調べたらいいのかな?あとなんでこの人を調べるのかも教えてくれないか」

「全部が終わったら教える。明日の朝までだ」

 

期限を聞いた瞬間、黒羽の口元が笑った。余裕という文字が浮かぶような笑い方だ。

 

「僕と際刃を舐めないでほしいな。………三十分で終わらそう」

「今はそこまで速さを求めてない。明日の朝に教えてくれればそれでいい」

「じゃあそうするね。行こう際刃、さっさと終わらせるよ」

「はい黒羽」

 

二人は自室へと消えていった。

それを見送った真も自室へと戻り、今日は風呂に入らずにそのまま寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前書きで一部挙げましたが、今までの話を読み返してみると、変なところだらけでした。
皆さん、気にすんな!
あと感想ください。


P,S
お気づきの方もいらっしゃるかもですが、私、棚上げ侍は話のストックは持ち合わせておりません。
一話一話が仕上がり次第投稿しています。
そのことをご了承ください。
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