真剣で嘘つきを騙してみろ   作:棚上げ侍

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オリジナルエキストラキャラが出ます。
けどいつもより駄文だと思います。
(サブタイトルを付けるのがニガテっす!)




誰にも知らせず

 

 

 

 

変態橋近くのとある場所の路地裏。そこで天邪狐真は、尻を地面につけて壁に寄りかかっていた。腹部あたりから大量の少しとろみがある赤い液体を流しながら、そこには包丁が突き刺さっている。そして周りにはそんな瀕死状態の真を絶好のカモとし、どこからともなく集まってきた約十人の街の不良たち。

 

「あ~。やっぱ人助けはするもんじゃねえのかもな」

 

と、つぶやいていた午前九時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間をさかのぼること約二時間前

 

 

 

 

 

「あ~うん。今日は快晴成。明日もいい日でありますように」

「どうしてその日の朝に次の日の祈願を願うんだい?」

 

というなんかどうでもいい会話を猫荘を出たすぐのところの道端でをしている真と黒羽(と際刃)の朝六時。真の方は頭痛がほとんどしなくなり、昨日あれほど苦しんでいたのが嘘のようだ。一方黒羽と際刃は、眼の下に若干クマがあるにもかかわらず、肌が妙につやつやしている。……このことを深く考えるのはやめておこう。

 

「で、どうだったアノ件は」

「ちゃんと調べておいたよ」

 

そう言うと黒羽は、まとめられている数枚の紙を真に渡した。それを受け取り、中に書かれている内容を読み上げていく真。

 

「名前は鈴木華(すずきはな)旧姓橋本(はしもと)で年齢は二十九歳、職業は自営業の花屋【フラフラワー】を経営……ネーミングセンスねえな。二歳息子と四歳の娘がいる。名前の方は息子が葉(よう)で娘が芽衣(めい)か。そんでもって………」

 

黒羽が最後の項目を横取りしようとしたそのとき。強い風が二つ吹いた。

 

「二日前に………………………している。しかも……………………っていない」

「やっぱりか……」

 

確信こそなかったが、おそらくそうであろうと予測できる。一般人の彼女があれほどの殺気を出すには、そういう類のものがあったこと以外では考えにくい。だが普通に考えれば逆ギレを通り越して理不尽ともいえる殺意の向け方。許されるはずがない。しかし彼女が言うことも説得力がないと言えば、それも嘘というわけではない。彼女の言い分を義経が聞いたら、最悪の場合自分が生きている意味を見失ってしまうかもしれない。

 

「それで、どうするんだい」

「別どうもしねえよ。気になったから知らべただけで、俺がする事は無い」

 

そう一瞥した真は、資料を黒羽に突っ返してその場から離れようと後ろに振り返った。が、そこには行く手を阻むように際刃が立っていた。際刃は顎をクイっと上げて黒羽の方に向き直す様に促した。真はひとつ溜め息を吐いてもう一度黒羽を見る。そこには満面の怪しい氷点下100度の笑顔をうかべている黒羽の顔があり、その右手は何かを求めるように手のひらを上にして真に差し出されていた。

 

「じゃあ情報料」

「……はい?」

「何もしないんだったら情報料百億ドル僕に払いなよ」

「ケチ畜」

「変な言葉を創らないでほしいな」

 

真はもう一度、今度は先程のより1,7倍ほど大きなため息を吐いた。

 

「しゃーね。じゃあお前からの依頼ってことで、俺が何とかするわ」

「詭弁だね」

「はあ!?」

「君は僕が何も言わなくてもきっと行動に移してたんじゃないかな?。今回君に言い訳の道を作るのも兼ねてこういう形をとったけど、結果的には何も変わらなかったと思うよ」

「…………………」

 

何も話さない真に、今度は普通の優しい笑みを見せる黒羽。

 

「じゃ、頑張ってね。際刃、君も何か言ってあげなよ」

「………健闘を祈る」

「あんがとよ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

午前八時

 

猫荘の学校組のみんなは先に学校に行っており、真は一人変態橋の橋の下でただじっとしていた。大抵の人間はただじっとしていると退屈になるものであり、真もその人間の中の一人である。つまり今、真はとても暇だ。だから河原で行われている武神の川神百代と挑戦者の決闘を、ついつい目で追ってしまうのも仕方のないことであり、時々見えてしまうスカートの中のパンツの色(黒だった)が見えてしまうのも仕方のないことなのだ。実際に真は見ようとして見てるのではなく、普段の目もかなりいいので見えてしまうのだ。そもそも本人は人のスカートの中にまったくもって興味はなかった。

 

「うおおぉぉぉおおお!!!モモ先輩の動きが速過ぎてパンドラの中が撮れねえ!」

「ばかやろう!!このくらいで諦めるなんて末代までの恥だと思え!」

「イエス!エロイッム・エッサイム!」

 

歓声に紛れて変なことが聞こえるも、気にしないことにした真は周りの気配を探すことに専念した。一人一人の気配を探っていては歓声の中に埋もれている殺気を探し出すことはできない。出来ないこともないが、それでは何時間もかかってしまう。非効率すぎて探し出すまでに観客が散ってしまう。それではいけない。おそらく彼女が行動を起こすのなら今日だ。そんなことしてしまったらクローン達が危ない。

気配を探すのではなく、全体を上から観るように探し違和感を見つけるようにする。

 

「……見つけた…」

 

橋の上で暑くなっている観客の中一人だけ覚めた気配を感じた真は、すぐにその場から移動してその気配の人物のもとに急ぐ。しかしあわてながら深うと周りの他人に不自然ガラれてしまう。なるべく早く、かつ人混みの流れに逆らわずに移動する。そしてその人物……鈴木華の真後ろに到着した。整った顔立ちをしているのに、その目は歪んでいた。

気付けば百代は挑戦者を難なく倒しており、周りのギャラリーはだんだん散るように登校し始めている。急がなければ。

 

「鈴木華だな」

「!?」

 

鈴木華は驚いた顔でこちらの方を振り返った。突然後ろから話しかけられたとはいえ、こんなに驚きながら振り返る人は、大抵やましいことを抱えている。

 

「そのかばんの中の包丁は使うな。俺にはほぼすべてわかっている」

「な……何のことかしら。私が何をしたっていうの?」

 

あくまでシラを切る鈴木華に、追撃の一言。

 

「アイツらクローンをお前なんかに刺し殺すことはできない。たとえできても鈴木春斗は生き返ったりしねえし、喜ぶはずもねえ」

「!!??」

 

さらなる驚きの表情を見せる鈴木華。足も震えて唇は痙攣しており、誰がどう見ても動揺していることがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度に時間前にさかのぼる。

真の最後のセリフをとったあの時、黒羽はこう言っていた。

 

「名前は鈴木華(すずきはな)旧姓橋本(はしもと)で年齢は二十九歳、職業は自営業の花屋【フラフラワー】を経営……ネーミングセンスねえな。二歳息子と四歳の娘がいる。名前の方は息子が葉(よう)で娘が芽衣(めい)か。そんでもって………」

 

「二日前に夫の鈴木春斗さんを交通事故で亡くしてしまっている。しかもひき逃げ事件で、犯人はまだ捕まっていない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は場所を変え、建物と建物の間の路地裏に来ていた。遠くには川神学園が見えるここなら、誰にも話は聞こえない。

 

「さて、単刀直入に言おう。お前がさっきやろうとしていたことを諦めろ」

 

真の声は説得力があり、力強い何かがあった。それはおそらく、怒りに近い感情を含んでいたからだろう。まるで背に山を背負っていると思えるほどの迫力が今の真にはあり、鈴木華は相も変らず震えていた。

 

「………………………………」

 

しかし、歪んでいる目さえも全く変わってはいなかった。怨みと憤怒でドロドロになってしまった目だ。つまり、

 

「……うるさい………」

 

殺る気に満ち満ちているといことだ。

 

「アンタに………あんたなんかに…………私の気持ちがわかってたまるかぁ!!」

 

女言葉なんて最後の方にはないようなもので、鈴木華は素早くバックを開けて、刃がむき出しの包丁を取り出してなれない両手で前に構えた。包丁の先がかすかにふるえている。理性で構えていない証拠だ。

鈴木華は包丁を構えたまま、真に突進してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴木華

彼女はクローンを殺そうとしていた。

彼女は二日前に………つまり武士道プランが東西交流戦に繰り出された日に夫の鈴木春斗を交通事故で亡くしている。その事故が起きてしまったこと以外はそのほかは何もない普通の日で、だからこそショックも多かったのだろう。轢かれた直後にすぐに死んでしまった。つまり即死だ。

だが、もしそれだけのことだったのならば、武士道プランのクローンたちに殺意の刃を向ける事は無かったのだろう。

犯人はまだ捕まっていなかった。つまりはひき逃げ事件である。

起きた事故は車の一方的な信号無視で、被害者である歩行者の鈴木春斗には、一切の非はなかった。鈴木春斗は全く悪いことなどしていなかったのだ。それなのに犯人はまだ捕まってはいなかった。

事故が起きた瞬間は、当たり前のことだが被害者が信号無視をしなければ起きなかった。そのためその場にいた誰もが不意を突かれ、歩行者と車が衝突する瞬間を見ていなかったのだ。それはつまり、誰も車を見ていなかったということでもあり、誰も車のナンバーを確認しなかったということでもあるのだ。理不尽な不幸が重なってしまった悲劇としか言いようがなかった。悪いのは運転手なはずなのに、その運転手が見つからない。

この事実が表わす答えの一つ………鈴木華の中の怒りをぶつける相手が居ないのだ。

行き場も帰り場も居所も失ってしまった憤怒ほど、厄介なものはない。理性ではわかっていても、精神が無理矢理その怒りをどこかにぶつけようとしてしまう。煙のように相手がわからなかったり、ぶつける相手が絶対にぶつけてはいけない場合もある。が、今の場合は相手が居ない。これは当人はかなり危ない状態に陥ってしまう。いまの鈴木華だ。

彼女はおそらく事故の次の日にニュースで武士道プランを知ったのだろう。そしてこのような感情が心の中に生まれてしまった。

 

……どうして………人間でもないアイツらがのうのうと生きていて…………どうして……春斗さんが死ななきゃいけないの………

 

理不尽

そう言うしかないほどの理不尽な理論だった。それはおそらく彼女自身もわかっているのだろう。が、狂ってしまった歯車を直すことが、暴走した怨念を止めることが出来なかったのだろう。止められなかったから、昨日の放課後に川神学園に来て義経を怨むようににらみつけてしまったのだ。治せなかったから、今日この変態橋でクローンたちを刺し殺そうとしたのだろう。誰も流れには逆らえない。自分の中で起きてしまった流れにさえも自分で止めることはできない。少なくともそう簡単にやってのけることはできない。

分かっていても止められなかった。そんな人が今真の目の前に居た。まるで昔の自分の写し鏡だった。

こんな人を一瞬で冷静にさせる行動は、たった一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真は回避行動を一切取らず、包丁の刃を歓迎するように自分の腹に突き刺させた。

 

「……え?……………」

 

溢れる血液に、包丁を握っていた鈴木華は一瞬にして我に返り、包丁を手放して足を引きずるように、よちよちと後ろに下がった。

 

「え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?」

 

まるでバグが生じた機械のように、「え?」という言葉を繰り返す鈴木華に、刺された腹を抑えながら話す真。

 

「お前にはまだ字も書けないガキが居るはずだ。そいつらおいてムショん中入る気かよ。阿保じゃねーのお前」

「……………………………」

 

突然語りだす真に不意を突かれ、聞き入ってしまう鈴木華。その目に狂気の類は一切なく、代わりに困惑の感情でいっぱいになっていた。

 

「親のブザマな格好をガキが見るとな、そいつもブザマになっちまうんだよ。母親四年もしてきてんなこともわからねえのかよ」

 

言葉の一つ一つが胸に突き刺さっていく。だんだんと眼が見開いていき、驚愕の顔に変わっていく。首の周りに冷や汗が、吹き出す様にわいてくる。

 

「いいか、お前は誰も刺してないし誰も殺そうとしていない。そして俺には会わなかったお前にとって俺は見たこともない人間だ。オーケー?」

「…………………………」

 

次のセリフは、殺気を込めて睨み付けるように。

 

「オーケー?」

「は、はいぃ!」

「よしじゃあ帰れ。回れ右して、はいお疲れさん…………黙ってないでさっさと帰れ!」

 

すっかり腰抜けになってしまった鈴木華は、真に怒鳴られるとまるで逃げるようにその場から去っていった。

 

「……このカバンどうすんだよ………」

 

……気にするところが違うのでは?

 

「んーと、(ガサゴソ)……財布とかが入ってるわけでもなさそうだ。コンド交番にでも届ければいいか……っと」

 

真は鈴木華のカバンを持って立ち上がろうとした。が、一瞬平衡感覚を失ってしまいその場で倒れてしまう。

 

「あ~ヤベ。血糊が貫通しちゃってんな」

 

そう言い、腹部から赤い液体……血液が入った輸血パックを取り出す真。

今回自分から刺されに行き、人を殺すことの恐ろしさを教えることにした真は、「いや本当に刺されるわけね―じゃん?」ということで、登校前に薬馬から血糊用の輸血パックを購入(0円で借りゲフンゲフン!………買った)していたのだ。しかし、鈴木華の突進力と刺す力があまりにも強かったので、若干腹部に突き刺さってしまったのだ。

 

「まあ我慢すりゃ何とかなる範囲か。前にどてっぱら拳銃で撃たれた(※第一話、走馬灯と一人の嘘つき参照)時に比べたら全然大丈夫だな…………!?」

 

突然真を頭痛が襲った。昨日のあの頭痛だ。あまりにも突然のことで真はその場で倒れこみ、頭を抱えながら蹲った。

 

「(痛うぅぅ!ん……だとオイ!昨日で治まったはずだろうが、なんでまたぶり返し来てんだよ!こんな事今まで一度もなかったってのに…………!)」

 

今までになかったことに動揺する真に、まるでたたみ込むように起こる不運。真の腹部に、頭痛とは違う痛みと衝撃が走った。少し後ろに吹き飛ばされた真が見た者は、金属バットや木片を持っている、いかにも不良な格好をしている男たちだった。数はおそらく十人ほどはいる。

 

「お、こんなところでカモはっけ~ん。なんか血塗れだけど、まいっか」

 

体の大きいリーダー格らしき人物が言った言葉に、その他大勢の不良たちも同意したらしく、ズンズンと足音が聞こえそうな雰囲気でこちらに向かってくる。今不良と真の間の距離は、

約十メートル。数秒ですぐそばに来れる距離であり、この距離でさえもすぐそばともいえる。

 

「あ~。やっぱ人助けはするもんじゃねえのかもな」

 

そして今に至る。

包丁をよいしょと腹から抜き、ポイと投げ捨てる。頭痛は昨日よりもひどく、まともに動くことさえできない。そのうえ、重くないとはいえ腹を包丁で刺されている。極めつけは昨日本気で『眼』を使ってしまい、今現在『眼』を使えない状態。町の不良とはいえ、戦うことのできない今の真では、勝負にならないだろう。

 

「あ~あ、万事休す、か」

 

真はそう思った。それ以外何も考えなかった。よくあるスポ根系漫画のように、最後の最後まで考え抜いたりはしない。ダメなときはきっぱりさっぱり諦めるのが、この男だ。

だから

次の瞬間に起きた現象には驚きを隠せなかった。

突然飛んできた紫色の矢が、不良たちを三人吹き飛ばしたことに、

突然現れた李が、不良たちを四人薙ぎ払ったことに、

突然飛び出してきた板垣天が持っていたゴルフクラブで、不良たち四人の腹に一撃ずつ打ち込み、その場で倒れさせたことに、

一瞬で行われたそのことに、驚きを隠すことが出来なかった。

 

「「大丈夫(です)か?」」

「は……はは………」

 

真は、苦笑いを浮かべる事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 




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