ホントめちゃくちゃです。
九鬼極東本部
そこで真は、一言もしゃべらず無表情の李に腹の包丁で刺された傷の治療をされていた。横にはムスッとした顔をしている天が、胡坐をかきながら出されている紅茶をすすっている。
なぜ紅茶を飲んでいる人と、怪我をしている人、それを治療している人がいるだけなのに。これだけ空気が重いのだろうか。
さて、ここでなぜ李が不良に襲われそうになった真を、助けたかということの説明をしよう。
そもそも李はクラウディオから『天邪狐真の監視および身辺調査』を命じられており、真が猫荘を出た時からずっと尾行しながら監視していた。真にもう監視はやめろと言われた九鬼財閥だが、その後に真の口から出た「九鬼のコンピューターをすべてハッキングする」という脅しを、口先だけのハッタリ出任せだと考え、そのまま監視を続行していた。念の為監視要員を絞り、交代制で一人ずつ監視をすることになっていて、今回その時の監視をしていたのが李だったのだ。李はその卓越した隠密行動と尾行術により、調子が最悪に近い状態だったと事もあり、真に気付かれずに尾行することに成功していた。その後は前話での出来事の一部始終を見て、不良に襲われそうになった真を助けた、というわけだ。
ちなみに天の方は、朝飯の後に散歩をしていたところ真を見つけ、その後を追って行ったらあのやり取りを見てしまったのだ。その後思わず茫然としてしまい、そのままぼーっとしてしまっていると不良が現れて、そのまま四人ぶっ飛ばしてしまったということだ。
今に戻ろう
李は包帯を巻き終わると、救急箱に残りの包帯を片づけた。
「……はい、これで終了です。大体の治療は終わりましたので、後はきちんとした医者に診せて下さい。あ、このまま九鬼の医者に行きますか?」
「いやいい。ありがとな李」
「………ケッ……」
「お前もありがとな天。おかげで助かった」
「あたりめーだろ。ウチは借りた恩は必ず返す。フツーそうだろ」
何をムキになっているか、何と張り合っているのか、何やら天は李を一度睨み付けると腰かけていた椅子から立ち上がって、真の血だらけになっている制服の裾を引っ張った。それはまるで「もうここに居るの飽きたから、帰ろうよ」と言ってるようだ。
「いや、もうしばらく待ってくれ。やっておきたいことがあるんだ」
「?、なんだよやっておきたいことって」
「まあ少しだけ待ってろって」
真はそういうと、ポケットから血が付着するのを免れているケータイを取り出し、どこかに電話をかけた。プルルルル、という電話のコール音がかすかに聞こえてくる。
「…………ここは電波は届かない仕様になっているはずなのですが」
「俺を誰だと思ってんだ。こんなレベルの妨害電波にジャミングされるほど、俺のケータイはヤワじゃねえよ」
「流石『鵺』といったところですか」
「??????????????」
『鵺』という聞きなれない言葉にうまく反応できない天。一生懸命に考え込むが答えは見つからないようで、首を少し傾けて不思議そうな顔をしながら真の方を見る。
「ああ、『鵺』ってのは俺の昔の通り名みてえなもんだ。気にしなくてもいい」
「ふーん」
天がよくわからずに納得すると、プルルルルとなっていたケータイからガチャ、という音が聞こえ、がやがやという音が聞こえてくる。電話の向こうの者の声は、まったく聞こえない。
「よう、久しぶりだな。元気だったか?「………………………」憶えてるって、俺が忘れるわけねえだろ。「………………………」そうだな、用件だけ言おう。今俺さ、九鬼極東本部の医務室にいてさ。そんで今治療受けたとこなんだけど「………………………」そう言うなって、それはお互いさまってやつだろ。「……………………………………………」まあそんなとこだ。んで、それとは別の話なんだけどな………」
真が電話で誰かと何かを話している間、李と天はお互いを睨み合っていた。これと言って理由はないが、強いて言うのならば他にすることがなかったからだろう。それに、天のほうは九鬼の執事に色々されそうになったため、無意識に敵対心が芽生えてしまうのだろう。
「……………んじゃ、あと頼むわ。そんじゃまたな」
プッと通話停止ボタンを押した真は、睨み合っている二人に一言。
「何やってんだお前ら」
当然の一言だった。
その後頬間髪を入れず天のセリフ。
「終わったな真。じゃあ帰ろうぜ」
「いや、まだ残ってる。九鬼の関係の人間に、今回の件について教えとかないといけねえ。これやらなかったらあとあと面倒なことになったりするからな」
これまたを間髪を入れない真のセリフ。天は「ぐぬぬぬぬ……」という声が聞こえそうな顔をし、李はなぜか少し勝ち誇ったような表情をした。
「んで李。まず俺があの女のことに気付いた理由………の前にアノ女の情報を先に言った方がいいか?」
「いえ、あなたのペースで構いません。とりあえず、説明お願いします」
数十分後まで飛びまーす
「……つまり鈴木華は、夫が死んでクローンたちが生きているということが許せなかったため、義経たちを刺し殺そうとしていたという事なのですね」
「ああそうだ。あくまで高度な予測の域の中での話だけどな」
電話ののち、李は真から今回のことの顛末を詳しく説明していた。どうやら今回のことは公にはしないが、九鬼内でちゃんと上層部に報告しないといけないらしい。
「まあこれで大体の説明は終わりだな。あとは不確かな情報や推測ばっかだからな、発言は控える。もういいか?」
「はい。ご協力感謝します。川神学園まで送っていきますか?」
「いやいい」
時計を見ると、現在時刻はとっくに十一時を過ぎており、もはや今学園に着いたとしても、変な空気や目線を真を襲うだけだろう。
「そうですか。では外までお送りいたします」
「そりゃお勤めどうも………オイいつまで寝てんだ!起きろ天!」
「………………」シュ~~~
横で小難しい言葉の応酬に、天の頭がショートしてしまったのだろう。頭から若干煙が吹いている。それを見た真は、近くにある手を付けていない自分に出された紅茶の入ったカップの中に、自分の人差し指と中指を突っ込んで温度を確かめた。紅茶の温度が十分熱いことを確認すると、それを天の頭にジョボジョボジョボと上からかけた。当然天は、
「うわっちゃああああ!」
と叫んで、その場でのたうち回った。
「帰るぞ天。もうここに用はねえ」
「真テメエ、ウチに何してくれんじゃコノヤロー!」
「悪い李、カーペット汚しちまった」
「無視すんなボケェ!カーペットよりウチの心配しろよ!」
「大丈夫です。このくらいの汚れ、九鬼にかかればすぐになかったことにできます」
「ウチの服も汚れてんだよ!つーかカーペットよりも汚れてんだよコンチクショー!」
「……………」ズイッ
李から無言で差し出される無地のタオル。天はそれを無言しばらく睨み付けると、奪うように受けとる。乱暴に服についてる紅茶をぬぐうが、なかなか落ちない。特に紅茶のかぐわしいほんのり甘い香りが取れないでおり、ゴシゴシとこするスピードがだんだん上がっていく。
「臭いが取れねえよ~~~~~!」
「よし、帰るぞ」
「ふぇ~~~ん!」
半泣きの天をわきに抱えながら、真は極東本部を後にした。
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「あ~あ、このまま帰ったら亜巳姉にどやされるぜ。全然臭い取れねえし」
愚痴をこぼしながら真の隣を歩く天。少し涙目になっている気がする。真はすぐ隣で歩いているが、まっすぐ前を見て天の方は見ずに言った。
「改めて言うな天。あんがとな助けてくれて」
「あ~いいんだよそんなの。さっきも言ったけど、この前助けてくれた借りがあったし、最近九鬼の奴らがここらにいて暴れられなかったんだよ。だから気にすんな」
へらへらしながら遠まわしに気にするなと言っているようで、天の顔は姉弟たちや釈迦堂などの親しいものにしか見せない表情になっていた。
「そうか、じゃあ気にしないことにするわ」
「おお、そうしてくれよ」
「じゃあこれから梅屋に言って昼飯でも食うか。俺のおごりだから他の奴らも呼べ、釈迦堂のオッサンとかお前の姉弟らとか」
「マジかよ!じゃあ今すぐ呼んで来るぜ!」
「おう。梅屋で待ってるぞ」
走っていく天の後ろ姿を見送りながら、真は梅屋に進行方向を変え、速足で目的地に向かった。
のだが、
その前にひとつ、別の目的のために梅屋に向かっていた。
実は先程の九鬼ビルでの電話は九鬼関係者への電話で、釈迦堂形部のアルバイトの推薦をかけてほしいと連絡を入れたのだ。アルバイト先はもちろん梅屋だ。釈迦堂が梅屋の豚丼+単品とろろが好物だったのを知っており、まかない飯をもらえるとする梅屋のバイトなら、護衛途中で護衛対象から離れてパチンコ屋に行ってしまう釈迦堂でも出来るはずだと踏んだのだ。
「あ~俺めっちゃいい奴だな」
真はそうつぶやいた。
感想くれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!