すんません。
結果駄文。
六月十二日(金)
ついに仕事実行の前日になってしまった。結局真は誰一人として仕事に来てくれるメンバーを確保できず、『眼』も使えずに仕事をすることになりそうだった。今回の一件、かなり手ごわいコトになりそうで、真もまいっていた。
「あ~どしよ」
悩んでいた真は、教室でうなっていた。とりあえず歩こうと思い廊下に出ると、義経と弁慶と大和が何やら困ったことがあったかのように、ひそひそと相談しあっていた。
「どしたの三人」
「あ、真か。実は与一が今日の歓迎会を欠席しそうなんだ」
真は忘れかけていてが、今日は義経たちの歓迎会だった。
「頑張れ大和。お前の中二パワーがあれば怖いもんなしだ」
「おまっ!………なんで知って……」
「?、中二パワーとは何だ?」
「義経は知らなくていいの」ムギュッ
弁慶は後ろから義経の耳をふさぎ、周りの声を聞こえにくくした。どうやら義経は中二病というものを知らないらしく、逆に知っている弁慶は主である義経に余計なことは覚えさせたくないようだ。
「お前なんで俺が中二病だったってこと知ってんだよ!」ヒソヒソ
「誰かが言ったぞ。男なら誰しもが通る道だってな。いやホント誰が言ったか知らねえけど」ヒソヒソ
「けど俺の中にある案は諸刃の剣なんだぞ。出来ればやりたくねえ手段なんだよ」ヒソヒソ
「知るかんなもん。俺に迷惑かけんなy……………………」ヒソヒソ
突然黙ってしまう真は3秒の沈黙の後、また突然しゃべりだした。
「いや、俺が行く」
「どうした急に、どんな風の吹き回しだ?」
「気まぐれ」
―――――――――――――――――――――――――――――
「よう」
真は屋上に上がると、給水ポンプのうえで寝転がっている与一に話しかけた。与一は真の方向を見ることなく、何の変哲もない空を見上げながら返事をした。
「なんだお前か」
「なんなら弁慶を呼んできた方がよかったか?」
「やめてくれ、ゾッとしねえ」
真はよっこいせと言いながら給水ポンプに上って、与一が座っている場所の隣に座った。ちょうどいい風が吹いており、なかなか気持ちがいい。
「欠席すんだって?歓迎会」
「ああそうだ。というか、元々出席するつもりなんか微塵もなかった」
「まあお前が喜んで参加する奴にも見えねえしな、さしずめ「どうせいつか別れる奴らと、馴れ合いなんかをする意味が全く持ってわからん」とか思ってんだろ?」
「…フン………大体そうだな」
心の中でため息をした真は、こう思った。
「(こいつにまともなこといっても無駄だな。だって中二病だもの)」
「まあその件は今は置いといてだな………お前、今弓矢あるか?」
「……………いや、俺の弓矢は特別製でな。大きさが普通のよりもデカいからいつもは九鬼の従者が持ってんだ」
「ほほう、特別製。それはさぞかし遠くに矢が飛ぶんだろうなあ」
「……………………………」
「かっこよくて、勢いもあって、パワースピードともにかなりのものだろうな。そりゃあ九鬼が作ったんだからな、そんで極めつけは………」
真は怪しい目つきをしながら、与一の眼を見た。
「弓と矢、両方とも紫色のデザインになっている、だろ?」
「……さっきから何が言いてえ………」
「ありがとう、って言いたいんだよ」
数日前に真が遭遇した不良は全員で11人。そこに李と天が現れ、それぞれ二人とも4人吹き飛ばした。しかし、あと3人も不良が残ってしまう。その残りの不良を倒したものが、紫色の矢だった。真はここ数日の間でその紫色の矢についてずっと調べ続けていた。表沙汰にすると矢を撃った本人が隠れてしまうかもしれないので、慎重に調べていた。そのためなかなか見つけることが出来なかったが、よくよく考えてみれば与一以外あんな矢を使う弓使いはいなかっただろう。
「…………気にすんな。お前を助けたのは気まぐれだ。どうせ助けなくてあの二人が残りもやってただろうな」
あの二人とはおそらく李と天の事だろう。確かに二人の実力を考えれば、残りの三人もあっけなく倒してしまっていただろう。というよりも四人をほぼ一瞬で倒してしまう二人が居て、たった三人を倒せないということがあるわけがない。だが、真にとってはそんなことは関係ないようだった。
「もしとかどうせとかなんて知らねえよ。お前は俺を助けてくれた、屋上とSクラス以外まったく話したこともない俺をな。それだけで十分うれしいし感謝してる」
「………………」
「話は変わるが……というか元に戻る感じなんだが、歓迎会に出席してくれ」
「断る」
「だろうな」
「当り前だ、さっきお前が言ってたのがほとんど答えだ。俺は絶対に行かねえぞ。お前も俺に感謝してるってのなら、俺を誘うのはやめろよな」
本人は全く行こうと思っていないらしく、真は与一に悟られないようにとても小さな溜め息を吐いた。
「………ちょっといいか与一」
「あんだよ」
「お前にとって人生とは何だ」
「ハン、死ぬまでの暇つぶしだろうよ」
「その心は?」
「結局生き物っつーのは、最後は必ず死んじまうんだ。絶対に死んじまうんなら、何をして結末はすべて同じだ。なのに他の奴らは、「友達を作れ」とか「生きていくうちで協調性」のうんぬんかんぬん。…………アイツらは世間体という存在すらあやふやなものを気にし続け、それを他人に押し付けようとする。笑っちまうよな」
「生きることは無意味、だって言いたいのか?」
「噛み砕いていえばそうなるな」
与一は重度の中二病だ。しかし、発言自体は間違いや虚言というわけではない。自分の意思をしっかりと持ち、今この場で自分がそう思ったことをはっきりと言うので、見よう聞きようによっては尊敬もできるものだ。
確かに学校の友達というものは、卒業と同時にほとんど話さなくなるものだ。同じ学校に進まない限りほとんど連絡は取らなくなり、そのうちメールアドレス帳の中からも消えてしまうかもしれないというはかなさも兼ね備えている(?)
実際友達を作る造らないは結局のところ本人の勝手だ。直江大和のように広い人脈を作るものもいれば、椎名京のように狭く深く親友の身を作るものもいる。全く作らない者から「とっもだっちひゃっくにん、でっきるっかな♪」と中学高校になってまでほざく輩までいる。与一はおそらくクローン組を除けば、ほとんどというよりも「一切」つくらない者と言える部類だろう。中二病風にいえば孤独が好んでいる、といえる。
しかし、今回それで押しとおってもらっては困るのだ。歓迎会で主役が一人でもかければ場の空気が白けてしまうのは明白であり、その責任を一気に背負ってしまうのはおそらく主の立場である源義経だろう。そうなってしまえば後味が悪いどころの話ではなくなってしまう。
だが、実際のところ真はそんなことどうでもよかった。
「……そうか…………よかった………」
「あ?…………っ!?」
次の瞬間
与一の腹部に深々とナイフが刺さっていた。刃渡りが20センチほどあり、どう見ても軍用ナイフにしか見えない。当然刺さっている部分から、白を基調としている川神学園の制服が真紅に染まっていく。そのナイフのつかの部分を握っていたのは、誰であろう天邪狐真だ。与一は何が起こったか全くわからないまま、ただ揺れる視界で真を見る事しかできなくなっていた。
「生きることが無意味ってお前が考えるなら、別にお前を俺が殺すことにも大した意味を持たねえよな」
「ガハッ!………テメエ、なにを……」
「俺は昔から……と言ってもここ数年単位の話なんだけどな、人を生き返らせる実験をしてんだよ。俺の大切な人なんだが、けどおまえらみたいなクローンじゃダメなんだ。俺はクローンじゃなく本人を生き返らせたいと思っている」
真の眼には危ない光が宿っていた。それは百代と同じ類の、とても不安定なものだった。
「けど人との成分とかはほとんど一緒みたいだし、それにクローンつっても歴史上の偉人のDNAを使って作り出してるからな。普通のクローンよりも、生き返らせるって意味ならかなり近い存在だ。実験にはもってこいだな」
「て………てめえ……」
「悪いな、死ね」
与一の意識はそのまま深く沈んでいった。
おそらくこれからも遅くなります。