「よ、よぉキー坊、どうしたんダ?」
最前線の主街区…広場にあるベンチ
そこにアルゴとキリトが座っていた。
キリトは顔を暗くしている。
「リリルって奴の情報がほしい。」
アルゴの想定通り。キリトはリリルの情報を聞き出す。
「リリルの情報はもっていないんだ」と言ったらアルゴ自身も危うくなる。
慎重に言葉を選び情報を渡すしかない。
「金ならいくらでも出す。」
どうするべきか。リリルを捨て高い報酬をもらうか…
いつものアルゴなら金さえあれば持っている情報をほぼすべて出す。
けどリリルとは長き付き合いだ。そして今では優秀な仲間のような存在である。
選択が迫られる。
「リリルは…刀使いだヨ。あとはps(プレイヤースキル)だけでみれば攻略組で十分活躍できる、キー坊のことはよく知ってるから言うけど、キー坊だけじゃ勝つのは五分五分かもしれないナ。」
このくらいの情報なら大丈夫だろう。あとはリリルがキリトとちゃんと戦えるかにかけるだけである。
キリトならソロで行くはずだ。
「けどいいのカ?リリルのことは噂にしか過ぎないゾ?」
「彼がオレンジカーソルだったという目撃例が多数出ている。何かしら罪を犯したはずだ。」
アルゴは無言になる。話が終わったと感じたキリトは転移門方面へ向かう。もう大体の目星はついているのだろう。
今の状態じゃキリトに殺されるか牢獄に入れられるかの二択である。例え牢獄行きだった場合、ゲームがクリアするまで出られない可能性だってある。
(リリル…頑張ってくれヨ…)
キリトの背中を眺めながらアルゴはリリルの無事を祈るのであった。
ーーー
19層ー十字の丘
時刻は夜
薄暗いフィールド内をひたすら歩く。だいぶ捜索範囲が狭まったもののやはりフィールドは広く。捜索が難しい
「幻だとしても」から桜は特定の時間にしか現れないのかもしれない。
「薄暗い空間に日差しが差し込んでその光が桜にー、、なんちゃってな。」
独り言をブツブツつぶやいている
そもそも桜とこの階層は全く関係ない。幽霊と関係あるのかと言っても別に何もない。季節が違うしあまりにも唐突なクエストだ。
(なぜあの時クエストが進捗したのか…)
一番よくわからないのはその点だ。
なぜあの時クエストが進んだのかよくわからない。
捜索していると一本の枯れ木にたどり着いた。
なんも変哲もないただの枯れ木。しかしその木はリリルを呼んでいるようだ。
「これが?さくら?全く違うじゃん」
その時、こちらへ向かって誰かが来る。気配に気づいたリリルはとっさに刀を構え攻撃をガードする。一撃がとても重い。もしかするとこの刀が折れてしまうのではないかと感じるほどである。これほどの強い一撃を出せるのは彼しかいないだろう。
「初めましてだねキー…キリト」
一瞬アルゴの「キー坊」を真似ようとしたがやめた。
「探したぞリリル。この牢獄直通の転移結晶で捕まってくれ。」
「嫌だね!突然嘘噂流されたと思ったらさ?…」
嫌と即答し言い訳をするリリルだが言い訳を打ち消すかのように
「ならばPVPだ。それでお前が負けたら牢獄に入ってもらう。」
「え、嫌です。」
キリトから攻撃は来ないとみたリリルははやく逃げたいと思っている。ただ逃げてもすぐ追いつかれる。だからといって正面から攻撃すればすぐやられる。
(一か八か)
リリルは刀を構える。その姿勢をみたキリトも剣を抜き構える。
正面から戦えばすぐさまやられる。てかどんなことしても攻略組相手にはかなわない。
刀を鞘に納め、目を閉じる。
スキルではなく完全にプレイヤースキルで勝ちにいくリリル。
一方キリトはリリルの構えにスキルではないかと警戒を強める。
一枚の葉が落ちるとき、キリトはソードスキルを発動する。彼はリリルが行動不能になるようにリリルの左脚を狙った。
しかしこれはリリルの読み通りである。彼は今の状態ではプレイヤーを殺さない。牢獄へ送ることを選択にとるだろう。
ここからの5秒はとても長かった。
キリトの斬撃をギリギリでかわし、リリルは抜刀する。
その刀はキリトの剣をなぞり遠くへ弾いた。その衝動で刀は壊れた。
キリトは「クソッ」と小言を吐き、潜めていた小さな針のようなものを取り出し投げる。
キリトの判断が早く、避けきれずに右肩へ刺さる。しかしこれくらいどうってことない。
キリトへ向かってポーションを投げつける。
麻痺薬だ。
近距離だったためキリトはよけきれず麻痺を受けてしまい動けなくなる。
動かなくなったキリトを確認したリリルは回復薬を取り出しキリトの口へ突っ込む。
「はぁ…死ぬかと思った。」
キリトが睨んでくるが、それを気にせず木の下に座ろうとする。
その木はリリルが先ほど目をつけていた不思議な予感を感じる木。
見事にその予感が的中し、リリルは声をあげながらワープポータルへと落ちてしまう。
キリトは麻痺がとけたあとその場を確認するがワープするような形跡などなかった。
「なんで奴は消えた。」
キリトが見た先にはその光景を見ていたアルゴとつられてきたクラインの姿があった。
クラインの姿を見たキリトは下を向く。
「おいキリト。リリルは人殺しなんかしてねぇ、」
クラインとアルゴはことの事態をキリトに伝える。
説明を聞き終わったキリトは無言でその場を立ち去った。
「お、おいキリト!」
クラインはキリトのことをもう一度呼んだが振り返ってはくれなかった。」
ーーー
桜の丘。
頭からフィールドに落ちたリリルは立ち上がり辺りを見渡す。あたりは一面美しいという言葉だけでは表しきれないほどの桜が咲いている。まるで19層からのワープとは思えないほど。
「ここは…」
あたりを散策する。モブやプレイヤーの気配は一切感じない。ただ一人で見るにはもったいない桜が風に揺られ花びらが散っていく。
歩いているうちに桜の木の下で誰かを待っている女性を見つける
「君は…」
第一層でクエスト受理時にいた女性。
彼女は彼の顔を見た時手を引き同じ桜の下まで引っ張る。
「待っていたよ。リリル。」
本当に大丈夫なのかというぐらい密着している。
そしてリリルのことを知っているかのように話を続ける。
「貴方をずっと待っていた。ずっとずっとずっと。」
(強く抱きしめてくる…茅場どんな性癖してるんだと一瞬思う。いやまて、SAOはカーディナルシステムっていうものがクエストとかを、、それじゃーカーディナルシステムはどんな性癖しているんだ。)
失礼なことをいうが黒髪の女性NPC、胸がでかく。話が入ってこない。
「会えてよかった。次はいつ会えるかな?そうだ!また会えるように私が作った刀のありかを教える!貴方のために作った刀。私のすべてが込められてるの!」
クエストが更新された
「
桜の下には…
山の上にある目立つ桜、桜の下には彼女の全てが込められた刀が埋まっている。
」
絶対にボスがいるなと感じるリリル。刀は先ほどキリトとの戦いで壊してしまった。
「貴方があそこまで行けるように刀あげるよ」
都合が良すぎる気がするが今はそれを考えるところではない。
渡された刀の詳細を見ると一文に目が止まる
「スキル使用不可!?」
プレイヤースキルで戦えということだ。縛りプレイはやりたくなかったが強制されるとは。
「まだ一緒にいたいけど…とりあえず行ってらっしゃい!」
NPCは桜の木の下へ行きリリルを見て微笑む。
「そうだ!私の名前言い忘れていた!私の名前は…」
「 リルル 」
ーーー
十字の丘。
「ここで行方不明カ。」
「一応死んでないようだな」
アルゴとクラインはリリルが消えた辺りを捜索する。しかしなにも手掛かりがない
「あるとすればあれだナ」
「あれってどれだ?」
「教えてほしければお金がないとナ」
「じゃぁいいや。」
「今なら割増しとくヨ?」
「増えてるじゃねぇか」
「にゃッハハハハ!」
アルゴはリリルがクエストで落ちたと判断して、捜索を終了した。
「ひとまずリリルの噂が嘘だということを広めなければナ。クラインお金は出すから協力してくれないカ?」
「了解!かわいい弟子のためだ!」
ひとまずリリルの噂が嘘だということを広めなければならない。一見簡単に見えて実はとても難しい。一歩でも踏み外したら起き上がることはとても難しいからだ。
まずは攻略組に伝えなければならない。
ーーー
桜の丘
何時間が経っただろう。
星空が見え始め美しい夕陽に照らされた桜は昼間とまた違って見える。
「ってちがーう!」
空を見上げてしまうとあまりにも美しい景色に足が止まってしまう。しかも道のりが異常に長い。
だからといってみないのはもったいない気がする。
必死にこらえながら桜の道を歩く。
「一日では終わらせようとしてないなこのクエスト。」
ひとまず今日は軽く仮眠をとることにしたリリル。少し歩いたところでいい感じの場所で野宿する。
長時間歩いたがモブがいる気配が全くない。あのNPC...リルル曰く「ここは貴方と私と邪魔の三体しかいないよ」
だそうだ。
「僕がリリル、彼女がリルルか。ややこしいな」
言葉で示せば一見見分けが付かない。こんな偶然めったにないだろう。
「もう偶然が重なりすぎて怖い。カーディナルシステムのせいだ」
空を見上げきれいな星々を見上げているうちに夜はすぐ終わった。
翌朝
目が覚めると全身が桜の花びらで埋まっていた。
「暖かかったのは花びらが原因か。」
桜に軽くお辞儀をし山のほうへ向かう。
「今は12/27か、、冬とは思えないな。」
ゆっくりと道に沿って歩いていくこと数十時間。
「あぁ桜恐怖症になりそう」
ずっと同じ光景に流石に飽きたリリル。しかしもうすぐゴール。日が暮れてる。しかし休まず山を登る。
見た目とは違いすぐ山頂についた。
山頂にはどでかくひかるように見える桜とその下で待つ侍のようなアンデッドのようなモブがいた。
「オマエガ、リリル。ワレトタタカエ」
猪突猛進系じゃなくて安心するリリル。
「突然だね。まーいいだろう。」
「ワレ、刀豪ムサシ。マイル!」
刀を構えまずは様子見、、と思ったが。
一瞬にして懐に入られ斬撃を食らう。ギリギリ鞘で致命傷は避けられた。
一気に半分の体力を削られたリリルは回復薬を急いでのみ全回する。
つかさずムサシは一撃一撃必殺技級の攻撃を繰り出す。
リリルも負けじと攻撃を加えるがスキルが使えない分相手の体力を削りにくい。
隙を狙い切り込むが行動が読まれ逆に利用されてしまう。
「強いな…」
体力がもうない。一撃でも食らったら死ぬ。回復薬を飲もうとするがそこを突かれるかもしれないので飲めない。
「オワリデス!」
大きな一歩からとどめを取りに来るムサシ。
絶体絶命だったリリルは攻撃を受け流しムサシの腹に差し込む。
無意識で一瞬。何が起きたのか彼も分かっていない。
体力はミリ。あっという間な感じだが本当に死ぬかと思ったリリルは体の力が抜ける。
「オミゴト」
腹を刺されたムサシは刀とともに消える。
戦いが終え少しすると背後からリルルがやって来る。
「おめでとう貴方。これで私のすべてを込めた刀が使えるね。」
リリルはリルルからの回復をもらい体力マックスになる。
「私はずっと貴方を思い桜の樹の下で待っているから。また会おう」
あたりは光に包まれ気付けば19層の圏内にあるとある宿の一室にワープしていた。
気づけばカーソルがグリーンに戻り、手元にはとてもとても綺麗な刀があった。
「
ミッションクリア;報酬「ソメイヨシノ」
」
その通知と共に長い付き合いだったクエスト「桜の下でまた。」は姿を消していた。
刀を装備してみる。少ししか会話しなかったが長い付き合いに感じた。刀からは不思議な温もりを感じた
「ってこれスキルポイント足りなくて装備できねぇ!?」
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