前橋ウィザーズ   作:ヘッズ

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第4話 アズが娘だったら……いや無理だわ……

「なあ、認識(しって)っか?この店の話」

「なにそれ?」

「なんか願いを叶えてくれる魔法の店だとよ」

「それ本当~?」

「なんか芸能人のプライスサイズモデルの誰かが訪問(いった)みたいだぜ」

「どうせネタでしょ、オジさんそういうの好きなの?」

実在(あった)らよくねえか、そんな店がすぐに駆け込むぜ。お嬢さんの恋人(おとこ)になりたいってな」

 

 殺島はカラオケボックス内にて女性にキスを交わしながらスマホの画面を見せる。女性は嫌がる素振りを見せず艶っぽい目を殺島に向ける。

 今日は珍しく午前中から仕事の用事があったのでそれを済ませる。思ったより早く済んだのでドリーミードリーミーフラワーが営業するまでの時間をどう暇潰すかと考えていたところで逆ナンを受けた。見た目からして女子大学生か何かだろう。普段は条例もあるのでこの年代とは遊ばないのだが、ドリーミードリーミーフラワーの宣伝をしておこう応じ、久しぶりにカラオケに行っていた。

 胡散臭いアカウントにしか見えないが報せることが重要だ。これが切っ掛けで切羽詰まったり重大な局面が迫った時に思い出し店への扉が開くかもしれない。

 逆ナンを受けた女性以外にも組の構成員や関係者にも雑談の話題の1つとしてさりげなく知らせ、恐喝している相手や債務者にはスタポスで強制的に宣伝させる。

 女遊びで知り合った女性ならいいが、ヤクザ関係の者が万が一来たら即物的な願いを要求してきて皆は困惑しそうで、関わったら影響に悪そうだ。まあ魔法使いになるためには仕方がないと我慢してもらう。

 

「じゃあねオジさん、また遊ぼうね」

「ああ、魔法の店を他の友達(ダチ)告知(しらせて)おいてくれよ」

「オジさん拘るね、しょうがないな」

 

 女子大学生は若干苦笑を浮かべながら手を振り去っていく。別の用事前の暇つぶしだったようで早目に切り上げた。こちらも店に行かないので言わなければこっちから切り出すつもりだった。店の宣伝をしたがこの感触からして率先して話題にはせずに、何かしらの話題や事柄から思い出して話すぐらいだろう。それでもやらないよりはマシだ

 スマホを見ると16時を回っている。そろそろ学校が終わって帰宅してから店に向かっていく頃だろう。殺島はスマホをスーツのポケットにしまい自宅に向かう。

 

「わりい遅刻(おく)れた。」

 

 殺島は慌ただしく店に入る。帰宅時に交通事故で主要道路が封鎖され迂回するはめになって遅れた。店内にはアズだけが居た。

 

「皆は?」

「チラシ配りに行った」

 

 店内のカウンターに座っているアズに質問するとスマホをいじりながらそっけなく答えが帰ってくる。

 殺島は状況を把握すると一旦控室に戻ると自分専用スペースに置いてある本を何冊か持って再びカウンターに戻る。題名には「花屋で人気の花500」「すてきな花言葉と花の図鑑」と書かれている。

 

 殺島はページをめくり写る紫の花を見る。アヤメの開花時期は4月中旬から5月中旬、花言葉は希望、良い便り、神秘的、メッセージ。頭の中でアヤメを手に取っているイメージを描く。本来であれば手に取ってじっくり見て匂いなども嗅ぎたいのだが、いちいち魔法で花を出すとかなり疲れるのでしない。

 一応カウンター後ろの扉には様々な花が咲いた巨大な壁庭や店内に設置されている花壇もあるのでアヤメがある可能性もあるが探すのが面倒なのでしない。

 4人が配っているチラシには魔法の花屋ドリーミードリーミーフラワーと書かれているがこの店は花屋ではない。

 普通の花屋のように注文した花や花束を提供しようとすれば魔法使って花を生み出せるが体力をそれなりに消費する、そもそも花を渡しても魔法使いになる為に必要な魔法のポイントを得られるわけがないので意味はない。

 それを聞いた時は母親のように生花店を営めないと少し落胆したが、それでも殺島は花について勉強する。最初の客が来た時に花束を見繕ってくださいと言われた際に、渡す相手の人柄やその人とエピソードなどでイメージを膨らませて渡すと出まかせを言った。

 それは生花店を営んでいた母もやっていないサービスだが、それが殺島の理想とする生花店だった。

 

 今後この魔法使いになる修行の中で花束を見繕う機会は限りなく少なくする必要もない。それならば来た客に一輪の花をプレゼントする。サービスでオシャレのワンポイントになりそうな花を一輪見繕う。これならば体力の消費も少なく勉強すればできるかもしれない。

 完全に意味のない自己満足であるが元殺島生花店の倅として少しでも生花店らしいことをしたい。そう己の過去を交えて5人に説得したらあっさりと了承し、特にユイナはエモエモだよと涙ながら賛同してくれた。

 店内ではめくる音とスマホを操作する音が静かに響く。紫の花に書いてあるページを見たからか、殺島は紫からアズを連想し本から目を離し隣にいるアズに視線を向ける。  

 もしアズが客として来たらどんな花を渡すか、イメージ通り紫の花を渡すか、それとも差し色で別の色の花か、または花言葉から選んでみるか。暫くアズにはどの花を選ぶかという思考からアズ本人に移行する。

 

 ドリーミードリーミーフラワーが正式オープンし初めての客が来た時には色々あった。客として訪れたプラスサイズモデルの凛子にアズが「デブ無理」と暴言を吐いた。

 殺島もその場に居たがひどく驚いた。極道が関わっている闇金の従業員でも客に向かってそこまでの罵倒はしない。まあ返納が遅れている客は客ではないのでアズの暴言とは比較にならない程の罵詈雑言をぶつけるが。

 それにアズは殺島がアイドル風に歌って踊ることに戸惑いと恥ずかしさを覚え悩んでいた時には言葉は相当きつかったが励ましてくれた。そんな捻くれた優しさを持つアズが直球に悪口を言うとは。その態度に他の4人は不快感を持ち殺島は大いに危機感を持つ。

 アズは良くも悪くも自分に正直で思ったことを口に出す。凛子との衝突の前にこの性格故にアズは集団からハブにされる可能性が高く、そうなるとアズは耐えかねず魔女になる修行をやめる可能性も出てくる。

 仮に辞めなくても居心地が悪く労働力が落ちる。諸事情で皆には気分よく働いてもらう必要があった。そんな状態を危惧し、嫌いなユイナでも魔女になるために利用しろとアドバイスしたが、まさに想像していた状況を迎えていた。

 結局はアズが凛子に謝ったことで4人はアズを赦し、アズも色々と衝突していたユイナに靴をプレゼントするなど少し打ち解けていた。そして靴を渡した後にアズは殺島にこう告げた。

 

──ペラペラのファッションの奴をペラペラじゃないって褒めるなんて無理。だったらアズがペラペラでもマシにする。

 

 実利じゃなく感情を優先し、少しでも自分がムカつかず過ごしやすい空間に変えるというのがアズの答えだった。結果的には集団の人間関係は改善したので殺島の理想の展開であり、アズのこれは殺島の予想とは違う答えだった。

 徹底的に感情を優先するその我の強さは愚かさとも捉えられるかもしれないが、殺島は好きだった。聖華天時代は逆ナンされた女の為に勝ち目が薄い喧嘩をしたことがあった。かつては持って大人になって失ってしまったものをアズはまだ持っていて少し羨ましいとすら思っている。

 

「ねえ、その香水なんだけど」

「ワリい、異臭(くさ)かったか」

 

 突然話しかけられ驚きながらも殺島は手首の匂いを嗅ぎながら謝罪する。普段も香水をつけ周りに何も言われたことは無い。それは周りに大人が多いからそうであって女子高校生がそうとは限らない。

 

「なんでその香水つけてるの?」

 

 アズから発せられる言葉は苦情ではなく質問だった。自身に興味を持つとは珍しい。

 

「そうだな、好きな匂いっていうのもあるが、見せたい印象(イメージ)に合うっていうのもある」

「イメージ?」

危険(やば)くて色気(エロ)い男、どうよ?」

「エロいとか女子高校生とか言うとかセクハラ、無理」

「ワリい。規則(コンプラ)違反か」

 

 殺島はバツが悪そうに謝る。ヤクザがセクハラを気にするのは妙な気がするが、この場所ではヤクザではなく一般人であり同僚に気をつけるのは自然だ。

 

「香水に興味あるのか?」

「当然でしょ。匂いもファッションのトータルコーディネートの1つだから、でも見せたいイメージについては考えてなかった」

「前橋ウィザーズいちの御洒落番長(ファッションリーダー)ですら気にしない点を気にしてるか、オレの御洒落感性(オシャセンス)も捨てたもんじゃねえな。ついでにオレの服装(ファッション)もチェックしてくれよ」

「だから前橋ウィザーズはダサいから無理、それでファッションチェックだっけ、いいよ、暇つぶしにやってあげる」

本当(マジ)?じゃあ私服に着替えてくる」

 

 殺島は丸椅子から立ち上がり控室に向かう。雑談の1つのネタとして提案し拒否されると思っていたが了承してくれるとは思っていなかったが意外だった。

 普段の言動や服装や化粧を見ればアズのファッションへの関心度の高さは男でも分かる。そのアズがどう評価するか少しだけ楽しみだ。

 

評価(チェック)おねがいしゃっす」

「私服も何もスーツじゃない」

「スーツも私服だろ」

 

 殺島は頼まれても無いのにポージングしながらチェックを促す。アズはウザいと吐き捨てながら殺島の周りを一回りしながら隅々まで見定めていく。

 

「それでオレの服装(ファッション)の評価は?」

「まあ、ペラペラじゃない」

 

 ペラペラじゃないとは妙な評価だが声色や言葉からして悪い評価ではないと殺島は捉える。

 

「詳しくないけどそのスーツそれなりに高いでしょ。生地がしっかりしてるし、それに靴も磨いて足元も気にしている」

 

 最初に会った時のユイナはまさにペラッペラと表現できるファッションだった。二千円以下の安物のワンピースにボロボロの安い靴、一方殺島は高いスーツに高い靴とユイナとは対照的だ。

 高い服を着るのは誰でも出来る。しかし靴を磨くのは足元を気にしている者しかしない。それだけでオシャレに対する意識が分る。

 

「評価はまあまあか」

「でもそのヒョウ柄のネクタイはダサい、無理」

 

 アズはネクタイを指差しながら指摘する。男性のファッションについての知識は無いが、自身のセンスからしてスーツにヒョウ柄のネクタイはスーツに合っていない。

 

「そうか?野生(ワイルド)格好良(イケ)てるだろう」

「全然、他のにしたらマシになると思う」

「そうか」

「は?何その態度?アズが折角アドバイスしてあげたのに、そういうの無理」

 

 殺島の返事がアズの神経を一気に逆撫でさせる。今の返事は全く聞き入れるつもりがない返事だ。頼まれてファッションチェックして親切心でアドバイスしてやったのにその態度は本当に腹が立つ。

 

「オレはオレが好きな物を着る。皆が醜悪(ダサ)いって言っても関係ねえ」

 

 アズはアズがカワイイと思う物を着る。ユイナが制服を勧めた時に言った言葉がアズの脳内で蘇る。あれはユイナに対する嫌悪感が故に言葉が強くなったが全くの嘘ではない。

 自分が良いと思った物、カワイイと思った物を着たいと思っている。それは殺島も同じだ。殺島のファッション感他人の意見に簡単に左右されるペラさがない。

 

「じゃあそれについてはいい、けどそのブレスレットはなに?どう考えてもダサい!しかもネクタイの柄みたいな自分が好きだからって着けてる感じが全くしない!」

 

 アズは語気を荒くしながら再度問いかける。右手首につけているブレスレット、身に着けている服に似合わない明らかに安物、殺島のセンスとどう考えても合わない。何言われても好きな物を身に着けると言っただけに不可解であり、アズのなかで評価が一気に下がっていた。

 

敏感(する)どいな、このブレスレットはオレの趣味じゃない」

「だったら何で着けてるの!?」

「これは娘から貰ったものなんだよ」

「え?ごめん」

 

 アズは先程の勢いから一転し殊勝な態度で謝罪の言葉を述べる。殺島が自分のポリシーを曲げてまで着けている。つまりそれ程までに大切なものである証拠だ。それをダサいと馬鹿にしてしまった。後悔の念があっという間に膨れ上がっていく。

 

「おいおい、そこまで落胆(しょげ)るなよ。気にしてねえから」

 

 殺島は若干戸惑いながら声をかける。先程までの勢いはどこへやら、責められていたと思っていたが、まるでこちらがアズを責めている気分になる。

 

「というより子供居るんだ。初耳なんだけど」

「そういえば質問(きかれ)なかったから言ってねえな」

「良い娘ね、誕生日にプレゼントをくれるなんて」

 

 アズは雑談の流れで殺島の娘を褒める。唐突に娘を褒めるアズの不器用さに思わず笑みがこぼれる。娘のプレゼントをダサいと言ってしまった罪悪感をまだ引きづっているが故の言葉、それもあるかもしれないが本心で父親にプレゼントをあげる優しさを褒めているのは分かる。

 

「名前は花奈って言うんだ。写真あるけどよかったら鑑賞(みる)か?」

「うん」

 

 殺島の提案に応じるようにアズは近づきスマホの画面を見る。そこには殺島とその妻らしき女性と小学校低学年ぐらいの女の子が写っている。3人とも幸せそうに笑っている。

 

「娘さんは今何歳?」

 

 殺島が身に着けているブレスレット、よく見ればブレスレットではなく玩具だ。プレゼントをあげるほど父親思いの娘なら年齢を重ねればそれなりのプレゼントを贈るだろうし、殺島も何かしらを身に着けているはずだ。

 それなのにそれらしき物は見当たらないのは不自然な気がする。それに殺島も気持ち今より若い気がする。

 

「この時は7歳だ。生きてればアズ達と同じぐらいか、あと謝らなくていいからな」

 

 アズは出かかった言葉を飲み込む。無神経な質問をしてしまったと殺島に謝ろうとしたが先回りされてしまった。

 

「もしかして魔法で叶えたい願いって娘さん、花奈ちゃんを生き返らすこと?」

 

 アズは恐る恐る質問する。もしそうであれば必死に魔法使いになろうとするのも理解できる。殺島は一瞬悲しそうに目を伏せた後に語る。

 

「最初はな、ケロッペに訊いたがそれは無理だって言われた。時間は止められるみてえだが、流石に蘇生(いきかえ)らせるのは無理みてえだ。今は違う願いがある」

「そう」

「花奈は心底(マジ)でいい子でよ」

 

 それから殺島は花奈との思い出話を語り始める。赤ん坊のころは夜泣きに手を焼いた。フラッシュプリンセスに夢中で一緒に劇場版の映画を見に行った。このブレスレットはフラッシュプリンセスのオモチャである。美人なので妻が芸能界に入れようとしていた等様々なことを語り、アズは殺島の話が一段落するまでずっと聞き続けた。

 

「わりいな、興味ねえ話をずっと聞いてくれて」

「別に、暇だったし」

「いや本当(マジ)感謝(サンキュ)。花奈の話をアズに聞かせたのはオレの我儘だしな」

「我儘?」

「花奈について誰かに話すとするだろ、もしかしてアズが花奈のことを記憶保持(おぼえて)くれるかもしれねえ。誰かが覚えていれば花奈は生きている。花奈が生きた証は少しでも多く長く残してえ」

「何弱気になってんの。アンタが100歳でも200歳でも生きてれば花奈ちゃんはアンタの中で生き続けられるんだから。アズに頼らないでよ」

 

 殺島はアズの言葉にハッとする。ヘルズクーポンで忍者を殺せる可能性が生まれた。だがあくまで可能性であって絶対ではない。それどころか死ぬ可能性もある。それだけ忍者は強く、無意識に忍者と対決したら死ぬと思っていたかもしれない。

 

「だな、アズは本当にオレを激励(はげ)ましてくれるな。口は悪いけど」

「は?別に口悪くないし励ましてないし。勘違いとか本当に無理」

「アズが娘だったら……いや無理だわ……」

 

 殺島の笑みが一気に渋っていく。脳内で花奈がアズのような性格になり、それに加えて反抗期が重なって、『パパとごはん食べるとか無理』『パパのファッションダサくて無理』という姿が浮かび上がる。娘に冷たく無理と言い放たれるのは相当堪える。

 

「何勝手に想像して勝手に拒否してるのよ!本当に無理!」

「いや花奈が女子高校生(JK)になって、学校のことを聞こうとしたらアズみたいに『パパに関係ないでしょ、無理』とか言うんだぜ、苛烈(きつ)いだろ?」

「アズはそんな事言わないし」

「まあ、アズは根が優しいのは分かってるからよ。言葉の根っこの部分を翻訳(わか)れば問題なしだ」

「な!?」

 

 アズは直球に褒められて言葉に詰まる。その反応が面白がっているのかニヤニヤ笑ってる殺島を思わず小突いた。

 

「見事な照れ隠し(ツンデレ)だな。理解(わか)ってるぜ。その優しさ」

「ツンデレじゃないし!」

 

「ただいま~、ってなにやってるの?」

 

 マイは思わずため息をつく。ビラ配りを終わって戻ると見えたのはアズが殺島をポカポカと小突いている姿だ。

 

「ようお帰り、チョコあれやってくれ」

「了解ヤジリン、チョコちゃんカッタ~」

 

 アズ達と一緒に帰ったチョコは殺島の言葉に応じるように2人の元に駆けつけ手刀のモーションで間に入っていく。

 

「何が有ったか分からないが暴力はよくない」

「そうだよ。キョウカちゃんの言う通りだよ」

「アズ悪くないし、こいつが娘が居たけど、もしアズが娘だったら無理って言うから」

 

 アズはそっぽを向きながら弁解する。確かに言ったが最後は褒めた、その照れ隠しで小突かれていると言おうとしたがアズが非難されそうなので黙っておく。

 

「え、ヒロキ君結婚して、娘さんも居るの?」

「ああ」

「そうなの!?ヤジリン写真とかない?」

「有るぜ、鑑賞()るか?」

「見る見る!かわいい~!子供の名前は?」

「花奈だ。植物の花に奈良の奈だ」

「花奈ちゃんとヒロキ君とのツーショット、エモエモ!」

 

 ユイナとチョコが殺島のスマホに写る花奈を見て姦しく騒ぐ。それが気になったのか遠巻きで様子を見ていたマイとキョウカも近づいてスマホを見始める。

 

「これはあれだ。花奈がフラッシュプリンセスを視聴()た後に撮った写真だ」

 

 殺島は写真を撮った時のエピソードを語り4人は話に耳を傾けながら写真を見る、その中でアズは聞いた話なので殺島達とは距離を置いて眺める。

 娘について語る殺島の笑み、なんて柔らかくて良い笑みなのだろう。こんな表情は初めて見る。それと同時にある疑問がわく。

 プラスサイズモデルの凛子が受けた傷は時間が経っても癒えるものではないと言っていた。ひょっとして殺島は娘を失った悲しみを乗り越えられていないのではないか?

 話を聞いただけどれ程までに娘を愛していたかは十分に伝わってくる。それだけに悲しみは大きく一生癒えず、今も苦しんでいるかもしれない。

 

「そういえばそろそろお父さんの誕生日だっけ?」

 

 アズはポツリと小声で呟く。今思えば両親に厳しく当たり現在は不登校で心配をかけている。日頃の感謝の気持ちとしてプレゼントを渡し、殺島のいうツンデレではなく素直な言葉で感謝を伝えてもいいかもしれない。

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