機動戦士ガンダムSEED DESTINY 〜呪われし鬼と自由の翼〜   作:単眼駄猪介

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まずは、恐らくリンクから飛んできた方々に感謝を。

そうでない人にも感謝を。

リメイクにあたって前作の種死編とは大きく様変わりしましたが、皆様の楽しみになれば幸いです。




軌道上に幻影が走る

 

 

人工的に身体能力や容姿を調整されて産まれた【コーディネーター】によって作られた砂時計型のスペースコロニーに生き、プラントという国家を形成する者達と、遺伝子調整されることなく自然のままに地球で産まれた【ナチュラル】との大戦から2年。

 

異物たる鬼は戦後の2年の間に姿を消し、自由の名を冠する機体と共に伝説的存在としてその存在は昇華された。

コーディネーターは恐怖と畏怖、ナチュラルは憧憬と尊敬がそれらに向けられた。

 

 

 

 

 

だが、歴史は正史と変わらず各地に残った火種が燃え上がる事になる。

 

その燃え広がった炎から、かつての霹靂の鬼の再来と自由を求める翼が再び舞い降りることになるとは、所詮は過去の英雄として見ていた民衆や兵士には、それらが自分たちに牙を剥く可能性を思いつくはずもなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はC.E.73年。

ザフトが新造した新型戦艦【ミネルバ】の進水式が進められる中で起きた謎の部隊の襲撃によって、新型モビルスーツ3機を奪取された。

用いられた兵器が連合のものである事から、傭兵である可能性を入れつつも半ば連合軍の仕業だと思っていた矢先、ミネルバは急遽進路を地球にへと向けた。

デブリベルトにあった、前大戦の結果となった地【ユニウスセブン】が地球への落下軌道を始めたというのだ。

これに対し、ザフトの現最高議長ギルバート・デュランダルは乗艦していたミネルバに破砕作業へと向かわせた。

そしてザフト本国からも、ユニウスセブン破砕の為に近くの部隊を向かわせた。

 

そしてミネルバが現場に到着した頃には、先行して破砕作業を行なっていたイザーク・ジュール率いるジュール隊と、かつてのザフトの主力量産機ジンの改修機【ジン・ハイマニューバ2型】が地球へと落ち行く墓標の上で殺し合っていた。

 

 

かつて、ユニウスセブンに向けて核攻撃を行ったことをキッカケに始まった前大戦。

未だに少数ではあるものの、ナチュラルへの憎悪を滾らせるコーディネーターの一派がハイマニューバ2型に乗る者達だった。

 

 

【血のバレンタイン】を忘れるな!

 

 

そう言い放つテロリストの首魁、サトーと対峙するミネルバ隊のシン・アスカと人手の足りなさをカバーする為に臨時でザフトの機体を借り受けたザクウォーリアを駆るアスラン・ザラ。

シンには彼の言葉を理解できないが、アスランもといアレックス・ディノと偽名を名乗る彼には突き刺さる言葉であった。

母の墓標でもあるユニウスセブン、そしてサトーらが信じるアスランの父パトリック・ザラ。

彼らの言葉全てが、アスランに苦痛を与える。

そして旧式の改修機といえど、パイロットは熟達し練度の高いザフトの元軍人。

まだ新兵であるシンには荷が重く、サトーらと同じくベテランのアスランはメンタルを揺さぶられて動きが鈍く、本調子を出せていない。

絶体絶命のピンチか、と思われた矢先―――

 

「それで話す事は終わりかい?」

 

「なにっ…!?」

 

強烈な緑の光がサトーのハイマニューバの頭部を射抜き、サトーの視界を潰す。

動揺を隠せないサトーに声の主……電子音で構成された女性的な声が嘲笑う。

 

「クッフッフッ、大義名分を掲げた所で力に訴える事しかできない愚かな君達にはそんなモノはないのにねぇ」

 

「な、何奴!」

 

「知る必要があるのかい?まあ構わないけど」

 

口調は大仰な感じだが、声音は非常に冷めていた。

そして、彼?彼女?が言葉を言い切ると同時にデブリの漂うユニウスセブンの表面上を青い軌跡を描く人影がシンの乗るインパルスのカメラが捉える。

 

「新型…?」

 

スラスター光と同じ、蒼白色の機体はザフトの主力機ザクウォーリアに似ていたが頭部の形状や細部に違いが見られ、シンは新型ではないか?と考える。

そうこうしている内に謎の機体は奇襲をかけてきたハイマニューバ2型のビームカービンによる攻撃を急旋回して直角に避ける。

そして振り向き際に肩に担ぐビームバズーカで胴体を撃ち抜き撃破し、そのままインパルスの元に辿り着く。

 

「インパルスのパイロット、あとそこのザク。さっさと破砕作業を開始したまえ。今は一刻を争う」

 

「りょ、了解!」

 

「貴公の救援に感謝する」

 

蒼白色のザク……いや、宇宙世紀を知る者なら知っている者も多いだろう機体【ヅダ】にシンとアスランら個々に反応しつつ、本来の任務に戻る。

ヅダもとい【ヅダ・ショーパー(Short stoPer)】と型番を持つ機体は、原点と違いザクウォーリアの高機動火力型機体としてのコンセプトで開発された試作機である。

高機動の要である【サターンエンジン】は最大噴射時、10秒以上の噴射でエンジンが高負荷に耐えきれずに機体ごと爆発くるという欠陥を持つものの、その機動性は並のパイロットでは捉えることもできない。

 

そして、火力型の名に負けない高火力武装の数々。

かつて奪取した5機のGの一つ【バスター】の武装構成を参考にしてか、実弾とビーム両種が揃っていた。

先程、撃っていたビームバズーカ【プロトタイプギガランチャー*1】はその一つである。

 

「さて、貴方にはご同行頂かねば…」

 

「虜囚の身となって恥を晒せと!なんと破廉恥な!」

 

「はぁ……」

 

呆れた様子のヅダのパイロット。

だが、サトーはそれだけに限らずコクピットに設置していたある物を起動させた。

 

「最早、これまで……!!」

 

「ッ、貴様!」

 

サトーが起動させたのは自爆装置。

無力化されたとしても機体内に仕込んだ爆薬で周囲を巻き込む自爆装置であった。

かろうじて爆発の範囲から離れられたヅダであったが、パイロットは再び溜息をつく。

 

「武人気取りが…」

 

そう言う人物の姿は、もしもショッピングモールなんかにいれば必ず目立つ姿であった。

カラスを模したフルフェイスのヘッドギアに、あまり手入れされていないらしいヘッドギアから漏れ出たボサボサの白髪。

かろうじて灰色に色を塗り替えたザフトのマント付き制服が、その人物の所属を明らかにしていた。

そして、大きな襟にはFAITHである事を示すバッジが静かに輝きを持っていた。

 

「まあ、なんにせよ破砕作業は進めなければならない。私もできる限りのことをしよう」

 

先程の自決は仕方ない、と割り切りヅダのロケットノズルの噴射を開始する。

なにせ高機動機に火力を詰め込んだ機体だ。

破砕作業にはもってこいの性能だろう。

プロトギガランチャーだけでなく、両肩部装甲にはマイクロミサイル、両脹脛(ふくらはぎ)側面に取り付けられたビームカノンは機動性確保の為、数は少ないものの威力は申し分ないものである。

ユニウスセブン自体は、破砕用の掘削爆弾【メテオブレイカー】頼りだがその周辺や砕かれて小さくなったものは十分、ヅダの火力で破壊できる。

 

「210mm電磁狙撃砲があればもっと楽なんだが、まあアレはデカいしな」

 

他にも近接武装もあるが、それは後でするとして……

 

 

 

 

今現在、ヅダの介入によってテロリスト部隊はいち早く撃滅せしめたが、勘違いによる3機のセカンドステージシリーズを強奪した連合の部隊【ファントムペイン】が作業中のザクを攻撃し始める。

その対応に、ミネルバ隊所属のルナマリア・ホークやレイ・ザ・バレルのザクが対応するが、メテオブレイカーごとザクを撃破していく3機のセカンドステージとダークダガーLの群衆。

この波に対抗するには、作業しながらのジュール隊とミネルバ隊だけでは厳しいと言わざるを得ず、次々と無抵抗のザクがやられていく。

 

「猪武者が!」

 

ダークダガーをマイクロミサイルの弾幕で動きを止めさせてビームバズーカで着実に落としていくヅダは、一般ナチュラルでは一瞬で気絶するほどのGを受けながら敵に捕捉されないまま蹂躙していく。

 

「こいつ!各機、弾をばらまけ!」

 

このままではザクへの攻撃がままならないと悟ったダークダガー隊は、各々の装備している武装を滅茶苦茶に撃ちまくる。

この自棄っぱちじみた攻撃に当たるザクはいなかったが、攻撃を加えるヅダとしては近付きづらくなる。

とはいえ、ヅダには強力な火砲があるので、距離を取って撃てば問題ないのだが。

しかし、潜り抜けられると判断したのか弾幕に飛び込み、弾を避けながらビームを放っていく。

 

「対応としては悪くはないが、弾幕量が足りんな!」

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

ギガランチャーのビームが闇雲に撃っていたダークダガーに当たり、バランスを崩す。

その際に放たれたビームがもう一機のダークダガーに当たり、一瞬にして二つの爆光が青い地球を背景に形成される。

そして誤射による隣にいた僚機の撃墜に呆気に取られた機体が次に散り、その後も連鎖的に味方が落とされていく様を見せられたダークダガー隊は戦々恐々とする。

 

「そ、宇宙の化け物め…!」

 

チームワークが瓦解したダークダガー隊に、ヅダはトドメとばかりに集団の元に飛び込もうとするが寸前でヅダの前を複数のビームが横切る。

 

「まぁた新型?しかも俺の機体と色が被ってるし、死ねよ!」

 

「奪われたセカンドステージか!」

 

ビームの主は奪取されたセカンドステージのうちの一つ、【アビス】であった。

アビスに乗るエクステンデッド(生体兵器)、アウル・ニーダは色被りで気に入らない目の前のヅダにビームやレールガンを滅多打ちするが、ヅダのスピードにアビスの機械側が処理限界が来ていた。

 

「なんで当たらないんだ!?」

 

「行き掛けの駄賃にその機体ごと逝くといい!」

 

アビスに急接近し、ヅダはザクと同じく左肩に付いているシールドを前に構える。

シールド裏にはビーム・トマホークではなく、特殊兵装【電磁ワイヤー*2】がアビスのコクピットに向けて放たれる。

ワイヤーがコクピットと接触するのと同時に、強力な電流がアビスの機体内を巡る。

 

「うわあぁぁぁぁっ!?」

 

パイロット保護の構造で、電流がアウルに流れる事はなかったが機体側はそうはいかない。

電子パーツは焼き切れ、機体の剛性、耐弾性を上げるフェイズシフト装甲は過負荷の電流によってダウンしている。

モニターもほとんどがブラックアウトし、各計器もエラーの告知か機能を停止しており、役に立たない。

唯一、正面のモニターだけが幸いにも生きていたがそこには自分にトドメを刺そうと、プロトギガランチャーを構えるヅダの姿。

蒼白に身を染めた赤い瞳が、(アウル)を見つめているように感じた。

 

「あ、あぁ……」

 

戦う為だけに作られたのにも関わらず、一瞬にして決着を付けられたアウルは絶望と共に死の恐怖を覚え、走馬灯を見る。

走馬灯の最中、母と呼ぶ女性から教わった雷についてアウルは思い出す。

 

「は、はは……僕のおヘソを取りに来たんだ…」

 

失禁しながらそうかすれた声でこぼしたアウルだったが、幸いにも彼には味方がいる。

ダークダガー隊がヅダに射撃することで、かろうじて死の危機は回避できたアウル。

一部始終を見ていたダークダガー隊の隊長は、戦闘後にこう振り返る。

 

「まるで雷だ。雷は誰にも邪魔されないように、アレもどんなものにも邪魔たり得ない。まるでかの噂に聞く霹靂の鬼だ……」

 

「俺達が弱いんじゃない。機体性能もパイロットの腕も俺達より遥かに上なんだ、アレは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、海洋上で一時休息を取るミネルバ。

進水式もままならぬまま、宇宙へと飛び出し果てには地球を守るため落下するユニウスセブンを限界まで砕き続けたミネルバの船体はボロボロであった。

そんな新造艦にあるまじき姿のミネルバの格納庫では、見知らぬ青い機体に湧き立っていた。

 

「すげぇ、これがザクとコンペを争ったっていうヅダだぜ!?」

 

「記録で見た奴より、より実戦に特化したって感じだなぁ!」

 

若手のメカニック達は絶対にお目にかかれない存在であるヅダに興奮し、ベテランのメカニック達も若手ほどではないが直に見て整備できる事に静かに興奮していた。

そんなガヤの外では、ミネルバの艦長タリア・グラディスとその副長アーサー・トラインがヅダの主と対面していた。

 

「このような姿で申し訳ない。私の名はクロウ・ワーレットと言う」

 

「先の件ではご協力、感謝致します。しかし、FAITHの方が何故あの場所に?」

 

「デュランダル議長からユニウスセブンで怪しい動きがあるという報告を受けて調査していたのだが、情けない事に既に落下軌道にあったので大急ぎで向かったのだが……この有様さ」

 

「いえ、貴官の援助なしではあそこまでの破砕作業は行えなかったでしょう。改めて感謝しますわ」

 

彼女にとって、クロウ・ワーレットは前々から興味の対象であった。

人妻となり、子持ちになったタリアとて、かつてのパートナーの恋愛事情は気になるものである。

デュランダルが議長に就任した前後に、クロウが現れFAITHの立場を手に入れていた。

性別不明のクロウに、政府関係者達はざわめいた。

議長の内縁の妻なのでは?

はたまたデュランダル議長の男娼では?

関係者達は夢想した。

美人系なのか、それとも可憐系?

一周回ってブサイクなのでは?

そんな憶測が憶測を呼ぶクロウの素顔であったが、デュランダルはそれらを放置し、クロウを警護につかせていた。

実際の所は、噂されているような関係は一切なく表面通りの友人同士でしか無かった。

友人同士、と言ってもタリアには(ラウ・ル・クルーゼ)以外にそんな人物がいた覚えはなかった。

とはいえ、彼が友人と言うのならそうなのだろう。

自分の知るギルバート・デュランダルを、彼女は信じた。

 

「それに、あの人の事を見てくれている意味でも私は感謝しています」

 

「…なるほど、藪蛇な事は言いません。が、彼も彼で未だに貴方に未練があるようです。機会があれば早めに彼に会ってあげてください」

 

「……心遣いありがとう」

 

直で見るクロウは、今の所タリアにとって好印象の人物であった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、ブリーフィングルームでチューブに入った飲料水を飲んでいたシンは、ガラス越しに見える自身を助けてくれた機体を眺めていた。

 

「まるで、あの人が来てくれたあの日みたいだ」

 

シンが思い返すのはオーブでの戦闘から避難する時に、敵であるにも関わらず味方を討ってまで避難船を守り抜いた緑のザク。

霹靂の鬼が駆った【サイコ・ザク】に畏怖の念とその力にあやかってザフトの新型量産機ザク・ウォーリアのデザインがなされている。

連合がいち早く投入したサブアームも研究・分析し、ザクの肩シールドは非常にフレキシブルに動き、咄嗟の防御もしやすい。

シンもインパルスの慣熟訓練の合間に試乗したが、堅牢というイメージを感じる機体であった。

 

しかし、アレは自分の追いかける英雄の背中でも、ましてや乗っていた機体ではない。

霹靂の鬼と名付けられた連合のスーパーエースは、全身が義体だったという。

そんな身体でありながら、無辜の民を守り第二次ヤキン・ドゥーエでの活躍は迫害の激しい地上からプラントに移住したシンにとって、まさに英雄だった。

そんな英雄の背中を、あの青い機体に感じた。

シンの直感的な感覚であった為、確信はなかったが興味を持つには十分だった。

 

「あ、シンここにいたんだ」

 

「ルナか。あの人は?」

 

「アスランさんならささっとアスハ代表の所に戻っていったわよ。もっと話したかったなぁ〜」

 

アスラン、その名を聞いてシンがパッと思いつくのはヤキン・ドゥーエで戦死したアスランの父、パトリック・ザラである。

過激派筆頭だった彼が、志半ばに死したと先のテロリストや過激派の一部はそう喚いているが、シンにとってはただの頭のイカれた奴らでしかない。

確かに親子供、友人や恋人を殺されて恨む気持ちはシンとて理解できる。

彼もまた、前大戦で家族を失ってその痛みは誰よりも知っている。

だが、発端となったユニウスセブンは大西洋連邦と結んだ取り決めに違反していた存在だ。

やり過ぎ(核攻撃)な対応だったが、それでナチュラル憎しと絶滅戦争を繰り広げようとするのはシンには共感できなかった。

して、そんな奴を父に持った息子アスランはどうかというと父親のようなヤバいヤツではないということだけは理解した。

 

「あんま入れ込むなよ、ルナ。あの人、前の大戦じゃザフトを裏切ったって聞くし」

 

「それは噂でしょ?まあ、ああしてアスハ代表の所で護衛をしてるんだし、本当っぽいけど」

 

「とか言いながらアグネスみたいにケバい化粧してくるんだろ?」

 

「アレは例外よ、例外!」

 

シンの言葉にふと、脳裏によぎった知り合いの顔を思い出してルナマリアは首を振る。

そもそも彼女は自分から男にすり寄っていっているのだから、女性から見ても不快なのだ。

そんな女と重ねられるのは不本意だと、当然の怒りをシンの頭にぶつける。

 

「いてっ!?」

 

「今のはお前が悪い」

 

「レイ!?」

 

いつの間にか隣に立っていたレイに言われ、シンは不本意ながら頭の頂点から感じる痛みを甘んじて受け止めるしか無かった。

そもそも下手人であるルナマリアはすぐに出ていってしまったので、責めることもできなかったのだが。

 

「む、失礼。ここがブリーフィングルームかな?」

 

と、そこにルナマリアと入れ替わりで入ってきたのはクロウだった。

異様な様相にシンは思わず身構えるが、レイは落ち着いて挨拶を交わす。

 

「お久しぶりです、クロウさん」

 

「レイ?そうか、君はここに所属するのだったな。初陣でこんな事になるとは思わなんだ。生きててくれて嬉しいよ」

 

「先の戦い、協力ありがとうございました。自分の同僚を救ってくれたようで…」

 

そう言ってレイの視線はシンに向く。

2人からの視線に気まずくなったシンはそっぽを向いてヅダをもう一度見始めるが、レイとクロウの言葉で再び二人の方に向ける事になる。

 

「味方を助けるのは当然だ。それに見ていた限りではインパルスのパイロットは伸びしろがある。将来はFAITHかな?」

 

「まだシンには早いでしょう。あの暴れ馬であるヅダを扱いこなせるように、彼もインパルスを扱いこなせなければ夢のまた夢です」

 

「クフフフ……手厳しいな」

 

この仮面の男?女?があの機体のパイロット……

シンはクロウという人物に興味を持つ。

 

「クロウ、さん?は男なんですか?」

 

「クロウで良い。その質問に関してがそうだがどうしてだい?」

 

背中に垂れ流しになっている白髪に男か…と思いつつも、クロウからの問いに答える。

 

「えっとその、マスクを付けてるし体格も分かりづらいですし」

 

「確かにそういう格好だからな。そう思うのは仕方ないか。しかし、彼はともかく他の(みな)は聞けば知っている筈だが……」

 

「女か男かで争ってますよ。貴方が何も言わないので近付きづらい存在として扱われてますし」

 

「そ、そうか……ありがとう、レイ」

 

急にしょげるクロウに、シンは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「じゃあそのマスクは?」

 

「こうした方がデュランダル議長を守りやすいからね。ほら、このマスクに明らかなボイチェン。怪しさ満点で私を狙いたくなるだろう?」

 

「むしろ近づきたくないというか……」

 

「………まあ、このスーツはアレを動かすのに必要なものだからな。いつでも出撃れるようにオフの時以外はコレは脱がないよ」

 

そう言う彼の言葉は固い意志を感じさせた。

とはいえ、実は女性……という可能性も捨てきれない。

シンはなんだかお茶目というか、見た目と口調に反して軽い感じに気が抜けたシンは、人は見た目で判断してはいけないと改めて思うのだった。

 

 

 

 

しかし、後にブレイク・ザ・ワールドと呼ばれる事件はこれで終わることはなかった。

彼らがオーブへ寄港する頃には、世界の情勢が大きく動く事になるなど、彼らには予想だにしなかった………

 

 

 

 

 

*1
ドムトルーパーの主武装のプロトタイプ。区別化して2門の実弾とビームの複合兵装を実現したドムトルーパーの物と違い、1門の銃口でビームと実弾を放てるようにした意欲作。ビームを撃つエネルギーもカートリッジ化させて、弾倉が上下2つに増えたがリロードの手間とカートリッジの積載で重量が増えるだけでコスト的にも若干高いので不採用……という本作オリジナル武装。ビームの威力・破壊力は抜群だが、開発者は同時斉射できないとして自ら不採用にしてたりとか

*2
グフ・カスタムのヒートロッドと同形状のもの





読了ありがとうございます

続きはある程度ストックを貯めてから更新予定ですので、気長にお待ち頂けたら幸いです。

ちなみにクロウ君のギアヘッドはダンバインの黒騎士をイメージしてます
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