宮間太郎の幻想入り物語 作:宮間太郎(ITARIA-DOITU)
太郎が博麗神社で「効率的な参拝客の呼び込みレポート」に頭を悩ませていた、ある穏やかな昼下がり。異変は、予告なく起こった。
空から、大きな黒い影が神社全体を覆った。
「来たわね。厄介な奴らが」
縁側で茶をすすっていた霊夢が、面倒くさそうに呟いた。
「え、誰ですか?」
太郎が見上げると、巨大な洋館の門番らしき、中国服の少女――紅美鈴(ほんめいりん)が、空中に浮かんでいる。彼女の背後には、奇妙なアリスのコスプレをしたパチュリー・ノーレッジが、何冊もの本に囲まれて浮遊していた。
「あの方、貴方よ! 外の世界から来た、結界越えの珍しい人間!」
パチュリーが指差したのは、霊夢ではなく、太郎だった。
「私? なんで…」
霊夢が立ち上がる間もなく、パチュリーの周りの本が光を放ち、太郎は動くことができなくなった。
「霊夢、悪いけどこの人間(ヒト)は、しばらく貸してもらうわ。ちょっとね、新しい魔法の実験台にちょうどいいのよ」
「ちょっと、あんたたち! 私の許可なく勝手な真似しないで!」
霊夢の抗議も虚しく、太郎は美鈴に抱え上げられ、空の彼方へ連れ去られてしまった。
紅魔館にて
太郎が目覚めると、そこは豪華絢爛な洋館の一室だった。
目の前には、パチュリーが座り、隣にはメイド服の十六夜咲夜が立っている。
「目が覚めた? 貴方にはこれから、私の**『幻想郷外来人特有の体質変化』**に関する実験に協力してもらうわ」パチュリーは冷たい声で言った。
「な、何をされるんですか! 僕は元の世界にも帰れないし、変なことに巻き込まれたくないんです!」
太郎が叫ぶと、パチュリーは鼻で笑った。
「うるさいわね。実験内容はこれよ」
パチュリーは手のひらに光る魔法陣を作り出した。
「幻想郷では、常識が通用しない。それは人間の体にも言えること。特に、結界を越えるほど強い『異変』を起こした貴方の体は、とても興味深い」
「や、やめてくれ!」
太郎の抵抗は無意味だった。魔法陣が輝き、光が太郎の全身を包み込んだ。
突如の女体化
強烈な熱と、全身の骨が軋むような感覚。それは一瞬の出来事だった。
光が収まった時、太郎は自分の体に起こった異変に、言葉を失った。
声は、高く、澄んだ音に変わっていた。
体は、一回り小さく、線が細くなっている。そして、制服のシャツ越しに、明らかに女性の体になっていることを理解した。
太郎は、自分の声で叫ぶ。
「ええっ! 僕の、僕の体っ…!?」
パチュリーは満足そうに微笑んだ。
「成功ね。『幻想郷外来人の**『存在の曖昧さ』**を利用した、性別逆転魔法』。貴方の心の奥底にある、『中3男子としての重圧』からの逃避願望が、性別の境界すら曖昧にさせた、と…」
太郎はパニックに陥った。受験から逃げた結果、体まで変わってしまった。彼はもう、宮間太郎という少年ではない。
「どうしてくれるんですか! 元に戻してくれ!」
「無理よ。魔力は使い切ったし、治すための魔法はまだ確立されていないわ。それに、貴方はもう**『宮間太郎』という中学生男子**として、幻想郷に存在する義務はない」
咲夜は無表情のまま、太郎の前に新しい服を置いた。
「とりあえず、これを。その制服では動きにくいでしょう。そして、貴方には今日から**『タロコ』**という名前を与えます」
「タロコ…?」
太郎改めタロコは、絶望的な気持ちで、そのメイド服にも似たフリルの多いワンピースを着るしかなかった。
メイドとしての訓練
こうして、タロコは紅魔館で、**女体化した「実験体」兼「雑用係」**としての日々を過ごすことになった。
咲夜の指導は厳しく、時間管理やナイフ投げ(タロコはすぐに挫折した)の訓練、そして洋館の隅々までの掃除を命じられた。
しかし、太郎は気づいた。
「もう男じゃないし、受験も関係ない。ここで、言われたことをただこなすだけでいいんだ…」
**「宮間太郎」として背負っていた重圧は、「タロコ」**という新しい存在になったことで、軽くなっていた。彼は、メイド服のスカートを気にしながらも、言われた通りに掃除をし、皿を運び、紅魔館の新しい「日常」に溶け込み始めた。
そんなある日、紅魔館の当主である吸血鬼、レミリア・スカーレットがタロコを見て言った。
「あら、咲夜。新しいお人形? 可愛いじゃない。私の新しい遊び相手にしなさい」
タロコの、幻想郷での奇妙で慌ただしい生活は、ますます加速していくのだった。
その頃の博麗神社
一方、博麗神社。
霊夢は、タロコを奪った紅魔館への怒りで、いつになく真剣だった。
「あの吸血鬼ども…! 私の居候を勝手に連れ去るなんて、幻想郷の掟を無視しているわ! 異変よ!これはれっきとした異変!」
霊夢は、いつもの数倍の速さで飛び立ち、紅魔館へと向かった。
**「中3の宮間太郎が女体化して紅魔館に捕らわれた」**という、幻想郷史上最も奇妙な異変の解決は、今始まったばかりである。