はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
あたしキジャへの第一印象は「気に入らないやつ」だった。
もともとカナリィのことが推しだったような「リスナーの古参」ではない、「カナリィの特別」になったあいつが。
どうしようもなく嫌だったのだ。
カナリィの友人としてもともとキジャの噂は知っていた。と、いうよりはいやでも話題に上がっていたと言うべき。
『キジャったらね、ずっとボクのあとについてくるんだ』
『へぇ…』
なんでかといえば、カナリィが必ず話していたからだ。私のように友人への気安さとか推しへの過剰な反応もない。
(まあ、シローと変わらなさそうな男)
正直に男というものに対しての解像度がシローしかいなかったあたしはたちまち彼を悪い虫だと断じた。頭の悪いわけではないが、何をするにしてもひっつくのはいけないことだ。
(カナリィの邪魔になるなら排除しなきゃ)
あたしは何も知らなかったからか、常にそう思っていた。キジャという人間は明らかに危険なものだと。
カナリィにとって転機というものはあの日だった。あたしはその日だけ自分の体力なんて気にせずにがむしゃらに走った。
【もう助からないぐらい深いところに逃げ込んだ】
【空から捜索しても見つからない】
【ユキメノコとオニゴーリが暴れていた痕跡しかない】
聞こえてくる言葉が現実をつきつけてきた。子供がそんなところへと行ってしまえばもう死ぬ運命にしかないと思って。
それでも間に合いたくて。せめて死体だけでもと頼むつもりで。
『…戻ってきたぜ、タラゴンのじいさん』
彼は信じられないことにヒトツキだけでカナリィを救い出していた。たった一人で。
(彼が、キジャ?)
始めは信じられないことだった。現実が確かなら、本当は助けることすらできなかったのだろう。
『カナリィは無事…とはいいがたいが五体満足なだけありがたいと思ってくれ』
『そんなこと言うでない。救急車はもう呼んだ、ゆっくりここで寝とれ』
彼がカナリィに向けていたのは、シローが私に向ける感情によく似ているけど違うものだった。
そのままヒトツキに寄りかかるようにして倒れ込む彼は、他の人からどのように見られていたのか気づいていたのだろうか。
そんなことは知らないし、あたしにとってはどうでもよかった。胸の中にあったのは、カナリィがたすかったことに関する安堵だった。
それから少しした後、またカナリィと話せるようになった。あいも変わらずにキジャの話ばかりするようになったが、その中身が変になっていった。
『キジャってね、寝る一分前からどんどんふにゃふにゃになってくんだ!』
『ふ、ふにゃふにゃ?』
『そう。何言ってもしょうがないなって言ってほほ笑んでくれながらお願いを聞いてくれるの!』
彼女の目はもうゴーストタイプと変わらないくらいにまっくろなまなざしをしていたがあたしは気にしなかった。
(あんな経験したし、カナリィも怖いんだろうな)
彼への依存度がどんどん上がっていったけど、彼と話すことがなかったから気にしなかった。
ある意味、あたしは自分がどう思うかわかって本能的に避けてきたんだと思う。
「ゴーストタイプのことであたしのところへと来た、と」
「その通り。よろしく頼む、ムクさん」
ちゃんと一礼する態度は及第点。どこか背伸びをしているのに違和感があるその仕草。どれもこれも私の庇護欲をそそるものだった。
(ムクさん、か)
どこかその呼び名に引っかかりを覚えた。私にとってどこかその言葉は忌むべきものだと感じたのだ。
「じゃあ計測するのでお願いします」
ムクさんって呼ばれただけで体の中に悪寒が走る。どこが違うと心が叫んでいる。
…それに気づいたのは、最近のある出来事だった。
あれがあたしを、ジャスティスの道から外したのだ。
ムクの描写きついっす
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重