はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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2話前を発言が間違っていました。
こぶしで代用できるのは精神分析と壁破壊でした、謹んでジャスティスになれるよう全力を尽くしてまいります。


18.私の『ジャスティス』

 

…きっかけになったのは、彼とポケモンバトルをしたときだった。確かこのときもコートとかじゃなくて一対一の誰にもみられないような場所だった。

 

『ムクさん、対戦よろしくお願いします』

 

『…ここだけ素直』

 

普段の敬語が使えていないところからこんな発言をされたのがおかしくて、つい笑ってしまった。

 

(…はぁ、こっちが勝てる勝負じゃないよね)

 

ポケモンを持っているとはいえ、あたしにとって不利なあくタイプの技ばかり使う彼。正直負ける要素のほうが大きかった。

 

『ギルガルド!盾をぶん投げろ!』

 

やけっぱちの技とはいえないこうげきも予想がつかないし、何よりもはがねタイプは耐性が優秀で殆どのポケモンが歯が立たない。

 

(ジャスティスなんだから負けるわけにはいかない…!)

 

シャンデラに最後の希望を託してメガシンカ。一体でもせめて倒せれば勝機はある…そう、考えた。

 

ヤケクソで放ったその技はきゅうしょに当たったのだ。

 

『…やべ』

 

ギルガルドはあっけなくマジカルフレイムで倒せ、続く2体も焼き焦げた。負けてしまった彼の様子はとんでもなく予想外だと言わんばかりに大口を開けて動かなくなっている。

 

『あたしに勝つなんて100年速い』

 

…そう、ここまでは普通だった。ただの友だちとやるような─それこそ、ジャスティスの会でやらされる指導と何ら変わりはない。

 

だから、彼の一言が原因なのだ。やれやれとぶっきらぼうに放ったその言葉は私の考えていることの全てを吹き飛ばした。

 

「こちとらムクの(ねえ)さんに勝てるなんぞ夢にも思っちゃいませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

私が…姉さん…?

 

 

ネエサン。ねえさん。姉さん。

 

あたしにとってシローのような上の人間よりも余程素直に言葉を聞いてくれる彼は、弟としても確かによかった。

 

「シャンデラ、あやしいひかり」

 

気がついたらあたしはシャンデラに指示をしてキジャに技を当ててしまっていた。攻撃技じゃないだけマシなのかもしれない。

 

(…こんらん、した?)

 

「…ムク姉?」

 

彼のその言葉はあたしの秘めていた姉性を解放させるのには充分な破壊力だった。

 

もともとシローはあたしに対して過保護と言っていいほどに愛してくれている。まあそれ以外のところで迷惑をかけられているから嫌いなんだけど。

 

「…そ。キジャがお姉ちゃんに勝てるわけないでしょ?」

 

あたしはこれ幸いとばかりにシローからやられていたことをキジャへとやった。

 

頭を撫でた。手に伝わる少し硬いけどシローとも違った髪の感覚は好きだった。

 

「ちょっ、くすぐったいよムク姉」

 

お姉ちゃんだからキジャが逆らうことはない。あたしのモノである優越感が彼への劣等感を和らげていった。

 

シャンデラにあやしいひかりなんて殆ど覚えさせてなかったから少ししかできないこともあり、少しずつあたしはキジャと過ごす時間を増やしていった。

 

ゴーストタイプの研究をすると称して研究室に呼び出した。

 

「…ふふ、あたしに抱きついて」

 

「う、うん。わかったけど…なんで?」

 

キジャの身長が小さいからか、あたしの胸の辺りまでしか届かない。ちゃんと腕を回してみると、すっぽりとハマってしまった。

 

「ちゃんとあったかい…」

 

あたしが満足するまで彼は離れようとはしなかった。ちゃんとこちらのことを寄り添ってくれるその姿勢も好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

何度も何度も彼に対する刷り込みを行っている内に気づいたことがある。

 

不完全なあやしいひかりでの催眠だからこそキジャの記憶には無意識にしか残らないし、初々しい感じの弟は私に従順なわけでもない。

 

(こんなの悪用してはいけないんだ…)

 

ミアレシティの治安はキジャが守ってくれているけれどその実非常に悪い。下手に裏社会が暴れたら昼も夜もバトルが絶えない場所になってしまう。

 

「だからキジャにしか使わないからいいよね。なぁ?」

 

「……うん。ムク姉が俺にしかやらないならいいよ。甘えさせて…」

 

「来ていいよ」

 

あたしのキジャの許可を得れたから撫でる。犬というよりは気まぐれな猫に懐かれている感覚のソレは、あたしの唯一の癒しだ。

 

「ムク姉と一緒にいられるならなんでもいい…」

 

トロンとした目つきはカナリィから言われたような眠たげだ。これなら確かに何でもいうことを聞いてくれそうではある。

 

「…やっぱり悪いコだね、キジャ」

 

優しい彼を見下ろし、あたしはキスをする。額のところの落とすような優しいキス。

 

(もうそろそろカナリィにも言わないとね…今日は、しないけど)

 

もちろん、催眠の仕方は教えられない。本当ならその状態で見せることも危険なシロモノだ。カナリィに渡したくないのもある。

 

…だから、これをもとに交渉させてもらうしかない。

 

(『カナリィのついででいいからあたしも恋人にして…』…うん、こんなセリフを言うのも嫌だね)

 

あたしが恋人になれないのも、カナリィと同じような人に惚れたことを認めるのも。

 

それがあたしにとって一番いい選択肢なのが尚更だ。

 

 

「キジャはこの状態ならなんでも言うことを聞いてくれるしねぇ…ふふ、あとでもっかいかけ直さなきゃ」

 

優しく耳元で囁く。

 

あたしとのポケモンバトルで、わざと負けるように。

 

ポケモンを一体しか持ち歩こうとしないように。

 

カナリィとどんどん近づいてくるように。

 

…あたしが、キジャの姉でいられるように。

 




ムクのメガシンカのときに姉ビームを思い出した(重症)

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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