はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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2.幼馴染だからこそ。

ボク─カナリィの幼馴染であるキジャは変な人だ。

 

やけにボクのことを肯定してくるし、ずっと一緒にペタペタついてくる弟分だと思っていた。

 

『ボクはでんきジムトレーナーになるんだ!それでね、たっくさんバトルしたい!』

 

いま思うとこんな元気ハツラツだったボクは恥ずかしいことこの上ない。彼くらいしか覚えていないようなこの幼い頃だからいいとは思うのだけれど。

 

『じゃあ俺はカナリィの副ジムトレーナーになる!それでね、カナリィと恋人になりたいんだ!』

 

そんなことを話しながら帰っていたけれど、現実はやはり厳しかった。どうしてもタイプに好かれないこと、というのはある。

 

キジャの場合は特にそれがよくわかった。野生のポケモンに避けられるのだ。

 

『あれー?いないー?』

 

最初のほうはボクも勘違いかな、とも思った。だけどやっぱりオヤブンなんかも必ず避けてしまっているのだ。タイプ相性というのはともかく残酷だった。

 

『カナリィ、俺は負けないから!この程度のハンデなんてないもんだからさ!』

 

『…そう、だね』

 

そう言い切った彼よりも少し大人だったボクはどうしても悲しかった。お気に入りのゲームだって遊ぶ気がなくなったし、彼と一緒にいることも少なくなった。

 

 

 

 

 

…そうやってキジャのことを避け続けていた10年前のある日。暇だからとポケモンのエリアに飛び込んで、そして襲われたんだ。

 

『ふぇ?』

 

親もいない、頼りになるポケモンもいない。当然だ、キジャが守ってくれていたのだから。野生のポケモンの凶暴さを知ることがなかったボクからしてみればさぞかし怪物に見えた。

 

ポケモンを怪物と捉えて、恐れていればユキメノコのふぶきで凍えかけた。

 

『ひっ…!』

 

走って草むらに逃げ出しても近くにいる野生ポケモンは容赦ないこうげきをしてくる。肌を裂かれたり殴られたりしても必死に逃げなきゃいけなかった。

 

だから、走り抜けた先にオニゴーリのオヤブンがいることなんて想定外だった。

 

「GAAA!!!」

 

逃げることももうできない。笑いながらここで一人死ぬんだと思った。

 

(ああ、キジャと話したかったな…)

 

まあお父さんやお母さんより先に浮かんできたのは、会えていなかった弟分。いざ考えるともっといろんなことしたかったな、なんて思いつつ目を閉じる。

 

噛み砕かれるはずの体。すって消えてキジャが悲しむだろうと思っていたそれは、確かにその数秒後も生き残っていて。

 

変わりに硬いキンとした音が辺りに響く。恐る恐る目を開くと、オニゴーリが目を潰されたかのように体を振っていた。

 

『カナリィに手を出すんじゃねぇ、このアホ!』

 

目の前にいないはずの彼がいて、言葉が上手く出せなくて。

笑えない状況だけど二人で死ねるならそれでもいいと思えてしまった。

 

『逃げれるよな…よし逃げるぞカナリィ』

 

尻もちをついた手をひっぱられる。ちょっと成長したわけでもない、まだ小さい柔らかい手。

 

それに連れられるようにしてエリアを脱出するけど、ボクは詳しく覚えていることは殆どない。なぜかといえば、彼のことをこのときからずっと意識していたんだ。

 

(助けて、くれたんだ。あんな酷いことした、ボクのこと)

 

正直、ボクはこのときから彼のことを一人の異性として見ていた。

 

だけど彼はちっともそういう素振りを見せてくれなかった。

 

それにかこつけてお風呂に一緒に入ったりとか添い寝したり…うん、今にして思っても大胆に動いていたと思う。

 

まあでも彼の魅力にまひしたのはボクだししょうがないと思っていたけど、どうやら少し話が違うみたい。

 

二十歳になってお酒を飲んだとき、キジャはポロッと本音をこぼしたのだ。

 

「速く上がんねぇとな…あいつと結婚できねぇ…」

 

かみなりの衝撃を受けた。

 

(ちょっと待って。

 

 

 

 

 

 

誰かとの結婚なんて考えてたの?)

 

詳しく話を聞かないことには始まらないけど、ボクはしっとのほのおに渦巻いていた。

 

自分以外の誰かにキジャを渡すつもりはない。というより、そうなればどこかのストリーマーのようにボクのことであると徹底的に世間に知らしめるしかないだろう。

 

今はもう彼から結婚しようとしてるのが誰なのかを聞かなければ何も始まらない。

 

「…ふぅん。そんな上がることに何の関係があるのさ」

 

「いやさ、ジムリーダーに告白するために副ジムリーダーなんねぇといけないからさ。はがねタイプ一辺倒で上がるのもどうかと思って」

 

「だったらここからそのタイプだけでやったら?」

 

ポケモンが出てこないキジャなら探すだけでも時間がかかるだろうし、何より彼のスタイルははがねタイプ以外に向いていない。

 

「じゃあそうするか…でんきタイプってどこだっけな…」

 

その後は酒を飲んでたから覚えてない。

 

 

 

 

翌日にボクは自分でもいけないことだとわかっている行為を─つまり、特定の個人に対する肩入れをすることにした。

 

『……そ。キジャだけBランクから上に上がるまでもらえるポイントをリセットしてから従来の1/1000にしておいて。これはでんきタイプの副ジムリーダーに対しての試練だから』

 

彼はこれ以上成長することはない。したところでボクのところから逃げることはない。

 

スマホにある盗聴とGPS機能は問題なく起動していることを確認し、寝転びながら彼の戦闘を見る。

 

「…つきあって、くれるかな」

 

ここまでしてヘタれているのはわかっているけど、ボクは自分から告白する勇気はなかった。

 

幼馴染だから許されている距離だ。ジムリーダーに告白すると言っていた…ボクがフラレることをわかってまで強行する勇気はなかった。

 

だからボクは彼が一区切りついてから懺悔するつもりだ。どこまでも醜いこの心も全てくるめて好きと言ってくれればいい。

 

…お願いだから、見捨てないで。

 

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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