はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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本日も2話投稿ナリィ…あと若干きついかもなので注意です


19.また夢から覚める

 

─よく、人に言えないことがある。

 

俺という人間にはどうしょうもない欠陥ができた。カナリィを助けたときの後遺症…なおさら、彼女には言えないことだ。

 

そんなことを言ってしまえば、彼女は俺と対等ではなくなってしまうから。そのことだけで彼女に重荷を負わせてしまうのだから。

 

幸いにもヒトツキがパートナーだから誤魔化した。命を吸われたところでなんてことはなかった。

 

(…まぁ、甘えすぎてもいけないんだろうけどな)

 

そんなことをつい思ってしまう。

実際に嘘ではない。ヒトツキたちは事情を知ったうえで俺のポケモンでいてくれているのだ。それに答えないで何がトレーナーと言えようか。どうやって自分の欠点だけを見過ごしていられようか。

 

だから、もし夢を見ているとするなら。

カナリィにバレる程度の夢だろう。

 

「…ははっ、嘘だよな?」

 

じゃあ今見ているものはどうだ。

 

戦争の夢。ミアレシティでの、カロス地方でまことしやかに囁かれている黒い歴史の一つ。

 

知ったこともない誰かの死体と、味方のいない戦場が前に繋がっている。

 

(死にたくねぇ、な)

 

どうするべきなのかはわからないが、ヒトツキを探す。あいつでなければ俺はあの動きができない。

 

ちょうど死にかけのヒトツキを見つけ、利き手の腕に布部分を巻き付ける。これは普段使っているときにそうしなければならないと理解していた。

 

(…まあ、これくらいなら想定内だ)

 

大きく血を吸って動けるようになったヒトツキはもっと寄越せと言わんばかりに体を締め付ける。

 

「…命欲しいんなら働け。目の前、切り開くぞ」

 

こちらへと向かってくるポケモンとトレーナー。軽装な人間はいないし、ポケモンにいろんなものを持たせている。

 

(ま、関係ないか)

 

ミアレシティでやっているときのようなどこか命の安全が保証されたバトルロワイヤル()()()じゃない。

 

先鋒のセグレイブの首へ跳躍して飛ばし、一瞬で頸動脈を裂く。よく訓練しているポケモンだとしても死を目の前にして冷静ではいられないはず。

 

肉を切り裂く気持ち悪い歓喜をヒトツキから受け取りつつ、目の前に迫りくる大群をすり抜ける。

 

「…辻斬(ツジギリ)

 

普段のムラマサのときのような刃の鋭さを持っていなくとも充分。意識外からの攻撃が恐ろしいカエンジシなどを殺していく。

 

(夢の中だからってこんなもん見せなくてもいいだろ…クソが)

 

足に力を込めてホルードの首を踏んづけて折る。驚いた声がした方向にいるトレーナーをみねうちにし、ポケモンの進行方向へ転がしておけば踏み潰される肉の音が聞こえる。

 

(この時代はポケモンとの信頼関係なんてないんだな)

 

ブラッキーやロズレイド、ルカリオなんかはいないのが救いか。思う存分に刃を振るう。

 

「いたぞ!殺せ!」

 

上空からオンバーンの群れがばくおんぱを放ってきたがぶった斬りながら肉薄する。なぜできるのかなんて考えはしない。

 

(俺はただ、生き残りたいんだよ…!)

 

あからさまに異質過ぎる夢は起きたときに異常をきたすとか。そんな下らない知識が頭の中に入っている。

 

手綱を適当に握り、残しておいたオンバーンを使って駆け抜ける。

 

「…悪い、まだ耐えてくれ」

 

辛そうに泣いている背をさすり、邪魔な装飾やアブミを切り落として体を軽くしてやる。近くにひこうポケモンがいないのが救いだ。

 

「いいぞ、お前はもう自由だ…ありがとよ」

 

怪我をしないようにそっとだけ蹴り、俺は敵陣を目掛けて突撃する。近くにいるドラゴンタイプなんかからのはどうやらなんやらも致命傷だけを避けて進めばいい。

 

この悪夢の原因がどこなのかは知らないし、生き残るためにはオンバーンに乗っていればよかったのもわかっている。

 

(だが、どうしてもここに来なければならない─そう、思ってしまったんだよな)

 

もう握れないほど重くなってしまったヒトツキを引きずり、幕の中へと入る。

 

悪夢の終わりだと、信じて。

 

体に走る痛みを、ないものだとして。

 

 

 


 

催促される声が聞こえるからとうっすらと目を開けると知らない天井…と、シャンデラみたいな帽子と圧倒的な胸。

 

「速くおきなよ、キジャ」

 

「…あ、ムク姉か」

 

ムクさんに起こされたけどなぜか口からでてきたのはムク姉だった。姉でもない人をそんな言葉で呼ぶのはダメではないか。

 

そう思った俺は咄嗟にムクさんに謝ることにした。

 

「ごめん、なんか変に呼んじゃって。ムクさんも「ムク姉」ムクさ「ムク姉」…ムク姉…」

 

「それでよし、と」

 

なんでそんなにムク姉と呼ばせたがるのかはわからないけれど、喜んでいるならいいんだろうか。

 

よくわからないけれど、彼女は満足そうにしている。

 

「お姉ちゃんに甘えたいのはわかるから離れてもらえる?」

 

にやにやとしているムク姉の言葉をよく考えてみる。

 

(頭が柔らかい…ってこととこの姿勢だし膝枕されてる?)

 

「すまん、すぐ離れる」

 

「だーめ。寝汗たっぷりかいてたんだから少し休みなさい…カナリィ、呼んであげるよ?」

 

言われたあとに体を動かそうとすると、普段よりも動かしにくい。まるで全身から血が抜けたあとのような。

 

(…こりゃ姉ぶっているムク姉に従ったほうがいいだろうな)

 

カナリィが来るまで動けるほどの力もない。

 

ムク姉にされるがままにされている体を他人事のように眺めながら俺はもう一度眠りについた。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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