はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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カナリィ頑張れ(ひとごと)


20.推しの看病は万物に効く

 

『急ぎで来て。シャンデラに露払いさせる』

 

「…ムク、こんなところに呼び出して何の用なのかなぁ」

 

ボクはキジャに勝手に横恋慕しているセイカとかいう恋敵をストレートで倒したあと、ムクに呼び出された。

 

地下水道の中はシャンデラが案内してくれていたから安全だったが、やはりこんなところではどうにもきな臭い。

 

(なにかしてくるってことはないだろうけど、やっぱり警戒はしておくべきかな?)

 

「カナリィ…こっち」

 

どうやら特に問題はないみたいで、ボクのことを見ながら手招きしてくる。

 

 

 

 

 

…キジャに膝枕をしていなければ、だけど。

 

「ナニシテルノ?」

 

自分でもきづかないくらいに低い声がでてしまった。キジャに膝枕は後でするししてもらえばいいけど、それはそれてしてやっぱりボク以外の女といるのは嫌なのだ。

 

「キジャが血が抜けたみたいに崩れ落ちてたからあたしが見てた。ここらへんは綺麗だけど病人の頭を直起きするのほきつくない?」

 

「…なるほど?」

 

言っていることに間違いは、ない。というより反論する隙なんてものはない。

 

(とりあえずキジャが貧血なんて珍しいこともあるんだなぁ…)

 

鵜呑みにするかどうかはキジャの言葉で決めよう。そう思ってボクは起きてるキジャにしゃがまないで近づく。

 

「キジャ、大丈夫?ボクの血でも吸う?」

 

「そんなことするわけ無いだろ…つーかこんなところに来るんじゃねえ」

 

こちらのことを心配してくれるのは嬉しいけど、ボクよりも自分の体調を大切にしてほしい。

 

「ふふん、速く起き上がれるようになるおまじない〜♪」

 

困らせてやろうと鼻歌交じりに彼の頭をボクの服の下になるように移動する。ちょっと恥ずかしいけれど、これが一番最適解だ。

 

「…おい待てやめろ」

 

「い〜や〜で〜す〜♡文句あるなら速く起きたら?」

 

彼のようなてんねんな人にはこうやって異性を意識させるような行動をするのがいい…って、おじいちゃんから聞いた。

 

「カナリィ…♡」

 

あ、ついでにムクちゃんも倒れた。何してるんだろうこの子。

 

とはいえ最も重要なのはキジャの反応である。貧血みたいな症状とかなら鼻血とか出したときの反応が違うらしい。

 

(それとは別に実益を兼ねてるけどね…)

 

「…もういい、立てるから離れろ」

 

「ふふ、本当かな?」

 

彼の顔がどんどん真っ赤になってオーバーヒートしていっている。ボクの行動に振り回されているのがわかってちょっとだけ胸の奥がぽかぽかする。

 

「手ぇ貸してくれ、カナリィ」

 

手を伸ばしてくるのも愛おしいけど、ここで手をかさないなんてそんな選択肢はない。

 

「はいはい…っと!」

 

小気味よい返事と共に思いっきり体を引っ張る。想像よりも軽いキジャはボクの体によりかかる。

 

「すまんね、ちょっとえげつないダイエットした気分なんだよ」

 

「そんなことしなくたってキジャはキジャのまんまでいいの。ボクがキミのことを嫌いになることなんてないんだから安心して。…ね?」

 

紛れもない本心でそのままぎゅっと抱きしめる。強くしたところでキジャは手も足もだらんとしたまま。

 

「…ま、そうするよ」

 

顔をぷいっと背けてボクの鎖骨に(うず)める。かわいすぎるけどムクもいるしここで襲ったところで弱みにつけ込む形になってしまうことになっちゃうし我慢する。

 

「…じゃあ帰ろっか。ムクちゃん、悪いけど道案内お願いしてもいい?」

 

「ん、任せて」

 

ボクたちはムクちゃんのシャンデラについていってこの地下から出た。

 

…本当はボクの家に運びたかったけど、我慢してキジャの家に運んだよ。

 

 

 

 

翌朝。珍しく雨の日にキジャからラインが届いた。

 

『昨日の件で風邪ひいたから動けねぇ』

 

『行くから動かないで』

 

そんなラインの連絡があってすぐに家へと向かった。合い鍵は勝手に作ってあるから問題はない。

 

「大丈夫、キジャ?」

 

「…おうおう、そんなに心配するもんじゃねぇよ。風呂入ってぶっ倒れたことに気づかなかっただけのドアホってだけだ」

 

彼は優しく笑っていたが、顔つきは完全に悪い。青白くなって血の抜けている顔はどう見てもおかしい。

 

「ボクくらい頼れ」

 

「カナリィに頼るのは申し訳ないやらなんやらでキツイんだよなぁ…」

 

この後に及んで言い訳をしようとするキジャをベッドへと押し倒す。

 

「…うるさい。このままボクが写真を撮ってあげられて困るなら大人しく看病受けて」

 

キジャはボクのことを大切なお姫さまみたいな扱いをするのと同時に配信者としてのボクも気にしている。

 

(配信なんか見てくれないのに、ね)

 

動画を見ているかどうかはロトムフォンの履歴に残る。見てないことはわかってても、どちらも大切にしてくれているのは変わらないはず。

 

「…わーったよ。好きにしていいけど変なことはするなよ」

 

彼は少しだけ悩んだけど、ボクのことを最終的には認めてくれたみたいだ。すこしホッとしながら彼のために世話を焼くことにした。

 

「…あれ、看病って何すればいいの?」

 

「それをなんでカナリィが知らねぇんだ…?困ったらそこのシャワーズにでも聞いてくれ。他のポケモンも放してっからそいつらに助けてもらえ」

 

「キュイ!」

 

独特な鳴き声のシャワーズがキジャのベッドから出てきた。どうやらボクのことを手助けするためにわざわざ用意してくれたらしい。

 

(なんだ、キジャもやってもらいたかったんじゃないか)

 

少しだけからかおうかな、とも考えて違和感に気づく。

 

どこか、物が少ないのだ。

 

(…体調がよくなったら聞いてみよう)

 

彼はきっと答えてくれるだろうから。

 

そう思っているけれど、雨の音が少しだけ怖かった。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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