はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
「…よし、始めようか」
彼女のホテル部屋に入り、カーテンを閉めて道具を取り出す。
(依頼どおりに作らなきゃな)
当然のことだが、腕輪を作る際に使用者と対面して作る必要はない。作り方が少し特殊だし─何より、人に見せてはいけないものだからだ。
見せるのはデウロが知っている人で、あくまで信用できる友人だからだ。
「…ふぅ…」
大量に持ってきたメガカケラを彼女のキーストーンとメガストーンに同調させる。内側から輝いているから成功。
同時にきらめき出した光を抑え込む処置も忘れない。道端でやらなかったのはこの光が眩しすぎるからだ。光を放出できる環境にあると、この紫色の光は容赦なく暴れまわる。
(過去にはこれで怪我もしたんだっけな…?)
さて、まぁいつのことだったか覚えてはないけれど、今は制御できるし人を傷つけることもしないと自信をもって断言できる。
そしてエンペルトが作る鋼を取り出す。みずタイプのスターミーならこちらのほうが馴染みやすい。
メガエネルギーで器が壊れないように万全を期して一気に注ぐ。ここでしっかりと八割いれないといいものは作れない。
役目を終わったメガカケラはシュンと小さく音を立てながら鋼の中へと入っていった。
(…そんであとは貼り付けか)
貼り付けとはいっているけど、実際はコピペに近い。シンクロさせるのに相当危険な橋ではあるらしいが。
ともあれ残りの2割はメガストーンとキーストーンの情報を埋め込み、余ったのなら成形しつつ器本体を減らしていけばいい。
今回は安全にできたので続行。メガストーンやキーストーンから彼女に相応しい、かつ希望に沿ったダンスの邪魔にならないような腕輪を仕上げていく。
「…完成だ」
出来上がったのはダイブボールの柄を薄くしてそのまま腕輪にしたような形。本来スイッチのあるところに水紫に変色したキーストーンが入っており、本当にシンプルなデザインになった。
「ありがとうね、キジャ」
「…どういたしまして」
デウロからの感謝は受け取ったけれど、それはそれとしてもらった依頼金よりも少ない仕事になってしまった。商売でそんな騙すような真似はしたくない。
「つけた感じはどう?」
「うん、ぴったり。凄い吸い付く感じだけど…これ外せるよね?」
「軽く横から2回押せば外せる。それと金はいらないからちょっと待ってろ」
…まあ、久しぶりの友人と会えたことも込みだからちょっと多くサービスしてもいいだろう。
「なにするつもり…?」
「カケラで細工するってこくらい…見てもらえりゃわかる」
余ったメガカケラを収縮して両手に乗る程度にし、軽く感覚でスターミーのことを考える。若干真ん中の宝石部分だけ俺の血が混じってしまったけれど誤差だ誤差。
(意識して作る造形はちょいと苦手なんだけどな…っと)
まあなんとなくでスターミーの水晶体が出来上がった。
「…え、いいの?」
「いいよ。つーか依頼分に見合うだけのメガカケラなんだからこれくらいしないとダメだわ」
プレゼントにしては不格好なものだけれど、急に作ったにしては輝いていていいものではなかろうか。
「…ならお礼にダンスでも見る?中々最近見てないでしょ?」
「まあ、仕事終わったしいいぞ…っと、ちょいと待ってくれ」
せっかくならロトムフォンで録画でもしようかと思ったが、その前に届いていた通知に目がいく。
『カラスバ:やってほしいことがあるんや』
(…この時間に?)
既に今日に仕事が入ってることは理解しているのにも関わらず送ってくるなんて。
急いでロックを開き中の内容を確認する。
『今日中に事務所に来いや。面倒なことが起きた』
(…よかった、後に回してもよさそう)
面倒ということは大方金に関係する話だろう。深刻なものならメールで言うなりザビ組の誰かを迎えに寄越すはずだ。
「ん、準備できた?」
「まぁな。外でやるんだろ、はよ行こーぜ」
何を踊るのかはしらないけれど、久しぶりに見る彼女の踊りは気になる。
「用意できたからやるよう」
「頑張って」
程なく広いバトルコートで彼女はロトムフォンをスワイプして音を流し始める。
『恋の始まりも〜♪』
昔にやっていた時よりもメリハリのある動き出し。重なるようにスターミーが踊るのも上手になった。
『夢の続きも』
こちらに向けて手を振るファンサと共にバク転。そのままこちらへと近づいて手を握って踊りに誘ってくる。
『あなたとともに…♪』
ロトムフォンを自動操縦にして踊り始める。苦手だけれどこの程度ならちゃんと合わせてやらなければなるまい。
『getdown♪』
『…EternalLove…♪』
結果から言えば、途中からの動きに一切ついていくことができなかった。余りにも高速化した動きは到底捉えきれない。
(途中なんか体が浮いてたし…あんなもん体がついていかん)
ぜーはーと息を切らした俺とは対照的に、デウロは汗をかいてツヤツヤとしている。
「凄いやつれてる。そんなきつかったの?」
「まぁ…な…」
労わるようにしてくれているが、この後はザビ組のところに寄らなきゃいけないし、速く去らなきゃな。
「少しくらい息を落ち着かせてからいきなよ。麦茶、取ってくるね」
「おい待て…!」
止まれといった声も聞こえていないみたいに走り去られ、静かなバトルコートに一人で残される。
…もう少しだけ、いないと行けなさそうだな。
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重