はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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35.ケツイ は みなぎった

「…あれ、キジャがいないんだ」

 

ボクはキジャの家で護衛のことを話すために一人で行っていたが留守だった。

 

すっかり手持ち無沙汰になったボクは、出迎えてくれた─どうやら新しく捕まえたらしいメガクチートに挨拶しながらお邪魔させてもらった。

 

『にぃにのおよめさん、こんにちは!』

 

「うん、こんにちは」

 

お嫁さんという言葉に頰がニヤけつつしっかりとクチートの方を見る。常にメガ状態であるしどこか人間くさい。

 

(というかキジャのポケモンからもお嫁さんって呼ばれてるのは…恥ずかしいなぁ…)

 

しつけがちゃんとしているのか頭や髪をぶつけることなくするりとドアを開く。ちょっと前まで野生だというのに身のこなしはまるで貴族みたいだ。

 

「というかキジャってもう少し物でも増やさないのかなぁ…?」

 

いない間に物色しても、殆どボクからのプレゼントや必要最低限な生活必需品とボクのグッズのみ。

 

誰かにゲストルームと言われたら信じるような構成をしている。ここまで整理されているのもちょっと変だ。

 

『こっち!こっち!』

 

「はいはい、待ってよ」

 

クチートに促されて更に部屋の中へと入る。どこかサビた匂いが漂う鋼だらけのそこは、本当なら入ってはいけないと強く言われていたところだった。

 

(ここで手入れとかしてるんだ…)

 

鋼についてもどのポケモンから採ったのかを明確に書いてるし、彼の仕事にあるアクセサリーについても全てレポートでまとめてある。

 

「…ちゃんとボクのも置いてあるんだね」

 

それだけは他よりも一段と丁寧にファイルで保管され、子供が作ったようなくちたけんまで添えられている。

 

(キジャがこんなのを持ってなかった気がするんだけど…)

 

幼い頃の彼と一緒にいたときはヒトツキだったはず。気になってみて手に取ると、どこかで見たことがあるような気がする。

 

…そうだ、リニューアルした博物館のイベントで見たはず。

 

ちらりとクチートを見る。こちらのことをじいっと見つめてくる瞳は、選択を急かしているように見えた。

 

─どうするべきなのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ボクには、選択の余地なんてなかった。というより、選ばせたのは醜い嫉妬だった。

 

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そんな理由でボクはコレを壊したかったし、同時にキジャから嫌われないようにするために他の手段を取る必要があった。

 

だから、もしかしたら博物館にレプリカが売っていたのかもしれないと思った。

 

「…ここかぁ。ボクからしてみたら歴史なんて興味のない分野なんだけれどね」

 

キジャの曲を聴いていたイヤホンを外し、オープニングのときにもらっていた入場券で中へと入る。こんなところで役立つとは思っていなかった。

 

(…相変わらず、なんでこんなのが残っているのか不思議なくらい古いんだよね)

 

テーマは『ガラル地方とカロス地方の戦争の歴史』。当時の王が残した手記や、どんなポケモンが使われたのかを見せられる絵なんかも並んでいる。

 

(…でも、カロス地方のほうにはないんだろうな)

 

カロス地方では極少数の人を除いて武器を使わなかったらしい。トレーナーとしてポケモンを扱えるかどうかの素質が重視されていた。

 

「…お探しですか?」

 

後ろから急接近してくる声。ボクは咄嗟のことに反応ができない─なんてことはなく、館長さんのことを正面から見据える。

 

「あぁ、うん。えっと…クロフク、さん?」

 

「ええ。名前を覚えていただいていて光栄ですね」

 

珍しいヒトツキのエンブレムを胸につけたクロフクさんは、こちらが何かを目的にして彷徨っていることがわかっていたみたいだ。

 

「そもそもこちらの博物館に来る人なんてでんせつポケモンだと相場が決まっていましてね。キジャ様にもお越しいただきました」

 

「…え、なんでキジャ?」

 

もちろんのことだけれど。

ボクとキジャには繋がりがあることはわからないように頑張っている。ムクちゃんみたいな近い友人ならともかく、クロフクさんが知っているなんておかしい。

 

(この人、なんか変だ…!?)

 

思わず身構えてしまうが、彼女は長い髪を慌てて振って訂正しようとしている。

 

「いえ…あの、ここのポケモンがはがねタイプなので基本キジャさんがメインなんです…」

 

「そうなんだね…でも、ボクが探しているポケモンっぽいから教えてほしいな」

 

ここで動揺したらキジャとの関係がバレかねない。ポケモンの話に持っていくのが無難だろう。

 

「ええとですね…目玉のポケモンの伝承がこちらになります」

 

渡されたのは1枚のコピー。どこかおかしな言葉ばかりで構成されているが、流し読みする中でも一際目についたものがあった。

 

『くちたけんを持つものは死ぬ』

 

(…ウソ、だ)

 

眺めているのをどう判断したのかは知らないが、クロフクさんはポンと手を合わせる。

 

「一応、伝承のもとになった銅像は奥に展示していますので…」

 

彼女の言う通りの順路で行けるようなものではない。

 

…彼に、キジャに、伝えないと。

 

ロトムフォンを使う暇もなく、私はもう一度彼の家へと走り出した。

 




アイテムゲット!
『遠い日のシ』
追加サイドミッションである「失われた光」を進める際に入手できる資料。AZの部屋の掃除中に見つかる。

内容
『あなたのためにと戦った
 いずれも遠き民のために
 
 異国の刀は脆くへし折れ
 比翼連理の二つは離れて
 美しく光る剣は命を奪い
 朽ちた剣を持つ者は死ぬ

 やがて空へと舞い落ちる
 恐れるなかれ災厄の日を』

どうやら大切にされていたようだが、どのような意味なのかはわからない。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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