はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
…まあそうならないようがんばりますよ!ええ!
「…嘘だろ、おい」
やっとの思いで─それこそ、文字通りの死体になってまでたどり着いたAランクへの切符。言われた言葉は、『あなたはなれない』との一言だけ。
(ったく、カラスバに相談するか)
ロトムフォンを開こうとして、隣で爆発。というよりは、何かしらが街灯に当たってショートした音だ。
「おいおい、まだ昼だろうが…!」
咄嗟に周囲を見渡しても怪しい人影は見当たらない。ポケモンの仕業である。それにしたって統率の取れすぎた動きだし誰かの介入はあるに違いないのだが。
素手ではやれないので大人しくバトルロワイヤル専用のでんきタイプのポケモンを出す。…とはいっても、全くでんきタイプではないのだが。
「こい、ルカリオ」
「オラァ!」
こいつは普通のルカリオとは違うルカリオだが、でんきタイプの技をタイプ一致で放つためランク戦ではよく使う。それにシローと殴り合って勝てる唯一のポケモンだ。
(ま、後ろで守ってくれる味方がいるだけでありがたいんだけどな)
動き回る黒い影に呼応するように爪痕が石畳へと残る。いつの間にか周囲も白く染まっていた。
(…いや、違う。人もいない…!?)
妙な異空間だがミアレシティに近い。…この危険なポケモンをしばいてから探索しようか。
「オラァ…、?」
「ルカリオ、上から来るぞ!」
ついにはっきりと捉えたその全容。それはまるでポケモンとは遠く離れていた姿だった。
月白色に輝く体毛と透き通るような美しさの刃翼。こちらを見下ろす遥かなる上位存在の赤い目。よりはっきりと姿を見据えれば、それが明らかに異なる進化をしていったことを実感させられる。
飛んできた細長い物体を蹴り落とし、跳躍してその化け物へと近づく。
「なんなんだよ…って、こっちの言葉は通じないんだっけ?」
肉を斬らせて骨を断つような作戦とまではいかないが、メガシンカしているわけではないのなら捕獲が通る。とはいってもガラル地方のダイマックスのように削りきってからじゃないときつそうなのが難点だが。
「どれ、いっちょお手並み拝見といきますか…!」
ルカリオに合図してかみなりパンチを出させて牽制。複合タイプじゃないなんてことはなさそうだし、はがねタイプと何かの複合だろう。
(等倍なら上々…っ!)
しかし身の丈にあわない軽さですらりと避け、お返しに俺へと突進してくる。まるで普段のバックアタックをされてるみたいだな。
「当然避けれるんだよなぁ…?」
煽ることなどせず、真っ向からスレスレで飛び越える。鋭く尖った牙をへし折るなんてこともせず、相手の背中へと着地して殴打する。
「インファイトじゃい!」
病気の体だからといって力や技のキレが衰えるわけでもない。丁寧に、かつ強く相手の胴体を殴る。
…当然、このチャンスをルカリオが見逃すわけがない。
「オラァ!」
バレットパンチからのかみなりパンチ連打。さながら雷が跳ね回る美しい光景のようにラッシュが続く。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
最後の一発のクリーンヒットは相手の頭がこんらんするほどの衝撃だったようで、もう既に瀕死に見える。
(つっても余力がありそうだからメガシンカさせるか)
「おいルカリオ!最後に決めるぞ」
「オラァ!」
互いの拳をぶつけ合わせてメガシンカ。金色に包まれたその体から本来のルカリオに戻る光景だが、こちらのほうがより強くなっているのだから不思議だ。
(まあ強え分には構わねぇんだけどよ…)
捕まえられるようにマスターボールを直当てする。一つしかないとかこれだけで家が買えるとかは言ってられない。そんなことよりまず命だ。
(未知のポケモン、そんなもんに合ったことはねぇからなぁ…)
ボール特有の力に飲まれ、すっと仲間になった。大きさがでかすぎるし、どこか遠いところにいれるか飼い殺しにするかどっちかにしないといけない。
(…ま。戻ってから相談しようか)
そもそもここが夢の空間の可能性もある。とりあえずは脱出することだけ考えよう。
「…なー。そこのひとー」
腰の方を引っ張られてみると、フードを被った小さな女の子がいた。幼女だからといって油断してはいけないのだけど、どこかで見た気がして安心してしまう。
「…俺のことか?どうした?」
「かえりたいならそこからー。まだじゅくしてないー」
指をピッと指したほうには次元の裂け目とも言うべき黒い影が浮かんでいた。
(熟してない、か…いやまぁ帰れるのならいいことなんだけどさ)
そもそも熟す前に死にそうとか目の前の幼女に吐き出す内容でもない。
「名前だけ聞かせてくれ『ルト』…そうかい。俺はキジャ。ま、また会えたらな」
「うん、バイバイ」
彼女に手を振りながらルカリオと一緒に帰る。
─気がついた時には自宅で寝ていた。どうやら夢だったのかもしれない。
「ったく、どっからが夢なんだよ…」
そんなことを気にして手に触っていたマスターボールを開こうとする。が、ポケモンが入っているときと同じように一切開くことはなかった。
「嘘だろ…?」
奇妙な冒険。治らない病気。
…ったく、一体どうなってんだこの街は。
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重