はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
ボクのことだけを考えて、ボクと同じ形で─愛情をくれたのは、キジャだけだった。
どこまで彼が傷ついているのかは知れないし、そもそも過去についてもそこまで詳しくない。ボクから聞こうと思っても不自然な形になるから言い出せない。
(どう思われているんだろうか)
大切にされているのは、わかるけど。それだけで君を繋げるかはわからなかった。
だからなのか、彼の家を調べることにした。
「カラスバさん、キジャのことで知りたいことがあるんだけど」
最も…それこそ、ボクよりも一緒にいるだろうカラスバさんに聞くしかない。
「はぁ?あいつの家なんぞもともと知っとるやろがい。なんならお前もこの前泊まってたやろ」
なんてことないように答えてきたけれど、ボクは少しだけ視線が泳いだのか理解できた。
(やっぱ隠したいことあるよね…そりゃまあ、そっか)
彼の実家を見たことがない。ずっと一緒にいるけれど彼の両親を一度も見ていないのは変だ。死んでいるのかもしれないけれど、そうでなくとも隠す理由が見当たらない。
「…ったく、安全はそもそも確保しといとる。言ってもええが覚悟だけしとけ」
一瞬の重巡の後、彼はボクのスマホに地図情報を送ってくれた。しかしそこは到底家とは思えない場所だった。
「行けばわかる。ったく、一体何が起きてるっちゅうねん…」
マチエールさんにも任せられないと言っていた「メガカケラから出るエネルギー」についての資料が机の上で散らばっている。
(わざわざ今調べること…?ボクとしてはそれよりもバトルに関係することなのかと思っていたんだけど…)
カラスバさんが少し前にバトルで負けて強くなろうとしていたのは有名な話だ。
「…何をそんなチラチラ見とるんや。行くと決めたんならはよ行けっちゅうの」
こちらを追い払うようにしているのはやはり変だけど、それよりもキジャについてもっと知りたい。
ボクは弾かれるようにして言われた地点に向かった。
「…嘘、でしょ」
『残念ながら嘘じゃないさ、カナリィ』
目の前にいたのはボクの両親、だった。
(…いや、え、嘘)
彼の自宅にたどり着いたはずなのにボクはいつのまにか子供になって両親がいた頃の場所にいる。
じいちゃんと一緒に歩んできたこの日々を否定されたかのような感覚だ。キジャとの思い出も全部なくなってしまったみたいな感覚だった。
(どう、して)
まるで思考まで子供になってしまったみたいにポロポロと涙が出てきた。心配してくれている両親に申し訳ないと思っているけれど、同時にここにはいてはいけないと直感する。
「どうすれば…?」
『気にしなくていいよ。ここで過ごしていけばいい』
『そうよ。カナリィの好きなご飯も用意したの』
愛していることを伝えてくる両親に対して、どうしても吐き気がする。ボクのことを優しく包みこんでくれているような世界だが、こんなのは望んでいない。
歩みだそうとしてコツンと足元にナニカが当たったような感覚があってふと見てしまう。
(落ち物パズルゲーム…?)
ピコンと起動した音がすると、どこか見覚えのある風景があった。どれだけ頑張ってもカンストすることのないソレは、ボクの名前でカンストされていた。
『…凄いなカナリィは!将来はプロゲーマーだな!』
『今日…は無理だから明日好きなもの買ってあげるね!』
好き勝手言った二人の声に耳を塞ぐ。小さい体の中ではどうしても床も近いし、ぐるぐると視界が回る気配がする。
こんなとき、彼がいてくれたら。そんなあり得ない想像にボクの頭は働いてしまう。
『ちげぇよ。そんなのはお前じゃねえだろ』
「…え?」
『とぼけんじゃねぇよ。さっさと帰るぞカナリィ』
いつも通りのぶっきらぼうで不器用な優しさで、いつも通りじゃない強引さでボクの手を引いてくれた。
『…逃げんじゃねえよ。オレのもんだろうが』
…だからボクはキミに惚れたんだとか、そんな想いを言い放つ暇もない中、自分の家で目が覚めた。
(…今日のこと、配信じゃ言えないな)
まさか夢みたいな世界のおとぎ話だとしてもキジャに関することはまだリークしてはいけない。
強引なキジャのことをちょっと心のなかで思い出す。
…素敵だったなぁ。
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重