はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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43.花の魔術師、あるいはロクデナシ

 

「…まずい!!とりあえずアプリを見てくれ」

 

MZ団の会議中、いきなりガイが話しかけてきた。

 

「アプリってなに?」

 

「マスカットさんから送られたやつだって!ほら、お前らもインストールしてるだろ?」

 

マスカットさんから送られてきたアプリを開いてみると、ミアレシティの大体には赤い点が大量についていた。

 

「どうやら暴走メガシンカについてのようですね」

 

「原因がわかったからこの点がついてるのかな?」

 

「いいや、もっと深刻だ。この点で全て暴走メガシンカがいるぜ」

 

なるほど、確かにそれなら異常事態だ。特に町の中で暴れている以上、ポケモンが出す被害は壊滅的なものになっているだろう。

 

「それなら一人で一つの地区とかのレベルになりますかね?」

 

「セイカちゃんが来てからは皆で強くなってるし大丈夫だよう!」

 

「…ほら、おちつけよ。セイカの意見なんて聞いてねえじゃん」

 

考える。この点の場所ならどんな動きをするべきなのか。どこまでやれば被害を減らせるのか。

 

少しずつこちらへと向かってくる小さな赤い点もあるし、町の屋上で暴れているポケモンもいる。うだうだ言ってられる状況じゃない。

 

「……え?」

 

そうこう考えている内にさらなる被害として赤い点がどんどんと増えていく。考えるのが遅すぎた。

 

(おちつくんだ、私…!今はちゃんと考えるところ!)

 

「暴走メガシンカの原因は?」

 

「エネルギーが暴発していたからだってさ。プリズムタワーが怪しいって」

 

「じゃあ倒しながらそっちに向かって行こう…!?」

 

キィ。ガチャ。キィン。

 

随分と金属の澄んだ音が鳴るのと同時に、傍へとメガクチートが寄っていた。

 

「あざ!」

 

「どうやら何か伝えたそうにしていますね。作戦の立案も一区切りですし、ここらへんで一度解散ということで」

 

そう言い残してピュールはもうすぐに逃げてしまった。

 

…というよりこのクチートの大アゴにビビっているのかもしれない。そもそも暴走している可能性だってあるのだ。

 

「じゃ、俺も上のほうから倒していくからよろしく頼む!」

 

「あ、私は左に行くよう」

 

皆がどんどんいなくなっていく中、クチートが案内し始めたのは意外なところだった。

 

「…おや、クチートか。もしかして彼の親族で…?」

 

コクコク首を振るクチートはAZさんのことを知っているようで、どこか仕草がキジャさんを思わせた。咄嗟の二人の行動についていけるはずもなく、困惑しかない。

 

「あの…なんでこのクチートが…?」

 

「いいや、このクチートはキジャの命令に逆らってでもセイカさんのことを確認しに来たのだろう」

 

「キュルル♪」

 

フラエッテの老婦人のような笑い声を聞きながら用意されていた紅茶を飲む。どこも渋味のない紅茶は少し奥深い味わいだけど、少し寂しかった。

 

「…では、彼の話をしようか。キジャについて知りたいのだろう?」

 

「…今する話ですか?」

 

AZさんも重々わかっているとは思うけど、既に状況は刻一刻を争うのだ。明らかに増えすぎた暴走メガシンカは、とてもではないけど三人では対処しきれないだろう。

 

「いいや。キジャの今後にも関わってくる話だ。…特にこうやってクチートのメガシンカが安定している、という点でもね」

 

…そんな言い方をされては気になってしまうし、何よりもキジャさんの今後というのをなぜAZさんが知っているのかもおかしい。

 

(とりあえず、やめておいたほうがいいのかな…?)

 

「それとメガクチート。別に喋ったところで私は知ってるから驚かないよ」

 

『はぁ。なんでわかっちゃうのよ』

 

呆れたようにやれやれと首を振って口を動かす。その様子はとてもではないがどこからどうみても人間そのものだった。

 

「喋った…?」

 

『別に言葉の意味もわかるし…それに、にぃにの前じやないなら飾る必要もないしね』

 

あからさまに毒が多いクチートは、全てを知った訳知り顔を隠そうともせずにこちらへと話しかける。

 

『…ほら、これでわかりやすいでしょう?今はそこの王様の話を聞くべきなのよ』

 

「これでも伊達に3000年重ねてない…いや、君たちが生き返ったのは私の責任か」

 

どこもかしこもおかしな話だ。キジャさんの手持ちであるクチートが転生しているし、AZさんはそれにとてつもなく関わっている。

 

…誰もいないなら、聞いてもいいかもしれない。

 

「聞かせて、ください」

 

「いいだろう。どこまで語ればいいのかは知らないが、君やその少女が満足するまで語ろうじゃないか」

 

『…もし何か間違いがあったら訂正してあげるわ。なんせあの時代に生きてて今もこうやっているなんて私も驚きだもの』

 

「…まあ、あえて先に前置きをしておこう」

 

何を、と口先で出かかった言葉がまた喉の中へと戻る。気持ち悪い唾の感覚が喉をならして胃の中へと入って溶けていく。

 

「このことをキジャは知らない」

 

「『…は?』」

 

「当然だ。一度だけ会いに行ってみたが─こちらのことに対しての反応が薄すぎた。知っていても精々が夢の中での出来事だろう」

 

「じゃあなんで知ってるんですか…?」

 

「見ていた。話していた。苦しんでいた。彼が望むのなら─もちろん、私にできる範囲なら叶えたかった。知らないのなら教えたほうがいいとさえ思えた」

 

彼はそのまま言葉を溢れ落とす。

 

「だが、キジャに対して言ったところでそれは自己満足に過ぎない。知ってしまえば私のことを罰するだろう」

 

…なにせ自分が望んでいることだからね。

 

目の前にいるAZさんは、大人みたいだけど、子供のように自分の心を溢れ出していて─だからこそ、耳の中に今の話として入ってくる。

 

「ここまで聞いて、引き返すつもりはないだろうから」

 

さながら、罪人が自分の罪を告白するように一呼吸置いて。

 

「王の話をしよう」

 

語り始めた。

 

「彼はいつも─愚かだった」

 

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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