はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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45.ルート・戻らない意識

…ああ、もう何回やったって思い出すのはその顔だ。

 

あなたのことを何だったのかすら、私は覚えていないというのに。

 

「ごめんね」

 

誰かに謝っても自分の体は意志と無関係に動く。メガエネルギーが自らにとって毒だと知りながら、尚も守ると決めた誰かのために剣をとる。

 

(誰も人間がいなくてよかった)

 

たとえどんな見た目だとしても、今の私はとても悪人にしか見えないだろう。キジャから知った知識の中では、殺人鬼と呼ばれる犯罪者だ。

 

人を守れないのならこうやるしかない。

敵味方の区別などもつけることができない。

 

「騎士には不可能だとわかっていても行かなきゃいけないときがある…ね」

 

体の半分がカケラに侵食されれば死ぬところまで一直線だ。キジャが私のことを知っているとは思えないけれども、きっと人を守ろうとしていたはず。

 

(ここで私が出るのもおかしな話だけれどね)

 

力を使い続ければカケラの力は失われ、少なくとも死ぬことはなくなる。まだ彼らのことを見守っていられる。私はそれだけで満足するのだ。

 

だから、死なせない。

自分の体を動かすのとは違った体で剣を振る。また近くにいたメガシンカを殺す。

 

血みどろになった状況では上も下もわからない。ただ目の前には敵があり、あの時と変わらない倒すべき巨悪がいる。

 

(…ならば私がやるしかないのだ)

 

昔にいたポケモンはいない。手元にいるのはキジャの手持ちであるヒトツキとニダンギル─もちろん、メガシンカしているから勝手が随分と違うのだが。

 

居合と呼ばれる形で体の形を固定する。もともとメガカケラが体に作られた以上、これくらいで剣を振るくらいなら構わない。

 

「…恨みはないが、殺させてもらう」

 

守るべきミアレシティのために─それか、今を生きる人類のために。

 

いずれにせよ私の最大の火力でケリを付けるしかあるまい。

 

神絶(シンゼツ)

 

抜刀からの納刀を永遠に繰り返すこの技はデカい化物にしか使えない。あの時もこうやって最初に削り続けた。

 

…今はもう、これをやるだけで死んでしまうだろう。昔に見たときほどの強大さがないのなら、私1人だけでも壊せる。

 

程なくして全てが破壊され、目の前には全てがなぎ倒された跡が無惨に残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─全て、だ。

町の営みも。愛する人も。自分のことを慕ってくれた団体も。ポケモンも。暴走メガシンカも。

 

そこにあったのは、単なる災害だった。全てが壊されきったミアレシティ。

 

(…私はいてはいけない)

 

いや、違う。そもそも私が生き返ったことこそが間違いだったのだ。過去の人間が未来を切り拓こうとなんて無理なのだ。

 

ああ、ああ。

 

嘆くことも喋ることもできなくなってしまう体になっていく中で、キジャという人間へと謝罪を繰り返す。

 

乗っ取ってしまってはいけなかった。体のない亡霊が未練がましく残っていてはいけなかったのだ。

 

この町が切り崩されていく中で、最後の意識を持って首の部分を結晶にして彼の愛していた人の所へと投げる。

 

…もう既に私は取り返しのつかないことをし続けていた。もはやこれすらも悲劇の引き金になるだろう。

 

わかっていても動くことしかできなかった。妹がいれば止めてくれただろう。

 

それだけではなく、全てを取りこぼした私にはお似合いの末路だ。

 

キジャが愛している人と関わればよかったのだろうか。

キジャの姉を名乗る人に甘えればよかったのだろうか。

キジャが友と呼べる人と笑えればよかったのだろうか。

キジャをもっとよい人と断じればよかったのだろうか。

キジャが相談できる人を探せればよかったのだろうか。

 

今となって考えればもっともっと有るのだろう。自分に足りなかったものがあるのだろう。

 

…だが、もうどうしようもない結末だ。

 

私という愚かな騎士が、二度目の生を無駄に無意味に無惨に散らした。

 

言葉にすればこの程度の、人を殺してしまった結末。

 


 

 

ボクは暴走メガシンカに対応するためにじいちゃんと一緒に飛び出した瞬間、建物が横にズレた。

 

「……え?」

 

余りにも現実味のない光景。じいちゃんが向こう十年は問題ないと言っていた建物が丁寧に音を立てて落下し、タワーが壊れているのが見える。

 

…タワーだけじゃない。それよりも、もっと大切なものが失われている気がした。

 

「速くあっちに行かなきゃ…!」

 

「待て、カナリィ…!」

 

じいちゃんに静止された後、こちら側に飛んでくるボール状の何か。硬い感触で思わず取りこぼしそうになってしまうけれど、しっかりと抱きとめる。

 

そうしてやっとソレを直視してしまう。親しい人の死体。優しい眼差しに柔らかい毛先。それらの先にあるのが見知った顔だ。

 

どこまでも苦しそうに顔を歪めて、どこからも生きているとは思えない彼がこちらをダラリと見る。

 

「…ごめん、じいちゃん。一人にさせて…」

 

「…おう。儂は若いもんの無事を確かめてくるわい」

 

涙が止まらない。愛しているとか言えてないのに、突然にボクだけを残して逝ったのだ。

 

…なんなんだよ。

 

悪夢なら、どうか覚めさせてくれよ。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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