はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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49.ルート・吹き散らされた炎

足りないのならは減らせば良い。

 

咎は、お前に押し付けるのだから。

 

罪なんて、濡れ衣でしかないのだから。

 

…愛してるとすら、言えないのだから。

 


 

 

「ほら、起きろキジャ。シローのパンチ喰らいたい?」

 

「嫌です起きるから勘弁して!」

 

ムク姉に起こされたことも寝癖が跳ねているのも気にせず、跳ね起きてシローの攻撃を避ける体制に入る。

 

(あれ、来ない…?)

 

「嘘だよ、こんなのに引っかかるなんて単純だね…」

 

フッと勝ち誇った笑みを向けてくるムク姉に精一杯の抗議をする。せめて弟としてのプライドがあるのだ。

 

「笑わないでよ!当たったら一大事じゃん!」

 

シローの正拳突きは逸らすならまだしも何の準備もしていない状態で当たったら大惨事なのだ。

 

(一応頑張ったとしてもどうしようもないしなぁ…)

 

上に向かって当たったからよかったけど、実際に正面から受けていたら死んじゃうよ。

 

「そんな抗議しなくてもいいよ。今日からジャスティスの会の指導するの再開するけどいけるの?」

 

「ムク姉の弟だし全然余裕。そもそもシローの組手できてるならなんとかなるって」

 

頭がジャスティスな二人だと苦労する、とはムク姉の言葉。

 

(そこまで迷惑かけないようにはしているんだけどなぁ…)

 

とはいえ昔の自分がムク姉の前でどれだけやらかしたのかはわからないので黙っておく。

 

「そんなら速く行くよ。私とシロー以外にタイプの専門がいるだけでだいぶ楽なんだから」

 

「はいはい…」

 

タイプの専門なんて今どき珍しくないのに不思議なことである。

 

ムク姉が作ってくれたお弁当を持ち、2階の窓からムク姉をお姫さま抱っこして飛び出す。ある意味修行になるからいいのだけれど、毎日こんな感じだといつか失敗したとき怖いんだよなぁ。

 

「なんでさ…」

 

「弟は姉に勝てない、常識」

 

ムニッと体の柔らかいものを押し付けられていることを気にしないように走りつつ、道場を目指して走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ、キジャ!今日も指導をよろしくお願いします!」

 

「まあ、うん…苦手な範囲でよければな」

 

自分のタイプというものを持たなかったポケモントレーナーは少数になり、基本はポケモンのタイプで色んなグループでやるんだとか。

 

ムク姉はゴーストタイプ、シローはかくとうタイプ。

 

そして()は、エスパータイプだ。

 

「ええと…エスパータイプのポケモンにはよく『テレパシー』が使えることが上げられるのは前回やりましたよね。今回はそれを二人の方向でできるようにしましょう」

 

最も僕のポケモンは新種のポケモンらしく、エスパータイプかどうかわからない。マスターボールから投げると、ワッフと犬のような声をあげてクルンとその場で横回転する。

 

「ルナ」

 

(なんでだろうねぇ…?)

 

純粋そうにこちらを眺めているポケモン─とてもではないけどここらへんでは見たことのないポケモン。このポケモン、何やらエスパータイプを持っているらしいのだ。

 

(それよりもお腹へった!ミアレガレットほしい!)

 

(しょうがないなぁ)

 

ミアレガレットは硬いやつがお気に入りみたいで、よく噛み砕くのが好きらしい。

 

「…とまぁ、見ているだけではわかりにくいので実践してみましょう。チャーレムだったりラルトスだったりも固有の波長というものがあるので、目線を合わせて会話することを意識してみてください」

 

僕はそのまま組手してますので、と。

 

言葉を出す前にじゃれついてきたルナをサイコキネシスで浮かす。初めは効果がなかったけれど、今では悪タイプ迄なら一撃で倒せるようになった自慢の技だ。

 

(そもそもこれならバトルロワイヤルくらいならできるんじゃないかな?)

 

もちろん勝てるようなものではないのかもしれないけど、やれるところまでやってみたい。

 

「…ダメだよ、キジャ」

 

「なんでさ、ムク姉。そもそも僕のことを制限することはできないでしょ」

 

かんけーないと言わんばかりに後ろからのしかかられる。シャンデラの飾りが当たらないからこそ許してるけど当たったら痛そうだ。

 

そんな場違いなことを考えていると、だんだん眠気が襲ってくる。

 

「キジャは原因不明のねむけが治んない限りダメ。夜に寝ている状態でバトルロワイヤルなんて危険」

 

「でも「でもじゃない」」

 

更に顔を近づけられて耳元で囁かれる。眠気が襲っていてもやけに音だけは響く。

 

「階段で倒れたらどうするの」

 

「ポケモンの技に当たったらどうするの」

 

「そのまま死んじゃったらどうするの」

 

「なにも考えてないであそこにいけるほどキジャの体は強くない」

 

「これだけはシローと同意見」

 

「今だってあたしに捕まってる」

 

「純粋だから誰でもだませる」

 

「道場だってシローとあたしの両方がいなかったら行かせてない」

 

「傷つかせていいのはあたしだけ」

 

「キジャを守っていいのもあたしだけ」

 

ムク姉の声が段々遠くなっていく。そういえばここは道場の中だったよな、なんて余計なことを考えつつ。

 

その場に崩れ落ちるように。

 

悲恋に涙を落とす少女のように座りながら。

 

意識が─なくなった。

 

「今夜もオシオキ、確定ね」

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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