はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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56.ルート・共に生きて共に死ぬ

ホテルフロントマンの朝は速い。夜明けになる前から起き、寝静まっている内に清掃をしておく。

 

デウロの部屋。ピュールの部屋。ガイの部屋。

 

そしてもう一つは、今は誰もいない部屋。

 

(普段通り朝帰りか…)

 

稼ぎ頭の彼女はいつも通りホテルに帰ってくることは殆どないが、入ってはいけないと厳命されているのでやめておいたほうがいいだろう。

 

音を立てないですすっと食堂もフロントも片付け、終わってからは今日の朝食の仕込みを済ませておく。4人程度なのでいくらかマシだ。

 

(…裏を返せば、このホテルは全く儲かっていないってことなんだよな…)

 

よくないことではあるが、住み込みで働かせてもらってる身としてはありがたいと言うべきなのである。幸い給料は出なくても衣食住は保証されているのはいいことなのだが。

 

「そもそも昼夜逆転した生活とか大丈夫なのかね…?」

 

そんなことを言っていると朝日が昇る。

 

…今日は、晴れそうかな。

 

 

 

 

 

 

「おや、今日も速いですねキジャさん。…ファッションセンスさえあればよかったのですけど」

 

「おはようさん、ピュール。どうしてもホテルマンならこっちのほうがわかりやすいと思ってな」

 

当然一番速く起きたのはデザイナーのピュール。ホテルマンの基本的な服装でまとめているのが我慢ならないようで、すぐにファッションを変えることを進めてくる。

 

(そもそも服のセンスなんてわかりっこないんだけどな…)

 

稀に彼の作る服を包装したり届けたりすることはあるが、見ている限りどれもふさわしい服だった。デザイナーとはかくあるべし…ま、ホテルからほとんど出ない俺が言うのもおかしな話なのだけど。

 

「ともあれいつもお疲れさまです。たまには一緒に朝食でも食べませんか?」

 

「ありがたいけれど断らせてもらうよ。デウロに先に誘われてるもんでな」

 

欲を言えば一緒に食べたかったけれど、デウロは二人きりで食べたいと言っていたのでやめておく。一度だけガイに誘われて食べたときに嫌そうに顔を2ミリくらい引きつらせていたし。

 

「…ならやめておきますが、明日は僕と食べましょう」

 

「ん、いいよ。誘ってくれてありがとうね」

 

ずっとご飯に誘ってくれる理由がわからないけどこちらのことを心配してくれるのはわかっているのでありがたく受け取っておく。

 

(にしても、毎日誘ってくれるのはなんだかなぁ…)

 

たまには一人で食べたいかも、なんて。

 

言うことはもう許されないから。

 

 

 

 

 

「おっ、俺の分まで用意してくれてんの!?マジ神だわ、サンキュ」

 

「うるせぇ。さっさと食べねぇと夜飯もこっちで作るからな」

 

次に起きてきたのはガイ。やけに自信過剰な点が目立つけれど、人助けのためにミアレシティを走っているいい人だ。

 

(最も、今のところこいつのことを好きになれそうにはないんだがな)

 

友達として傍から見るぶんには面白いけど、こっちにまで飛び火してしまったらと考えるとたまったもんじゃない。

 

噂によれば反社のヤクザに金を借りるバケモノらしいし、宣伝する動画もよくないらしい。

 

(果たしてこいつは自分の評価についてどう思ってんだろうかね…?)

 

セイカやデウロは愚痴ばっかりこぼしていたし、やはり要注意人物なのが俺のなかでの評価だろう。

 

「とりあえず食べながら喋るなよ?飛沫が飛び散ると掃除の手間が増えるんだから」

 

そんな注意をしてふてくされている顔になったガイを尻目にホテルの2階へと食事を運びに行く。

 

 

 

 

 

 

「…ほら、起きろ」

 

揺すっても中々起きないのがデウロ。囁かないとまともに起きない。

 

 

「はぁ…愛してるよ、デウロ

 

「ひゃうん!?」

 

恥ずかしいルームサービスだけど、デウロには一番効果的なのだ。まとめ役としてなのか俺のことを意識してくれているのかどうかは知る方法もないけど…好き、なんだろうな。

 

(まだ安定してないし安定したら告白しようかなぁ…?)

 

そんなことを思いながら彼女の乱れている髪を整え、後ろから少し確認する。

 

「はい、できたぞ」

 

「ありがとぉ…あたしにご飯食べさせてもらってもいい?」

 

「いいよ」

 

ふにゃふにゃとした表情でにへらと笑うデウロの口に溢れないようそっとご飯を運ぶ。

 

ひな鳥のように全幅の信頼を置いてくれている彼女はダンサー志望であり、今のところオーディションで受かって順調なんだとか。

 

(人生って何があるかわからんもんなぁ…)

 

長く幸せになってほしいと思う。けれど─今は、少なくとも自分の手で幸せにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

デウロが食べ終わって昼になった頃、カランコロンと来客を告げる音が鳴る。

 

「ただいま、キジャ…」

 

慌てて自分の緩んだ雰囲気を引き締め、彼女を受け止める準備をする。疲れ切った声と態度は今にも倒れてくる気配がする。

 

「…おかえり、セイカ様」

 

私の方に倒れてくる彼女に負担がないように受け止め、彼女の部屋まで抱きとめて運ぶ。

 

 

…また、無茶ばかりしちゃってさ。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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