はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
ミアレシティの大暴走。私はチートちゃんにお願いして彼のもとに行こうとした。
「え?別にいいけど…私、最後まで活動したら死ぬかもしれないからあとはよろしくね」
「…は?」
当然でしょ、と言わんばかりの態度だが言葉を重ねさせることはなかった。というより、その前に担がれた。
「え、あの、その…」
「いいからさっさと暴走アンジュのところまで行くわよ。にぃになら気づいてくれるだろうし」
言い終わる瞬間とかそのぐらいの速さで─彼女は走り出した。
「私は鈍足のポケモンのクチート─その程度の、弱いポケモンに分類される。それだけじゃなくて、にぃにの持っていたポケモンは大体致命的な欠陥を抱えているが故に使われないの」
全てのポケモンに欠陥があるのは当たり前。なのに、今の言葉では『致命的な欠陥』と言っていた。
「簡単な話よ。私の生きていた時代ではそれだけで戦闘から離されていたの」
「もちろん、他の用途で使われているほうが悲惨なのだけど。クチートならスパイ、ヒトツキたちなら剣の整備って具合にね」
そちらのほうが酷い。そう忌々しく吐き捨てた彼女の顔は、一転して穏やかな表情になる。
「でもにぃには違ったの」
「一度でも戦争で一緒にいたポケモンを見捨てなかった。今みたいに─それこそ、家族みたいに接してくれたのはにぃにだけだったの。どれだけ異常なことか、わからないでしょ?」
追ってきた暴走リザードンを隣から斬り殺す彼女は、明らかに上機嫌で、狂っていて、美しかった。
「あなたに話すことは殆どない。けど、少なくとも最後に綺麗な華くらいは咲かせたいでしょう?」
…当然のことなのだけれど。
チートちゃんよりよほど凄いキジャさんも、あたしが話を聞いていたときに先行していたMZ団の皆もタワーの前に来ていた。
「お、やっと来たな!誰が最強か決めようじゃないか!!」
「…てめえは説明することを覚えろ、ガイ」
唐突に言われたガイからの謎の言葉をキジャさんがたしなめて補足してくる。
「簡潔に言えば昔に作られたアンジュタワーが暴走した。そこに入るためにメガフラエッテを扱えるメガトレーナーが誰かを決めようって話だ」
「…なる、ほど」
「俺も当然Aランクに近い実力だが…いつ、そこに辿りついた?」
Aランク同士の対決。正直ガイが私に勝つことなどできっこない。こんな非常事態であるのに体の底がドクンドクンと脈動する。
「今日、です」
「じゃあ俺のほうが先だ。ガイも同じタイミングだって聞いたから先に2人でやってくれ」
チートの頭をポンと撫でながら後ろに下がって露払いをするキジャさんを横目に、私は前のガイへと向き直る。
「…ごめんね」
私は、ガイのことはどうでもいい。さっさと終わらせなければならない前座を相手に、ファイアロー以外を出すつもりはなかった。
「ファイアロー。ブレイブバードでぶっ飛ばせ」
「…ほう。随分成長したじゃねぇか」
おめでとう、と軽く乾いた手の音が鳴る。隣には白無垢を来たチートちゃんがいるけど、目は明らかにさっきと違い本気だった。
「はい!あなたの胸を突き刺しますから!」
「情熱的なプロポーズ…けど、あいにくもう終わりだよ。最後の最後まで踊ろう、か」
チートちゃんだけしかいない手持ち。それでも彼には負ける可能性がある。
「私の怪我は気にしなくていいわ。そんなのハンデにもならないし、倒れたところでポケモンなんだからね」
「わかってるよ、そのくらい」
嘘なのか本当なのかはわからない。けれど、この場で本気を見たがっているのは事実だ。
「自由に動け、チトセ!」
「…任せなさい、にぃに!」
結果から言ってしまえば。
私たちは─負けてしまった。完膚なきまでの、完敗。
「…強い、ですね」
「そりゃ最後の晴れ舞台になるかもしれねえからな。かっこつけさせてもらえる分にはかっこつけるよ」
チトセちゃんに寄り添って、それでも強さを見せつけた彼こそがミアレシティ1のトレーナーだと断言できる。
「じゃ、俺が「待ってくれ!」…はぁ」
この期に及んでまだ何か言いたげなガイのことをある程度聞いてあげようとするだけ優しいのかもしれない。
キジャさんが動きを止めたのを見計らってガイは話を続けようとする。
「オレがやらねぇと…!」「残念、やらせるわけないだろ」
一番最初の、それこそ犯罪者を見るような目つきでにらみつける。
「一つ、少なくともお前が負けたセイカを負かした俺はお前より数段強い。たかだか5体いたところで使いこなせないようなら俺の足元にも及ばない」
「二つ、メガシンカ使い以前の問題として人間性が成ってない。出る目のない動画で借金する時点で自分が反省するべき人間だと察しろ」
「三つ、アレはチトセとかオレの『古代』に関係する遺物であって扱い方に関してはお前より一丁の長がある。そもそもお前が出るのもお門違い」
「四つ、万が一の事態が起きた場合に脱出できる能力もないやつが近づいて死んだらどうする。まだ肉体が優秀な俺が行くべき」
キジャさんはガイに言うというよりも、自分に言い聞かせているように見えた。
(もしかして、怖いのかな)
なんて、言ってしまったら彼の覚悟に水をさしてしまうから言えないけれど。
それでも、抱きしめるくらいは体が動いてしまった。
「…嘘つかないでくださいよ」
「なんで抱きついてきたんだよ…」
「にぃには乙女心をかんがえよ?」
思わぬところでチトセちゃんから助け舟が入ったのでそのまま攻める。もともとこの場を逃したら彼に言えない気がしたのだ。
「帰ってこなかったら、いっぱいいっぱい泣きます」
「その後にキジャさんと一緒のお墓に生きたまま埋まりますから」
泣きじゃくりながら、私の言える精一杯で。
それで彼は、困ったようにこちらを見つめて抱きしめてくれた。
「わーったよ。帰ってきたらホテルZに永久に住み着いてやる」
頭をガシガシとかきながら、彼はフラエッテと一緒にメガシンカをする。
「フラエッテ─てめえ、もしかしなくてもAZと一緒に逝くのが望みなんだろ?」
「キュルル♪」
「あの王様の臣下としてだ─そんくらいなら叶えさせてやる」
暴走メガシンカと変わらない威圧感をフラエッテは見せ、その勢いでアンジュタワーを内側から壊していく。
解体が終わる頃には、花火が上がるほどの余裕を見せ。
キジャさんは、戻ってこなかった。
どういう理屈なのかは知らないけど、フラエッテとAZさんは老衰で穏やかに死んでしまった。とても安らかな死に顔だったらしい。
そして私は今、キジャさんと一緒に過ごしている。
彼は死んだフラエッテを守るようにタワーの内側で倒れているのが見つかり、その後からホテルZの外に積極的に出ることはなくなった。本人曰く、
『なんか出たくない』
らしい。不思議だけれど、皆で共生しているのはいいことなのだろう。
(チトセちゃんも、皆と会いたくないらしいしなぁ…)
ときどきカフェヌーヴォで飲んでいるのを見かけるけど、キジャさんと会うのが恥ずかしいともとに戻ったタワーを見ながら笑っていた。
これから過ごしていくけれど、いつ壊れてもいいように。
あの人と─キジャさんと、一緒に過ごせる今を大切にしていこうと思った。
明らかにМ次元ラッシュ楽しい。ギルガルドのメガシンカがないのがちょっと残念。
そんなこんなでセイカちゃんエンド。テーマは『共生』ならぬ『共死』、『強制』と『共棲』です。いっぱい同音異義あるとややこしいよね。でもセイカちゃんエンドって存外AZさんに関係するエンドになるという不思議。
結構サラサラっと書いてあるけど、作中のセイカちゃんは手持ちにいるファイアローが暴れ散らかしています。ギャラドスやピカチュウと並んで序盤お世話になった人の多いオヤブン、なんだかんだセイカちゃんは最初のポケモンプレイで使いそうなパーティーにしてます。機会があればちょっと長めに書きたいですね。
さて、このエンドではエンディングが基本的にホテルZの中で完結するように調整しています。チトセちゃんはキジャがやりたいことあるなら邪魔しちゃいけないと思ってホテルZに頑なに行きません。かわいいね()
それとAZさんとフラエッテが同時に死んでしまったので主人公がえいえんのはなを入手できないというのがゲームメタとしてありますが、それ以外にもガイのムービーとは全く逆に安らかにエネルギーが収まって花火として散る美しい光景になります。
そんななんかわけのわからない言葉ばっかり並べていますが次は身を引いたチトセちゃんの個別エンドです。果たしてノーマルエンドしかりセイカちゃんエンドしかり都合のいい女としているチトセちゃんはどう暴走するんでしょうね()
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重