はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ   作:ボクっ娘のでんきタイプ

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ランキング…載った…!
ありがとうございます


6.であいがしら

 

カラスバから回された仕事はキジャとの見回り。観光客を装うために身だしなみに気を使えとかヒトツキの補助のできるでんきタイプを持ってこいとか…遠回しに書いてあることがデートをしろと伝えている。

 

(まったく、余計なお世話だって言いたいよ…)

 

だけどそれを嫌だとか思うことはない。なぜならこれはキジャから提案してくれたことだからだ。

 

「身だしなみってよりバレにくいようにすれば問題ないでしょ」

 

普段のよそ行きの露出が多い派手な格好よりもパーカーとかの絡まれにくい地味な格好に。まだ春ではないミアレシティならこれだけ着込んでもおかしくはないし。

 

(ポケモンもちゃんとしないとね)

 

あいにくシビルドンとランターンくらいしかいいキャラがいない。でんきタイプとの複合しか使わないのはジムトレーナーとしての癖だけど、まあバレないしいいか。

 

「あと…下着…?」

 

いやまあ、キジャが手を出してくれるようなことはほぼしないだろうけどそれくらいまでやっておかないとダメだろう。

 

(…どうせボクのものになるのだからいっか。明日が楽しみだな)

 

ちゃんと全部準備して、ゆっくり寝る。

 

キジャに寝坊したなんてラインは送りたくないからね。

 

 

 

 

 

 

待ち合わせの一時間前。速めに行けばきっと驚くだろうと思っていたけれど、彼はもう既に佇んでいた。

遠くからでも特徴的なヒトツキと大好きな彼の顔をボクが間違えるはずがない。

 

「………おはよ、キジャ」

 

「おはよう、カナリィ。随分速く来るもんだなぁ」

 

「キジャの言えるセリフじゃないでしょ」

 

やっと彼の近くまできたことで、格好の違和感に気づく。いつものようなパーカーで露出を抑えているわけではなく、鍛えている体を少しだけ主張するような簡素な服装。

 

(オーバーヒートするよぉ…)

 

普段余り見せてもらえない素肌。昔のカントーにいたサムライがこのような服装をしていたというけど、キジャにはとてつもなく似合っている。

 

(普段見せない格好がどれだけ毒なのかわかってるのかなぁ?)

 

「…その服装、かっこいいね。キジャもヒトツキも似合ってる」

 

見とれていたことがバレないように囁きながらそういう。こうするだけでもキジャを直視しなくて済むからいい。

 

「おう。………カナリィも似合ってっからあんま見せるんじゃねぇよ」

 

ポンと軽く頭を撫でられる。優しく見てくれる瞳の中に少しだけある暗い感情の目。

 

(¥%☆♪#〆!?)

 

僅かに見せてくれた独占欲と恥ずかしげに言ってくれたその表情だけでもう仕事を受け入れた見返りに充分お釣りがくる。

 

「……わかってるよ。こんなのキジャにしか見せないし」

 

せめてもの意趣返しに腕を体で絡め取る。服に引っかかるところがないし、こうするしか方法がない。

 

「…行くぞ」

 

キジャが顔を背けて目的の場所に歩いていく。その横顔の表情を眺めながらボクは彼と一緒に連れ添った。

 

 

 

 

 

「…最初はここだな。観光スポット巡りって感じか?」

 

着いたのはカフェ・ソレイユ。オシャレなカフェとして有名な場所だけれど、人の入りがちょっと少ない。

 

「そうだね。やっぱり一昨日の騒動が響いてる感じもあって静かだけど」

 

もともとカラスバから提案されていたルートはワイルドゾーンの見回りだったけど、キジャの体質を考えるとこちらのほうがいい気がするのだ。

 

(今のところ治ってるみたいなことは聞いてないし…)

 

ボクとしてもこっちのほうが指の怪我とかしないでいいし。パズルゲーム業界では致命的なのだ。

 

「いやまぁ、俺としても人の出入りを確かめられるのは助かるんだけどな」

 

「すぐ治安のこと考えてんじゃん。夜に頑張るなら昼くらいは休みなよ」

 

ここでしか食べられないマカロンを彼の口のほうへ持っていく。どうせ誰も咎めるようなことはしない。

 

「ほら、ボクの手から食べられるなんてことほぼないよ?」

 

「噛みついてやろうか…?」

 

「だーめ。そんなことしたらAランクに上がれないよ?」

 

そんなことせずともこの後に上がれないことは確定なのだけど、あえてそれを本人の目の前で言えるほど間抜けじゃない。

 

「まあじゃあありがたくいただきますよ」

 

ムクバードから餌を与えられたムックルみたいに首をちょっと上に傾げながら食べるその動作もかわいい。

 

「甘い…なんでこんなもんよく食べるんだよ」

 

「それはまぁ、女子ってそういうものだからとしか言えないかな」

 

ボクだってそんなに甘いものは好きじゃないけど、レビュー動画のときは断れないから無理をしてやってる。

 

「流行しているものとかよりこういうマカロンのほうが好きなんだよね」

 

「わかる。最近の虹色に光る食べ物って何が楽しいのかわかんねぇんだもん」

 

シンプルなものを好むのはどっちも一緒だ。ソレイユブレンドは…うん、まあ単色だし淡いピンクだしセーフってことで。

 

そんなことを考えながら食べ終わると、キジャのロトムフォンが通知音を激しく鳴らした。

 

『ワイルドゾーン17の暴走個体が市民を襲ってるロト!』

 

「すまん、埋め合わせは今度する…!」

 

彼は悩む顔をしながら即決し、次の瞬間にはもう遠くまで行ってしまった。

 

「…ボクもこういうところが好きになったんだけどなぁ」

 

すぐに人助けをしてくれるキジャの性格は好ましいけど、ボクからしてみたら他の女が勘違いするからやめてほしいなとも思ってしまう。

 

それでも今日のところはちゃんと収穫があっただけでもよしとしよう。

 

「埋め合わせは今度、ね。ちゃんと最後までやりたいな」

 

途中で台無しになることも多いし、もしかしたらワイルドゾーンの見回りのほうがいいのかもしれない。

 

そんなことを考えながら、残りの甘ったるいマカロンを食べた。

個別エンドはどれからがいいかな?

  • GAMEOVER
  • 吹き散らされた炎
  • 踊り明かして夜に溶け
  • いつでもどこでもあなたの傍に
  • 夢もうつつも紙一重
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