はがねタイプにでんきタイプはいまひとつ 作:ボクっ娘のでんきタイプ
どんなに離れていたとしても、俺と彼女は兄妹だった。
血の繋がりがなかったとしても。
決して間違えた愛し方をしていたとしても。
けれど─やはり、なにかを間違えたとしたのならそれは俺のほうなのだろう。
だって妹は、聡明なのだから。
間違えることなど、ないのだから。
「…にぃに、起きて」
目を薄く開けると、今にも首元を噛もうとする妹の姿がある。本気で噛もうとする前に引き剥がす必要がありそうだ。
「できればにぃにって呼ばないでほしいんだけどなぁ…」
「ごめん、お兄ちゃん起きなかったからさ…」
全体で妹を押しながら体をベッドの上から降ろし、寝起きの頭で挨拶をする。
「おはよ、チトセ」「うん、おはよッ!」
満面の笑みでこちらに抱きついた姿勢を強くして再びベッドに戻そうとする妹。
兎にも角にも、朝から平和だった。
「それで今日はどこのカフェについてだって?」
「えっとね、ソレイユ!お兄ちゃんもよく行くよね!」
あそこ仕事が多くて大変なんだよなぁ、とそんなことをぼんやり思いながら妹が焼いてくれた食パンを食べる。
カントー式の食事のほうが好きなのだけれど、チトセはパンのほうが好きらしいのでこっちだ。柔らかくてふにゃふにゃな食感がどうにも好きになれない。
「もうそろそろお兄ちゃんは一人で働いてもいい?」
「まだちょっと怖いかな…あと2回くらいすれば慣れると思うんだけど」
俺と妹はカフェの接客のヘルプが基本だ。始めから終わりまで昼間と変わらない人数がひっきりなしに来るもんなので、よほどのことがない限りは妹に頼ることはないのだが。
(とはいえ置いていくわけにもいかないしなぁ…)
一度だけやれそうだと思って一人でかわいがりにバイトしに行ったときにはソレはもう酷かった。帰ってきてから数日ぐらいはべっとりとまとわりつかれたのだ。
まだまだ甘えたがりの妹なのだろう。
「じゃあ一緒に行こうか。準備もすぐ終わるんだろう?」
それがあっていることなのか間違っているかどうかはさておいて。
彼女が比べられない大切な存在であることも、妹として兄である自分を必要としていることもまた事実なのだから。
「お待たせしました、ソレイユ一押しのミアレガレットです」
堅苦しく、かといってお客様が困らないくらいの気安さを併せ持って接客をする。殆どが裏方である妹と違い、俺の仕事はウエイトレスだった。
ときには空を飛びながら音一つなく皿を片付け。
喋りながらもお客様の記憶に残らないように雑務を行う。
この程度なら余裕、なんてうそぶくことはできないくらいにはいっぱいいっぱいだったけどそれでも充実した仕事だと思う。
(昔の俺ならもっと上手にできたんだろうけどなぁ…)
ないものねだりを仕事にしてもしょうがないことではあるのでそうならないように細やかに体を動かして可能な限りお客様をさばいていく。
「あ、キジャ…?」「…お姉ちゃん、怒ってる」
「どうしましたか、お客様?」
どうも露出の高い─それこそ、配信者らしい服装に身を包んだ女性。
シャンデラをモチーフにした─明らかに怒りを隠そうとしない少し年上の女性。
彼女らから親しげに話しかけられたとしても、俺にはどうすることもできないのだ。
「…キジャ、こんどボクの家に来てよ。
「あたしも。仕事が終わって時間のある時でいいからお祖父ちゃんが会いたがってたし来てほしい」
…ナンパ、かな。
ふとそう思ってしまったけど、真剣な目だったしあとでロトムフォンのライン交換くらいはしたほうがいいのかもしれない。
(妹以外と殆どつながったりしてないからなぁ…)
よくよく考えるとあまり交友関係というのも広げられていないし、これを機に人と職場以外での関係を持ってもいいかもしれない。
…彼女たちを案内したときに感じた寒気は、きっと気のせいだろう。
個別エンドはどれからがいいかな?
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GAMEOVER
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吹き散らされた炎
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踊り明かして夜に溶け
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いつでもどこでもあなたの傍に
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夢もうつつも紙一重