あの地獄のようなリベンジの後、レフィーヤは外壁の上に佇んでいた。
「⋯フィルヴィスさん」
左腕を抱きながらそう呟き、少女は目を瞑る。
あの時、あの戦いで、何故【エインセル】を唱えたのかは分からない。
共に在った彼女が教えてくれたのか。
血迷って彼女の魔法と終わりを迎えたかったのか。
今となっても分からない。
分からない。けれど―――――――
「きっと⋯貴方が助けてくれたんですよね」
そう、信じたい。信じていようと、思えたのだ。
「全てが終わった。終わったから」
一緒に。光冠を見に行きましょう。
在りし日の故郷で。在りし日より育った自分が。
貴方と見る光冠は綺麗なものだろうか。
存外平凡に見えるのだろうか。
それもまた、きっと尊ぶべきものだから。
なんにせよ。
「貴方と見る光冠は」
きっと今までで1番美しいものだろう。と、確信を持って言えるから。
だから。
「これからも、私とセカイを見ていきましょう」
綺麗な世界を。残酷な現実を。そして
脳裏によぎった、白を見ないフリをして。
新たに天秤を砕いた金で埋める。
「――――――レフィーヤさん」
見ないフリを、したんですが?
顔に嫌悪を最大に込めて、心に烈火が燃え上がる。
「⋯なんですか?」
「ひえっ!?」
「話しかけてきたくせになんですか!!!!」
怒る妖精。ビビる白兎。迷宮内なら魔法も放たれていただろう。最近は心の鎮め方も分かってきたはずなのだが。
過去と今が重なったからだろうか。何故か未熟な頃の自分が強くでてきた気がする。
「えっと⋯その、こんな夜更けにおひとりだったので。大丈夫かなって」
「⋯そういう貴方も夜更けに出歩いているでしょう?」
「僕は⋯少しここに来たくなって」
「私もそんなところです」
少し、白兎は逡巡して
「良ければホームまで送りましょうか?」
「はい?」
表情に烈火が灯る。
「なんで怒るんですか!?」
「舐めてるんですか!?」
「違います!?!?だって、女の子、ですし」
その言葉に。裏はないだろうに裏を感じさせるような台詞に。重い頭痛がやってくる。
「こんのっ⋯!!!」
女っタラシ発情馬鹿兎ーーーー!!!!!!
「なんで怒るんですかぁああああああああ!!???」
少女の後ろで、誰かの傍で。
白い巫女が、笑っている気がした。
――――――
「…酷い目にあった」
あの後久々の追いかけっこをして、死に物狂いでホームに送り届け、たまたま居たティオナさんに引き取ってもらった。
その時ティオナさんがどこか嬉しそうな顔をしていたのは印象的だった。
「うん…うん。身体を張ってよかった」
そうして、肌寒くなってきた夜闇を感じながら。
兎は静かに帰路を辿った。