1年前、叔b「ん?」―――義母と叔父と出会い、祖父との2人暮らしから楽しい4人暮らしへと変わったあの日から。誓いを立てたあの日から、僕は―――――――――
「今日はゴブリンの巣穴に放り込む」
「えっ」
ある日はゴブリンの巣穴に放り込まれ。
「今日から何も無い日はザルドか私と鍛錬だ」
「ひっ」
ある日からは2人から鍛錬してもらうことになり。
「目隠しする。その状態で投石するから避けろ」
「えっ」
ある日は目隠しのまま石を投げられた。
あの日から僕はそれはそれは壮絶な日々を送っていた。
「今日は客が来ている」
「お客さん?」
「そうだ。そいつは不遜にも『現代の英雄』、『最強の騎士』と呼ばれている」
げんだいのえいゆう!さいきょうのきし!!かっこいい!!!
少年ベルの思考が子供らしい憧憬に支配される中、アルフィアはこう続ける。
「私の中では
クソガキ?およそ先程の賞賛に並び立つことの無い罵倒が飛んでくる。
「何度叩きのめしても叩きのめしても懲りずに向かってくる
と。どこか楽しそうに呟く義母が珍しい。
「随分な言い様ですね。アルフィ「
突然現れた人が目にも止まらぬ速さで倒れた。
「え!?だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ…ありがゴブッ!?」
追撃、ゴスペルパンチ!信じられるか?超短文詠唱より速いんだぜ。
「その気持ちの悪いろーるぷれいを止めろ。クソガキ」
「大人になったんだよクソババア…!!!」
「ふん。何が大人だ。これしきでガワが外れるなら意味があるまい」
「糞が…!!!」
「そら。要件を言え。私も暇じゃない」
地に伏したまま、暫定最強の騎士はそれでも光を宿しながら言葉を紡ぐ。
「…【暴喰】に、挑みに来た」
「無謀だな」
「わかっている…!それでも、俺はあいつに挑む」
「
「…雪辱を果たすためだ」
「まぁ勝手にしろ。ベルに見学はさせるがな」
――――――
「懲りずに挑みに来たか?クソガキ」
「ああ。懲りずにな。だが、今日は」
勝つぞ。
黄金に輝く瞳に火を灯しながら、青年は静かに、しかし力強く続けた。
かつての【最強】は悠然と剣を構え、今の【最強】は強く詠唱を紡ぐ。
「【轟け残光。すなわち雄たる十二席】」
言葉と共に魔法で片手剣が形成される。
「来い!今一度貴様に」
英雄の作法を教えてやろう!!!
その言葉に、騎士はかつての悪童の笑みを滲ませながら、突貫する。
――――――
目の前で繰り広げられる剛剣と光の衝突に、目を奪われる。
「【
パーシル、ガベルに続き、ダルハザール、ファイロンと言葉が続くほどに、獅子色の青年は強く、武器を変えていく。
「すごい…!」
「こんなものかクソガキ!!俺を超えるんだろう!?もっと足掻いて見せろォ!!!」
「舐めるなよ糞英雄!今度は貴様に泥をかぶせてやる!!!!!」
「やってみろォ!!!!」
光が瞬く、斬撃が交差する。
「攻撃が…飛んでる!?」
「【残光】、と呼ばれる技術だ。いずれお前が体得せねばならないものでもある」
資質次第だがな。
「【
【
「ザルドー!?えっ、それって」
「そうだ。アイツの魔法の名には、
「お義母さん達の」
まだ見ぬ家族の、名前。
その言葉を他所に、獅子色の大剣と赤黒の大剣が交差する。
都度数回の衝突の末、獅子色は砕け
「【
瞬間、青年の両手に輝きが宿る。
あっ
わかる〜〜〜〜!と脳内で小さなうさぎがはね回る
ゴ ス ッ ! ! !
「ぺるっ!?」
「失礼なことを考えるな。殴るぞ」
「もう なぐって います !」
「まったく…まぁ、あのガキはよくゲンコツしていたからな」
また、数度、拳が大剣と交わり、拳の光が砕ける。
「ゴフッ…!そろそろ決めるぞ―――【
限界を迎えつつある叔父が血を吐きながら詠唱を開始する。
「【
そして、獅子色の大斧槍が現れる。
「【貪れ、炎獄の舌。喰らえ、灼熱の牙!】【レーア・アムブロシア】!!!」
「残光」
焔と残光が交差して―――――
そこに、青年は立っていた。
「たしかに、喰らったぞ」
「…まぁ、認めてやる。よくやったな――――レオン」
そこではじめて、その人の名を聞いた。
そこから少し、話す時間を儲けてもらった。
その人はレオン、レオン・ヴァーデンベルクと言うらしい。
今は【バルドル・クラス】の教師として教鞭を執っているらしい。
「ベル。君も少ししたら【学区】に来るか?良い経験になると約束する」
「うーん…止めておきます。もう少しだけ。一緒にいたいから」
確固たる意思で決断を告げる。
「…そうか。それもいい。気が変わったらいつでもおいで。『俺』は君を待ってぐぺぇ」
ゴスペル☆パンチ!
「クソババァ…!!!!!」
「この子の決断に異議を唱えるな」
「糞が…」
そして、6年の年月が経ち。
少年は強くなった。
気づけばもうLv.5。英雄の階段を着実に昇っている。
今私は、あの日の少年と、北の果ての竜の谷で対峙している。
「―――――さて。ベル。君も強くなった。あの日見た少年のまま。なればこそ。私も―――――『俺』も」
そうして、教師の、騎士の顔からあの日の悪童のような顔に戻り。
英雄の作法を教えてやろう!