ダンまち短編思いつき   作:眼鏡熊@ヒロアカ完走

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光あれ。若き冒険者よ

 

それはバルドル様の一言から始まった。

 

「学区の子供たちにも『過酷』を味わって欲しいのです」

「『過酷』⋯ですか?」

「そう。『過酷』です。砕けた言い方をしてしまえば―――――あの地獄を味わったんだからこんなのどうとでもなる。といえる経験でしょうか」

 

その上で対抗心を燃やせるもので有ればいいですね。

と、『学区』の発起神たるバルドルは話す。

 

「そこで――――【ヘスティア・ファミリア】。ひいては実質従属神である【フレイヤ・ファミリア】の眷属(こども)たちに戦いの野(フォールクヴァング)を再現してもらおうと思いまして」

「⋯失礼を承知で聞きますが⋯正気ですか?」

「怪しいです」

「嘘だろ⋯?」

 

思わずレオンの素が出る。

 

「冗談ですよ。まぁそれはそれとして⋯レフィーヤとベル・クラネルが導いた子供たち。その中でもルーク、コール、イグリン、クリスティアの4人を戦いの野(フォールクヴァング)に放り込む」

「それは死んでしまうのでは⋯?」

「ええ。なのでメンバーを限定します。治療師(ヒーラー)として【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】。実際の戦闘にはベルと【フレイヤ・ファミリア】の【石火(フリント)】にお願いする形にしました」

「ベルに出来るでしょうか?」

「ベルには後輩の為に。と理由をつけました。優しいベルだからこそ、しっかりとやってくれるはずです」

「そういうことでしたら、任せましょう」

「では⋯子供たちにとってもいい経験にならんことを」

 

 

 

 

――――――――

 

「【戦いの|野(フォールクヴァング)】ですか?」

「そう。かつて【フレイヤ・ファミリア】の本拠(ホーム)でも行われていた『過酷』です」

 

バルドルの話に聞き返すルーク。

 

「それを貴方達にも経験して欲しいと思いまして 」

「それは問題ありませんが⋯メンバーは?」

「ルーク、コール、イグリン、クリスティアが『学区』側。オラリオ側からは【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】、【石火(フリント)】、【獅光の兎(レグルス・アルネ)】の予定です」

「【フレイヤ・ファミリア】の冒険者と【世界最速兎(レコードホルダー)】⋯!」

 

ルークの瞳に炎が宿る。オラリオの有名ヒーラーに、知名度は劣るとしても【フレイヤ・ファミリア】のLv.4。そして【ロキ・ファミリア】救出でも活躍していた世界最新の英雄候補。自身の力になることは間違いない。

 

「謹んで拝命いたします」

「ありがとうございます。イグリンたちの方には私から連絡しますのでコールに連絡をお願いします」

「承りました」

 

―――――――――

 

「⋯【戦いの野(フォールクヴァング)】⋯ですか?」

 

イグリンは神妙な面持ちで聞き直す。

 

「はい。今回ベルと【フレイヤ・ファミリア】の【石火(フリント)】、【女神の黄金(ヴァナ・マルデル)】にお願いしています」

「ラビに!?」

 

味方として見た。彼の頼もしさを思い出す。二刀から繰り出される神速の斬撃。無詠唱から繰り出される魔法の一撃。あれと⋯戦う⋯!?

 

恐れと同時に、高揚感が心を支配する。駆け上がるように強くなって行ったかの英雄候補と⋯戦うのか⋯!

 

「謹んで拝命いたします⋯!!」

「ありがとう。『学区』のメンバーはルーク、コールにもお願いしていますので、イグリンの方ではクリスティアに連絡して下さい」

「承りました」

 

 

――――――――

 

 

そして、当日。オラリオは【戦いの野(フォールクヴァング)】にて。

 

「今回貴方たちと戦う【ヘスティア・ファミリア】の団長。ベル・クラネルです」

「元【フレイヤ・ファミリア】のヴァンだ」

「貴方がたのヒールを勤めるヘイズです。よろしくお願いしますね〜」

「【バルドル・クラス】のルーク・ファウルです」

「同じく【バルドル・クラス】のコール・クスターです」

「同じ所属のイグリン・マーズです」

「同じ所属のクリスティア・エルヴィアさ!よろしくね!」

 

「では―――――行きます」

「へっ」

「なっ」

「ちょ」

「えっ」

 

瞬間、視界に白が踊る。

 

振るわれるのは黒の短剣。そも軽そうに振るわれる刃をどうにか対応して―――――

 

吹き飛ばされる。

 

「――――――っが!?」

 

重い(・・)鋭い(・・)!なんだこれ⋯!?なんだ!?これ!?

 

「甘いです。ダンジョンは待ってくれません。さぁ。立ち上がって下さい」

 

冷たい、冷たい瞳だ。平時を知るイグリンとクリスが知らないベル・クラネルの一面。先達として導くと決めた英雄候補の言葉。

 

「何をグズグズしている!思考を殺すな!対応を止めるな!頭を回せ視点を止めるな対抗心を無くすな!!」

 

横にいるコールたちも【石火(フリント)】にどつき回されながら対応していく。

 

「貴方は小隊長なんですよね?ならばこそ。貴方は思考止めては行けません。体勢を立て直してください」

 

そのままベル・クラネルから短剣を振るわれる。

 

どうにか転がって逃げ、体勢を立て直して――――

 

遅い(・・)

 

また、短剣が迫る。短剣の峰打ちが腹部を襲う。

 

「う⋯ぉえ⋯!!」

 

痛い!気持ち悪い!思考がまとまらな―――

 

考えてください(・・・・・・・)

「無茶⋯言うな!」

 

痛みに耐えて体制を立て直し、剣を構えながら相対する。

 

「無茶ではありません。貴方は小隊全員の命を請け負う立場。貴方が思考を止めれば小隊が全滅します。貴方は考え続けなければならない。故に――――」

 

貴方はどんな痛みを受けても前を向かなければならない。

 

「っ⋯!!」

 

ああ。そうだ。その通りだ。脳裏に山吹色の妖精からの教えが過ぎる。

俺が死に急げば小隊が死ぬ。俺が判断を謝れば小隊の運営が滞る。

ならば!!

 

瞳に光を灯しながら、確かに前を見すえる。

 

「いい目です⋯行きます!!」

 

Lv.5対Lv.3――――Lvは違えど確かに眼前の英雄候補が立ち向かったLv差だ。

だからこそ。俺も立ち向かおう。俺もこれを糧としよう。もっと強くなるために。

 

 

――――――

 

「遅い!!!連携が取れていない!お前たちは同じ【ファミリア】だろう!【フレイヤ・ファミリア(おれたち)】のように突出する個人もいない上に格上相手だぞ!付け焼き刃の連携どころか仲間の邪魔をしてどうする!?」

「んなこと⋯!言われても!!」

「同じ小隊の奴なら兎も角違う小隊とそうすぐ連携出来るわけねえだろ!」

「無茶言わないで欲しいよね!やってみせるけどさぁ!」

「そこの同胞は兎も角!お前らはやる前に諦めるな!頭を回せ!!!」

 

そうして、ヴァンはその剣で3人を押しのけた。

 

「ぐっ!?」

「ぐぁ!?」

「うべっ」

「仕切り直しだ――――これ以上呆れさせるなよ!若造ども!!!」

 

Lv.2三面対Lv.4一面。これもまた絶望。

どう抗うか。

 

――――――――

 

「(2人ともかなり手加減してますねー。ベルは置いておいてヴァンさんはどういう風の吹き回しでしょう。ベルにお願いでもされたのでしょうか)」

 

ヘイズは冷静に盤面を俯瞰しながら、詠唱の待機を終えて待つ。

 

「(先ずはギアを上げさせている。という所でしょうか)」

 

どう『過酷』を押し付けるのでしょうか。

 

 

――――――

 

一方その頃。少年――――ベル・クラネルはというと

 

「(あああああごめんなさいごめんなさい!Lv差の暴力を押し付けてごめんなさい!でもできるだけ良い経験にするから許して下さい!!!)」

 

まぁ後進の為とはいえ生来の性格が治る訳もなく、ベル・クラネルは脳内で謝罪を繰り返しながら戦闘している。

 

「おおおおお!!」

「考え無しに突っ張らない!自殺行為です!!」

 

短剣の柄で殴りつける。

 

「ぐぅ⋯!」

「被害を最小限に!相手の行動を手先だけで見てはいけません!俯瞰でみて動きの『起こり』を見るんです!」

「⋯やってやる!!」

 

動きが変わる。遮二無二対応していた動きから相手の動きを想定した動きに。

 

「(流石Lv.3!吸収も早い)ふっ!!」

 

大振りで力を込めて短剣を振るう。ルークがバックステップで避ける。

対応できる動きと出来ない動きの判断が出来ている。

 

なら―――――

 

ギアをあげる。

 

「おお!」

 

速く、鋭く。連撃を入れる。【神様のナイフ】と【白幻】が軌跡を紡ぐ。

 

「っ!?はや―――!?」

「見えるはずです!!まだ動けるでしょう!?」

 

二刀が閃く。剣戟が紡がれる。

 

【白幻】を腰に収め、手を相手に向けて。

 

「【ファイアボルト】!!」

「ぐあ!?」

 

精神力(マインド)を抑えながら魔法を打ち込む。

 

「な――――!?⋯無、詠唱?」

「速攻魔法です!威力は抑えました。未知を既知に変えてください(・・・・・・・・・・・・・)!」

「ぐ⋯ああ!!」

 

もう一度来る。瞳の輝きが曇ることは無かった。

 

だから(・・・)――――

 

「【ファイアボルト】」

 

そうして、魔法を【神様のナイフ】に纏わせ、【英雄願望(アルゴノゥト)】発動。二重収束(デュアル・チャージ)、1秒。

 

手加減版

 

「【聖火の|英斬(アルゴ・ウェスタ)】」

「ぐああああああ!?」

 

膝を着く。火傷が肩口から腰まで走る。

 

「【アース・グルヴェイグ】」

 

瞬間。自動治癒がルークさんに施される。

 

「え⋯?」

「へイズさんの治癒魔法です。さぁ、立ってください」

「くそっ!!!」

 

やけっぱちになって立ち上がる。

それではダメだ。

 

「熱くなってはダメです」

 

【神様のナイフ】と【ファイアボルト】がルークさんを襲う。

【アース・グルヴェイグ】がルークさんを治す。

 

斬撃。

治癒。

斬撃。

治癒。

斬撃。

治癒。

斬撃。治癒。斬撃。治癒。斬撃。治癒。

斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒斬撃治癒

 

「(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んだ嘘だ生きてる痛い待てホントに死ぬふざけんな!?)」

 

ルークの脳裏に絶望の2文字がよぎる。Lv.2差という絶対の力量差が絶望を濃いものとする。

恐怖が心を支配する。瞳が曇る。痛みと全快の身体という意識のバグが脳みそを混乱させる。

 

勝てない。このまま陵辱されて――――終わる?

 

瞳が曇る。手足が竦む。

もう――――無理なのか?

 

 

ルークの心は鈍色の絶望に支配されていた。

 

――――――

 

「あまぁい!!」

 

斬撃が自分達を襲って―――――

 

「(あ。死――――)」

 

クリスの脳裏に終わりがよぎる。が。

 

「【アース・グルヴェイグ】」

 

魔法が自分を癒した。

 

「こ、れは⋯?」

「自動治癒魔法だ。そら頭を回せ!!そんなものか!!同胞!!!忌まわしき【勇者(ブレイバー)】はこんなものではなかったぞ!武器の強みを活かせ!今のお前たちにあるものを活かせ!闘え!!!!!!」

 

叱咤が身を打つ。激励が心を奮い立たす。

 

「―――――ッ!!!イグリン!!!ぶちかまそう!!」

「ッ!?おう!!!」

 

両手剣を、大槌を叩きつける。

勿論反撃を受けるが――――

 

「(治る!!!!)」

 

負傷も構わず叩きつける。

 

「そうだ!!それでいい!!」

 

コールが受け止めるヴァンの脇に突貫する。

 

「甘い!!」

 

蹴りが襲う。

 

「ぐっ!?」

 

吹っ飛ばされる。が。

 

「「ぅおおおおお!!!!!」」

 

大槌と両手剣を押し込む。

 

「悪くない⋯が。甘い!!」

 

【ステイタス】の暴力で押しのけられる。

 

「来い!!!『学区』のガキ共!!!」

「「おおおおお!!!!!」」

「ッ!!!」

 

――――――――

 

曇る瞳。緩慢になる動き。

絶望が心を占めているのだろう。無力感に倒れそうになっているのだろう。

ああ。よく分かる。自分も何度も諦めそうになったから。でも―――――!

それをも覆す、意志を信じてる。

 

「立ってください」

 

あえて慈悲なきように。冷徹に告げる。

 

「ふざけんな⋯!まともにやって勝てるわけないだろ⋯!こんなの⋯!!!」

「―――――あの人は、諦めませんでしたよ」

 

リューさんから聞いた。かの【人造迷宮(クノッソス)】でレフィーヤさんがLv.7相当の相手にも果敢に立ち向かったことを。強すぎる後衛として、リューさん達を助けたことを。

 

「あの人は――――レフィーヤ・ウィリディスはLv.7相当の敵を相手にしても、諦めずに立ち向かった。自分に出来ることをしようとし続けた。貴方は、それで良いんですか?」

 

薪を焼べる。燻る意思を燃え上がらすように。

風を送る。始まりの意志を思い出させるように。

 

「ッッッッ!!!!!」

 

立ち上がる。

 

「僕はベル・クラネル。神ヘスティアから不滅の聖火(ほのお)を貰った偉大なる眷属の1人です。いつか追いつきたい憧憬の為に、今も走り続けている。では―――あなたは?ここで燻るだけですか?ここで諦めるんですか?答えてください。貴方は?貴方は、誰ですか?」

 

剣を構える。深紅(ルベライト)を見据える。

 

「――――れは、俺はルーク・ファウル!!!神バルドルから光を賜った誇り高き眷属の1人!!!偉大なる先達に恥じないよう、神に恥じないよう!!ここにいる!!!何があっても諦めはしない!!!!」

「――――貴方は強い人だ。だからこそ。壁として立ち塞がりましょう」

 

 

来い!!!!

 

 

この日、ルーク・ファウルは冒険をした。たった一人の、冒険をした。

 

 

 

そうして、1日を終え――――

 

「お疲れ様でした。どうでしたか?」

「まぁ、少しはマシになったな。どうだった?」

「「「「二度としたくない(です/ね!)」」」」

「まぁそうですよね⋯」

 

ははは。とベル・クラネルは苦笑する。

 

「さて、立ってください。今日頑張った皆さんに、とっても美味しいご飯をご馳走します!【豊穣の女主人】に行きますよ!」

「今日は俺とベルの奢りだ。しっかり食え」

「は、はい!!」

「っしゃあ!」

「ありがとうございます!!」

「楽しみだね!!」

「うーん、オフの日まであそこに行きたくは無いのですが⋯」

 

そうして、7人は楽しげに【豊穣の女主人】に向かった。

 

「お!丁度いい。来たんなら働きな!!」

「」ムンクの叫びのような顔

「」ごめんなさい!!!という顔

「」ドンマイ。って顔

 

まぁ、楽しかった⋯よ?

 

 

 

 

―――――――――

 

【豊穣の女主人】の一幕。

 

「あの⋯ベルさんにとってレフィーヤさんってどんな人なんですか?」

「⋯難しいですね。負けたくない、ライバルが正しいかもしれません」

「ライバル⋯」

「そう。ライバルです。ルークさんにも、負けたくないって思える人ができるといいですね」

「そうですね⋯きっと、できたらいいな」

 

 




補足
Q.なんでルーク君ベル君に敬語なん?
A.レフィーヤさんにキツめに当たったのちょっと反省してるし第一印象学区に潜入したヤベー奴だから敬語。
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