リュウリュウの実:モデルイビルジョー   作:ゲケエベレッケ

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第3話

「アーロンパークに到着しました!」

 

「分かった今行く!」

 

 目的地到着の報を聞いたプリンプリンは少女に声をかける。

 

「実は我々は任務の途中でな。これからアーロン一座を捕縛しなければならない。少し揺れるが我慢してくれ。なあに心配ない。我々は精鋭部隊だ。奴等には君は指一本……」

 

「なあ」

 

 少女が声をかけてきた

 

「うむ? 何かね?」

 

 向こうから声をかけてきたことにプリンプリンは驚いた。

 

「アーロン一味ってなんだ?」

 

 そして喜んだ。

 

 このぶっきらぼうな少女の心を少しでも開けたのだろうと思って。

 

「アーロン一味というのは魚人のみで構成された海賊団だな。今やっているのは罪の無い民間人の支配だ。島全体を支配下として、各村の住人たちから大人1人10万ベリー、子供1人5万ベリーというルールを設けて貢ぎ金を回収し始めたのだ。そして金が払えなければ殺される。一人でも金が払えなければ女子供へだて無く村全員が」

 

「……そうか……」

 

 おやと思う。

 

 少女の仏頂面に明らかな怒りの感情が浮かんでいた。

 

 思えば保護して、ベットから起きてからこの子は常に怒りの表情を浮かべていた。

 

 よく見れば眉間には深く皺が刻まれている。この子は如何なる人生を過ごしていたのかと思った。

 

 いや、考えるまでもない。

 

 きっと人に恵まれた自分には想像できない地獄なのだろう。

 

(だからこそその分幸せになってもらいたいのだが。当分うちの支部にいてもらうのもいいだろう)

 

 どうか。彼女に今までの不幸を吹き飛ばすような幸せを。そうプリンプリンは心から願った。

 

(ん?)

 

 気づくと少女がもぞもぞと動き病人服を脱ぎ始めた。

 

「何をしているのかね! やめたまえ!」

 

「うるせえよ。私はお前らみたいなやつから何ももらいたくねえんだよ。この服も返すわ」

 

「いくらなんでも裸で」

 

「いいよ、現地調達するから」

 

「?」

 

 頭に疑問符を浮かべたプリンプリンに少女は声をかける。

 

「そのアーロン一味から服カツアゲするっつってんだよ。これからお前らに加勢するのは服の為だ。断じてお前に飯を食わせてもらった恩を返すためじゃない。勘違いすんじゃねえぞ」

 

 そして彼女は甲板に上がっていった。上裸のまま。

 

 しばらく唖然としていたプリンプリンも彼女を慌てて追いかけた

 

 前から聞こえた地響きの様な空腹音と

「中途半端に食ったら余計腹減った……」という声は聞かなかった事にした。

 

 ■■

 アーロンパークから600メートル程離れた海上そこに軍艦は停止した

 

 甲板に出た少女を説得して、服を着せてとりあえずは甲板の下の、はしご一本ですぐ行けるとこにいろと説得したプリンプリンは愛すべき部下たちに指示を出す。

 

「よーし、諸君まずは威嚇射撃だ」

 

 彼らの視線が一斉に目標に注がれる

 

 個人戦力で言えば東の海最強の海賊、【ノコギリのアーロン】彼の居城アーロンパーク

 

 目に映るは五重の塔の様な豪勢な建物。広々としたプール。金のかかっていそうな建物。巨大な門。

 

 それなりの規模ではあるのだが余りセンスは良くないなとプリンプリンは思った。

 

 なんというか建築の素人が見様見真似で遊園地を作ったような歪な印象を受けるのだ。

 

「あれが噂に聞くアーロンパークか。海賊にあれだけドンと腰を据えられては世も末だな」「まったく同感であります」

 

 プリンプリンは発破をかけた。

 

「いいか諸君。今回の我々の任務はアーロン一味に破壊されたゴサの生き残りの町民をこの島から無事脱出させることである!!! ―だが! 私は思う!! 

 

 果たしてこの野放しの海賊の城をしていながら目の当たりりに見過ごすことをわれわれの正義は許すのか!!!!」

 

「許しません!!」

 

 その言葉と共に威嚇射撃の砲弾が発射される。アーロンパークに

 ■■

 

「准将! 砲弾は不発でしょうか」

 

「おかしいな……」

 

 威嚇射撃の砲弾はアーロンに無効化され、それにより海軍へのスタンスを懐柔から殲滅に切り替えたアーロンの指示で

 

 アーロン一味幹部、はっちゃん、チュウ、クロオビ、の3名の魚人が向かって来ていることなどつゆ知らず彼らはわーわー言っている。

 

 そこに一つの影が飛び出してきた。

 

 突き出た口に厚い唇を持つキスの魚人

 

 チュウだ

 

 その巨体から漏れ出す攻撃性と憎悪と加虐心に反応し、海兵が戦闘態勢を取る

 

 

 

「かかれ戦闘だ!」

 

「待て落ち着けっ!!」

 

 それを制したのはプリンプリン准将

 

「我々は多少なり名の通った精鋭部隊……君等がもし大人しく……」

 

 プリンプリンは善人だ。しかし愚かだ。もう交渉の余地など無いことも、魚人達の方が遥かに強い事も理解していない

 

「水鉄砲!」

 

 魚人の口から魚人の武術の応用により、物理法則を無視した勢いで人間を十分殺傷可能な、文字通りの水“鉄砲”が発射された。

 

 プリンプリンの腹めがけて撃たれたそれに誰も反応できなかった。

 

 一人の少女を除いて

 

「どけ! ちんたらしてんじゃねえ!」

 

 いつの間にか甲板に出てきていた少女の蹴りがプリンプリンに飛びプリンプリンを吹き飛ばす

 

 それによって目標を失った水鉄砲は船を飛び越え後方の海で拡散した。

 

 

 外したか。まあいい。チュウはそう思った。結果は変わらない。今この船の下にいる仲間が船を解体しているのたから

 

「今この船の舵を排……」

 

 魚人を相手に戦うのに、船が解体される事を一切警戒していない間抜け共を嘲笑いながら説明しようとした瞬間。彼の目の前には

 

 拳を振りかぶった少女がいた。

 

 その目に映るのは怒り、憎悪、殺意。

 

「チュッ! 人が話している途中だろうが!」

 

「黙れ死ね!」

 

 キスの魚人チュウ。彼は目の前の生意気な人間に拳を振るった。

 

 彼は人間の身体を水鉄砲で貫いた時の、全身に伝わる加虐と達成感が混ぜ合わされた、得も知れぬ感覚が好きだった。そしてその次に好きなのは拳を人間の顔面に打ち込んだときの、人間の細く柔らかい骨がポキポキと折れる小気味よい音が好きであった。

 

 魚人とは違うもろく弱い骨。それを砕く事で自分が至高の種族、魚人族である事を強く実感できるから。例えそれが幻想に過ぎないと分かっていても。

 

 彼の拳が少女の顔面に突き刺さる

 

 骨がポキポキと折れる感覚が帰ってくると思っていた。

 

(チュッ!?)

 

 自分は目の前の痩せた人間を殴ったはずだ。それなのに帰ってきたのはギチギチに圧縮された肉の塊を殴ったような違和感

 

 その違和感の正体をはっきりと認識する前に怒号が響く

 

「死ね!」

 

「ぐあァ!」

 

 目の前が爆発したかと思った。殴られた、顔面の骨がポキポキと音を立て砕け散った、もう立てないと気付いたのは少女が自身の腹の上へ飛び上がったのを確認した時

 

「死ねクソが!」「ジュッ!」

 

 内臓が破裂しそうな威力の、彼もろとも船の甲板を大きくへこませるストンピングが腹に突き刺さる。容赦も情けも無い一撃だった。

 

「チュウ! よくも俺の同胞を!」

 

 それを遠方から見ていたアーロン一味のボス。

 

 アーロンはそう絶叫した。

 

 ノコギリのアーロン。

 

 単体戦力に限れば、東の海最強の海賊。

 

 彼は人間を支配し虐げ憎む人類の敵ではある。そしてそれ以上に、魚人族、つまり同胞に対しては愛情深かった。それこそ、同胞の仇討ちの為に、絶対に勝てない戦いに向かうほどに。

 

 自身の支配する村を助けに来たのであれば、最初は賄賂を渡して追い返すつもりであった。

 

 それが無理なら船を深海に沈めてやるつもりだった。

 

 だが

 

「よくも俺の同胞を……医療班! チュウを治療してやれ! 下等種族共! 楽に死ねると思うなよ!」

 

 何より大切な同胞を、自分を信じてくれた仲間を、愛する幼馴染を傷つけられて黙っていられる訳が無い! 

 

「アーロンさん! 俺達も!」

 

「おのれ! 下等種族!」

 

 次から次へと魚人達の声が上がる。声に込められた殺意と熱気とボルテージが徐々に上がっていき……

 

「グシャオオオオオオ!」

 

 勢いづいた彼らの心を折るような咆哮が響いた。

 

 軍艦から発せられたその声を、結構な距離があるはずのにも関わらず、物理的な衝撃すら伴ったそれを聞いてアーロンは思った。

 

(なんだ? あの軍艦……何が乗ってやがる……)

 

 ■■

 

 プリンプリンは戦慄した。

 

 何が起きたか分からなかった。

 

 人間の十倍の腕力を持つ魚人族。

 

 精鋭部隊である自分たちであれば、一人の犠牲もなく勝てるとは思ったものの、苦戦はまねがれないと思った。

 

 その幹部とあればなおさらだ。

 

 なのにその幹部の一人が船にめり込んでいる。

 

 少女が向かっていった。

 

 そこまでは分かる。

 

 その直後轟音が響き、幹部が空に打ち上げられた。

 

 そう、空だ。空中と言った生ぬるいものではない。

 

 船から十メートル以上打ち上げられた幹部は何も分からないとばかりの表情を浮かべ、3秒以上宙を舞い、そして引力に引き寄せられ叩きつけられた。

 

「ジュッ!」

「死ねクソが!」

 

 叩きつけられ満身創痍の幹部の腹めがけて少女が飛び上がる。

 

 そして船が揺れた。甲板がクレーターでもできたようにたわみ、歪んだ。

 

 信じられなかった。

 

 その二撃で幹部は明らかに戦闘不能。

 

 それをやったのは少女。

 

 辛うじてそれを理解する。

 

「君は……」なんだ? 

 

 その疑問を考えるまもなく部下が絶望的な言葉を吐く。

 

「准将! 舵が!」

 

 その次の言葉は分かっている。分かっているが、信じたくない。

 

「舵が取られています!」

 

 絶望的だ。進路変更が不可能な船での海戦などもはや自殺行為だ。

 

 たった一言で絶望的になった船の空気を払拭するべく准将は声を張り上げた

 

「落ち着け! …………! 奴等が船の下に潜り込んで!」

 

「耳」

 

「舵を解体したんだ! 私が」

 

「みーみ!」

 

 いつの間にかすぐ近くまで来ていた少女が自身の親指で耳を指すジェスチャーを取っていた。

 

「耳塞いでろ! 雑魚ども!」

 

 彼女はそう言うと大きく息を吸った。

 

 それを見て、プリンプリンの鈍い勘も最大の警鐘を鳴らす

 

「耳を塞げええええ!」

 

 能天気な上司の今まで聞いたことないほど切羽詰まったその声に触発され、海兵たちが耳をふさぐ。

 

 そしてそれは正解だった。

 

「グシャオオォオオオオオオオオオ!!!」

 

 それは音の爆発であった。

 

 人のから発されたとは思えない、物理的な衝撃すら伴ったその爆音は、海に伝わりそこで爆ぜた。

 

 空気中を遥かに上回る速度で水の中を進む音の衝撃は

 

 船底を破壊しようとしていたその生物、一人の魚人の意識を刈り取りかけた。

 

 その魚人の名はハチ

 

 魚人一の剣士を自称するタコの魚人だ。

 

 彼は馬鹿だ。

 

 頭を使う仕事ができないので、幹部であるのにも関わらずアーロンパークへの送迎役が役目となっている。

 

 さらにはその役目すら満足にできずうっかり敵対者をアーロンパークにみすみす通す程だ。

 

 そのため彼は周りから良くも悪くも何も考えてないと思われている。

 

 そしてそれは間違ってない。

 

 間違ってはいないが合ってるとも言い難い

 

 何故彼が何も考えていないか、それは考えてしまっては心が折れてしまうからだ。

 

 遡ること15年、彼の知る限り最も優しく最も正しく最も愛情深かった恩人は惨たらしく死んだ。善意を裏切られ、狡猾な罠に掛けられ。

 

 あんな死に方をしていい理由が無かった。いいはずが無かった!! 

 

 そして彼を殺したクソ共は今ものうのうと生きていられる。彼の痛みも苦しみも知らずに。

 

 何故? 何故? 何故? 考えて考えて考えて、そして考えを放棄した。

 

 考えた所で、世界とはそういうものだ、理不尽と苦痛が詰まったゴミクズそのものだという結論以外、馬鹿な自分には出せそうに無かった。ならば馬鹿な自分は馬鹿らしく何も考えない。世界の理不尽を考えないことで生きていこう。倫理なんて考えない。善悪なんて考えない。他者のつらさ等考えない。そうしないと壊れてしまいそうだったから。

 

 生来の善性を捨ててまで、考えないと言う愚行を犯すのがハチなりに世界との戦いであった。

 

 だが! 

 

 ハチは思った。

 

 今しがた自身の意識を刈り取りかけた、船上のナニカが発した海王類に匹敵する大咆哮。

 

 そこに込められた異質な禍々しい殺意と攻撃性と加害性! 

 

 今は! 今だけは考えないといけない! 

 

(考えろ! 考えろ! アーロンさん! おれは!)

 

 その瞬間ハチの身体をとてつもない衝撃が襲った。

 

「グシャオオォオオオオオオオオオ!!!」

 

 船の上のナニカが再びの咆哮をあげたと気づいた直後、彼の意識は完全に刈り取られた。

 

 ■■

 

 2度の音の爆発に耐えきれず、気を失い浮いてきたタコの魚人を見て海兵は思う。

 

 この緑髪の少女は何なのか。規格外の膂力と凶暴性。明らかに常人ではない。

 

 そして結果だけ見れば、保護するべき弱者だと思われていた少女に助けられた事になる。

 

 それが海兵達には屈辱だった。

 

 何故他者を保護する事で金を得る立場の己が一般人を守る事すらできず、それところか守られているのか。弱いのが情けない。義務を果たせないのが情けない。

 

最も今は反省する暇なとないのたか

 

「鮫・ON・DARTS!」

 

 その掛け声と共に一人の魚人が海から飛んできた。

 

 跳ねると言ったチャッチなものではない、飛行とも言える跳躍。そして船の上に飛び込んできた。

 

 分かったのはそれだけだ。

 

 それだけで少女は吹き飛び、一人の魚人が船に突き刺さっていた。

 

「シャハ……」

 

 突き刺さった鼻を抜き彼が立ち上がる。

 

 2メートルを優に越す長身。ノコギリザメの様な鼻。青白い皮膚。

 

【ノコギリのアーロン】がそこにいた。

 

「ごきげんよう! 下等種族共、俺は……グアアアア!」

 

 

 彼は最後までその言葉を言えなかった。

 

 吹き飛ばされながらも、空を蹴って強引に方向転換した少女の蹴りがみぞおちに突き刺さっていたからだ

 

 

「黙れ! 殺す!」

 

 そして戦闘が始まった




誤投稿してしまい申し訳ありません。イム様が思ったよりやばかった…

主人公の口調は

  • このチンピラ口調が良い
  • 〜だよ 程度に柔らかくするべき
  • 〜だわ 程度に女言葉とするべき
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