リュウリュウの実:モデルイビルジョー 作:ゲケエベレッケ
この回もアンケート次第で日本語が崩壊しないように書き直します。セリフもっと多く入れるべきだと思ったらコメントでその旨をお伝えしていただけると嬉しいです
痛い。
苦しい。
ひもじい。
それが彼女の人生の大半を占める感情だった。
彼女は飢えていた。彼女は痛めつけられた。
彼女は虐げられた。
彼女は絶望した。彼女は苦しかった。彼女は死を懇願した。
だからこそ彼女は思った。
虐げられる事がこれほど苦しいのなら、誰にもそんな思いをして欲しくないと思った。
自分の味わった痛みを誰にも味わって欲しくないと思った。
自分の味わった苦しみを誰にも味わって欲しくないと思った。
だから彼女は叫んだ。
「食、食べます! その実は私が食べます! だから他の皆さんにはそれを食べさせないで下さい!」
彼女は確かに善人だった。少なくともこの時までは、その悪魔の実を喰らうまでは。
食べさせられたその実の名は
【リュウリュウの実:モデルイビルジョー】
そのモデルとなった異界の竜は他に類を見ない凶暴性と異常なまでの食欲を持つ事で知られる大型の竜種。
自らの生命活動を維持するために他のあらゆる生命を糧とするとして恐れられる特級の危険生物であり、
かの世界では、《健啖の悪魔》《貪食の恐王》《恐暴竜》とも呼称され、その出現と脅威を警戒されていた。
異常に代謝が高く、体温と巨体を保つために常にエネルギーを欲しており、過剰なまでに食糧を追い求め続ける性質を持つ。
首元まで裂けた巨大な口と無数の棘に覆われた顎からも想像できるような肉食性で、その捕食対象は文字通り「ありとあらゆる生物」。
小型生物から地域に君臨する大型の支配者、果ては人間種やかの世界の頂点生物まで、
目に映る者全てを喰らい尽くそうとする。
地域の主として君臨する怪物をも圧倒し、生けとし生けるもの全てに積極的に捕食を試み、互角以上に争える凶暴性と戦闘力を併せ持つ。
その危険度はかの世界の超越者にも並び立つとされる他のあらゆる生命を糧とする、特級の危険生物。
これを食べさせられた結果、彼女の心は壊れた。
これはそうなる17年前の話だ。
■
なぜお前などが生まれてきた。
お前が生きていても誰も喜ばない。
不幸になって欲しい
お前は不幸せになるために生まれてきた。
それが彼女が生まれてからの10数年言われ続けていた言葉だった。
この世界には奴隷と言う制度がある。
他者を強権的に支配し、財産の収奪や労働の強制、暴行等の虐待を日常的に行わなれる、奴隷。
この世界の法は奴隷を認めていないが、この世界の最高権力者である、世界貴族、通称天竜人が大量の奴隷を所有している時点で単なる建前でしかないだろう。
そしてこの世界においてもっとも不幸な奴隷とは天竜人の奴隷である事は間違いない。
彼らの奴隷となったものはまず外すと爆発する首輪を付けられてしまい、仮に脱走しても自動的に首輪が爆発して死亡、よくても全身に大火傷を負うことになる。
その後、天竜人の奴隷には“天駆ける竜の蹄”と呼ばれる天竜人のシンボルを焼き印として入れられる。
一般的な奴隷は奴隷は主に労働や愛玩目的で用いられるが、天竜人の奴隷は乗馬の代わりの移動手段として四つん這いで移動させられるなど当たり前。見世物目的で鎖へ繋がれ行進させられるなど、おおよそ生物に対して行うものではない非道行為を強いられる。
天竜人の奴隷の平均寿命は1年も無いと言うのがその扱いの実情を物語っていると言えるだろう。
そして彼女はこの世界にその天竜人の奴隷として生まれてきた。奴隷の母親から生まれてきた生まれながらの奴隷だった。この世界ではよくある、ありふれた悲劇。
ただ一つ違うのは、彼女は奴隷の中でも最下層であった事だ。
奴隷であった彼女の母は突然孕んだ上に父親が誰かを決して言わなかった
それを見てとある奴隷が言った。
「この女は天竜人に媚びて、自分だけ助かるために奴等の子を孕んだのでは」と
それはほんの僅かな悪意だった。
それに対して帰ってきたのは周囲からの賛同の声。
なぜこうなったのかはどうでも良い。本当に天竜人に孕まされたかもどうでも良い
彼らの頭にあったのは、この女を天竜人に媚び天竜人の子を孕んだ敵と言うことにすれば、奴隷達の敵として断罪できるということだった
■■
八年後
天竜人が住まう聖地マリージョア。
そこの城と見紛うばかりに豪奢な邸宅の外れにある奴隷の居住地
そこで物心ついた時から彼女が感じていたのは、彼女の一挙手一投足を舐め回す様に見る視線だった。
それは彼女の行動に少しでも不備があれば、いや無くても罵声を飛ばそうと、虎視眈々と怒鳴りつける口実を見つけようとする目
何故? 決まってる。天竜人に媚びる様な、奴隷の敵の娘、そして天竜人の血を継いでいる可能性がある人間のクズ、そんなもの排除しなくてはならないからだ。
それは忌むべき血だからだ。クズと天竜人の穢れた血のサラブレッドだからだ。
要は単なる奴隷達の憂さ晴らしだ。
常日頃天竜人に虐げられ、明日をも知れぬ恐怖に怯える地獄の今日を生きる奴隷達の唯一の娯楽。生贄。
そのために彼女は生まれた。
奴隷は天竜人に虐げられ、彼女を虐げる
彼女は天竜人に虐げられ、奴隷に虐げられる。
初めの頃はその日常もそう酷いものでは無かったが、日を追うごとにそれはエスカレートしていき、今では主人の天竜人以上に彼女は憎まれている。
長年の憂さ晴らしの結果。奴隷達の認識は歪み、彼女が諸悪の根源であり、天竜人様はそこまで悪くないお方、むしろこのクソ女から自身を助けようとしている方と言う者まで出ている。
彼らが何故この様な思考に至ったのか、真っ当な皆様は理解できないであろう。
人間の心は絶対に勝てない相手に長期間敵意を向ける事ができない様に出来ている。
憎いという理由で圧倒的格上に喧嘩を売るなど自殺行為だ。そして生物の本能は自殺行為に繋がる思考を許さない。
なので人は勝てない敵に対してはどれだけ虐げられようと、一定以上の憎悪を持てない。場合によって親近感を持つように出来ているのだ。
有名なストックホルム症候群もこの防衛心理が働いて起こる言われている。
しかし防衛心理で強者への怒りを抑制されても虐げられた痛みは消えない。怒りそのものは消えない。
そして水が下に下に落ちるかのように、行き場を失った怒りと憎しみはは常に弱いほう弱いほうへと、向かって行く。
結果彼女は諸悪の根源とされ虐げられた。
彼女が2歳になった頃には彼女の母は奴隷達のリンチにあって死んでいた。
しかしそれが主人の目に入った日、所有品に手を出したと言うことでリンチに参加した奴隷は、余興としてワノ国の自殺行為である切腹を命じられた。
余興としての自死を命じられたその奴隷達は、初め呆然としていた。
何とか知恵を絞り出し、まだ言葉も話せない彼女に罪をなすりつけようとしたが、肋の浮くほどに痩せた言葉も話せぬ彼女がミンチと紛うばかりの惨殺死体を作れるとは思う者はその場にはいなかった。
自身で腹を裂くまで、切腹どころでない痛みを与えてやると言われ、事実その通りにされ、最終的には天竜人の見世物となりながら嘲笑の中彼らは自身の腹を掻っ捌いて死んだ。
恨み言を彼女と彼女の母親に吐きながら。
そんな事があったので今では彼女に物理的危害を加えようとする者はいない。
しかし精神的攻撃は別だ。
彼女が寝返りを打った途端、それを待っていたかのような怒声が四方八方から飛ぶ。
それにももう慣れた彼女は思い出す。
この罵声に怯え眠れなかった時の事を。
この屋敷の数多の不文律の一つに朝、奴隷は主人よりも速く起きて、屋敷の掃除を済ませた後に直立不動でご主人様を迎える事と言うものがある。
前日一晩中鳴りやまない怒鳴り声によって寝不足になっていた彼女は主人の前で寝て崩れ落ちた
結果意識が飛ぶまで折檻させられ、熱湯をかけられ右目を失明した。
瀕死の身体を引きずりながら奴隷の居住用スペースに変えられた小屋に戻って見れば、今日の食事は全て汚物に置き換えられていた。それを見て吐いた彼女を見た奴隷達の嘲り笑いは1時間以上途切れる事が無かった。
そしてギリギリの食事で生かされている奴隷は1食でも抜けば命に関わる。
次の日、空腹で動けなくなり主人の出迎えが出来なかった彼女は主人に胃液を全部吐き出すまで殴られて、焼けた刃物で悲鳴が枯れるまで切り刻まれた
■■
彼女が10歳になる時には、彼女の同期の奴隷は皆死んでいた。彼女だけは生き残っていたのは奴隷のガス抜きとして有用だと思われ生かしてもらえていたには過ぎない。
消耗品として使い捨てた方が安い奴隷など、壊すまで使って壊れればまた買えば良い。
ただ、一人生かして置くだけで奴隷全体のメンタルケアになる奴隷となれば、多少は厚遇される
なんと治療すらされた事もある。
当然小屋に戻れば天竜人に媚びる敵だと嬉々とした罵倒の嵐が飛んだが。
もう当時とは奴隷の顔ぶれも変わっているのに。
そして彼女の生活は変わってないどころかもっと酷くなっていた。
結局は彼女を死なせなければ、暴力さえ振るわなければご主人も咎めて来ることは無い。
そのため他の奴隷に食事は奪われ、寝床も使う事ができなかった。
透明な水が飲める日は運のいい日だった。彼女の主食は土だった。昆虫はご馳走だった。
今日も冬場に小屋から追い出され、何度も吐きながら土と雑草の混合物を食う彼女を奴隷は嘲笑い見せびらかすように奴隷用の腐った様な食事を食べていた。
母が死んでからの彼女の人生でただ一つだけ良い事があるとすれば、名前を得られた事だろう。
奴隷達につけられた名は《ナナシ》
名をつける価値も無いと言う嘲りを込めたその名をつけられた時が、母が死んだ後の彼女の人生でもっとも幸せだった思い出だった。
余談だが彼女にその名をつけた彼、及びに彼の仲間は後日、脱走を試みた結果捕まり、
嘘を見抜き、全てを諦め、逃走すらしようとしなかった者は、逃げるまで急所を外した銃弾に撃たれた。
彼らは最後までナナシにそそのかされたのだと言っていた
■■■
「ごちそうさまでした」
今日も食事とも言えない、土をなんとか食べ終え、彼女は手を合わせた
そして今もなお彼女を指さして笑っている奴隷を目に入れないよう振り向き、土まみれの口を拭う。
どうせ何をしても彼らは嘲笑うのだろう。
ならば気にしなくていい。私が何をしようと結果は変わらない。なら心を麻痺させて少しでも痛みを受けないようにしよう。
何千何万と繰り返した。日常。
その中で死んだ目で小屋から離れるナナシの目に夕日が目に入った。それは本当に何の変哲もないいつも通りの夕日。いつも通りの、何千何万度も見た夕日。しかしそれを見てナナシは泣いていた。
なぜそうなったかは分からない。
何故そうなったかは彼女にも分かっていないだろう。
確かなのは一度表に出た感情と共に、彼女の心の蓋は外れたと言う事だ。
グラスから溢れそうな水が決壊するかの如く、彼女の感情が溢れる
ナナシは叫んだ。
「死にたい! 死にたい! 死にたい! 死にたいよ! お母さん!」
やっと主人公の心理描写ができる…
今回の話の説明の分かりやすさを5段階評価で
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