ムコーダさんは一児のパパ   作:一死二生

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第四話 "ポテトサラダ"

日差しによって目を覚ましたムコーダは、自分が今どこにいるのかを思い出すのに少し時間が掛かった。

 

「(…ああ。ここは異世界で、隣町に向かうために野営をしていたところだったな)」

 

心の中で今の現状を把握したムコーダは小さい寝息が聞こえてきたのでそちらを見てみると、そこにはアザミがすやすやと眠っていた。その寝顔はとても安心しており、ムコーダの傍が安全であると理解しているかのようだ。

 

アザミを起こさないように周りを見てみると、既に起きている人たちが後片付けをし始めていた。そこでムコーダは少し寝すぎたことを理解し、アザミを起こさないようにゆっくりと寝床から出ようとしたが、ムコーダが寝床から出ようとしたのを察知したのかアザミが目を覚ましてしまった。

 

「ぱぱ…?」

「あー、起こしちゃったか。おはよう、アザミちゃん」

「…お、おはよう…ございます」

「ちょっと後片付けに参加してくるね。アザミちゃんはもう少し寝てていいから」

 

起きたばかりで少し寝ぼけながらもムコーダの挨拶に返事をしてくるアザミ。そんなアザミの眠そうにしている姿に微笑ましく思いながら立ち上がる。眠そうなアザミへまだ寝てもいい事を伝えてから後片付けに参加しに行ったムコーダが商人のおっさんと雑談しながら片付けていると、起きてきたアザミが近づいてきているのを見つけた。

 

「どうしたの?」

「えっと…おてつだい、します」

 

恐る恐るお手伝いの申し出をしてくるアザミを見てなんていい子なんだと思ったムコーダだったが、自分が子供の時にお手伝いしますなんて言えただろうかと思い出す。どう思い出してもお手伝いより遊ぶ方を優先していたと思い、じゃあ子供のアザミが自らお手伝いを言い出すという事は…と、そこまで考えたムコーダは悲しくなったが、せっかくの申し出を断るのもどうかと思ったのでお願いすることにした。

 

「じゃあ、毛布を畳んでおいてくれるかな?」

「わかりました」

 

毛布を畳むのならばムコーダからもアザミの姿が見えて安心だし、焚き木の後始末みたいな怪我をする危険性も無いと思ったのでお願いすると、返事をしたアザミはすぐに毛布を片付けに行った。

 

「いい子ですな」

「ええ、本当にそうなんですよ」

 

そんなアザミを見ていた商人のおっさんが呟いた言葉に同意するムコーダ。実際、本当にいい子だと思うムコーダだが、チラチラ見えるアザミの背景に悲しくなってしまい、悲しくなるたびに出会った時のアザミのような状態にはさせないと決意することになっていた。

 

実際には前の世界でアザミの身に何が起きたのかは分からず、あくまでムコーダの想像でしかないが、ムコーダは自分の予想が間違っていないんだろうなと考えている。そうでないのならばなぜ、服がボロボロで汚れていてその服の下は怪我だらけだったのかの説明がつかないからだ。

 

そんなことを思いながら焚き木やその他の後始末を終えたムコーダは、アザミが畳んだ毛布をバッグに仕舞ってから馬車へと乗り込む。もちろん、毛布を畳んだアザミを褒めるのも忘れずにだ。前の世界で子供を持ったことが無いムコーダだったが、褒めることの重要性は理解していた。褒められたアザミは少しの間だけ戸惑っていたが、褒められていたと分かると少し微笑んで嬉しそうだったので、ムコーダは間違っていなかったことに少しほっとすることになった。

 

 

 

 

その後は何度か魔物に襲われたが護衛の冒険者のおかげで無事に旅を続けていき、日が落ちてきたところでキールスへと辿り着くことが出来たムコーダとアザミ。商人のおっさんは知り合いの商会に行くときにムコーダとアザミのことも誘ってきたが、ムコーダはそれを断って一刻も早く国外へ出るために行動を起こす。

 

まずは隣国へ向かう馬車の停留所を確認して次の馬車がいつかを見ようと思ったムコーダがアザミを連れて停留所へ向かってみると、そこには『乗合馬車運行停止中』という看板がかかっていた。

 

「うそだろ…?」

「?」

 

思わず呟いたムコーダとよくわかっていないので首を傾げるアザミ。

 

ムコーダはこのことに関しての情報を集めるために近くの飯屋へと入ることにした。ついでにご飯も食べればいいなと思ってのことだ。

 

カウンター席が丁度空いていたので座る。アザミにとっては少し椅子が高くて座るのに苦労していたので、脇の下に手を入れて持ち上げて椅子の上に座らせておいた。

 

適当にご飯を注文して待つ間に、横にいる剣を近くに置いてある冒険者っぽい二人組に声を掛けてエールを奢って情報を貰った結果、乗合馬車の停止は人口の流出を防ぐためのものらしい。

 

この国は北側にいる魔族と戦争しているのだが、西にあるマルベール王国という国とも戦争を始めるとのこと。やはりヤバイ王様だったんだなと納得して冒険者の二人組にお礼を言ってこれからどうするかを考える。

 

乗合馬車が無いという事は馬車を買うか歩きになるが、一般人のムコーダではアザミを守りながらどころか己の身一つすら守れないだろう。

 

と、そこでムコーダは冒険者に依頼をすればいい事に気が付く。そうと決まれば早速ギルドへ向かおうと思ったムコーダがアザミの方へと振り向くと、そこには笑顔でご飯を食べるアザミの姿があった。ムコーダは既に食べ終えていたので、しばらくアザミを微笑まし気に眺め、アザミが食べ終わったところで声を掛ける。

 

とりあえず、今は時間も遅いので宿を取ることにしたムコーダは、先ほどの冒険者とは違う冒険者の人に声を掛けて宿を教えてもらい、その宿へと向かうことにする。

 

無事に部屋を取ることが出来たムコーダは、アザミと一緒に部屋であることをしようと考えた。それは…歯磨きである。

 

「アザミちゃん、歯磨きしようか」

「はみ、がき?」

 

まさかの歯磨きを知らないという事を知ってしまったムコーダはショックを受けるもののなんとか持ち直し、ネットスーパーで買っておいた歯ブラシと子供用の歯磨き粉を取り出す。

 

この世界には水道が存在しないので、これまたネットスーパーで購入したコップと桶を用意し、コップの中に飲料用の水を入れておく。

 

「そう、歯磨き。これをしないと虫歯になって痛いからね」

「いた、い?」

「そう。でもこれをすれば大丈夫だから」

 

痛いと言う言葉に不安げな顔を浮かべるアザミを安心させるように歯ブラシを見せる。

 

「さ、あーんってお口を開けて。飲み込むのは我慢してね」

「…あー」

 

アザミはムコーダの言う通りに口を開けたので、その口の中に歯磨き粉(子供用)を付けた歯ブラシを入れて掃除し始める。

 

「ぁー、ん…ぅ」

「…よし、今度は口をいーってしてみようか」

「ぃー」

「いい子いい子」

 

今度は前歯を歯ブラシで擦って汚れを落としていく。そうしてしっかりと汚れを落としたムコーダは、あらかじめ用意しておいた水の入ったコップを持ってアザミの口元へと近づける。

 

「この水を口に溜めて口の中を洗ってからこの桶に吐き出してね。飲み込んじゃダメだよ」

 

言われた通りに口の中に水をためた後にアザミは桶の中へと水を吐き出した。それを何度か繰り返させて口の中を綺麗にさせたので歯磨きは終了である。ムコーダも歯磨きを終えるころにはアザミが眠そうだったので、その後はこの四日間と同じように一緒のベッドで眠りに付くこととなった。

 

 

 

 

 

 

翌朝。起きたムコーダは腕の中で眠るアザミの姿を確認してから上半身を起こして伸びをする。それと同時にアザミも目を覚ましたので、二人でベッドから起き上がってご飯を食べに行くことにする。今回泊まった宿の朝食も満足できたムコーダは、アザミが美味しそうに食べているのを眺めながら待ち、食べ終えたのを確認してから声を掛けて一緒に冒険者ギルドへと赴く。

 

やってきた冒険者ギルドは早い時間だからなのか冒険者でごった返していた。アザミと手を握って訪れたムコーダを見る視線はあったが、子供と大人でいることから依頼主であると見られたのか絡まれることは無かった。

 

しばらく並んでから受付嬢に依頼をしたい旨を伝えると、どのような依頼かを尋ねられたので伝える。

 

「徒歩でフェーネン王国までの護衛依頼ですね。護衛依頼となるとCランク以上の冒険者に依頼することになり、お二人の護衛という事なので最低でも金貨10枚は必要かと思います。ですが、今は乗合馬車が停止されていて護衛任務の需要が高まっているので金貨12枚あった方がいいかと思われます」

 

金貨12枚か…と、懐へのダメージを考えるが安全には変えられない。

 

「分かりました。では、金貨12枚でお願いします。それと、食事はこちらで用意するということでお願いします」

 

金貨12枚だと受けてくれる人がいるか不安に思ったムコーダは、旅の途中の食事を用意すると言う条件も付け加える。料理人と言うわけではないが、前の世界では一人暮らしでよく料理をしていたので作れるし、材料もスキルで安く抑えれるので大丈夫だと考えたためだ。

 

そうしてギルドに金貨12枚を預けたムコーダはアザミと共に冒険者ギルドを後にした。

 

宿へと戻って来たムコーダは受けてくれる冒険者が現れるまでどうしようかと悩む。とりあえず、ネットスーパーで色んな物を購入することにした。鍋やフライパン、まな板に包丁を購入してから最後にカセットコンロを購入した。この世界にカセットコンロがあるかは分からないが、もし無ければ人前で使わなければいいだけの話だ。

 

とりあえず色々と購入したムコーダは、横に座ってムコーダの手元を見ているアザミが目に入ったので前回にもあげた菓子パンを渡そうと思いそれも購入した。

 

段ボールで出てきた購入品を取り出してから菓子パンだけを取り出す。

 

「はい、アザミちゃん。これ食べていいからね」

「っ!…あ、ありがとう、ございます」

 

菓子パンを見たアザミは一瞬だけ目を輝かせる。そんなアザミを見たムコーダは微笑ましい気持ちになって顔がデレデレに崩れるが、アザミは菓子パンに夢中になっていて読心のスキルも使っていないのか全く気が付く様子が無い。

 

菓子パンを手渡すと、アザミは嬉しそうに微笑んで菓子パンを大事そうに手で持つが、どうやら開け方が分からないのか困っている。そんな姿も可愛いなと思いつつ菓子パンの袋の開け方を教え、無事に開くことが出来たアザミは嬉しそうに中の菓子パンを手で持って食べ始めた。

 

どうやらアザミは食べるのが好きみたいなので、ムコーダは買ったカセットコンロを試す意味も込めて何かを作ろうと考える。今いるのは宿の中なのであまり匂いの強いものは作れない。

 

「(うーん、子供でも食べれるもの。…ポテトサラダはどうだろうか? おれも子供の時は好きだったし。…よし、ポテトサラダにしよう)」

 

そうと決まれば早速ということで、ネットスーパーでジャガイモ、きゅうり、小さめのハム、マヨネーズを購入する。

 

まずは鍋の中に水を入れて火にかける。その間に歯磨きに使った物とは別の桶を使ってジャガイモときゅうりをしっかり洗っておく。

 

沸騰した所に洗っておいたジャガイモを皮が付いたまま投入する。ジャガイモを茹でている間にキュウリを輪切りにし、ハムは短冊切りにしておく。

 

きゅうりとハムを切ってしばらくするとジャガイモが茹で終わったので取り出し、熱いままのジャガイモを我慢しながら皮を剥いてボウルに入れヘラでひたすら潰す。潰しているところをアザミが興味深げに見ていたので、ジャガイモを潰す作業をしてみるか聞いてみると肯定の言葉が返ってきたので任せてみる。

 

「んしょ、んしょ」

「上手だね」

 

アザミは楽しそうにジャガイモを潰していた。普段はしっかりしているけれどこういうところは子供だなぁと眺める。そんなアザミのおかげで綺麗にジャガイモを潰すことが出来たので、次にあらかじめ切っておいたきゅうりとハムを潰したジャガイモの中に投入する。本当はニンジンとかタマネギも入れるのだが、加熱すると間違いなく匂いが充満するタイプの野菜なので断念。

 

潰している間にジャガイモがいい感じの温度になっていたので、最後の仕上げにマヨネーズを投入してヘラでかき混ぜる。そして最後に塩と胡椒で味付けをしてお皿に盛りつければポテトサラダの完成だ。

 

「よ~し、出来た。アザミちゃんが手伝ってくれたおかげで早くできたよ、ありがとうね」

 

アザミに感謝を述べてからポテトサラダの盛られたお皿を差し出す。受け取ったアザミにスプーンを渡したムコーダが食べ始めたのを見たアザミも一口食べ、その美味しさに瞳を輝かせ、ぱくぱくと食べ始めた。

 

上手くできたと思いながら食べつつアザミの様子も見る。アザミが美味しそうに食べているのを見て口に合って良かったとほっと一息つく。その後は二人で食べ続けるが、多めに作っておいたポテトサラダの全てを食べることはできなかったのでお腹が空いた時に食べるためにアイテムボックスへ保存しておくことにした。

 

なお、いっぱい食べてお腹いっぱいになったはずのアザミはアイテムボックスに収納されるポテトサラダを悲し気に見つめていた。アザミはポテトサラダをとても気に入ったみたいだったので、今後も何度か作ろうと考えるムコーダであった。




なんか文章がおかしい気がするので、こっそり書き換えてるかもしれません
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