とても励みになっています。
また、誤字報告をしてくださる方へ感謝を。
自分でも見返しているんですけど、思ったより誤字が多くて笑うしかないじゃない。
待ち合わせの場所へと向かうと、そこには既にアイアン・ウィルの皆がそろっていた。少し遅れたかなと思ったムコーダは早足で進もうとしたが、アザミの足だと辛いだろうと思ってすぐに早足で歩くのを辞めてアザミの速度に合わせて歩く。
「遅れてすみません」
「いや、俺たちが早く来すぎただけだから気にしないでくれ」
「あはは、そう言ってもらえると助かります」
遅れたかと思ったので謝罪から入るムコーダに返答するヴェルナー。その表情から見るに本当に気にしていないようなのでホッとするムコーダ。
「さて、行くとするか」
ヴェルナーの出発の合図と共にキールスの街を出発する。アイアン・ウィルは言葉を交わさずともムコーダとアザミを護るような配置についた。先頭は斥候のリタがいて右側には剣士のヴィンセント、左側が魔法使いのラモンで後方右側が回復役のフランカで最後に後方左がヴェルナーだ。
何も言わずともついた配置だが、ムコーダは事前にこういう感じで進んで行くと言う説明を受けていたので何も言わずに受け入れる。プロが言うんだし言う通りにしていればいいだろうという考えだ。
「アザミちゃん、大丈夫?」
「はい」
「辛くなったら言ってね。パパが抱っこするから」
「…はい」
アザミを心配しながら歩くムコーダをアイアン・ウィルのメンバーは微笑ましく見ていた。もちろん、アイアン・ウィルのメンバー全員がムコーダとアザミが血の繋がっている親子ではないことに気が付いているだろう。なにせ、子供のアザミがムコーダに対して敬語なのだから。
♢
「ふぅ、ふぅ…」
キールスから出発してしばらくしたころ、アザミの息が荒くなっていることに気が付く。実際はもう少し前から辛そうにしてたが必死に隠していたし、あんまり過保護になるのもダメかなと思って声を掛けていなかったが、さすがにここまで息を荒げているのを無視することはできないので声を掛けることにする。
「…アザミちゃん、大丈夫?」
「だい、じょぶ…」
アザミの返答を聞いたムコーダはすぐに理解した。「あ、これ本当に限界だ」と。なにせ、いつもはしっかり付いている敬語が外れている。いつもは〇〇ですって付けていたのに。ここまできたら過保護では無いよな、と一人で納得するムコーダは一度立ち止まってしゃがみこんだ。
「大丈夫なんだね。でも、俺が心配だからこっちにおいで」
「う、ん…」
しゃがんだままアザミに来るように告げる。この時にムコーダ自身がしたいからと言うようにする。というのも、ムコーダが前の世界でちらっと見た子供に対しての対応でそのようなものを見た気がするからだ。子供が頑張っている時に否定的な言葉と一緒に子供のしていることを代わりにやるのはダメ…みたいなのだ。まあ、ムコーダはそこまで真剣に見ていたわけではないので曖昧だが。
いつもは「はい」というアザミが外面を取り繕う暇もないくらい疲れ切っているのを見たムコーダは、もう少し早めに言えばよかったと少し後悔する。しゃがんだムコーダに呼ばれたアザミは素直に近づいてきたのでそのまま抱き上げる。
「(軽っ!? 想像より軽い。普通、子供ってこんなに軽い訳ないよな…?)」
抱き上げた時に想定していたより軽くて驚くムコーダ。軽い上にアザミの身体は細すぎて少し力を入れたら折れてしまいそうで怖く、丁寧に抱き上げる。アザミは疲れすぎて頭が回っていないのか無意識で抱き上げたムコーダに抱き着き、そのままゆっくりと眼を閉じた。
「はは、さすがに子供には辛い道のりだろう。むしろよくここまで歩いたもんだ」
「本当、よく歩いたものだ」
「よくがんばりましたわね」
「すげェよな。俺が子供のころなら絶対泣いてたわ!」
護衛対象が止まるのに合わせて足を止めたアイアン・ウィルの面々が口々にアザミを褒める。実際、前の世界とは違って土の道を歩いているので体力の消耗も激しいのによくここまで歩いたものだとムコーダも思う。ムコーダ自身も前の世界じゃそこまで運動をするタイプではなかったのもあるだろうが、大人の男性でも疲れはあるのだからまだ少女というよりは幼女と言ってもいいアザミがここまで弱音の一つも吐かずに歩いたのはとてもすごいことである。
「っと、止まってしまってすみません。行きましょうか」
「なに、気にしないでくれ」
急に止まってしまったことを謝罪してから再度出発する。ムコーダの腕にはアザミがいるが、かなり軽いのでムコーダでも簡単に持ち上げながら歩くことが出来た。
♢
「ここで昼休憩にしよう」
アザミを抱き上げてしばらく歩いていると、森の方に開けた場所が見えてきたところでヴェルナーの一声で休憩することになった。
「あ、じゃあ昼食を用意しますね。アザミちゃん、起きれる?」
「…ぅ? ゅ~…」
ヴェルナーへ昼食の用意をする旨を伝えた後に抱き上げているアザミを起こし始めるが、アザミは眠そうに目を擦っている。
「あはは、眠そうだね。でもご飯を作りたいから起きて欲しいな」
「…ごはん…あむ…」
ご飯と言う言葉に反応してアザミはまだ眠いながらも起き始めた。ただ、まだ眠いのか寝惚けてムコーダの服を食べ始めている。
「ちょ、それはご飯じゃないよ」
「ぅゅ? ぅ~…」
「あはは、ほら起きて。すぐにご飯を用意するから待っててね」
ムコーダの言葉で口にしているものがご飯じゃないことが分かったのか口を離すアザミ。まあ、美味しくないから離したのかもしれないが。
「アザミちゃんは私が見ておきますわ」
「ありがとうございます。お願いしますね」
起き始めたアザミちゃんをその場に下ろしてしっかり立てることを確認しているとフランカさんがアザミを見ていてくれると提案してくれたのでお願いしておき、自分は昼食の準備をするために近くにあったいい感じの岩のテーブルの上にアイテムボックスから取り出したカセットコンロと鍋を置く。
「おっ、ムコーダさんってアイテムボックス持ちなんだ。どうりで荷物が少ないと思った」
「あはは、容量は小さいですけどね」
カセットコンロと鍋を取り出したムコーダを見たヴィンセントの言葉に予め考えておいたことを言っておく。容量が少なければアイテムボックス持ちはいるらしいのでこれで大丈夫だろう。
「この魔道コンロすごくない?」
「知り合いに安く譲って貰ったんですよ」
続くリタの言葉にも予め用意しておいた理由を答えておく。予め考えておいたおかげでつっかかることなくスラスラと述べることが出来たので嘘だとバレることはないだろう。
そんな理由を話した後はアイアン・ウィルの面々と会話しながら食パンにチーズとハムを挟んでサンドイッチを作っていく。もちろん、食パンとかはネットスーパーで買った物なのでこれだけでもかなり美味しいだろう。
それだけだと寂しいので木のコップにコンソメスープの素を入れて汁物も作っておく。見えないようにやるのは大変だったが、そこはなんとかしておいた。
そのコップにカセットコンロで沸かした水を入れて即席コンソメスープの完成だ。
「よし、できましたよ」
「おお!」
完成したので大きなお皿に乗せたサンドイッチをこれまたいい感じに丸机っぽい石の上に置いてからコップのコンソメスープを配って行く。
「それじゃ、頂くとするか」
ヴェルナーの合図で皆が食べ始めた。
「あ、アザミちゃん。これは手で取って食べていいんだよ」
「…いいん、ですか?」
「いいよ。このお皿の上のやつは取っていいからね。あと、このスープは熱いから気を付けてね」
「わかりました」
どうやら完全に起きているようで敬語が復活している。ムコーダとしては外してほしいのだが無理強いするのもなぁと思って言い出すことが出来ていない。
「…?」
「? 食べていいよ?」
「はい。…ぁむっ……!!!」
何故かサンドイッチを持ったままこちらを見つめているアザミにもう一度食べてもいいと言うと食べ始めた。一口齧ったあと、勢いよくパクパクと食べ始めた。いつ見てもハムスターみたいだ。小さい口で一生懸命少しずつ食べているのがそっくりだ。
ムコーダがアザミのお世話をしている時、アイアン・ウィルの面々は嬉しそうにサンドイッチを食べて口々にムコーダの料理を褒めていた。
「こんな柔らかいパン食べたことねぇ!」
「ああ、俺の田舎のパンで。アイテムボックスに入れて持って来たんですよ」
「なっ! …そんな貴重なものを」
にこにこしながら食べているリタの横で大きなリアクションをするヴィンセントの言葉に予め用意していた理由を話すと、それを聞いたヴェルナーが申し訳なさそうな顔をしてしまった。
「い、いやいや、お気になさらず」
「…ふっ、それなら、遠慮なく頂こう」
理由に納得してくれたヴェルナーが再び食べ進めたので誤魔化せたと思ってホッとするムコーダ。
「この任務、受けて正解だったね」
「そうだな。旅路で温かい物にありつけるとは幸運な事だ」
ヴェルナーがありがたそうに言ってくるので、ムコーダは「コンソメスープの素を入れただけのスープと挟んだだけのパンなんだけどなぁ」と少し申し訳ない気持ちになり、次のご飯にはもっといい物を作ろうと決心するのだった。
なお、アザミは大人たちの話を完全に無視してひたすらサンドイッチを食べていた。
進みが…!遅い…っ!
次回 おじちゃん登場予定