魔剣美少女育成対戦ゲー、転生したらなんか全員の湿度が高い   作:ZAランクマ世界83位

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初戦

 

 

 魔剣少女ブレイドマッチのゲームシステムはシンプルだ。

 育成した魔剣少女に技を六つまで習得させて、相手と交互に技を撃ちあう完全ターン制。先に相手の体力を0にした方が勝ち。

 

 魔剣少女の特性や習得する技を組み合わせることで、無数の能力構成(ビルド)や戦術を作れるのが売り。

 

 前世のランクマッチでは同じキャラでも、火力至上の攻撃的な戦術だったり、あるいは意表をついて真逆の防御主体の戦術を使ってくる場合もよくあった。

 

 同じ勝利でも、無数の手段が存在し、戦う者はソレを選び取ることができる。

 

 それは転生した現実でも同様だ。

 

 ざっくりとではあるが、ランクシステム面も同じ。

 勝てば勝つほどランクが上がり、最終的にはFランクから始まりAランク、そして最終的にはSランクへといった塩梅だ。

 

 ランクが上がるほど経験値は良質に、バトルマネーも上がっていく。

 

 最強を目指すうえで、バトルを重ねることはメリットしかないと言っていい。

 

「まあ俺達は当然、Fランクスタートなわけだが」

 

 銀髪の魔剣少女(レーヴァテイン)に、登録手続きをおこなったスマホをプラプラ見せる。

 

 覗けば電子画面のやや上あたりに、最低ランクのFと大きく表示されている。

 

 ランク登録は魔剣少女とマスターが揃ってはじめて成立する。

 以前のランクが引き継がれるわけでもなく、魔剣少女が変われば新しくランクを上げ直す必要がある。

 

 ゲームではランク上げを省略する方法もなくはなかったのだが、現実はそう甘くはなかった。

 

 まあ身の丈に合わないランク帯では色んな意味で苦労することになる。

 一歩間違えれば地獄を見る事になる。育ちきってない魔剣少女が格上に一方的にボコられることもあり得るのだ。そこら辺はブレイドマッチを運営する中央機関の、人道的な配慮と言っていいだろう。

 

「なにも問題ありません。さっさとランクを上げましょう」

 

「おお、頼りになる。なんつーか、そう、オーラが違うぜ」

 

「そ、そうですか?」

 

 魔剣少女は大人の男を一方的に殺せるパワーがあるとはいえ、ここはFランク帯だ。

 正直、上位と比べれば天と地ほどもあるのでオーラもクソもないのだが、本人が機嫌良さそうなので良しとする。

 

 実体化させた漆黒の特大剣をぶんぶん振り回すレーヴァテインがふと、思い出したように口にする。

 

「………前のランクは?」

 

「うん?」

 

「だから、前の魔剣のランクは何だったのよ?」

 

「ああ、村正ね」

 

 村正。

 

 

 妖刀の魔剣少女。

 

 

 俺の相棒にして最強クラスの一振り。

 黒髪の綺麗な紫紺の魔剣。軍服と着物を折衷したような衣装のよく似合う奴だった。

 

 文武両道、才色兼備。

 

 美人。

 

 あと巨乳。

 

 表向きはしっかり者だが、私生活はだらしない女。

 起こさないと永遠に寝る。脱いだ服は洗濯しないし、部屋の物は片づけない、掃除もしない。やればできるのに自分のやらなくていい事ならやらないやる気のない奴。

 

 そのくせ料理中に後ろからもたれ掛かってくるし、洗濯物を畳む時には膝に頭を乗せて寝ようとする妙な奴。

 

 ニヤニヤしながら家事を邪魔しようとするので、やめろと怒ったらしょんぼりしながら近くでゴロゴロするようになったアイツ。

 

 あいつは今どこで何をしているのだろうか。

 最後の夜、アイツは主人公を決死の覚悟で足止めしてくれたが、その後の行方は知れないままだ。

 

 契約した魔力の繋がりが切れていないので生きてはいるのだろうが。

 

「………どうかしましたか?」

 

「いや、なんにも。ただのBランクだよ。あとちょっとでAランク帯だったんだけど、対戦数が足りなくてな」

 

 騒動起こして、主人公に拉致されかけてこのザマだ。

 

「ふん、なら感謝しなさい? この私がさっさと頂点へ連れて行ってあげましょう」

 

「んじゃ、早速やるか。………すみませーん、対戦準備お願いしまーす」

 

「了解! いつでもOK!」

 

 広場の向かいにいる対戦相手のペアからオーケーサインが返ってくる。

 

 お互いに低いランク帯のペア、初心者も同然なので気安いものだ。

 

 だが、まずは一戦目。

 

 気合を入れていこう。

 

「情報共有だ、俺ができるサポートスキルについてなんだけど―――」 

 

「不要です」

 

 理解が及ばず沈黙。

 

 一瞬、耳を疑う。

 

 サポート不要?

 

 マスターの権限で使える強力なサポートが不要?

 回数制限があるとはいえ、状況に応じて攻撃防御強化、先制攻撃、食いしばり、弱体解除等々の効果を付与できるサポートスキルが不要だと?

 

「ごめん、なんて?」

 

「聞こえませんでしたか? サポートは不要だといったのです。貴方はそこで黙って見ていると良いでしょう」

 

「えぇ………」

 

 それは、冗談で言っているのだろうか。

 

 基本使い得のスキルなのだが。

 

 意図を捉えかねて少し考え、そして気が付く。

 

「まさか………」

 

「ふ、理解しましたか?」 

 

 レーヴァテインの自信ありげな表情、これはもうあれしかない。

 

 レベルだ。

 

 レベルの差でゴリ押す気だ。

 

 確かに魔剣同士にレベル差があれば、サポートなしでも余裕で戦える。

 もともとレーヴァテインは耐久が高めのステータス配分だ。正面戦闘は十分に可能だろう。

 

「マジでやる気か?」

「何か問題でも?」

「いや、問題はないよ。むしろ助かるくらいだ」

 

 思わぬ朗報に思わず頬が緩む。

 

 ある程度育っているのなら、そのぶん早く次のステップに勧める。

 それこそ、ランクだってすぐに上がるだろう。

 

 場合によっては()()の前倒しだって可能だ。

 

「ならば見ていなさい! 昔の魔剣なんて忘れ、文字通り最強の魔剣の勝利を!」

「ああ………! しかと目に刻ませてもらうぜ!」

 

 レーヴァテインが広場に踏み込む。

 

 相手はよくいる西洋魔剣。

 

 お互いに戦意は十分。

 

 故に、火蓋は切って落とされる。

 

 

 

戦闘開始(エンゲージ)!!!】

 

 

 

「ハァァアアアアアアアア!!」

 

「シィィィイイイイイイイ!!」

 

「アアアアアア、あぅっ!?」

 

 勝負は一瞬だった。

 

 レーヴァテインの倍以上の速度で動いた相手魔剣が、レーヴァテインの剣を叩き落とし、そのまま柄でぶん殴る。

 

 かつて世界を焼き滅ぼした魔剣は、何が起こったのかもわからない顔をしていた。

 

 ぶん殴られたレーヴァテインは白目を剥いて昏倒。

 しばらく痙攣を繰り返し、最後に一度大きくビクリと跳ね、そして動かなくなった。

 

 

 いやな沈黙だった。

 

 

 蹂躙とも言えない瞬殺。

 

 あまりにも凄惨な現場を目撃した俺は、冷静に現在の状況を察する。

 

 

 

 

 レーヴァテイン(こいつ)、レベル1や。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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