元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話 作:宵越しのモルス
一路、砂漠を征く。
アビドス高等学校の面々は封鎖地帯を突破し、再び戦闘のあったカイザーPMC基地へと向かっていた。装甲された車を走らせながら、そして、乗り捨てながらもひたすら前進していく。
「ん、11時より敵」
「またぁ!? さっきより増えてるじゃない!!」
「流石に……ちょっと疲れてきましたねー」
用意は万全とは言え、敵もまた準備期間を無駄にはしていない。回復したもの、補充された戦力が、迎え撃っていた。また、先生達一行が知る由もないが、ゲマトリアの『マエストロ』の介入による、レプリカ達の戦力増強が、少数精鋭のアビドス部隊にとっては大きな負担となっていた。
「敵戦力、予測よりも……多いです。データ照合にない敵オートマトン多数」
「全部、撃ち落として先にいくよ~急いで~」
保護対象のアキの身を一同は案じているも、戦力として一気に突破と言うのは厳しく、じりじりと残弾が削れていった。
──無理に突破しても、まだ先がある。少しでも進んで行こう。
はいっ!! と全員が元気良く返事をするも行動に焦りが見え始めている。
それも無理はない。日が昇り始める時間から戦闘を開始し、今は頭上に日が照っている。そろそろ半日立ったと言ってもいい頃なのに、基地の土地すらもまだ踏めていない。
戦力の予想図、そして、それを踏まえた準備を一日足らずで揃え、戦闘を行ったとて、数の差はいかんともしがたいものだった。
「っ!? 7時、伏兵!!! 先生!! アヤネちゃん!!」
廃墟群での戦闘にて、突出したホシノをカバーする陣形で戦闘をする最中、後衛に留まっていたアヤネと、先生が狙われた。
小弾頭のロケットランチャーが一斉に火を噴き、二人の足元で大きな砂塵を巻き上げる。悲鳴をかき消すほどの威力が主にアヤネを襲い、爆風で身に着けているものが飛んだ。
「二人とも!! 大丈夫!? ……ぐっ!!!」
セリカが一番最初に気を逸らした。その支援が抜けた穴から敵が浸透し、最前衛のホシノを追い詰め始める。ついに陣形にほころびが見え始めた。
ホシノが足を止め銃弾を四方から受け、足を縫い付けられる。シロコ、ノノミ、セリカもまた指揮の乱れ、陣形の攪拌が影響し火力に乱れが出始めてしまった。
そして、奇襲を受けた二人も無事ではあるものの、廃墟からの伏兵の位置が特定出来ずに反撃も、移動も行えない状態になっていた。
包囲が狭くなりはじめる。真綿で首を締めるように戦況が劣勢に傾いた。
「ん……! 皆を助けないとっ!!」
「シロコちゃん!?」
「シロコ先輩、ダメ!!!!」
そして、焦れて押し出されてしまったように、一人の少女が危険な賭けに出た。
遮蔽から身を躍らせ、弾をバラまきながら前方的集団に向けて特攻を掛け始めたのだ!!
当然、敵も即応するように銃口が向けられ、本来通用するはずのない特攻が無駄に潰え、彼女達は更に窮地へと追い詰められる。
──その筈だった。
「──全てを救う難しさを知って尚、その態度。その意気やよし。ね」
「……社長。行くよ」
ビル屋上、天に高く上った太陽を背負ったその塔より裁きが来る。シロコを狙う敵を正確な射撃で撃ち抜いていく。一人、また一人と、敵が倒れ、疾駆するシロコの前に道が出来がった。
そして崩れ出した陣形に、もう一人の伏兵が舞い踊る!! 白黒の髪を靡かせて、鬼方カヨコが飛び出したのだ。そして愛銃のハンドガン『デモンズロア』が轟音を立てて敵の背中を撃ち抜いていく。
「ん、来ると思ってた」
「うへー、それホント?」
援護を受けたシロコは、そのままホシノの元へとたどり着き、息ぴったりのチームワークを発揮し始める。形勢は再び逆転し始めていた。
勝ちを確信し始めていたカイザー側にとって、この事態は晴天の霹靂であり、硬い陣形と密な連携を保っていた部隊が初めて狼狽し、恐怖した。
そして、それは廃墟に潜んでいた奇襲部隊にも同様の事が起きていた。カイザーPMCが突然更新が途切れたことに困惑し、通信を試みている。
「おい!! どうなってる!!」
「ちっ、こっちだけでもやればいい!! その後、敵集団ごと吹っ飛ばしてやれ!!」
また身を乗り出して、遮蔽に隠れたつもりである先生とアヤネを装填完了したロケット砲で狙いを定めた。
しかし、そのトリガーは引かれる事無く、彼ら達に罰が降りた。
「くふふ……メガネちゃんを狙う子には、お☆仕☆置☆き。だよ」
「アル様を狙うなんて、許せません!!許せません!!」
奇襲部隊が隠れ潜んでいた廃墟にて爆発が起きる。それも何度も、執拗に。どこかしらで恨みを買ってしまった彼らは、真っ黒こげになり瓦礫の下に埋もれる事になった。南無三。
戦闘も一段落し、皆が先生の元に集まってくる。
「待たせたわね!! ここからは便利屋68が、あなた達の背中を守ってあげるわ」
大船に乗ったつもりで居なさい!! と陸八魔アルは胸を張る。
それに対して、素直に感心やら、アルちゃんかっこいいー、などの野次が飛んでくる。
本人も、決まった。と内心で自画自賛をしていると……突如、砂丘の奥が爆発した。
びくっ、となったアルの髪が靡く。皆もその反応に負けず劣らず、強烈な爆風に各々の反応を示した。
近くの戦闘が鳴り響き、そしてすぐに小さくなった。
「やっと見つけた。先生」
落ち着き払った声が、砂丘の頂点から降りてくる。
ウェーブした髪、自身の身長よりも大きなMGと、シルエットを一回り大きく見せる外套を肩に掛け、風紀委員の腕章が目立っていた。
「先生に頼まれたから、ちゃんと来たよ」
ゲヘナ学園の風紀委員の長である空崎ヒナが、先生の横に降り立つ。
「近藤アキに文句を言いに行くのでしょう?」
そう言うと、ヒナは救出メンバーを確認するように振り向いていく。
一度は敵同士であったとはいえ、顔見知り。それなりに歓迎ムードは見せていた。一部のメンバー、そう便利屋たちを除いて。
陸八魔アルは、ビビっていた。自身よりも身長の小さなロリっ子を前にして。その内心を知ってか知らずか、ヒナはアル達の姿を見て、つかつかと近寄っていく。
当然、便利屋たちに衝撃が走る。メンバー全員が絶妙な顔を浮かべていた。
「便利屋……そう、あなた達も先生に頼まれたのかしら?」
「そうね。私も正式な依頼としてここに立っているわ。空崎ヒナ。あなたと同じようにね」
両者並び立つ。互いに規模が違えど組織の長が向かい合うということ。それはもう緊張感漂う絵面であった。
(ななななな何で、風紀委員がここにいるのよぉぉぉぉ!!!)
彼女の内心を除けば、だったが。
しばらく見合った後にヒナ、小さなため息と共に離れる。
「私は風紀委員達の指揮に戻るわ。前線は受け持つから先生達は抜け出して基地に潜入して頂戴」
皆には迷惑、掛けちゃったから。と、ヒナは舞い戻る。
「それに……アキを見捨てるのも、まぁ、悪い気がするしね」
渋々、といった感じで呟く。やっぱり面倒くさいわ。と誰にも聞こえないようにそう呟いた。
そうして戦況は次第に、先生の率いる生徒達側が優勢に傾いていった。
便利屋68と、ヒナ率いる風紀委員達の奮闘により形勢は押し返される。
圧倒的な数的不利を緩和し、精鋭たる生徒たちを前にPMCは為すすべなく瓦解していく。
その勢いのままに、アキを奪還しようと目論むアビドスの少女達。風紀委員に正面戦闘を任せ、防衛線を突破した彼女たちは、基地の外壁に取りつき始めていた。
しかし、物事はそう上手く行くことは無い。
「雷!? 基地に落ちたけど!!!」
「な、何が起きたんでしょう……」
文字通りの晴天の霹靂が生徒たち側に向けても発生した。目の前の基地に雷が落ち、目の前が真っ白に染まる。目が眩むような閃光が終わった後、生徒たちがざわつき始める。
あまり見ない光景に動揺が広がる中、異変は更に発生する。徐々に前線を受け持つ風紀委員の部隊が瓦解し始めていたのだ。
「敵の勢いが、変わった?」
その異変を最初に感じ始めたのはヒナだった。
向かってくる敵の練度と精度が段違いに変わった、適当にいなしていた敵に対して攻撃が通らなくなっていく。特にそれは自動人形(オートマトン)が顕著だった。
数合わせだと思われていた機械人形たちが、まるで意思を持ち始めたかのように動き出す。狙いは正確に、そして連携を持って、こちらの戦力を的確に削いでくる。
まるで操り人形に人格が宿った様に、その強さの変化は顕著であり、あっという間に風紀委員たちが作る前線は瓦解し始め、ヒナはそのフォローに奔走した。
そして基地周辺でも、その異変は起こり始める。
便利屋とアビドスのメンバーを率いる先生の部隊もまたじりじりと押され始めていた。
空にマガジンを投げ捨て、遮蔽物となる瓦礫に座り込みながらセリカが叫ぶ。
「ちょっと!! いきなり強くなってない!? 何よあれ!!」
「うへぇ、確かに強いねぇ……皆、気を引き締めて。正念場だよ」
──確かに、少し厳しいかも……。
先生もまたそれを感じ始める、先程とはレベルが違う。正確な射撃がシッテムの箱から発生させるバリアを削っていた。
基地と言う地の利を利用し、物言わぬながも互いに連携しあうオートマトン。そして、先程までは叫びや悪態が聞こえていたPMCも、オートマトンと同じように黙々と攻撃に転じてくる。
静かで、不気味で、違和感のある戦場だった。
まるで誰かの意思によって動いているように、その戦場は推移し変化していった。川の氾濫のように、生徒たちが軍勢の波に押し返されていく。
誰もがこのままでは、と思い始めた頃、『雨』が降り始めた。その『雨』は、基地内の建物を破砕し、そして、敵前線を喰い破る。
そう、砲弾の雨が認識外から降り注いでいた。
「榴弾砲!? 一体誰が……!!」
アヤネがその光景を見て、目を見開く。そして、自身の端末に連絡が届いている事に気づいた。その連絡先はつい最近交換した、覆面水着団の六人目。阿慈谷ヒフミ、その人であった。
「アビドスの皆さん!!! ご無事ですかっ!!」
「ファウスト様、いいところで決めるなんてやるぅ!!」
「あはは……。皆さんに当たらなくて良かったです」
しれっと恐ろしい事を言いながら、彼女は続けた。
「私たち、トリニティの砲撃部隊は近藤アキさんの人命救助の為、皆さんを支援します!!」
弾着指定の座標を!もしくはざっくりで構いませんので、撃ってほしい場所をお願いします!! とヒフミは言う。その通話の後ろで、ヒフミさん!? と、驚嘆の声が聞こえた。
「了解しました。では、回線開きます」
アヤネが座標を送信すると、そこに砲弾が降り注ぎ道が開く。血路が開けて、そこを先生たちが走り抜ける。
──ついに基地内への道が開けた。
アキを助けられる。と皆の期待が高まる中、更なる異変が起こる。
最初に感じたのは地響き、そして、それは揺れに変わっていって誰もが足を止めはじめた。そしてそれは、質量を持ったものになり、ナニかが地中を這いずる感覚が足を通して伝わってくる。
『ヒナ委員長!!! 地中より高エネルギー反応。何か来ます!!』
通信越しにて、現地をモニターしていたアコが叫ぶ。
始めは皆、山が隆起したのかと錯覚した。何万トンとある砂丘の砂を持ち上げて、その予言者は顕現する。
それは、まるでビル彷彿とさせるような巨大なものが立ち上がり、生徒たちに影を落とす。機械で構成された巨体を持つ蛇が基地の近郊に現れ、ヒナたちの前に立ちはだかった。
その光景、その威容に、見慣れていない生徒たちは動揺し、驚きを叫ぶ。
基地外郭の風紀委員たちの動揺は、もはや御しきれるものでは無くなっていた。
◇◇◇◇◇◇
──ヘビ!?
先生が驚いて歩を止める。その光景は基地の敷地内に到達した先生達にも当然見えていた。
そして、その巨大な蛇を知るアビドス勢は、驚きと同時に苛立ちを覚え立ち止る。
「ビナー……っ!! こんな時にっ!!!」
ホシノが目を見開き、踵を返そうとする。
「ホシノ先輩!! ダメです!!」
ノノミが制止し、立ち止るも、ホシノは言う。
「じゃあ、アレを誰か止められるの!? 挟み撃ちにあったら、アキちゃん助けても無駄じゃない?」
焦るばかりに刺々しい物言いに一同が押し黙り、そのままホシノが駆け出そうとしたとき、先生が口を開こうとした。
「誰が、とは聞き捨てならないわね」
けれど、それよりも早く『社長』が動いた。アルはホシノの行く先に立ちふさがるようにして、彼女と向き合う。
そして、アルは胸を張る。
「いるじゃない。ここに、凄腕の便利屋が」
「自分の言ってる意味、分かってる?」
危険だから、どいて。とホシノが凄む。しかし、そんなの意に介していないように、アルは一笑に付した。
「あら、丁度いいじゃない。今回の依頼、前金の割には物足りなかったのよ」
行くわよ。と、アルが号令を掛けると、社員たちが集まり、ホシノたちに背中を向けた。
「さっき言った筈よ。あなた達の背中は『私達』が守るって」
「そーそー、私達に任せておくといいよ」
「依頼だしね、ちゃんとやるよ」
「アル様、お供します!」
4人は皆とは別れ、逆方向に強大な脅威に向かって歩いていく。
砂漠に風が吹き抜け、彼女達『便利屋68』の髪を揺らした。
「それに、あんな雑魚に構っている暇があるの?」
友達を助けるのでしょう? そう言って、アルは振り向き様に笑う。
「さぁ、行きなさいな。私達を誰だと思っているの?」
──生粋のアウトロー。便利屋68よ。
そう言って、彼女達はビナーと呼ばれた大蛇に向かって走り出す。
その光景を最後まで見送ることなく、先生がホシノの肩を叩く。
──アル達に任せて、行こう!
◇◇◇◇◇◇
基地外郭の戦闘が収まらないままにビナーが現れ、混乱が更に広がっていく。その状況を、ヒナもただ見ているだけでは無かった。
(仕方ない、か)
ある程度経験を積ませたい子を連れてきてはいたが、こうも瓦解すると苦しい。こうなるのであれば、ゲヘナの治安維持の為にイオリを残してくるんじゃなかった、と後悔した。
「アコ、こっちの残存戦力は?」
『はい、委員長。悔しいですが、機能しているのは2/3程度です』
「そう……部隊としては、壊滅気味といってもいいかもね」
『これを機に鍛え直しますので!!』
そんなに落ち込むこともないのに、とヒナは思う。相手が相手であるし、練度も相当に高い。一刻一刻とイレギュラーが起きる戦場で良く戦えていると思う。
「大丈夫。私が出るから」
そう一言、アコに告げると私はひとまず動きのない巨大な蛇を放っておいて、突出していた味方部隊を救出に向かった。
地面スレスレを飛ぶかのように、地面と平行に跳躍し翼を広げる。巻き起こる砂塵を突っ切って、最前線へと躍り出た。
愛銃を放ちながら、長い銃身を振り回す。一蹴、と言う言葉が似あう程に、敵のオートマトンが千切れ、弾け飛んでいく。
無言で戦う兵を一掃し、ガラクタの山を築き、そして、次へ。
どんどんと状況が塗り替わる戦場の中を、自身だけの色に変えながらヒナは進んでいく。その様子が伝播したのか、風紀委員はまた奮起し押し返す。彼女一人で戦場がひっくり返していった。
その状況を機械の大蛇は見兼ねたのか、戦場で動き回るヒナに狙いを定めた。
蛇を彷彿とさせる口にエネルギーを収束し、結合させる。その高熱は大岩すらも一瞬で溶かすと言われ、一般生徒がまともに受けてはひとたまりもない熱の塊が、狙いを定めていた。
そして、機械の蛇は躊躇なく戦闘の中核を担っていたヒナに向けて放った!!
地平が歪み、そして通り過ぎた地面が熱でガラスへと変化する。そして、途中にあった廃墟はドーナツ状に穴が開く。高熱の熱線がヒナへと襲い掛かる!!
しかし、ヒナは避けられなかった。否、避けようとはしなかった。
周辺には部下たちが居て、彼女が避けてしまえば部下たちの身の安全は保障できない。と瞬時に判断し、その場に残る。
愛銃の『終幕:デストロイヤー』を構え、翼を地面に差す。
熱線に向け最大火力で押し返そうと試してみる。受け流すのであれば逸らす為のエネルギーをぶつけてやればいい。
しかしもって、完全に相殺するのはゲヘナ学園最強とは言え容易い事ではなかった。
結局、放出エネルギーの差に押され始め、光が止まることなくヒナとその背中に背負った風紀委員の生徒たちを包んだ。
「……少し、痛そうね」
『ヒナ委員長っ!!!!』
アコの絶叫が木霊する。観測機材はエラーを示し、エネルギーの高さは計り知れない。
そんなものがヒナと部下たちを襲ったのだ。モニターしている側からすれば平穏では居られない。
目の眩む閃光が消え、砂埃が舞う。
その中は消滅し、誰もいない。と、思われていた。
「──アウトローの手は必要かしら? 風紀委員長」
「必要無い。と言いたいのだけど……助かったわ便利屋」
ビナーの熱線の通ったと思われる場所に、二人の人影が立っていた。
『終幕:デストロイヤー』を構えた空崎ヒナ。
『ワインレッド・アドマイヤー』を片手に構えた陸八魔アル。
彼女たちはビナーの光線を打ち消し、平然と大蛇を睨んでいた。
ゆっくりと、二人は歩み寄った。
──秩序と混沌が並び立つ。
「便利屋、手を貸してくれる?」
「そうね……今までの事がチャラになるのであれば」
「それは無理な相談ね……」
でも、今日は見逃してあげる。そう言って、ヒナは機械の蛇へと突進する。
「今の聞いたわよね? カヨコ課長、私と風紀委員長が連携してあの大きな蛇を退治するわ! その間、風紀委員たちの面倒をお願い」
「……わかった社長。でも、気を付けてね」
カヨコが冷静に声を掛け、離脱する。
「ムツキ室長、ハルカ社員、行くわよ!!」
「やっぱりアルちゃんってさいっこうだよねー」
「アル社長より頭が高いなんて、許せません!!!」
その号令に、ムツキ、ハルカが威勢良く続く。反撃の狼煙が上がり始めた。しかし、そんな事はお構い無しに、すかさずビナーが二撃目の熱線がチャージされ始める。
ヒナも、そしてアルもまた身構えるが、それが発射されることは無かった。
天より質量のあるモノが降り注ぐ。それは着弾し、炸裂する。
ビルのように巨大な蛇の体躯を軋ませ、歪ませた。そして、ビナーはショックで一時行動不能(スタン)に陥った。
何が起きたか察したヒナは、アヤネから通達されていた回線を開く。
以前、別の場所で出会い、そして、会談をした声が無線機より聞こえてきた。
「空崎ヒナさんですね。トリニティの桐藤ナギサです」
「やっぱりトリニティの。お互いにこんな所に良く……」
「また、うちのアキさん関連でこうやってお話しするとは思いませんでしたが……」
「そうね。とりあえず、用件は何かしら」
共通の知り合いを思い浮かべて、互いにため息を吐く。
そして無線越しに、小さく笑いあった。
「巨大な蛇をこちらでも視認しました。砲兵がそちらを援護します。座標のデータを送って頂けると助かるのですが」
「……アコ、座標。お願い。すぐに」
『誰か』の縁が、この場の協力をより強くしていく。
強者たちが目的の為に、一つになる。
砂漠を揺るがす、大蛇退治が始まろうとしていた。
◇◇◇◇◇◇
基地内に残ったアビドス組は先生の指揮の下に敵を蹴散らし、乗り込んでいく。
事前に渡された地図、そして、一度踏み込んだ経験。順調に事が進んでいた。
「もうすぐ……助け出せるっ!!」
「アキ先輩、無事だといいんですけど……」
「早く行くわよ!! 急いで!!」
「ふふっ、セリカちゃんがなんだかんだ一番心配してますねー」
笑い交じりに駆けていく中でも緊張はまったく欠けなかった。駆ける速度は上がり続ける。
それだけ皆が、アキの事を心配しているのだ。
「んにゃ!!? そんなんじゃ無いって!!」
「うへー、セリカちゃん大胆だなぁ……おじさん妬けちゃうな~」
──言ってやりたい言葉があるんだよね?
今まで黙っていたホシノも、先生も茶々を入れ始め、皆が笑う。
そうして、たどり着いた目標地点。そこから降りれば地下に繋がる通路があって、そこにアキが居る。
クライマックスは近い。ハッピーエンドが迫っている。何となく、皆そう思っていた。
──しかして、その幻想は、打ち砕かれた。
突如、目の前の施設の壁がぶち破られた。破砕音と共に瓦礫が飛び散り、煙が舞う。
「う、そ……」
ポツリ、と誰かが言った。まるで目に入ってきた事が信じられないと言わんばかりに。
最初に目に入ったのは髪だった。茶色の髪から色が抜けて、灰のようなくすんだ色を持つ
大人の萌芽を感じさせる一方で、その慣れ親しんだ容姿はさほど変わらない。グラマラスと言う程には豊満でもなく。かと言って、幼児体系と言うには難しい。成熟しきれない少女の体躯。それが醸し出す雰囲気と相まってアンビバレンツな妖艶さすら感じさせる。
そして、何よりも皆を驚かせたのは、その行動にあった。
その少女は、ボロボロに痛めつけられたカイザー理事の首を、折らんとしているところだった。
「アキちゃん……?」
ホシノが信じられないというように呟く。
その声に反応し、少女は振り向いた。表情豊かな平時とは打って変わって、まるで別人のように能面のような表情が浮かんでいる。
そして一同を見渡した後、こう告げた。
「誰?……あなた達」
──もしかして、敵?
そこにいた誰もが思考を停止させる一言が放たれた。
少女達は固まり、誰も言葉を発することが出来なかった。
そうしている間にも、雷が彼女の周りに集い、そして収束される。
「じゃあ、バイバイ」
何でもないように、まるで息をするかのように。
高エネルギーの『ソレ』が、かつての仲間たちに向けて放たれた──。