元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話   作:宵越しのモルス

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第17話

 エピローグ1 帰ってきた日常たち

 

 本日も晴天なり。

 ようやく戻ってきた我が派出所では、今日も元気に扇風機くんが頑張ってくれている。

 

 後から聞いた話にはなってしまうのだけど、私が気絶している間に色々とあって大変だったらしい。

 灰色のロングヘアになったり、手から電撃出したりと一体全体、私の身体で何が起きたのか知りたいくらいなのだけど、まずはともあれ病院へと担ぎ込まれた。軽い検査をして、とりあえず検査入院とのことだった。

 だがしかし、私は元気が有り余りすぎて居た為、意識が無かった間の様々な事を知ろうと、気絶から復活した次の日にアビドスの病院からそっと抜け出したのだ。

 まずは身辺整理からと派出所に戻って掃除をしていたら、目のハイライトがオフになったアビドス高校の5人と、横にちょっと困った顔を浮かべている先生に捕縛されてしまった。

 大丈夫、と説明し続けても聞いてはくれず、しまいにはトリニティから連絡があってね? と有無を言わさない先生にトリニティ総合学園の救護騎士団という武闘派ナースの皆様の元へ搬送された。

 

 「三日間は安静にしてください。さもなくば『救護』してから次は拘束衣の使用も考慮しますので悪しからず」

 

 あれよあれよという間にベットに縛り付けられて、そう言い渡される。

 青髪の団長さんの目が冗談を言っているわけではなさそうだったので、仕方なく大人しく三日間を過ごした。

 とりあえず施設の入院中に異変のあった時に伸びてしまった髪は切ってしまった。髪色も戻るのであれば髪の毛の長さも自動調整してほしいところだった……。とひっそりと思う。

 周りには似合っているし、そのままでもいいんじゃないかとも言われたけれど、人の気配がない間にバッサリやった。だって、動きづらいし……。

 ちなみにナギちゃんこと桐藤ナギサちゃんには、たまたまこの光景を見られてこっぴどく怒られた。

 

 「な、な、な……何をやってるんですかっ!! せっかく綺麗な髪が……あぁ……」

 「えっ、だって……動きづらいし、髪乾かないし……」

 

 ナギちゃんも一度試してみなよ、短髪。と勧めたら、お見舞い品のロールケーキを口に直接突っ込まれた。トリニティのスイーツらしく美味しかったけど、ちょっと酷い……

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 検査入院も済ませ、トリニティの救護騎士団の皆にお礼を言って、各方面の挨拶もそこそこにアビドスへと舞い戻ってきた。ナギちゃんには、ミカさんにも会えばと言われたけど忙しそうだし今度にしておいた。

 やっぱり派出所が落ち着くなぁ、と、エアコンが相変わらず故障している事を確かめるように、ガタガタになったリモコンをポチポチしていた。

 

 「で、ホシノちゃん。……そろそろ暑いし、離れない?」

 「んー? やだ」

 

 早朝に寝泊りする場所に荷物を置いて、派出所に帰ってきた直後のことであった。

 懐かしい我が家(?)に戻ってきた瞬間、椅子に座って待っていたホシノちゃんに歓迎を受けた。

 どうやら毎日ここに来ていたみたいで、いつの間にか小さいくじらの人形が机の上に鎮座していた。待っててくれるのは凄く嬉しいのだけど……ちゃんと家で寝た方がいい。ここの椅子硬いし。

 私が帰還し、即座に抱きついてきたホシノちゃん。今はベルトを巻くみたいに、椅子に座る私を後ろから緩く抱きしめる形に移行した。

 体温が高くて少し暑い。ぐりぐりと押し付けられる頭から花みたいな香りがする。シャンプーかな、落ち着く。

 

 「あの、ホシノちゃんさん……?」

 「んー? なぁに?」

 「そろそろパトロール行かないと」

 「──は?」

 

 ぐぇ、と思わず声が出た、この可愛いベルト締まる。すっごい力で締めてくる!! 

 ギブギブと、タップすると、そのままスルスルと前に回転して可愛いお顔が間近に迫る。

 私のちょっと控えめ寄り(ノノミちゃん、シーちゃん比)のお胸に埋まるホシノちゃん。目の前に美少女が迫るのは気分的には悪くないのだけど……目に光が無くて怖かった。

 

 「いい? アキちゃん」

 「はい」

 「病み上がりだよね? キミ」

 「はい……」

 「ズタボロにされて帰って来なくて、やっと帰ってきたと思ったら失踪してここに居て、おじさん寿命縮んじゃったよ」

 

 口調こそ緩く言っているが、目が全然笑っていない。能面みたいな顔がドンドン迫ってそろそろキスされそう。

 

 「ちゃんと聞いてる?」

 「──ひぃっ!!」

 「ともかく、しばらくはおじさんが朝も夜もパトロールするから事務仕事でもしてなよ」

 

 これを言うと可愛いベルトは背中ぐりぐりする作業に戻ってしまった。

 楽しいのだろうか、ソレ。もしかして私の背中に埋蔵金とかあったりするから発掘してる? とか思いつつ、溜まりに溜まった書類をペラペラめくっていた。

 ひとしきり私の背中を発掘した後。じゃあ、おじさん学校行くから。後で午後に学校来てねー。あと、絶対に今日は安静にしててね。と言ってホシノちゃんは去っていった。

 ついでに私物が増えた。今日はお魚さんのイラストのボールペン。

 そのボールペンをくるくると見ながら、背中から消えた熱が少し寂しい。しかし、ホシノちゃん……あの様子はもしかして……

 

 「心配してくれるなんて、優しいな~」

 

 病み上がりの私を心配してくれてて、とってもいい子だ。と思いました。

 

 今日もキヴォトスは平和だね。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 それはそれとして、外には出ないと身体は鈍りっぱなしなのである。外出や軽い鍛錬はしないと尻尾の座りが悪い。つまるところ、これは不可抗力なのだ。うん、見つからなければいいし。

 昼下がりの午後、気持ちよく自転車を漕いでいるとヘルメット団が道のど真ん中で集会を開いていて、とても邪魔であった。周辺住民も困った顔をして回り道をしているのでこれはよろしくない。

 

 「じゃあ、新しいチーム名はテカテカヘルメット団改め、テラテラヘルメット団で!!」

 「おーーー!!!」

 「はーい、犬のおまわりさんだよー。ここでの集会は禁止。散った散った」

 

 そんな事を騒いでいるので、ちょっと声を掛けると、ぐるりと20個程のヘルメットが一斉にこちらを向く。

 

 「なんだぁ、てめぇ……」

 「あたし達は今、重要な儀式の最中なんだよコラ」

 

 そのままゾロゾロと囲んできた為、腰のホルスターに手を掛ける。

 そこで気づいてしまった。いつもの愛銃は修理に出していて使えないことを忘れてた!! と。今はヴァルキューレの制式採用拳銃だけだ。

 流石に多勢に無勢ではないだろうか。と冷や汗を垂らす。しかし、そこで逃げる訳にも行かず、戦闘は開始された。

 

 ──どうにも感覚がおかしい。私の感覚と、相手の動きにズレがある。

 

 身体には異常が無いと言われていたんだけど、やっぱり記憶が飛んだ上に気絶なので私としても心配ではある。

 脳の検査等もやってもらったが、どこもかしこも無事すぎて怖い。とのことだった。

 少し考えていると、その答えはすぐに思いついた。異常ではない。私と彼女たちのレベルが違いすぎるのだ。

 そういえば私、ちゃんと強いんだった。と再認識する。

 

 思えば、戦闘のプロ集団だったり、ユキノだったりと上澄み寄りの相手だったもんなぁ。としみじみしながら、ヘルメット団達をシバいていく。千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していつの間にか戦闘は終わっていた。

 よーし、いっちょ上がり。と出来上がった山を見ながら埃を払っていると、誰かと目があった。いやさ、見つかってしまった。

 視界の先にピンクの悪魔がこちらを睨んでいる。つまり、ホシノちゃんが目をガン開きにして、こっちを見ている。本当に怖い。そして、つかつかと物凄い速度で詰めてきた。

 

 「絶対安静って言ってなかったっけ??? ねぇ、なんで仕事してるのさ??」

 「い、いやー、クセで?」

 「ふーん、そっか。わかったよ。……やっぱり、私が傍にいないとダメかな」

 

 あれあれ、ホシノちゃんの目から光が消えた気がする。

 なんでぇ? と思っていたら、ちょっと来て? と腕を取られた。流石に約束を破った私が悪いので大人しく連行されることにした。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 連れていかれた先は皆の場所、アビドス高等学校。

 後で菓子折りでも持って行こうかと思っていたので手間が省けたと言えばそうなんだけどと、思って対策委員会室に入った途端クラッカーが鳴った。

 驚いて周りを見渡すとみんな待ってました! という歓迎ムードで出迎えてくれた。

 その後、おかえりなさいパーティーが開かれ、お菓子とジュースが山になっているのを皆で分け合った。ついでに私の身体も代わる代わる触れられていく。

 皆からもみくちゃにされた後、私の座る椅子はシロコちゃんか、ノノミちゃんの膝の上に座るので揉めていた。

 

 「あの……別教室から椅子持ってくるけど」

 「ん、アキちゃん先輩は黙って私の膝の上に座るべき」

 「こっちも空いてますよ~☆」

 「もしかして……一年生の若いお膝がいいの?」 

 「「ええ!?」」

 

 散々勧誘されてはいたけど、私のお尻で二人の膝を破壊したくないので、辞させて貰った。重いって言われたら悲しいし……。

 結果としてパーティーは楽しく終わり、宴もたけなわ。

 今日の主役、と書かれたタスキを掛けたままに後片付けをさせて貰えない私はソワソワしていた。そんなところから地獄の窯は開く。

 

 「そういえばさ、やけに早かったわよね。ホシノ先輩」

 「いやー、おじさんもびっくりしちゃったんだけどさ。呼び出しに行ったら、外でパトロールしてたんだよねこの子」

 

 ピシッ、と空気が固まる。皆の視線が一気に私に集中した。そんなに見られたら、本当に穴が開いちゃうんじゃないかって見つめてきて怖い。

 退院してからの皆が私に対して態度が時々変なのは、やっぱり迷惑掛けてしまったからなのか。と、内心しょんぼりしていると、アヤネちゃんが動いた。

 本当はアキちゃん先輩が帰った後にしようかな。と思っていたんですが、とホワイトボードに今日の議題と書き込み始める。その議題の下にはアキちゃん先輩について、と書かれていた。

 

 「……え? 私???」

 「はい、今回の件で分かりました。アキちゃん先輩は首輪をつけて家飼いに……こほん、もとい、もう少し身体を労わって貰いましょうと話し合おうとしてまして」

 「何か凄い事言おうとしなかった!? ねぇ!!!」

 

 私、アヤネちゃんに何かしてしまったのだろうか、というか、周りもうんうん頷いてないで止めて欲しいんだけど。

 

 「では、アキちゃん先輩。あなたの功績がまだ理解されていないようなのでご説明しますと」

 

 こほん、と咳払いした後、現状を説明してくれる。

 シーちゃんが調べてくれた不正によって、アビドス高等学校の借金は大幅に減ったらしい。それに、カイザーコーポレーションのPMC基地は壊滅し、しばらくはカイザーの嫌がらせも間接的なものになったという事。

 そして、カイザー理事はアキに完全に怯えてしまい慰謝料を超高額で支払って来て、アビドス高等学校の復興と、私の治療費と私服及びコスプレ費に充てられたとのこと。

 あと何故かアキちゃん先輩の医療費が学校内に寄付と言う形で支払われました、とアヤネちゃんが付け加える。

 

 「以上がアキちゃん先輩の功績です。本当にありがとうございました」

 「なんか変な項目あるけど!!?」

 「メイドか、スク水かで最後まで言い合いになりましたねー☆」

 「ん、ライダースーツも着よう先輩」

 

 シロコちゃんとノノミちゃんが、すすす、と両サイドから椅子を寄せてくるのを見ないように目を逸らす。どれを着たいか言って欲しいのかもしれないけど、どれも着たくない……!

 それはそうと、挙げられた功績は私単体でやり通した事などほぼ無くて、だいたいが気絶していたり周りが勝手に動いてくれたことによってもたらされた結末だ。私は何にもしてないよ。と正直に伝えると、みんな困った顔を浮かべていた。

 その気持ちを代表してなのか、アヤネちゃんがボソッと呟いた。

 

 「ニブチン……こほん」

 

 アヤネちゃんが怖い。退院してから今日は初めて会う日だけど、明らかに何か違う。

 ひぃん、と怯えていると、アヤネちゃんは更に続けた。 

 

 「とりあえずアキちゃん先輩についてですが、この度、ホシノ先輩含めお説教しようかと」 

 「あれ? もしかして、おじさんも怒られる感じ?」

 「はい、アキ先輩の一日の行動を調べさせて頂きました」

 

 えっ、なんで!? とツッコむ暇も無く、『凄み』を持ったアヤネちゃんが解説していく。にべもなく返されたホシノちゃんも、うへーと困り顔だった。

 バンと、ホワイトボードがひっくり返され、円グラフに私のデフォルメが描かれたものが目の前に来た。

  

 「ますは、一日のスケジュールですが……」

 

 ヴァルキューレの業務。そして、アビドス高等学校のお手伝い、そして、ヴァルキューレの報告書。その後、夜のパトロール。うん、合ってる。何でこんなに調べられているか分からないけど大したものだ。とグラフの内容を確認して頷いた。

 

 「このグラフ何かおかしなことに気づきませんか?」

 「もしかして、ここのお手伝いもっと増やした方がいい?」

 「違 い ま す」

 「ひぃん……」

 

 あまりの鬼気迫る表情に私も委縮する。冗談で言ったわけじゃないのに……。

 すると、セリカちゃんが何かに気づいたようにグラフを二度見した。

 

 「アキ先輩……いつ寝てるの?」

 「え、ほら、ここに書いてあるよ?」

 

 夜のパトロールと、ヴァルキューレの業務の間の場所を指さす。正確にはどっちかが押してしまってもっと少なくなったりもする。

 

 「だってそこ、お風呂とか、着替えとか……」

 「え? そういえばそうだね。深夜までやってる銭湯施設があるんだよー。熱めの設定で気持ちいんだよ?」

 「……ごめん、アキ先輩。私もアヤネ側につくわ」

 「うあああああ、なんでぇ!!!!」

 

 突然の裏切りに泣いてしまいそうになるが、気が付けば私を除いて全員がそんな感じだった。緊急離脱も考えたのだけど、二年生コンビががっちりと両脇を固めていて動けそうになかった。

 

 「という訳です。ちなみに、ホシノ先輩もそんな感じでした」

 「うへー、何か照れちゃうね、アキちゃん」

 「お揃いですねー」

 

 見つめ合ってニコニコしていたら、両脇の圧がドンドン強くなっている。あっ、腕引っ張らないで取れちゃう。

 

 「……さて、そこでホシノ先輩と、アキちゃん先輩の違いですが」

 

 メガネを直すアヤネちゃんがやたらと絵になっている。主に恐怖画像として。

 

 「ホシノ先輩は、学校のお掃除すらサボって寝ていたり、会議中も寝ていたり……」

 「うへ……、もしかしてこれヤバい?」

 「アキちゃん先輩は、各施設の点検に時間が合えば会議も参加と」

 「だって、地域住民の触れ合いって生活安全課的には大事だし……」

 

 バン、とホワイトボードが叩かれる。その音に飛び上がる私たち。

 

 「ホシノ先輩、アキちゃん先輩。しばらくは夜のパトロールは禁止です!!」

 「そりゃないよ~!」

 「私のお仕事がっ!!?」

 

 なんとか取りなして、早めの解散で一応の決着がついた。別に私、ちょっと寝れば平気なのに……。

 それから色々と言われたり、ホシノちゃんが私の膝の上に座ったり、シロコちゃんに襲われかけたり、ノノミちゃんに次はチアですかねーと脅されたり、セリカちゃん可愛いーしたり、アヤネちゃんのご機嫌取りをしてるうちに、すっかり夜になってしまっていた。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 帰り道の途中、私は色々やってくれたシーちゃんに電話を掛けていた。

 「そんな事が今日あってさー」

 「ふーーん、あらあらアキちゃんったら、私にそんな事を伝えてどうする気ですか?」

 「え、何か怒ってる?」

 「怒ってないですよー? 隊長には」

 

 少し引っかかる言い方だったが、とりあえず怒ってなさそうで良かった。と思いつつ、話を続ける。

 

 「そういえば、ユキノからは何かメッセージ来た?」

 

 そう言って、私の救出後に行方を暗ませた友達の事を聞いてみた。

 

 「……いえ、私の方には何も」

 「そっか、ありがとね」

 

 そうやって電話を切って、空を見上げる。

 砂漠の夜の月は綺麗だ。透き通った空にぽっかりと銀の円が浮かんでいる。

 

 また、ユキノ達には助けられた。

 そのお礼を言いたかっただが、彼女達は先生と話して何処かへと行ってしまったと聞いた。幸い、爆破の痕も、カイザー理事も、変身? した私が全て吹っ飛ばしてしまって証拠が無いらしい。だから、捕まる事はないと思うのだけど。

 

 「まぁ、いいか……きっとまた会えるよね?」

 

 きっと、同じ月を見ているといいな、と思いつつ、空を見上げた。




次回もエピローグ予定です。
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