元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話   作:宵越しのモルス

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第19話

 色々と処理に追われる毎日も落ち着き、アビドスに根を下ろし、来客が来たり来なかったりの毎日。

 極稀に生活安全課の一員としてお仕事が回ってきたりもするので、やはり業務というのは繋がりをつくる縁だなぁ、と思ったりもする。

 今日はそんな一幕。

  

 「ドーナッツのキャンペーン?」

 「そーそー。たいちょーも一緒にやらない? って声かけて、ってシーちゃん先輩がさぁ」

 「シーちゃん? 何のご指名だろ」

 

 まだ日も登らぬ朝四時くらいから業務を開始し交番周りの掃除をしていたら、マメちゃんからの電話があった。

 内容としては、ヴァルキューレの生活安全課とD.U.(ウトナピシュテム地区)のドーナツ有名店がコラボをすることになり、ビラくばりだったり、販売をやる為に私を駆り出したいとのことだった。

 別に頼まれたからにはやるのは問題は無いのだけど、シーちゃんが、という点が凄く気になる。たまに、というより毎回シーちゃんの持ってくる案件には問題があって……。

 

 「ちなみに、衣装は?」

 「え? ……。うん、まぁ、普通じゃない? 体操服着てやった新兵器の耐水性テスト時とかより」

 「それ、基準になってないから!!!!」

 「あれはセクシーだったね〜」

 

 ケラケラ笑うマメちゃんにツッコミを入れつつ考える。そう、シーちゃんの持ってくる案件はどうにも際どいのが多い。着用するのに躊躇うものばかりなのだ。ちなみに話題に出ている体操服は、強制的にシーちゃんに着せられプールに装備ごと沈められた思い出がある。本人は体操服でないと駄目、と力説していたのだけど、効果の程は不明だった。ダイバースーツでいいのに……。

 私自身、あんまり華美なものや派手なものが好きでは無いし、肌を見せるのも好まない。そこだけは毎回言っている筈なのに、全くもって改善される余地が無いのだ。

 それ以外は、基本的に協力的でいい子なのに……と、愚痴の一つも零したくなる。

 

 「とりあえず、ボクの横で半日でもいいから働いてくれると嬉しいな。折角、たいちょーと一緒に働けるチャンスだし……」

 「そっか……うん、いいよ」

 「え? いいの!? やりぃ!!」

 

 寂しそうな声を聞いてしまって、ついつい返事をしてしまった時、釣り上げられた魚の気持ちを連想した。

 彼女の手のひらを返したような反応に、怪しさを感じ取ったが既に電話が切れてしまった。

 追撃をするかどうかで悩んでいたけれど、仕事に忙殺されていてそれどころではなかった為、次第に忘れていってしまった。

 

 ◇◇◇◇◇◇ 

 あくる日。ヘルメット団とスケバンが衝突し、ショッピングモールが一時的に巨大なトーチカになりかけた事件の報告書を作成していた所、マメちゃんが来た。

 

 「やっほ。たいちょー。この前言ってた衣装、持ってきたよ」

 「何それ……いや、待って」

 

 そのセリフを元に記憶の隅にある電話との会話を思い出し、頭を抱えた。

 

 「忘れてたぁあぁぁあ……」

 「いきなり頭抱えて何やってるのさ」

 

 とりあえず、はい。と衣装を手渡され、出勤予定日を知らされる。

 もう、マメちゃんにアビドスに来てもらって、衣装まで持ってきてもらっているので、無下には出来ない。と覚悟を決めて、バックの中の服を引っ張り出した。

 

 「あれ? 意外とかわいい」

 「だよねー、今回可愛いよね」

 

 ふーん、と衣装をくるくる見ていると、とある部分を見て思考が停止した。

 

 「……マメちゃん。これさ、なんか腰回り、お腹周りの……なんて言うのかな」

 「シーちゃん先輩、こういうの好きだよねー!!」

 「ケラケラ笑わない!!」

 

 なんというか見た目はドーナツを意識したチョコスプレーのトッピングのような意匠に、クマ耳のようにドーナツの半分が頭についた帽子。そこら辺はとっても可愛くて、ちょっといいな。なんて思ったりもするのだけど。と思っていた矢先にこれである。

 やっぱり、シーちゃんの推薦する衣装だ。と呆れつつ、この服の問題点を口にした。

 

 「これ、おヘソは出るし、スカート丈短すぎない……?」

 「うん、たぶん腰とかちょっと出るやつ」

 「私、コレ着るの……?」

 「たいちょーは可愛い部下の約束、破ったりしないもんねー?」

 

 ぐ、と言葉が詰まる。確かに露出というかあれは少なめである。ただ、考えによってはちょっとえっちな服を警察組織が着るのはどうなのだろうか。

 だがしかし、目の前の可愛いロリ隊員におねだりされて、断われる人は……あんまり居ない。

 

 「それに、もうキリノちゃんは、フブッキーには来るって言っちゃってるから。必ず来てね? ついでに必ず着てね?」

 

 彼女にケラケラ笑いながら言われて、私は二つ返事をした己の迂闊さに肩を落とすのであった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 あれよあれよという間に当日になり、私は一度衣装合わせをしたっきり着る事のなかったユニフォームもとい、コスプレもどきを肩に掛け集合場所にやってきていた。

 そこに居たのは、生活安全局でマメちゃんとよく組んでいる二人だった。

 

 「中務キリノです! アキさん。射撃訓練の時はお世話になりました。本日はよろしくお願いします。巡査長!」

 「合歓垣フブキだよ~、マオちゃんの元上司なんだよね。まぁ、お手柔らかに~」

 「キリノさん、久しぶり~。合歓垣さんもよろしくお願いしますね」

 「フブキでいいよ~」

 

 銀髪をおさげにした礼儀正しい子が敬礼し、逆に紺色と水色が混じった髪の毛のちょっと眠そうな子が、軽く一礼しながら待っていた。そして、既に衣装をきたマメちゃんが黄色と白が混じった耳と尻尾を千切れんばかりに動かして出迎えてくれた。

 活発な彼女にはよく似合っているなー、と油断していたらさらっと背中を取られた。

 

 「たいちょー。待ってたよ!! さ、早く早く。お揃いになろうよ」

 

 マメちゃんがグイグイと背中を押され、更衣室へ案内される。それに続くように残る二人もついてきた。カバンから取り出し、衣装をハンガーに掛ける。そして……『覚悟』の時が来た。 

 

 「……よし、お仕事だし。頑張ろ!!」

 

 そして、勢い込んで袖を通した。着替え終わると、やっぱり衣装が可愛い。と思いつつ、自身のお腹の辺りを見る。そこだけ布が無くてお腹の辺りがスースーする。それにスカートの丈が短くて、ちょっとでも下ろそうとすると、今度は腰に引っ掛かる。タイツで誤魔化したかったのに、ニーハイまで指定である。

 

 「……やっぱり、フェチが過ぎない?」

 

 そんな独り言を聞いていたのか、同じく着替え終わったキリノさんと、フブキさんと目が合う。同じ意見を持っていたのか互いに苦笑いした。

 そして、フブキさんが自身の格好を見て心配そうに言う。

 

 「ねぇ……本当にやるの……?」

 「ここまで来たら思い切りです!」

 

 キリノさんが奮起して、フブキさんを引っ張っていく。そしてこちらを心配そうに見た。

 そんな目を見られたら先輩として逃げるわけにもいかないので、ひとまず深呼吸。

 

 「……お仕事だもんね。頑張りましょうかぁ!!」

 

 そうして奮起すると、彼女達も頷いて外に飛び出した。

 待っていたマメちゃんが、私たちを見て目を輝かせる。 

 

 「わぁ、三人も可愛い! めっちゃいいね! たいちょー。薄っすら浮いてる腹筋が好き!!」

 「大声でそんな事を言わないの!!」

 

 思わず顔が熱くなる。あんまり他人に見せたいものでもないので尚更だ。どうにかして隠せないかと無駄な抵抗をしていると、カメラのシャッター音が響く。

 

 「とりあえず、シーちゃん先輩に送っておこう」

 「それで……いくら貰えるのかな? 沖田マオくん」

 「いだだだだい、ギブ、たいちょー、ギブ!!」

 

 口笛を吹いて誤魔化すマメちゃんを軽く絞めると、キリノさんとフブキさんに笑われた。

 仲いいねーと言われつつ、じゃれあっていると、興味本位でお客さんが集まってくる。まぁ、目立つよね。この格好。

 そんなことを皮切りに業務の時間になった。

 

 「いらっしゃいませ~!!」

 「ドーナッツのキャンペーンやってます!! いかがですか?」

 「はいはい~いらっしゃい~、列はこっちだよ~」

 「へっへっへ~、可愛いでしょ。あれ、ウチのたいちょーだよ? あ、おさわりは禁止だからね」

 

 時折、ふざけだすマメちゃんをシバきつつ、業務は順調に進んでいった。

 迷子が発生して親御さん探しに奔走したり、ドーナッツを奪いに来たヘルメット団たちを撃破しオブジェにしたり、と一日があっという間に過ぎていく。

 四人もいるのに、お客さんの列は絶えずに並び続けて途絶える気配がない。そろそろ、ちょっと疲れてきたな……と思う頃に、とある人物が私に声を掛けてきた。

 

 ──制服のカチッとした姿もいいけど、可愛い姿もいいね!

 

 びくっ、と身体が跳ね、思わず身体を隠すように両腕でかき抱く。そして、二、三歩後ずさりした。

 

 「なんでいるんですかっ!?」

 

 お仕事中とはいえ、やっぱり気にはなってしまう恰好なだけになるべく知り合いには見られたくなかったのに。と心の中で叫ぶ。それが『大人』である先生だと、余計に羞恥心が勝ってしまう。

 顔が赤くなっているのが分かる。見せるのが恥ずかしいのか、それとも別の理由なのか私にはわからなかった。

 

 「あ、先生だ、やっほー」

 

 マメちゃんがこちらに気づいて手を振っている。それに応えた先生が離れ、一息吐いた。

 

 (やっぱり、この衣装可愛いよね……うん)

 

 可愛いという言葉が妙に耳に残る。

 お世辞なのは間違いないのだけど、それはそれとして『大人』の人にそんなことを言われなれていなかったので、頭の片隅に先生の言葉が残り続けた。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 そうして異常ともいえるスピードでなんと二日分に近い売り上げを記録し、業務は終了となった。

 賄いに貰ったドーナツをみんなで頬張る。

 

 「あ~、このドーナッツの為に働いてる……」

 

 しみじみと言うフブキさんの言葉に、皆がやんわりと笑う。

 昼過ぎの時間に甘い輪っかが脳内に染みる、と、チョコレートの掛かったオールドファッションを楽しむ。やっぱり、オールドファッションこそが正義だよね!!

 

 「本日は応援ありがとうございました、アキさん!」

 「いやー、いい体験になりました。ありがとねキリノさん」

 「また手助けしにきてよ~、優しくて楽だからさ」 

 

 銀髪のおさげがぶんぶんと揺れ、キリノさんがお辞儀をし、フブキさんが手を緩く振る。

 そんな接しやすい二人に、マメちゃんもいい仲間を持ったなぁ、と、思っていると、休憩室で休んでいたマメちゃんが私の腕に飛びついてくる。

 

 「もっちろん! だってボクのたいちょーだもん。助けてくれるよね」

 「当たり前! ……と言いたいけど、次はまともな衣装でお願いね!!!!」

 

 マメちゃんに軽く小突くと、仕事終わりの空に笑い声が響いた。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 そんな仕事が終わった後日の事。いつも通りに朝から仕事をして書類を片付けていると、連絡先を交換したキリノさんから連絡が来た。

 きっちりとした御礼の連絡が来て、ふふ、と微笑んでしまう。

 

 「応援楽しかったな~」

 

 端末をポチポチしながら椅子にもたれる。

 何て返そうか考えていると、肩に背中に何かが乗っかってきた。

 

 「うへー、おはよ、アキちゃん。朝からお仕事の話?」

 「おはよう。ホシノちゃん。とりあえず肩から降りよ?」

 「耳モフモフしたらねぇ」

 「くすぐったいたいから、ホントにやめませんかねぇ!!」

 

 私の背中を占拠し、頭上に乗っかる犬耳をふにふに触ろうとする不審者は、最近スキンシップが多めのホシノちゃんだった。あっ、息吹きかけるのは本当にやめて!!

 そんな一幕があった後、頭を擦りながら、ホシノちゃんは言う。 

 

 「いやぁ……アキちゃん、あんな声出るんだね」

 「次やったら……怒りますからね……!」

 

 拳を擦りつつ彼女を睨む。

 ごめんごめん、と謝る、ピンクロリを見て、ため息をつく。けれど、ため息を吐くだけでは居られない訳で。

 

 「で、アキちゃん。相手、誰?」

 「へ? お仕事仲間だけど?」

 「ふーん、そっか」

 

 何故か、ホシノちゃんはじっとりとした目を向けてきていて、何だろうと思っていると、ドキッとする質問が飛んできた。

 

 「ちなみに、今日はちゃんと寝たの?」

 「へ? もちろん……」

 「ふーーん」

 

 ジトッ、と睨む目を躱しながら口笛を吹く。

 なんだかんだ3時間は目を閉じていたと思う。ホントダヨ。

 

 「うん、今日も学校でお昼寝しようか」

 「いやいや、ホントに大丈夫ですから!!」

 

 最近、アビドス高等学校に新しい施設が増えた。増えたというか、空き教室の一つを使って仮眠室が増えた。

 何処から持ってきたか分からないキングサイズのベットと、各々が持ち寄った寝具にお人形さん、それにDIYした寝室のアレコレ。

 目的に皆目見当がつかないけれど、学校が充実するのは良いこと、とか思っていたのも束の間。ちょくちょく連れ込まれては、抱き枕にされている。……お仕事したい。 

 ちなみに使用率1位は目の前のお昼寝常習犯なのである。つまるところ、ホシノちゃんのサボる口実に使われている訳だ。

 

 「じゃあ、後で学校には回りますから、その時に」

 「しょーがないなぁ。待ってるね」

 

 あ、そうそう。と、ホシノちゃんは言う。ぴたり、と止めた足からは、何故か恐ろしいくらいの迫力が出ていた。

 そんな彼女がぐるり、と首を回し、こちらを見た。

 

 「ドーナッツの衣装、可愛かったね」

 「……何で知って?」

 「うへー、先生がね、写真送ってくれたんだ」

 

 彼女は端末を掲げ、遠目から撮ったであろう隠し撮りと、マメちゃんから先生に送ったであろう写真を見せてきた。

 

 「アキちゃん、昨日の議題。なんだったと思う?」

 

 『アキちゃんにどんな服を着てもらうか、その5』だよ? と恐ろしい事をホシノちゃんは言う。

 

 「いやいや待って!! マメちゃんが持ってきた仕事で仕方なく!」

 「私たちの選んだ服は嫌がるのに、元部下の子のお願いは聞くんだ?」

 

 おじさん悲しいなー、と背中を向けて歩こうとするホシノちゃん。その姿は哀愁が漂っており、思わず罪悪感に駆られ、愚かしい事に引き留めてしまった。

 

 「まぁ、話だけなら……それに、可愛かったら着てみても……」

 「本当?ありがと。あの服が着れるならメイド服くらい軽いよね?」 

 

 しまった、と思ったが、もう遅い。

 爆速で距離を詰められ、両手を取られる。そして、こう言われた。

 

 「まさか、アキちゃん自分で言ったことに嘘つかないよね?」

 「……あぁ、もう!! 私のバカぁ!!!!」

 

 やっぱり、私は学ばない生き物であった。

 

 その後、着せ替え人形に、抱き枕にと、仕事そっちのけで好き勝手されたのは言うまでもない。

 うぅ、仕事したい……。

 

 




【あおはるレコード】第133話 プリティドーナッツ・ポリスガールズより

アンケートご回答ありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。
初めに勢いのあった日常系の残骸の供養です。次回からパヴァーヌをネリネリしていこうかな。と思ってます。
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