元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話   作:宵越しのモルス

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
余談ですが初周年用に取っておいた石がドレス着たミチルっちにお年玉として徴収されました。タスケテ


第34話

 ミレニアムの夜。才能を輝かせる星たちを見下ろす一等星の才女達。その集いの中で彼女らはある人物の話をしていた。

 それは、たった数週間前にミレニアムに飛び込んできて、あっという間に人々の中心に居た少女の事。

 

 「近藤アキ、アリスの調査における一連の事件の変数」

 「彼女もまた試される側でしたね。シキのお気に入りという事でしたが……どちらかというと、いえ。これ以上言うのも野暮でしょうか」

 「あらあら……うぶですね、ヒマリは」

 

 リオが呟き、そしてヒマリがそれに追従し、ただの一方的な思慕ですよ、とシキが笑う。

 

 「では改めまして、愛しの我が隊長のお話をしましょう」

 

 そう言うと薄灰色のロングヘアとなったアキの写真がディスプレイへと浮かび上がる。それは九人の集団を圧倒し制圧した恐怖の姿。

 正体不明の力の発露。そしてそれを受け止めるための器。それらどれもが不明。

 

 「今まで隊長は普通の生徒だと思っておりました。しかし、アビドスの一件によって少々疑問を持たざるを得なくなりました」

 

 変貌した状態の出力、そして共振するように出現した巨大な機械生命体、それを支えた彼女の身体。少なくとも通常の生徒には持ち得ない何かを持っている。というのが推測だとシキは言う。

 

 「そして不正に起動していた戦車達を正規の手順。つまるところ所有者の認証によって書き換えたこと」

 

 彼女の特異性において普段は発揮されることはありませんでした。実際ヘリの操縦は私のほうが得意だったんですもの。とシキは言う。彼女は異常事態において、もしくは危機的な状況においてそれらの能力を発揮していた。

 それらは奇しくも名も無き神々及び無名の司祭と呼称する、正体不明かつ目的の不明瞭である技術が関わった場合でも発揮されることが分かりました。とシキは言う。

 通常の常識において発揮されるものではない。むしろ常識の範疇を超えたものにこそ、ソレは発露していた。

 

 「まず前提として、遥か昔の技術であるAL-1S。つまるところアリスちゃんですね。彼女についての関連性の有無。それについては論拠が乏しい為に推論が多く含まれます」

 

 彼女と隊長が共通するものはDivi:sion。未知の技術を作り出していた工厰にまつわる事であり、そこで製造されたであろう古代の技術に関しての干渉が可能か、という事にあります。

 

 「Divi:sionにおける非公開のモノ。つまるところ人道的に反する為に過去に葬り去られたモノの一つとしての可能性はありますが、私、ゲノム学は浅学でして」

 「専門家はこの中に居ない。よって仮定ベースで構わないわ」

 

 シキが咳払いをして、これは荒唐無稽なお話ですが。と、手元にある1枚の写真を掲げた。それは円筒のガラス達がずらりと立ち並び、それら全てが破壊されているものであった。

 

 「これは例の廃墟群の中の一つです」

 

 過去に破壊されたであろう工廠の内部に培養炉が存在した可能性があります。おおよそ、人一人入るであろう培養炉が無数に。それらは跡形も無く破壊されていましたが……とまで述べ、その痕跡を私は辿っていました。と口を開く。

 状況、残滓からの推察にはなりますが、我々のような生徒の創造を行っていたのではないかと。思われます。と言い切り、ニ人が反応する前にシキは一言を添えた。

 

 「もし、隊長がその中で『誕生』していたら?」

 

 うふふ、と彼女は笑う。何とも破壊的で素敵ですよね?

 

 「結論から辿っていけば彼女もまた世界を破壊するためのものとして創られた。ということになる」

 「アキさんからはそんな様子は見受けられませんが?」

 

 その言葉にシキもまた大きく頷いた。

 

 「アリスちゃんのように無名の司祭達の崇拝する「オーパーツ」の可能性もありますが、それですと隊長が何かを目的として動いていることになります」

 

 その目的について、と、更にシキは話す。隊長としての長くも短い三年間を共にした私だからこそ言います。そんな目的はありません。と。

 それでは道理が合わない。彼女は機械でもなく、そして使命に生きている様子ではない。記憶喪失の線もあるがそれを疑うのであれば脳を覗いて確かめる以外に術はない。

 彼女はロボットでもアンドロイドでもない、ただの生身。シキからして、それは違えようのない事実だった。

 

 「つまり隊長のベースとなったのは、名も無き神々の王女の量産型かそれを模したナニかではある。というのが推論としては正しいでしょうね」

 「つまるところ、アリスとは違うアプローチでの『王女』の作成ですか?」

 

 なんとも悍ましいお話ですよね。と同意した。そして言葉は続く。

 ただし、おそらくは別の視点からのアプローチではあったのでしょう。機械の身体では成し得ない事を想定し、彼らは人工生命を作り上げようとした。そう思います。とシキは言う。

 もし隊長が仮定の通りだった場合、他にもまた成功例が存在し生徒を模した存在がキヴォトスに溢れかえっている事になります。そうなってしまえば我々は悪魔の証明を行う必要がある。我々が話しているのは本物か、果たして無名の司祭によって作られた偽物なのか。それらを確かめる術はありません。

 

 「彼女がその仮定で成り立つとしたら、それを反証するためにあらゆる生徒に対し『王女候補』であるか、と問う必要がある。ということね」

 「えぇ、故にこれは我々としてはあり得ない仮定である、ということを念頭に置いた与太話でなければなりません」

 「その上で近藤アキが特別である。とする、そのオカルトを支持する理由は?」 

 

 ヒマリは問う。何故ただ少しばかりの戦闘をこなせる人物に入れ込むのか。と。それに対してシキは笑う。先程も話しましたが動かせる筈の無いものを動かせるのが一つ。と前置きして話し出した。

 

 「そうですね……そうした方が私の目に狂いは無かった。と胸を張れるということが一つ。うふふ、既に狂っては居ますけどね?」

 

 もう一つは異常な治癒力、そして寝ずに行動し続けられる体力、そして時折リミッターが外れたように見せる怪力。そして特定の機械に対して発動する神秘。また、彼女の生い立ちにおいて育った家である『ガーディアングループ』は娘としていますがその詳細はぼかされている。

 それらは小さな違和感でしかありませんが、重ねてみれば大きな違和感と成りえます。とシキは言った。

 

 「うふふ……まるで戦闘用に最適化されたような素敵な肉体ではありませんか?」

 「筋は一応通っているわね」

 

 リオは一言呟き、そしてヒマリは顎に手を当て押し黙る。

 戦闘用に調整されたという確信。それは奇しくもアリスに対してエンジニア部のウタハが抱いた疑惑と同じものである、

 当然それはあくまで推論でしかなく、当然一生徒として抜きんでたものがあるだけかもしれません。とシキは言う。そして反証として事実を告げた。

 

 「もし隊長が、本当に侵略を行う為の存在であれば、わざわざアリスちゃんの起動を待つことなく目的を遂行しなけばならない」

 

 それが世界の破壊なのか、それとも金儲けなのかはわかりませんが。と笑う。少なくとも彼女の力が量産されていれば各学校とも制圧は困難になるのだろう。

 つまるところ、何らかの計画が破綻が起きていて、アキ隊長はイレギュラーである。と、シキは言う。

 

 「偶然目覚めた個体による突然変異であると?」

 「えぇ、そうですヒマリ。おそらくは大半の個体は起動しなかったのだと思います」

 「もし仮定通りであるのなら、意志や魂は介在しない筈の存在が考え行動し……我々に影響を振り撒いていく」

 

 おかしな話ね。とリオは言う。

 そして、シキを見てため息を吐いた。

 

 「残念ながら、論ずるに値しないわ」

 「えぇ、あまりにも状況証拠が過ぎます。ですが、私はカオス理論の信奉者ですので」

 「いつもこうなるのだから、話し合いは無駄ですと前にも言った筈ですが……」

 

 残念ね、とリオはため息を吐き、ただの少女のような世間話もたまには良いものでしょうとシキは言い、ヒマリは呆れかえっていた。

 

 「もし、その理屈が通るのであるならば、だけど」

 

 リオは呟く。ハードウェアは概ねその仮定でも問題はない。或いはキヴォトスに少数存在する、類稀なる神秘や身体能力に恵まれた生徒たちのような存在である。という方が現実味があるとしても、だ。

 結論から辿るならば辻褄は合う。近藤アキという存在が人工の生命体で本来は世界を滅ぼす側に立っていた筈。という仮定。ただのシキの好む陰謀論と切り捨てるには、少し符合が合いすぎている。

 ただ問題として浮上するのは動くはずのない器が自立し、ヘイローを持ち、一人の生徒として意志を持っていること。

 それこそがこの仮定の反証であり、彼女を生徒足らしめているものだ。この前提が崩れた場合仮定が仮定で無くなる可能性がある。故に問いかけた。

 

 「彼女は……何者?」

 「見ての通り、可愛くて顔が良くて素敵な隊長ですよ。リオ」

 「はぁ……拍子抜けですね。あなたにもリオにも」

 

 荒事も覚悟してましたのに、結局、あの隊長のガールズトークで煙に巻かれるなんて、とヒマリは額に手をやった。

 シキはそんなカオスな状況を見て微笑む。アビドスでの異変を見て「まるで本来持ち得ない力を注ぎ込まれたようではありませんか?」とシキは言う。

 目を閉じて少し考えた後、口を開く。

 

 「そうですね……隊長は『器』だと思うのです」

 

 どんなものでも受容し許容し、そして変化をもたらすモノ。

 たとえ自身を変貌させるものであろうと受け入れ呑み込む器。

 

 「それが現状の結論です」

 

 肉体ベースでのお話ですので、中身については分かりませんが。ただどうやら、どんな結末に辿り着くにせよ、私が彼女を壊すのは難しいようですね。

 ミレニアムプライズに受賞しゲーム開発部や先生を宴会を繰り広げている姿を映像越しに眺めながら、シキは微笑んだ。

 背を向けるシキにリオが問いかける。

 

 「では、私は隊長に呼ばれているので」

 「あなたは仮定通りだったらどうするの?」

 「あらあら、そんなの決まっているじゃないですか」

 

 ──お側にいるだけですよ。どちらかが壊れるまでずっと。

 

 またお会いしましょう、と白と黒のシルエットに背を向けて赤色の影は自身の光の下へと帰っていった。

 

 ◇◇◇◇◇ 

 

 その日、ミレニアムは騒然としていた。

 私の滞在が終了し、シャーレの先生の特別係を解かれる日だったからだ。

 

 カーテンの外が色づき始めて部室の外に朝日が昇っているのを感じた。

 横にはうつらうつらとし始めるゲーム開発部の皆の姿があった。最後だからと徹夜でゲームをして飽きてきたらトランプをして、最後には皆で色んな事があったね、と話すことが尽きない夜だった。

 

 「やっぱりアキさん行かないでぇ!!」

 「もう少しだけ居ませんか……? 先生も一緒に」

 「アリス、やっぱり寂しいです……」

 「あ、あの、また一緒に遊びませんか?」

 「私だって、寂しいんだよー!!」

 

 惜しんでくれる皆に嬉しく思いつつも、寂しさが伝播して私もちょっと泣いた。

 

 そんな日も終わり、私は日常に、そして業務に帰っていく。

 いつものように朝焼けを見ながらストレッチをしていると、アリスちゃんも目を擦りながら一緒にやりたいと言ってきたので一緒に身体を動かした。

 その後シャワーを浴びて、いつもの様に足元まである彼女の髪を丁寧に乾かす。気持ちよさそうにしているアリスちゃんを見て、私も顔がほころんだ。

 

 面識ある人達がすれ違う度に一声掛けては去っていく。セミナーのお手伝いの最中に手助けした人、逆に成敗した人達もその中に含まれていて、思ったよりも受け入れられていた事を感じて少し涙ぐんでしまった。

 

 「アキさん、今度は一緒に高所トレーニングをしましょう」

 「えっ、山行くんですか? 私も?! 野球の練習は??」

 

 100kgまで調整可能なリスト、アンクルウエイトを貰いつつトレーニング部の二人と遊びにいく約束をしたり。

 

 「今までトラブルの解決で何でも助けられてしまったね。本当にありがとう。ペロロRX-78は万全にしておくよ」

 「アキ先輩、次は露出少なめにするから衣装着ない……? ダメ? うーん残念、似合うと思うんだけどな、学ラン」

 「説明のやりがいのある方が居なくなって本当に寂しいです。もう一度ミレニアムの施設の説明とか聞きませんか……?」

 

 エンジニア部から色んな小物(全部に自爆機能付いてる)を貰ってしまい、頭を悩ませたり。

 

 「今までありがとうございました!! 本当に……本当にっ!」

 「ユウカちゃん、平均して仕事終了時間が2時間と31分程は短縮されてましたね。本当に助かっていたと思います」

 

 ユウカさんの熱い握手と、私も助かりました。とノアさんの賛辞に送られる。「困ったら絶対に力になりますので! それといつでも帰ってきていいんですからね!」と勢い込んだ彼女達からセミナー用のジャケットを貰ってしまった。あと、パスキー。あの……本当に良いのこれ? 保管庫とか入れちゃう奴じゃ……

 そんな感じに惜しまれながらセミナーに別れを告げたりと色々としている内にあっという間に時間が経っていた。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 「「「「アキさん今まで、本当にありがとう!!」」」」

 「こちらこそ、今までありがとう!!」

 

 贈り物を貰い過ぎたため一旦部室に帰ると、ゲーム開発部の皆からも贈り物を受け取った。中身は最新のゲーム機だった。携帯にもディスプレイにもなる優れものでこれで皆との通信もバッチリらしい。

 先生もまた合流し、私達の周りに人だかりが出来る。さて、プチパーティだ、となったところで、モモイちゃんのモモトークが鳴る。差出人はヴェリタスのマキさんからだった。

 

 『皆に面白いものを見せたいから、ちょっと時間空けてくれない?』

 

 まだヴェリタスに行っていない事も含め、丁度いいから先に済ませてしまいたいと皆に伝えると快く了承してくれて、部室まで先生を含めて歩いていく。

 

 「いいですかアキ、ここが電源ボタンです。初期設定はアリスがやってもいいんですよ?」

 「ほんと? じゃあ、任せちゃおうかな?」

 「はい! 勇者アリス、クエスト受注されました!!」

 

 道中、プレゼントしてくれたゲーム機の解説をしてくれるアリスちゃんを微笑ましく思いながら、部室へと向かっていく。

 この先に待ち受けるものが、何かもまだ知らずに。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 ヴェリタスの部室に辿り着くと、マキさん、コタマさん、ハレさんの問題児三人組が待っていた。なんだかんだセミナーでの業務での顔合わせが多かった三人(取り締まり回数な意味で)だっただけに、会う回数が減ると思うと少し寂しさもある。

 別れを惜しむ挨拶もそこそこに、三人は弄っていたものを見せてくれる。そこには、カメラアイがついた球体に無数の足がついたような不気味なフォルムをしたロボットのようなものが鎮座していた。

 

 「これはミレニアム郊外で発見されたものです」

 「シキ先輩の戦車に混じる形で転がってたの」

 「貴重かな、と思って持って帰ってきた。先生、ちょっと見て欲しい」

 

 結構綺麗だったから、動かせないかなーって思ったんだけど、全く動かない。と、マキが言う。

 よくよく覗き込んで見ると表面に継ぎ目すら無くて、シキの操っていた戦車とは似ているようで違う系統の機械であった。そもそもあっちの戦車は雷帝のいた時代に模造品も沢山作られていてレプリカが多いとのこと。

 

 「アキさん、分かる?」

 「私!? 一応見てみるけど……触っても大丈夫かな?」

 ──何というか……、不吉な形だね。

 

 そんな事を全員で話し合っていた。顔を突き合わせて、最後だからと少し冗談交じりに茶化しあう。少しだけ寂しさを紛らせようと、少しでも話題を増やそうとしていた。

 だからこそ、『ソレ』を見落とした。もし、この世界がゲームで戻れるのであればコンティニューポイントの一つはここにするはずだ。

 ──けれど、後悔は先に立たない。必ず後からやってくるものだ。

 

 「──あ」

 

 フラフラと、会話の輪に加わらなかった子がその機械に近づいていく。「アリス、見た事があります」と、うわ言のように呟きながら、継ぎ目のない表面にそっと触れてしまう。

 その途端、息を吹き返したかのようにロボットに電源が灯る。皆が驚愕する中でアリスちゃんだけが静止し、何を考え込むようにブツブツと呟いている。

 

 「え? あれ? 機械動いたの? 先生、何かした?」

 「お姉ちゃん、ゲーム機の電源点いてない?」

 「あれ、ほんとだ。何で?」

 

 皆に動揺が走る中で止まったままのアリスちゃんの事が気になって近寄ろうとする。

 

 「アリスちゃん大丈夫? ……っ!?」

 

 突然、ズキンズキンと鋭い頭痛が襲い掛かってきた。金属の輪で締め付けられるような頭痛が連続して起きて、立っていられない。そんな私の様子に気づいた先生が駆け寄ってくるのが視界に見える。

 激しい頭痛の中で誰かの声が頭に響く。

 

 〈私の……〉

 〈私の大切な──よ……〉

 

 私ではない誰かに向けて放たれている言葉がずっと響いている。その言葉の向かう先、そこに視線を向けると、まるでマネキンのように無表情になったアリスちゃんが口を開いていた。

 

 『──起動開始』

 

 「一体これは……」と先生が呟くのも束の間、アリスちゃんはまるで操られたかのように、言葉を発し続けていた。ブツブツと不気味に、空虚に。何の感情も感じさせない声が普段の彼女から栓の壊れた蛇口の様に溢れている。

 

 『コードネーム 「AS-1S」起動完了。プロトコルATRAHASISを起動します』

 「アリスちゃん……?」

 

 カシャン、とアリスの手からゲーム機が滑り落ちる。先程まで大事そうに、愛おしそうに私に説明をしてくれていた贈り物。ミレニアムの日常が詰まったソレは、地面に無造作に転がって液晶画面にヒビが入っている。

 更にそれはぐしゃっ、と長方形の筐体が悲鳴をあげる様にして砕かれてしまった。ゲーム機を踏みつける様にしてロボットたちが私達の方へと向かってきた。

 その様子に堪らずモモイちゃんが駆け出していた。

 

 「っ!!?? 待って!! それはアキさんの──!!」

 『──攻撃開始』

 

 真っ先に飛び出した彼女を標的にしてレーザーの槍衾が向けられる。

 冗談でも怪我でも済まなそうな威力のソレに、身体が勝手に反応し頭痛をものともせず飛び出した。

 収束した光線が熱で機器を焼き切り全てを薙ぎ払った。そして轟音と共に視界も聴覚も掻き消え、全てが吹っ飛んだ。

 

 

 ──日常に壊れていく音がする。

 

 いつもそうだ、嵐の始まりは突然であっという間に過ぎ去っていく。全てを壊して何も残らない。いつだってそうだった。

 

 私は暖かい日常が壊れていくのを、指を咥えて見ているしかない。

 ただ、それがいつも通り苦しかった。

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