元SRT学園のNo2の転生者がヴァルキューレで閑職をやる話   作:宵越しのモルス

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第44話

 『にはは、これで私も晴れて無罪放免。いや、むしろご褒美まで……どんなのもらいましょうかね〜』

 『あるわけないじゃない、そんなの』

 『えええ、なんでえええええ!!!  鬼! 悪魔! 冷酷な算術使い!』

 

 噂の問題児の手腕により、「エリドゥ」の全ての電源がカットされた。その様相を呆然とも冷静ともつかない態度で『鍵』が静かに告げた。

 

 「……リソース確保、システムシャットダウン」

 

 そんな様子を余所に、後ろで通信越しに鳴り響いていたお説教(打撃音)が止み、改めてユウカさんが映し出される。

 

 『皆、大丈夫!?』

 

 真っ暗となったコントロールルームに彼女の声が響く。先生とゲーム開発部のメンバーが驚愕と安堵の声を漏らした。

 その様子を見渡し、呆然としている『鍵』に注意を向けつつ、ユウカさんは口を開いた。

 

 『状況が普通ではない事は良く分かりました、先生!!』 

 『ふふっ、最初は都市の位置を伝えるだけのつもりだったんですよ? でも、やっぱり最後まで何とかしないとって』

 

 『お話』を終え、後から加わってきたノアさんも含めて、二人ともナイスタイミング。と拳を握る。二人が神の様に見える。と手を合わせて崇めていると、彼女達の目がこちらに向く。

 その瞬間、全身の毛並みが逆立った。

 

 「あ、やっぱり居ましたよ、ユウカちゃん」

 「アキさん……大怪我してましたよね!? 何でそんなところに居るんですか!!!」

 

 怒気に押されて、「アリスちゃんもリオも居ても立っても居られなくて……」とボソボソ応えるも、更に怒られる。周囲の視線が突き刺さるのをひしひしと感じながら、耳と尻尾を丸めて小さくなる。だってぇ……。

 

 「まぁ……事情は後で聞くのでいいです。そんな事より、会長!! セミナーの予算を横領してこんな都市を作るなんて……後でお説教ですよ!! アキさんも含めて覚悟しておいてください!!」

 「……ユウカ」

 

 次のターゲットであるリオも、私と同じように小さくなっている。えっ、私も怒られる流れなの!? やだー!! 

 がみがみと怒られ、二人揃って()()()()()まで小さくなっている間に、『鍵』の方は再起動した様で次なる一手を打ち出していた。

 

 「リソース確保プロセスエラー。緊急状況発生Divi:Sion、プロトコル実行者を保護するためにエリドゥ中央タワーに集……邪魔者?」

 

 しかし、彼女の打つ手は功を奏す事は無かった。

 出現した機械軍団がやってこない事に眉を潜め、映像を映し出す。すると目の前の光景に再びフリーズすることとなる。 

 私達の眼前にアップで映し出されたモノ。それはケミカルな色で塗装され、四本腕だったものが六本腕に増設された『アバンギャルド君』だった。その異形が地面から生えてきたロボットを淑女の嗜み(巨大ドリル)で蹴散らしながら、道路を爆走している姿が映し出されていた。

 誰もが言葉を失う中で、《大きなお友達》の感性を持っている先生が歓声を上げる。

 

 ──エンジニア部の皆が巨大ロボに乗ってる!! いいなぁ!!

 「ふっふっふっ……とても素晴らしいリアクションです先生。満を持して説明しましょう!! これこそがエンジニア部の技術とヴェリタスのセンスの結合により生まれた、新生紀アバンギャルド君です!!」

 「スクラップのニコイチにより、動力炉も二倍。更には操縦席も増設したよ。これこそがダブルユニゾ──」

 「相手が廃墟から這い上がってきた怪物というのなら、こちらは宇宙を目指す技術者(マイスター)の情熱がある。負けるわけにはいかないな。──行けっ、スペースアバンギャルド君二世!」

 

 コンクリートに無限軌道の痕跡を残しつつ爆走する姿に、「宇宙戦艦、宇宙戦艦だよ皆!」ときゃっきゃっ、とはしゃぐ先生を誰しもがついていけない。という反応を残しながらも、心強い増援に表情が明るくなっていく。

 

 「奇妙なオブジェクトを脅威と判定。残存戦力のルートを構築し、未知数との戦闘を回避──」

 「申し訳ありませんが、その子たちは来られませんよ。タワーの入り口でしたら、エイミとC&Cが塞いでおりますので」

 

 その声に振り向くと、美少女(前略)(ヒマリさん)が微笑んでいた。

 

 「……ヒマリ、逃げたと思っていたのだけど」

 「逃げるだなんて、なんて寂しい事を」

 

 リオの態度に首を振りながらも「この先の展開は読めていましたから」と、驚いた顔を浮かべる『鍵』に視線を向けた。

 

 「そして、これが『Key』……無名の司祭の「オーパーツ」を稼働させる為のトリガーAIですね」

 

 無言で黙り込む彼女への注視を行いながらも、「このまま放っておけば、きっとアリスの人格は書き換えられて、『名も無き神々の王女』として覚醒するでしょう」とヒマリさんは告げた。

 その言葉に全員が落胆した表情を浮かべ、口々に動揺の言葉を吐き出す。

 

 「ですが、それを解決する手段もあります。無名の司祭は既に動き出しています。ですから、彼らが到着する前に、まず私達の手でアリスを──」

 

 車椅子から投影されるホログラムが、アビドスでの戦闘を映し出す。私を助ける為に行った先生の行動とそれを解析したデバイスの説明画面。

 あの時と同じ事をしようと言うのだろう。心に乗り込んで説得する。単純で極めて難しい作戦。

 

 「──『Key』の起動でデータベースの深部に隔離されてしまったアリスを起こすのです」

 「危険すぎる。例えアリスを取り戻せたとして、無事に帰還できる保証はない。それにっ──」

 

 「やります」「やろう」

 

 動揺と懸念点を口早に話すリオを遮って、開口一番に応えたのは私とユズちゃんだった。そして顔を見合わせると、少し照れくさそうに笑って彼女は一歩前に出る。

 

 「友達を救えるのなら、どんなことだって……やります!」

 「そうだよ! それに先生だって居るんだからなんとかなるって!」

 「私達はアリスちゃんを助ける為に来てるんです。諦めたくなんてありません」

 

 才羽姉妹が後に続き、リオが鼻白む。そして私に顔を向ける。

 

 「リオ、ここでやらなかったらきっと後悔が残るよ。こうしたら全部が幸せに追われたのに、って、ハッピーエンドの残照だけを追いかける事になる」

 「……私だけが危険であるなら、それでも良かった。けれど、このケースは」

 「でも、皆をリオがサポートしてくれるんでしょ?」

 「今まで敵対をして……いえ、それがあなたの答えなのね」

 

 諦めた様に視線を下に向け、小さい声で「分かったわ」と呟いた。それを見て、先生は何か声をかけようとして口を噤んだ。その代わりに私の頭にポン、と手を置く。犬の本能的に気持ちいいところだからやめ……何でもない。

 そして一言も発さぬ『鍵』を遠巻きに見つつ、先生が「行こう」と短く号令を発した。

 

 『あなたは乗り込むべきではありません』

 『王女の記憶データを汚染するつもりですか?』

 

 先生の声に混じり何か聞こえた気がして、周りを見渡すが反応はない。ただ背筋に不安だけが這い上がってきては居心地が悪く、耳が勝手に動いていた。

 ふと、心に乗り込むと聞いて、アビドスで先生と対話した時を思い出す。あの時もまた皆に助けられて──。と、そこまで思い至り、ばっ、とヒマリさんの方を振り向いた。

 彼女は何事も無いような顔で軽い説明をしながら、こちらをチラ、と流し見る。その瞬間、確信へとそれは変化する。

 乗り込むメンバーが楽な姿勢になり、意識をアリスちゃんの身体の中へ転送する準備が整った。その輪の中に入らない私に皆が訝しげな視線を送ってきた。

 

 「アキさん……?」 

 

 ユズちゃんが心配そうにこちらを伺う。内心でごめんと謝りつつも、愛銃を二丁構える。

 

 「皆、アリスちゃんの事、頼んでいいかな? ……何となく嫌な予感がするんだ」

 「えっ、アキさん行かないの!? なんで!?」

 「アリスちゃんだって、アキさんの事待ってますよ……?」

 

 二人の問いにゆっくりと首を振る。私だってそうしたい。アリスちゃんの下へ駆けつけて、大丈夫だよ。と手を引いてあげたい。

 けれど、私の役割はそうじゃないみたいだ。そう言う風に強く直感が告げている。

 アリスちゃんの事、よろしくね。と告げると、先生の目が合った。

 

 ──それがアキのやりたいことなんだね?

 「……少なくとも、嫌々ではないですよ、先生」

 ──分かった。……アキ、信じてるからね。

 

 一瞬浮かべた険しい顔を見るに、先生も思い当たる節があったらしい。無理はなるべくしませんよ。の意味を込めて、銃を揺らす。

 私の態度に小さく息を吐くと、「これを渡しておくね」と、角錐型の青く光る石を手渡してきた。

 それが何か聞く前に先生は離れ、ヒマリさんの説明を聞いてしまっていた。それから間もなくして、先生達は物々しく見た目に可愛いデコレーションがされているバイザーを被り、眠りについた。

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 「てっきり、先生についていくものかと」

 

 けれど助かりました。と、ヒマリさんが言う。実際、私だってアリスちゃんの事は心配だし、行けるものなら飛び込んでいきたい。けれど一つの懸念事項が私達にはあった。

 

 「ヒマリ部長、ちょっとだけ嘘ついたでしょ?」

 「いえ、私は嘘は吐いていませんよ? 事実を伝えなかった。それだけです」

 

 いたずらっぽく、笑みを浮かべた後に視線を戻す。アビドスでの私の暴走ともいえる状態の時、先生は特殊な手段を使って、私の奥底にダイブしてきた。その対話の時間中も外での私達はアビドスの皆、とFOX小隊と交戦をしていたらしい。

 つまり、それと同じ状態が発生した場合のここでの対処役が必要になる。という事。戦力になりそうなのは掃討に出払っているし、ヒマリさんも、リオも肉体派ではない。ゲーム開発部のメンバーと先生はアリスちゃんの呼びかけに必須。そこでスポットキャラな私の出番という訳だ。

 端役で脇役、同じ学園でも学年でもないぽっと出のゲストキャラ。そんなのに役割があるだけ上々というものだろう。

 

 『ア……さ……、リオ……か……う』

 

 次第にセミナーの通信がノイズ交じりに変わっていくのを聞きながら、残弾を確認し、チャンバーチェックを済ませる。少しばかり心もとないマガジンをジャケットに戻す。そして顔を上げる。──視線の先、そこには赤く目を光らせた「key」が私達を見ていた。

 

 「『器』の存在を視認。感化を開始。……エラー。想定されない意思による不具合。……意思疎通のプロトコルを起動。プログラム機動のシステムから、言語能力の変換を開始。ダウンロード完了」

 

 澱みなく紡がれる機械的なシステムメッセージから人間のように、或いは人間らしくその言葉は発された。

 

 「……全く、不便なものです」

 

 彼女は人格が入れ替わったかのように吐き捨てた。そして、ヒマリさんとリオを一瞥する。

 

 「意識をデータにして改竄を行う。その様な呼びかけが本当に有効だとでも?」

 「理論上は可能よ。危険な賭けである事に変わりはないけれど」

 「その上、貴女は動けない。そうではありませんか?」

 「……王女の保護が最優先。例え、使命にそぐわないデータであったとしても」

 

 そして彼女の瞳が私を捉える。暴走したアリスちゃんを見た時と同じような頭痛が奔る。倒れないように足と、お腹に力を込めると頭痛は不思議と和らいで行った。

 彼女は「これ以上は無駄ですね」と、首を振る。その動作がまるで人間と錯覚してしまう様な動作であり、無機質な「鍵」と呼ぶには躊躇われた。

 だから、モモイちゃんが「key」と冠したタイトルを呼ぶ時の言葉を借りる事にした。

 

 「はじめまして、『ケイちゃん』」

 「鍵です。名前は不要な役割を付与します。故に不要なんですよ、不適格な失敗作。創造主たる無名の司祭の要請を無視するとは」

 

 呼びかけた名前がお気に召さなかったようで、『ケイ』は私を見つめ、静かに拒絶の意を示す。

 

 「……あなたの様な存在を、王女に近寄らせる訳にはいきません」

 

 無名の司祭が創造せしめた名も無き神々の受け皿は、本来在るべきであった王冠を廃した。

 生体がある故の変化があり、真理に到達するのに無量大数の時間を要した為である。故にそこには虚数が存在し、何者もそこに介在は不可能であった筈。

 しかし想定しえない何かしらの干渉を受け、別の存在を受け入れることにより、その本質は反転し変質した。故に『あなた』が生まれ、変数としてそこに存在する。

 存在できると仮定しながら、同時に存在を否定されるモノ。テクスチャのバグによって、その意義を消失し別のモノへと変貌する事。同時にそれが起こりえる事態。敢えて表現するのであれば、恐ろしく極小の確立において達成された『外れ値』といったモノでしょうか。と、『ケイちゃん』が言う。

 

 「何を言っているかは分からないけれど……この事態を止めないと皆が危ない。違う?」

 「そう……ですが、まさか実行が出来ないのですか? 生態素体とは言え、一体どんなDefectが起動しているのやら。それに借り物の身体に規格不適合なものをインストールするなんて、何て非効率な……」

 

 そこまで言い終えて、「なんでしょう、イヤな予感がします」とケイちゃんは身を震わせた。かなり事務的に喋っていた先程までの態度はもしかして仮初の姿のだったのだろうか、と思えてしまう程だ。と、しみじみと見ていたらビシッと指を差される。

 

 「だいたい貴女は「王女」を甘やかしすぎです。夜にコッソリとお菓子を容認するだなんて不健康極まります!!」

 「はい??? だって、食べたいって言うし……」

 「貴女はいいかもしれませんが、「王女」が虫歯になったらどうするんですか! ……まぁ、優しいところは嫌いではありませんけど」

 

 最後の方は聞き取れなかったものの、お小言が続く様はまるで従者のようで一瞬敵対関係であることを忘れてしまいそうな程であった。

 彼女は「……これだから干渉を受ける事を避けたかったのです。王女の感情が直鎖的に私に伝播するので」とブツブツと文句を言った後に頭を振る。

 

 「ですが、それもここで終わりです。アキ。死にたくなければ素直に私と王女に付き添い、無名の司祭との約定を果たしなさい」

 「残念ながら、アリスちゃんは魔王になる事を望んでない。だから、世界の半分と引き換えでもそれはイヤかな」

 「理解はしているつもりですが、やはり分かりません。共感や相互理解と貴方たちが感情などと呼ぶものは、個人の自己完結の上に成り立つ一種の錯覚であるというのに」

 「人の願いを応援したいって、そんなにも変かな?」

 

 彼女は呆れる様に肩を竦め、手を軽く翳した。同時にエリドゥ全体が揺れ始める。

 

 「元より計画の変更を行う予定はありませんでしたが……少々期待外れです。いえ、これで何も障害がなくなったと言うべきでしょうか」

 

 そう言い終えると、電源の落とされたエリドゥに再び光が灯る。

 

 「改変プロトコルが99%に到達した意味。この要塞都市の掌握が停電程度で完全に終了したとでも?」

 「まさか、そんな筈……」

 「そのまさかですよ、調月リオ。あなたが対終末を思い描き、全ての電力が停止し、あまねく生命が息絶えようとも、この揺りかごだけが存在せしめると確信し、構築した最終プロトコル。プロテクトの突破上の効率上、無視しましたが……随分、優秀な仲間がいるようですね」

 

 先程の通信が全員の脳裏に浮かぶ。リオとはまた別の方法でプログラムを突破し、セミナーの資金を横領せしめた彼女の手腕。それが仇となり、強固にプロテクトされた「エリドゥ」の核が侵された。

 

 「……あぁ、成程。通信監理システムと都市機能の統括がこのユニットに……掌握完了。エマージェンシーコール、緊急発電機の稼働を確認」

 「Hub二号機の把握を……!?」

 「リオ、急いでアンチプログラムを……!!!」

 「都市に連携した兵器をオンライン……なんですかコレは? 一度、感化されたプログラムが滅茶苦茶になってるモノが、まぁ、いいです。戦力には変わりありませんし」

 

 それを言うと、彼女は瞳を閉じる。内側での対話に集中するのだろう。

 その姿とは裏腹にこちらは至極慌ただしい。目まぐるしく変化していく状況と、それに呼応して緊迫した二人の声が響く。

 

 「想定以上、というべきでしょうか。こうまで稼働領域を制限されるなんて……どうにか仮想領域の先生達の保護は叶いましたが」

 「……先生達を緊急離脱後に、貴女達だけでも逃げて頂戴。私は何とかしてこの都市の自爆機能を──」

 「待って!!!!」

 

 全てを投げ出そうとした彼女に割って入る。見開かれた彼女の瞳に私が映った。

 

 「先生が、皆がハッピーエンドをやるって言ったんだから信じてみない?」

 「アキ……細かい説明をしている暇はないわ。既に私のAMASすらも満足に動かす事が出来ず、そして、エリドゥの都市機能を司るHubユニットまでが陥落した」

 

 地上に湧いてきている兵器も含めて、彼我の戦力差は99:1と言っても差し支えない。その上でコントロール機能を取り戻すには乗っ取られた巨大な自律機械を制圧し、都市機能の回復を行わなければならない。そうでなければ先生達の意識のサルベージも叶わなくなる。と、彼女はまくし立てた。

 しかも、それを先生の指揮抜きで行わなければならない。全身から、すぅ、と血の気が引いていく。その考えを即座に頭を振って振り払う。

 

 「まだ深部にダイブしていない今だけが安全に離脱を行える可能性が高い。これが一番確実な方法よ」

 

 リオは懇願するように、こちらの目に訴えかけてくる。

 

「理解して頂戴。貴女が言う、ハッピーエンドなんてものは幻想で、都合の良い現実は無い。これしか……無いのよ」

 

 確かにそうだ、私達「子供」が描く未来なんて絵空事で、現実は冷たくて悲しい。どうしようもない事だけが眼前に降ってきては私達の足を止める。楽しい時間はすぐに過ぎていくし、永遠に居たいと思える場所からも、やがて巣立たなくてはいけなくなる。

 

 「それでも……先生は『信じる』って言ってくれたんだ」

 「アキ……?」

 「信じていいよって、変われない私に寄り添ってくれたんだよ、リオ」

 

 その信頼は返さないといけない。私の経験も、身体も全部賭けたって構わない。

 

 「先生も、アリスちゃんも全部を助けたい。だから、リオ、手伝って!!」

 「これでも、全てを……救うというの……?」

 「私だけだと絶対に無理。でも、皆が居る。……そうでしょ?」

 

 それでも尚、口ごもるリオの手を取る。そして短く「信じて」とだけ伝えると、迷いながらも彼女は拒否することをしなかった。その姿に安堵の息を漏らす。

 そして銃を引っ掴みながら頭を回す。取れる手なんて多くは無い。ただ手順は分かっている。ならば、後はやるだけだ。

 

 「ヒマリさん、ネルさんか、エイミさんの通信を開いて貰えますか?」

 「ふふっ、リオがそんな顔をするだなんて来た甲斐がありましたね。それで何をするんです? アキさん」

 「全戦力を投入して、まずはコントロールを奪取するために当該目標の沈黙。想定する敵戦力上、妥協は無理。リオとヒマリさんはここで突入のサポート」

 「それは構いませんが……ここの防衛は? まさか……」

 

 そのまさか、だよ。と掴んだ愛銃を構えてみせる。戦力を抽出して攻略戦に転じた後、防衛陣地の構築及び、戦闘を行うのは私一人だ。

 

 「入り口にバリケードを構築後に籠城戦。仮に封鎖に失敗したとしても、エレベーターを破壊し遅滞戦闘を行えば時間も稼げる。それは私一人で充分に可能なはずです」

 「無茶……を通すしかない、のは承知ですが……」

 「元々の部隊でも無茶を通すのが私の仕事だった。だから」

 

 リオも「無茶よ」と言いかけて口ごもる。実際にそれしか無いのだから仕方ない。

 

 「大丈夫。こういう戦闘は慣れてるし、先生が帰ってくれば状況は良くなる」

 「本当に……それでいいのですね?」

 

 短く頷いて、外に出る。

 

 「入り口のエイミさんと防衛網の交代後に進入路の封鎖を行います。総指揮はヒマリさん、お願いします」

 「……分かりました。どうかご無事で」

 

 リオに向き直ると、心配そうな視線が向けられる。

 

 「アキ……貴女は」

 「答えは変わらないよ、リオ。先生もアリスちゃんも、そしてリオも、全員が幸せになって欲しいんだ」

 

 だから、後はよろしくね。と、私は部屋を飛び出していていく。

 何かを言っていたリオの声は響き渡る警報の音でかき消されてしまった。

 

 

 




お久しぶりです。ちょっと身辺が忙しかった為に投稿が遅れました。またボチボチと頑張りますので、気長にお待ち頂けると嬉しいです。
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