『Black Cat 黒猫』の二次創作作品   作:三毛子猫

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本作はファンフィクション(二次創作)です。以下の作品に登場する設定・用語・キャラクターイメージを一部参考にしていますが、公式とは一切関係ありません。

参考作品:

・漫画『BLACK CAT』(矢吹健太朗/集英社)

・ゲーム『Detroit: Become Human』(Quantic Dream)

・ネットドラマ『CODE ファウストゲーム』


第四章(だいよんしょう)
第四章(協働無二)〈NOTOにゃん監修版〉


【時間】午前8時台

 

「警察だ、動くな!」

 

証票を示すと、若い男が一瞬たじろぐ。だがすぐに踵を返し、走った。

 

――そう簡単にはいかねぇよな。

 

トレインは証票をしまい、追走に移る。初日一件目から派手だ。屋上での確保、楽に終わると思っていたが。

 

相手は狼狽しながらも、路地一本分先の屋根へきれいに飛び移った。

 

トレインが走れば、コナーも命令不要で背後に付く。

 

男の背にぴたり付いていたトレインが、ふいに間合いを取り、背後のコナーに短く投げた。

 

「速度で抜け。公園の先回り、いけるか?」

 

次の瞬間、世界が静止する。コナーは周囲を解析した。

 

現在位置は五階の集合住宅。階高三メートル、合計十五メートル。垂直降下は損耗大。

 

正面車道に路線バス。車高四メートル。五階からバスの屋根へ移れば残差十一メートル。部分的損耗は生じるが稼働に支障なし。

 

バス時速八十キロ。人間走速二十キロ。

 

路線は公園前を経由。

 

——計算完了。可能。

 

コナーは踵を返し、車道側へ跳ぶ。屋根に着地した瞬間、鈍い衝撃音。客席にざわめきが走るが、運行は継続。

 

トレインはコナーの先回りを信じ、男から目を離さず加速する。だが距離はまだある。

 

男は洗濯竿を掴み、後方へ弾いた。追走の妨害にはならず、洗濯し直しの手間だけが増える。

 

足元の鉢植えを避け、背の高い植木を倒す。これも効果なし。むしろ差は詰まる。

 

前方が尽きた。越えられる屋根はもうない。

 

男は飛んだ。だが落下しない。各階の庇を踏み、段を刻むように降りる。

 

トレインも続く。庇が軋み、乾いた破砕音が連なる。平日で住人不在なのが幸いだった。

 

三メートルの高さから、男は地面へ跳び、公園方向へ。

 

トレインは信号で足を取られた。青に変わり、車列が奔る。

 

男が振り返る。車に阻まれるトレインを見て、緩んだ口元。

 

「動くな」

 

男が再び視線を戻すと、正面にコナーがいた。拳銃を構え、一直線に狙っている。

 

――いつ、どうやって? 脳が追いつかない。だが、その数秒の逡巡が致命の隙となる。

 

背後からトレインが手早く手錠を掛ける。コナーは威嚇を終え、銃を納めた。トレインは正面に回り、告げる。

 

「第二種指定薬物・メタンフェタミン所持の現行犯だ。お前を逮捕する」

 

深く息を整え、権利を読み上げる。

 

「黙秘し、または書面で陳述する権利がある。弁護人を選任できる。生活保護等の要件に該当する場合は、家族・友人に証拠提出を依頼できる。裁判所の規定に基づき、所持事実により逮捕する。不服がある場合は裁判所に不服申立てができ、家族・友人・弁護士に委任して申請できる。費用は不要だ。以上、理解したか」

 

【時間】正午

 

引き渡しを済ませ、二人は近くの弁当店へ。昼の店内は戦場だ。

 

休暇明け一件目としては上々。判断も、走りも。トレインの表情には達成感が見える。昨日の“働けない男”とは別人だ。

 

「どうした。言いたそうな顔だな」

 

視線に気づいたコナーが、機を捉えて口を開く。

 

「私の解析では、多くの人間は『働きたくない』感情を抱え、生活のために就労します。あなたのように仕事を強く愛する例は稀です。なぜ、そこまで熱を持てるのですか」

 

「朝から難しいこと考えてるな」

 

熱量なんて、システムには定義しづらいだろ――トレインは曖昧に返し、箸を進める。

 

ポケットで通知音。画面を見た瞬間、箸が止まり、食欲も落ちる。

 

視線を固定したまま、番号に発信。

 

「……どこだ。俺が一週間休んだだけで、なんで情報屋を見失う?」

 

怒号ではない。疲れた声音。

 

コナーは通話先の属性を推定する。中年男性。

 

『すみません! 兄貴、本当に……!』

 

「位置を送れ。今向かう」

 

通話を切り、トレインは立ち上がる。弁当は三分の一ほどしか減っていない。

 

「復帰初日から派手だな。……行くぞ」

 

独り言のようにこぼし、なお座るコナーへ視線で指示。

 

「今すぐ出動ですか」

 

「何か問題か」

 

「摂取量が不足しています。残量から見て本来必要なカロリーに達していません。今後のパフォーマンスに影響します」

 

相棒、兼ベビーシッターか――トレインは眉を寄せる。

 

「今は食欲がない」

 

「テイクアウトを。後で空腹時に摂取してください」

 

――後で腹が減っても、買いに出るのは手間だ。仕事中に気を散らしたくはない。

 

「じゃあ、包んでくれ。俺は車で待つ」

 

折れたトレインが店を出る。

 

彼の背を見送り、コナーは三分の二残った弁当に目を落とす。BOSSの指摘は正確だ。食生活、生活管理――トレインには課題が多い。

 

- 第四章 完 —

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