終末秒読みのオーバーライト   作:蒸しパンナちゃん

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スタートダッシュキャンペーン

 

 扉を開けた先では、白い花弁が風に舞っていた。

 

「おおー……」

 

 石畳の大通りに連なるレンガ造りの建物。

 道行く人々は、日本のファンタジーらしい仕立ての良い服を着て行き交っている。

 振り向くとさっきまでいた建物の扉にはクローズの看板がかけられ、戻れないようになっていた。

 

 ……あっ、遠くに城っぽい影が見える。

 しかもあの城どっかで見たことあるぞ。

 たしかあれは『インペリアル』の帝国城じゃなかったか。……カードゲームの世界に来たって感じがするねぇ!

 

「よーし、さっそく探索して……おぶっ」

 

 歩き出そうとした次の瞬間、顔面に何かがぶつかってきた。

 手に取ってみると、どうやら丸められたスクロールのようである。

 ……羽ばたく音が聞こえたから見上げてみると、茶色いフクロウが飛び去っているのが見えた。伝書フクロウだろうか。カードでいたよな……。

 なるほど、手紙を届けてくれたのか。

 

「えーなになに、重要なお知らせ……」

「ホーッ」

「ホーッ、ホーッ」

「待って待って、めっちゃフクロウ来んじゃん」

 

 お知らせ読もうとしたのに次から次へとフクロウがやってきてはスクロール爆撃をしてきやがる。わかったわかった。わかったから勘弁してください。

 俺初心者なんすよ。VRゲーム初めてなんすよ。少しずつ咀嚼させてくれ……。

 

 

 

 噴水のある広場にやってきた俺は、スクロールを一枚一枚広げて読み込んでいた。

 運営からの重要なお知らせだったり、イベント? のアイテム交換の期限延長のお知らせだったり……まぁ色々ある。正直今の始めたての俺にはそこまで関係ないものが多いように感じる。無視でいいか……。

 と思ったら、いくつかのスクロールの中にはゴールドジェムが数千単位で同封されていたりして、唐突に小金持ちになってしまった。スタートダッシュキャンペーンだとか、周年キャンペーンだとか、ログインボーナス一日目だとか……おいおい、まだ何もしてないのにこんなにお小遣いくれちゃっていいのかい? 俺まだなんもしてないよ?

 

「これだけお金があればまとまった数のカードパックが買えるんじゃないか……?」

 

 そう思い立った俺は、カードショップを探すことにした。

 広場にはNPC? っぽい雰囲気の人たちが大勢いるので、彼らに話してみることにしよう。AIだったら色々教えてくれるだろう。

 

「カードショップ? それならそこのメインストリートを進んだ突き当りにあるよ。他にも店はあるけど、近いのはそこだね」

「ありがとう。店は色々あるんすか」

「もちろんさ。店ではそれぞれ定期大会が行われているし、そこで優勝した人によって店のある地域の支配勢力が変わってくる。あんたは未所属だから気にしなくていいだろうけど、どこかの勢力に所属するようなことがあればちょっとは気にしたほうが良いかもね。シングルカードの仕入れやすさとかが変わってくるらしいから」

 

 勢力とかあるのか……カードショップに居座ってるチームとかそういうイメージでいいのかね?

 実際に勢力同士の戦いともなるとカラーギャングみてえだ……対人戦はやっぱ殺伐としてんのかな。カードゲームなんてそんなもんだし別にいいけど。

 

 どことなく懐かしい雰囲気を感じ取りつつも、俺は教わったとおりに道を進み、カードショップを見つけた。

 カードショップ、ベルガモット。でかい。レンガ造りだけど三階建てくらいある。街の大店かよってレベルの店構えだが、これがカードショップらしいのだからさすがだ。カードゲームの世界はこうでなくちゃな……。

 

 店の前にはNPCっぽくない、おそらくプレイヤーらしき雰囲気の人たちがちらほらといる。

 なんでわかるのかっていうと、頭の上に浮かんでいる名前がNPCと雰囲気が違うっていうのと、あとはキャラデザとか衣装とかではっきりと個性が出ているのだ。

 サ終間近のゲームらしいけど、人はいるこたいるんだね。

 

「また花畑が広がったってよ」

「もう渓谷辺りは重すぎて駄目らしいな……ドラゴン系のイベント進行できなくなるんじゃないか」

「スクショ撮っておきたかったわ」

 

 なんか話してるけど、まぁ気にせず入店するか……。

 

「いらっしゃい、初めての人だね?」

「うっす」

 

 店に入ると、店員らしい優しげなおじさんが話しかけてきた。

 そんなに俺から初心者オーラ出てましたか。けどこれでも経験者なんすよ。へへへ……でも店のことよく知らないから色々教えて下さい。

 

「ここカードショップベルガモットでは、カードの売買をやってるよ。プラチナジェムやゴールドジェムで支払ってくれれば、パックでもシングルでもストラクチャーデッキでも、なんでも出せるよ。うちにないカードはない! ……という気持ちでやってるからね!」

 

 ないカードもありそうな言い方である。

 

「あんたははじめてだし、今回だけ特別サービスで無料で10パックプレゼントしてあげよう」

「えっ、マジで? いいんすか! ありがとうございます!」

「はっはっは、未来のお得意様のためだよ。うちの店を贔屓しておくれ。さて……何を買うんだい?」

 

 そう言うと、おじさんの前に半透明なウインドウが現れる。この店で買えるシングルカードやパック、ストラクチャーデッキなどがあるようだ。

 

 ……既に初期デッキは貰っているが、ここで何を買うかでかなり今後の方針が変わってきそうだ。

 慎重に選ぶ必要があるな。

 

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