終末秒読みのオーバーライト 作:蒸しパンナちゃん
花畑の中で、銀髪の少女はとても美しく見えた。
大きな青い瞳。水色のサマーワンピース。なるほど、現実には存在し得ない見た目だけど、VRだと作れてしまうのか。素晴らしい世界だ……。
プレイヤー名は……ハル、というらしい。
君ハルちゃんっていうんだ……かわいいね……。
「フッ……何も知らないとは、俺も舐められたもんだね」
俺はデッキを取り出した。
さっき作ったばかりの美少女デッキだ。シナジーは薄いけど現代のカードパワーで弱さを補っている……と、思いたい。
「こう見えて昔は何度か大会で優勝したこともあるんだ……お嬢ちゃんのような若い子には負けんぜ、俺は」
「ふーん? どうかな? おにーさん懐古厨ってやつ?」
「おじさんって呼んでたらピキってるとこだったけどおにーさん呼びだからプラマイでいうとプラスだから喜んで許してやる……さあ、御託はここまでだ。プレイヤーならカードで語ろう! 勝負だ!」
「上等! けちょんけちょんにしてあげる!」
俺はデッキを手にしてカッコイイポーズを決め……。
……あれ? バトルは? 始まらないよ?
「……ちょっとおにーさん! バトルの通知来てるでしょ! 承認押しなさいよ!」
「あっ、これか。なるほど開いて押すのね。ごめんごめん」
「台無しすぎるんだけど……まあいいや、バトル!」
「バトル!」
花畑に囲まれたバトルフィールドで、俺とハルの戦いが始まった。
空中にクソデカコインが翻り、表を示す。
「先攻は私! ドロー! マナ1つ使ってプチプチスライムを召喚!」
『ぴきー!』
ハルは1ターン目からユニットを召喚した。
ふーん、『プチプチスライム』か……スライムデッキかどうかはまだ判断つかないな。
「俺のターン。1コス払って『違法陣』を発動。召喚補助用の魔法陣が現れるぜ」
「……アウトメイジデッキね。相性は悪くない」
「それはどうかな」
「私のターン、二体目のプチプチスライムを召喚! そして一体目のプチプチスライムでプレイヤーを攻撃! いっけー!」
『ぴきー!』
「おうふ」
緑色の小さなスライムが思い切り腹に突進してきた。
ボールが軽くぶつかってきたような衝撃を感じる。これが1ダメージか……。
……まぁ全然痛くないし、普通に遊びの範疇って感じだな。当然だけど。
「俺のターン、1コスを払って『時空の歪み』を発動!」
「!? 今度はタイム系の召喚補助……!?」
魔法陣に続いて俺の場に現れたのは、おどろおどろしい時空の歪み。
暗雲の渦巻く空間の歪みは、ただただ不穏な空気を放っている。
「さあ、召喚の準備は整った。攻めたきゃ攻めてきな」
「くっ……デッキが読めないけど……! そんなのでビビると思わないでよね! 私のターン、二体のプチプチスライムを重ねて『麗しのクイーンウーズ』を召喚!」
ハルが召喚したのは大きなピンク色のスライム、『麗しのクイーンウーズ』だった。
まつ毛が生えててキュートなスライムである。
「なるほど、ウーズデッキか……そしてクイーンウーズが出た時、デッキから更にスライムを呼び出せる……だろう?」
「知ってるなら話が早いわね! 私が呼び出すのは『アシッドスライム』! タクマの場には壁になるユニットはいない! アシッドスライムで直接攻撃よ!」
「アシッドか……」
ナイトスライムで守りを固めずにそのまま攻めてきたか……まぁそうだよな……ガラ空きだもんな……。
『ぴきー!』
「おうふ」
酸を帯びたスライムの体当たりにより、1ダメージと攻撃成功時の4ダメージが入る。衝撃はないけど超いてぇ。
つーかやべぇ。
「エンドフェイズ時、クイーンウーズは
「ふっ……まあ慌てんなよ。俺のターン、ドロー」
引いたカードを見て、ニヤリと笑う。
「俺は1コストを払って二枚目の『違法陣』を召喚。そして……」
「……」
「ターンエンドだ」
「……?」
ハルが怪訝そうな顔をしている。ククク……落ち着け。俺はまだ本気を出していないだけだ……。
「さあ、全ての準備は整ったぜ……このまま愚直に攻撃を続けていいのか? ハルちゃんよぉ……」
「こいつ……事故ってない? 私のターン、『プチプチスライム』に『ランサーウーズ』をオーバーライト。手札からスペル『
「あっ、待って待って、それはマズい」
「じゃあ一斉攻撃ね」
「おふっ!? 待ってマジで待って! 次の次のターン『赤銅肌のオーガレディ』が召喚できるんだ!」
「やらせるわけないでしょ! いけー!」
『ぴきー!』
「ウワーッ!!!」
記念すべき俺の初戦は、パンツを拝む前にスライムどもに蹂躙されて敗北した。
サーチカードが……サーチカードがないばっかりに……!