終末秒読みのオーバーライト   作:蒸しパンナちゃん

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あなたに花を捧げるために

 

「やっぱ寄せ集めのデッキじゃ上振れ掴まんと無理だわ」

「何? 一人反省会? 負けた言い訳?」

「厳しいこと言うねぇ……勝者の特権だからいいけど……」

 

 記念すべき俺の初戦は、デッキ事故による速やかな敗北として飾られた。

 いや~まさか事故るとは……と言いつつ、正直半分くらい予測できていたものではある。

 なにせ元のパックが美少女カードをテーマごちゃ混ぜでまとめたやつなのだ。シナジーなどするわけもないし、それぞれのカードを上手く使おうと思ったら普通以上の工夫が必要になる。

 なので俺はとにかく召喚補助のための魔法陣やらホール系の置物やらを大量に突っ込んだのだが……まぁ事故った。単体で次に繋がってくれないカードばかりが手札に来たせいで

運否天賦も何もない序盤になってしまった。こうなるともう、足の早いデッキに対しては無力だ。そういう意味でもスライムデッキとは相性が悪かったかもしれない。いや、そもそも俺のデッキが弱いだけではある……。

 

「本当に初心者なんだね、おにーさん」

「いや、さっきのはちょっと調子が……デッキが悪くてね……」

「デッキのせいにすんのダサいよ」

「そうっすね……」

 

 カードゲーム作品世界の主人公に聞かれてたら軽蔑されるセリフが出ちまった。

 

「それにしても、随分ひっどいタイミングでゲームをはじめたよね、おにーさん」

「ああ、このゲームなんか大変なんだっけ? そういう記事を見てから慌てて登録したから、俺詳しく知らないんだよね」

「見たまんまだよ」

 

 そう言って、ハルは辺りの花畑を見るように腕を広げた。

 いや、見たまんまと言われましてもって感じだが……?

 

 俺が首を捻っていると、突然空気がざわめいた。

 キーンと高音が響き、次第にノイズ音となり、花畑の景色が歪んでゆく。

 

「……ッ! しまった、タクマ、逃げてッ!」

「え? なにこれ、イベントか何かじゃないの?」

「悠長すぎる!」

 

 ワクワクしながら眺めていたのだが、どうやらなんか駄目なやつだったらしい。

 ハルの顔は俺とのバトルで見せることのなかった焦燥を浮かべているが……。

 

「ニューウイルスが襲ってくる……!」

『新世界へようこそ』

「うわっ、なんか出てきた」

 

 花畑のポリゴンが崩れ、空間が歪み、そこから一人の人間が現れる。

 マネキンのように真っ白でのっぺりした身体を持つ、謎のモンスターだ。目だけが禍々しく赤く輝き、俺のことを睨んでいるように見える。

 

「あれは……多分弱い個体だけど、まずいわよタクマ! あいつは強制的にバトルを仕掛けてきて、負かしたプレイヤーのキャラデータを損傷させるの!」

「それってまずいの?」

「お金とかカードとか減っちゃうのよ! フレンドリストとかそういうのもね!」

「それはまずいな」

 

 ただでさえ持ち金もカードもないってのに、この上さらに減らされたんじゃ溜まったもんじゃないよ。負けらんないじゃんそんなの。

 美少女デッキを使って色々鑑賞を楽しみたいところだが……それどころじゃないよなあ、多分。もう一つ作っておいたデッキにしておこう。

 

『さあ、あなたのデータも美しい花に変えてあげましょう』

「コイツ……! 気をつけてタクマ! 狙われてるわよ!」

「あ、これは承諾とか押さなくても始まる感じなんだ」

 

 俺が何も操作していないのに、勝手にバトル開始の演出が始まった。

 謎の白いマネキンモンスターが腕を構え、律儀にデッキをセットしている。

 

「あれはこのゲームを侵食しているニューウイルスから生まれたバグNPCのひとつ……! 元々はイベント用の敵NPCだったやつなんだろうけど、ウイルスに侵食されて無差別にプレイヤーを襲う化物になっちゃったのよ……!」

「それヤバくない……? ゲーム成り立たないでしょ……?」

「だからヤバいし成り立ってないんだって! 本当になんも記事見ないでこのゲーム始めたわけ!?」

 

 まぁはいとしか言えませんね……急いでたから……。

 けど……。

 

「つまり、勝てば良いんでしょ?」

「そうだけど、タクマの実力だと……」

「大丈夫大丈夫、さっきので準備運動になったから。ハルは俺の勇姿を見ていればいいさ」

『バトルスタート!』

 

 お互いに手札が加わり、ライフポイントが設定され……。

 

 ……ん?

 

「ハルさん……あいつのライフポイント、こっちより5多くない?」

「だから、元がイベント用の敵NPCだからヤバいんだって!」

 

 本当にヤバそうな戦いが始まりそうだ……。

 

 

 

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