同居してる魔女が召喚ガチャで毎度世界滅亡クラスの災いを召喚する件   作:あぶりかるび

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1話「世界の危機」

 

 隕石が迫っていた。間違えた。クソデカい隕石が迫っていた。

 

 空を赤で染めるその赤い光は徐々に巨大になっていく。

 

 隕石の大きさは数km。あんなのが激突したらここら一体は確実に更地になるだろう。

 

 あんなものを呼び出したのがたった1人の少女だと言うのだから、世界ってのは結構アンバランスなものなんだろう。

 

「ごめんねぇぇぇぇ! ロウちゃぁぁぁぁん!」

 

 あんなものを呼び出したクセに大泣きの少女を見ると、無性に理不尽を感じる。

 

「心配するなってルミナ」

 

 人里離れた丘の上に立つ俺の後ろには、同居中の幼馴染と一緒に住んでる家がある。

 

 俺は腰に携えた剣を抜く。別に特別なものじゃない。ただずっと愛用してるからこれ以上に使い易いものはない。

 

 俺は全身に力を込めて、隕石へ向かって跳躍する。跳躍距離は数十キロを超え、俺の身体を刹那的に隕石に向かわせた。

 

「龍鬼剣術【砕火(サイカ)】!」

 

 重ってぇ……!

 隕石にぶつけた剣に超質量が押し付けられる。相手は人間が何をしたって覆せない滅び。天災。

 

 分かってるさ、そんなこと。けどそんなモン、今までだって何度も乗り越えて来たんだ。

 

「砕けろ。なんでもかんでもルミナのせいにすんじゃねぇよ!」

 

 隕石の全体に亀裂が走る。それは一斉に砕け、巨大だった隕石は小さな隕石の雨に姿を変える。

 

「龍鬼剣術【円吹(エンブ)】!」

 

 炎を纏った剣を手に回転切りを放てば、そこから射出された炎が飛び散った石片をさらに砕く。

 

 

 隕石は砂の雨として大地に降り注ぐ。被害はゼロだ。

 

 

 俺の幼馴染、ルミナは魔女だ。生まれつき人とは違う特異な能力を持っている。そして、その力はルミナ自身でも制御できないほど強大だった。

 

 ルミナは不定期に何かを召喚する。最初に召喚したのはテントウ虫だった。けどルミナの成長に伴って召喚されるものは徐々に驚異的になっていた。

 

 5歳でオーガを召喚。10歳で悪魔を召喚。15歳の今、ルミナは隕石を呼び出す。

 

「ロウちゃん!? 大丈夫だったぁぁぁぁ!?」

 

 地面に着地した俺に、ルミナは涙ながらに駆け寄ってくる。

 

「私のせいでごめんねぇぇぇぇぇぇ!!!」

「お前のせいじゃねぇって。それに言ったろ、心配すんなって。これくらい俺にとっちゃ逆ナンされたの捌くくらいの労力だ。俺またなんかやっちゃいました?」

 

 あぁ……全身クソ痛ぇぇぇぇぇ!!!

 絶対あばら何本か折れてる。右上腕と左の踵の感覚がねぇ。折れたか、大事な神経がイッてるわ。

 

「ロウちゃんが逆ナンなんてされるわけないよ。この家にずっといるんだから」

「されるかもしれないだろって、めっちゃグラマラスなお姉さんが俺に一目惚れするかもしれないだろって!」

「思春期男子のそういう妄想を聞くのはキツイよ……」

「うっ……」

「ごめんねロウちゃん、また私が魔法をうまく扱えないから世界が危なくて、そのせいでロウちゃんに迷惑ばっかりかけてる……」

「ルミナ、言っとくけど俺は世界を救うために戦ってるわけじゃねぇからな。俺が戦ってるのはお前が大切だからだ」

「急にそういうこと言うのはズルいよ……でも、ありがとねロウちゃん!」

 

 その笑顔を見ると思い出す。俺はルミナと同じ村で生まれた。天涯孤独な俺にとって妹みたいなルミナは大切な存在だ。けど、村の大人たちはルミナの力の暴走を怖れた。世界を終わらせる終焉の魔女だとルミナを罵った。ルミナを殺そうとした。

 

 だから俺は村の皆にルミナが起こす全ての災厄を俺が退けると約束した。幸いにも俺にはそのための力があった。父方の祖父はドラゴン、母方の祖母は吸血鬼。俺には龍と鬼の力が宿っている。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 隕石の衝突から3日。夕焼けの紅い光の中、またもルミナの召喚魔法が発動した。

 

 ルミナの召喚魔法にはいくつかのルールがある。

 

 その1、召喚には最低でも3日の合間がある。その2、召喚されたものは必ずルミナを殺しにくる。

 

「ふむ、剣士よその魔女を差し出すがよい」

「やなこった」

 

 それは人間のような形をしていた。しかし全身に漆黒の鎧を着こんでいて、顔は見えない。腰に帯刀するのは2本の西洋剣。それに全身から禍々しい力を感じる。

 

 今までルミナが怪物を召喚することは何度もあったが、ここまでの知性がある存在を召喚するのは珍しい。

 

「お前何者だ?」

「それを其方に言ったところで理解はできまいよ」

「なんでルミナを狙う?」

「知らぬのか。しかし教えてやるギリもないな」

「じゃあ俺が勝ったら教えろよ」

「よかろう」

 

 その鎧男が引き抜いた2本の剣は黒い刀身を持っていた。殺気が溢れる。

 

 隕石の時に負った俺の傷はすでに治っている。吸血鬼の再生能力のお陰だろう。俺も剣を構える。

 

「ゆくぞ」

「来い」

 

 2本の剣を携えた漆黒の鎧は、ゆっくりと俺に歩いて来る。無造作に、それは俺の間合いに入ってきた。

 

 剣と剣が鍔迫り合い、火花を散らす。しかしヤツの剣は2本ある。一刀を受けている間にもう一刀が叩き付けられる。

 

 受けた剣を滑らせいなし、2本目を弾く。しかし手数の多さは敵が上。連撃は止まらない。

 

 それでも見える。それでも分かる。対応はできる。俺と漆黒の鎧は何度も剣を打ち合った。そして確信した。俺の方が強い!

 

「この程度か? 龍鬼剣術【砕火(サイカ)】!」

 

 それは、俺の膂力の全てを刀身に乗せる技。この技に砕けないものはない。

 

「面白いな」

 

 結果的に言えば俺の剣技はヤツの黒い剣を2本同時に粉砕した。しかし、漆黒の鎧は不敵に笑う。

 

 折った剣が再生していく。なんだあれ、普通の鉄じゃねぇ……

 

 それに……全身が重たい……

 

「お前、俺に何しやがった……?」

「我が身は呪いの温床。育った呪いは外へ漏れ、周囲を蝕む」

「お前の近くにいるだけで弱体化するってわけか」

「理解が早いな」

「色々と戦闘経験は豊富なんでね」

 

 強いなこいつ。剣技だけ見ても手練れと言える。そもそも俺の速度に追いついてる時点でおかしいんだ。なのに全身から呪いを出してこっちの身体能力を下げてくる。長期戦は不利か。

 

「其方は何故、その魔女を守る?」

「時間稼ぎか? けど答えてやるよ。ルミナだけが俺を怖がらなかったからだ」

 

 鬼と龍の力を持つ俺は、意図せず人を傷つける。けれどルミナはそんな俺と毎日一緒にいてくれた。疑いなど全くない純粋な瞳で俺を見てくれた。

 

「そうか。其方が傍にいれば、私も救われたのだろうか……」

「あんたがどんなものを抱えてここにいるかは知らねぇ。けどルミナを狙うなら、あんたも倒す」

「それでいい。私はもう止まれない。その魔女を殺し、私はこの世界を呪うのだ」

 

 身体が重い。眩暈がする。意識が遠い。耳鳴りが酷く、味覚と嗅覚がイカれてる。数分でここまで弱体化するのか。

 

「話してくれてありがとう。呪いは生命を蝕み、食らい、成長する。其方の中に埋め込んだ呪いも、もう開花しているぞ」

「そうか。俺も感謝するぜ。ダラダラと喋ってくれてありがとよ」

 

 空を紅く染めていた夕焼けが沈む。夜が来る。それこそは、吸血鬼(オレ)のホームグラウンド。

 

「長引かせはしねぇ、一撃で決める」

「やってみよ」

 

 朝の俺の能力は夜の俺の半分以下の強さだ。陽を浴びていない状態で撃つこの技は、さっきのとは格が違うぞ。

 

「龍鬼剣術【砕火(サイカ)】!」

「呪剣【アリスティアナ】!」

 

 ヤツの剣が放つ黒いオーラが一層巨大に膨れ上がる。しかしそれは俺が宿した剣の炎に食われるように焼き尽くされた。

 

 俺の一刀は剣戟を跨ぎ、その鎧ごと中身を切り裂く。

 

 右目から胸と腹を断ち、俺の剣はヤツの腰から抜けた。

 

「なるほど、我が生涯最後に勝敗を決めるのは結局剣の腕であったか」

 

 そう言って漆黒の鎧は倒れる。その中には白い肌が見える。女特有の柔らかそうな肌だった。

 

 俺の与えた傷は致命傷だ。剣を再生した能力もその傷を治すには至らないらしい。女の身体は半透明になり、消えていく。

 

 ルールその3、召喚されたものは約24時間で消滅する。それが生物の場合は死亡した時点で消滅する。

 

「お前は結局なんだったんだ?」

「剣に生き、剣に呪われた、哀れな傀儡さ。約束通り教えてやる。我らは刹那の時しかこの世に顕現していられない。されどその魔女を殺し、心の臓を喰らえば我らの顕現は永続となるのだ。少年よ、哀れにも守り続けるがいい。この先に現れる私など比べることすらできない災いから」

「最弱四天王みたいなこと言ってんなよ。お前に言われなくてもそうするさ」

「あぁ、本当に羨ましい魔女だ」

 

 その女は最後にルミナを見て、消失した。

 

「なんか、悲しそうな人だったね」

「そうだな。でもお前を狙ってた」

「うん。けど私の召喚魔法って、いったいどこから呼び出してるのかな?」

「さてな。そんなことより腹減った、飯にしようぜ」

「うん、今日は私が腕によりをかけたシチューを作ってあげるからね!」

「でもこの前火加減ミスって焦がしてたじゃん」

「今度は大丈夫だもん!」

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