ランクーA 『隠れ家不動産』
ランクーA 『マッド博士の筋肉増強剤』
『本』の中に入っていた2枚のAランクカード。
さらにわからないことが増えて混乱がおさまらない。
(『食料』カードと、この2枚のカード)
(本当にどういうことか全然わからん)
(わからんことは後にまわそう)
思考が迷路に入りそうになったので、いったんカードについてはおいておく。
(スマホが欲しい。紙とペンでも可)
(疑問点をまとめておきたい)
最近はなんでもスマホに記録していたので、スマホが無い不便さを身に染みて感じてしまう。
「ふぅ」
息をついて頭を切り替える。
(ちょっとは情報が集まったな)
・たぶんハンター×ハンターの世界に転移?した
・現在地は『グリードアイランド』の懸賞都市【アントキバ】
・今は1986年12月25日で原作開始の10年以上前
・あと1週間でゲームとしての『グリードアイランド』が開始される
・『指輪』を持っていて『本』もあるが、なぜか原作と仕様が違う
・なぜか『本』の中にカードが入っていた
・入っていたカードはかなり貴重なはずのAランクカード2枚も含まれる
(集まった情報はこんなところか)
(不明点が多いなあ)
改めてまとめてみると謎ばかりだ。
(まあ”転移”なんて時点で超常現象なんだ)
(しょうがないか)
そもそも普通に日常を過ごせていたとしたら、今頃は高尾山にいたはずだ。
(そして今後のことだが・・・)
どういう行動をしていくべきか。仮でもいいから早々に方針を決めたほうが良さそうだ。
(日本に帰る方法を探す)
これはどうすればよいか本当にわからない。
神様に会った記憶も無ければ、トラックにはねられてもいない。なぜここにいるのかもわからないので帰りようがない。
(可能性があるとすれば念能力だ)
今いる『グリードアイランド』だって念能力で運営されているはずだ。世界のどこかには異世界に渡れる念能力者だっているかもしれないし、自分でもできるように・・・
(いや・・・)
(そもそもそんな強力な念能力つくれるのか?)
忠夫は日本にいたときは普通のおじさんだった。今だって特に特殊な能力に目覚めたような感覚もない。
(それに日本に帰れる念能力を作れたとしても)
ハンター×ハンターでは、強力な念能力は相応のリスクが必要だ。
その後の人生を捨てる覚悟で使用した主人公ゴンの『急成長』
習得までに膨大な努力と時間をかけたネテロ会長の『百式観音』
1秒につき1時間寿命を削るクラピカの『絶対時間』
生まれた時から電気拷問をうけていたキルアの『電気変化』
(帰るためには)
(異世界転移とタイムスリップの能力まで必要だ)
(そんな念能力だと必要なリスクは絶対に支払えないだろうな)
(望み薄だな)
これは最初から期待しないほうが良さそうだ。
(次に、ゲームマスターに助けを求める)
これはどうだろうか。どうにかしてゲームマスターの誰かに会って事情を説明すれば、穏便に『グリードアイランド』から出してもらえるかもしれない。
(これは一考の余地があるな。だけど・・)
言うまでもなくイレギュラーであろう忠夫。正規の方法で『グリードアイランド』に入っていないのだ。
(怖いのは、問答無用で『排除』を使われることだ)
::ゲームマスター専用特別呪文『排除』::
『グリードアイランド』に不当な方法で侵入した者すべてを、【アイジエン大陸】のどこかへ飛ばす
お金も戦う力もない今の状態で、危険な地域も多いハンターハンターの世界に放り出されるのは厳しすぎる。
(これは最後の手段にしようかな)
同じ理由で、ゲーム開始場所の【シソの木】まで行って、プレイヤーのログイン管理をしているゲームマスターの女性、エレナに助けを求めるのもリスクがある。
だいたい穏便にゲームの外に出られたとしても身分証すらないので、下手したら流星街でしか生きられないかもしれない。
(そうするとやっぱり・・・)
(『グリードアイランド』で体を鍛える)
(努力して念を使えるようなる)
(モンスターを倒せるようになって)
(『離脱』カードを【マサドラ】で購入して使う)
【魔法都市マサドラ】まで100km以上を移動する体力。しかも途中に出てくるモンスターから逃げられるように体を鍛える。あわよくば念能力なんかが使えるようになったら大勝利。
これができるのであれば、【マサドラ】で『離脱』カードを購入して島を脱出できるかもしれない。
(あとは【港】の『所長』を倒して『通行チケット』をゲットする)
ただしこちらは、ログアウトの手続きのためにゲームマスターのイータに会わないといけない。 港までたどり着けるぐらい体を鍛えられるのであれば、万が一『排除』を使用されても何とか生き延びられるかもしれない。
(この二つしかないか・・・?)
(しかしなあ・・・)
(こんなの普通の人間には絶対に無理な方法だ)
トレッキングが趣味とはいえ体力も落ち始めた40歳のおじさんだ。いくら体を鍛えてところで、ビルより背が高いモンスターやトカゲなんか倒せるはずがない。
そう普通なら一生この【アントキバ】に引きこもっているしかできないはずだ。
(このまま【アントキバ】に引きこもるしかない)
(モタリケみたいにゲーム内で結婚する)
(それしかできないはずなんだけど・・・)
手に持っていた『本』に視線を落とす。なぜか『本』の中にあったカード。
これが運命をかえてくれるかもしれない。
忠夫は一縷の望みをかけて、Aランク『マッド博士の筋肉増強剤』を見るのであった。
※モタリケ
【アントキバ】の月例大会でアイテム『真実の剣』をゲットしたキルアに『窃盗』カードを使用した男。ゲームの中で何年も過ごし、定職について結婚までしてしまった。