HUNTER×HUNTERの世界に転移した話   作:安滝 信

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19 おじさん、明日に向けて準備する

 ハンター歴1986年12月31日。明日はいよいよ『グリードアイランド』が開始される。

 

 交換ショップで調べたところ、指定カードの最低販売価格はDランクカード『聖騎士の首飾り』の2000万ジェニーだった。買取価格は1000万ジェニーなので、販売価格は買取価格の2倍ということになる。

 ただしこれは『聖騎士の首飾り』がDランクのために突出して安い価格帯だったためで、Bランクカードになると途端に販売価格が跳ね上がっている。

 

 現在、忠夫が交換ショップに預けている金額は550万ジェニー。7日間で貯めたと考えると相当がんばった金額といえるが、Bランクカードを購入するには全然足りない額だ。

 

 最終的に金策で効率が良かった方法は2つ。

 

 リンククエストで、わらしべ長者のようにクエスト報酬が高額になっていく方法と、賞金稼ぎキャラのNPCと仲良くなって雇い、複数人で挑戦するクエストをクリアする方法だ。

 

 NPCを雇うには、クエストの報酬カードの売却額の半額が必要だ。つまりクエスト報酬が20万ジェニーなら10万ジェニーで雇える。ただし、報酬は前払いで、失敗しても返金なしという条件だが。

 

 こういったクエストをクリアすることで飛躍的に金策がはかどった。ただしクエストのほとんどが1日1回しか受けられず、しかも早い者勝ちだ。ゲームが開始されてプレイヤーが増えていくと競争率が高くなって今より稼げなくなるだろう。そういう意味で、一日に何度も挑戦できる猫のコックさんのチャレンジメニューは大変ありがたかった。

 

 (本当ならプレイヤーが【アントキバ】に来る前に、Bランクカードを1枚でも購入しておきたかったんだが、まったく間に合わなかったな。

 まあ朝から晩まで限界まで行動しても、この結果だからな。しょうがない、がんばったよ、自分)

 

 朝早く起きて猫のコックさんの店で『ガルガイダー』をゲットし、ほとんど休みなしで多くのクエストをこなす。隠れ家に帰ってくれば『マッド博士の筋肉増強剤』という、この世の終わりみたいな味の薬を飲んで気絶するように眠る。セルフブラックかもしれない。

 

 普通のおじさんとしては、限界ギリギリでがんばっていたと言えるだろう。

 

(さて、明日をどうするかだが)

 

 明日の10時に『グリードアイランド』が開始される。だが、開始した後の何時間後にプレイヤーたちが【アントキバ】の街に到着するか、何人到着するかなどが全く予想できない。

 

 原作では、大富豪バッテラに雇われたハンターたちは、【シソの木】からゲームを始めた。その時は見渡す限りの草原で案内表示すらも無かったので、監視の視線を感じた方角、つまり北側の【アントキバ】の街と南側の【ルビキュータ】の街に歩き出していた。

 

 それに対して、明日初めてゲームを始めるプレイヤーたちは、当然のことながら監視の視線などは感じることはなく、したがって街の方角などはわからない可能性がある。

 だがそもそも、ハンターたちは平原だとしても何十キロも先の視線を感知できる能力があるのだ。街の方角もすぐにわかってしまうのかもしれない。

 

 街にすぐ来るか、何日か後にくるのか。さっぱりわからない状態だ。

 

(こういうときにこそ、Bランクの『黄金天秤』が欲しいなあ)

 

:::Bランク『黄金天秤』:::

どちらをとるか?という二者択一に迫られた時、あなたの将来にとって有利な方を選んでくれる天秤。

 

 (まあ無いものはしょうがない、ここは楽観的に考えるのをやめよう。

 ゲーム開始後すぐに【アントキバ】に来る、そう考えて行動すべきだろう。

 そして攻撃的なプレイヤーがいる可能性、これを覚悟しておいた方がいいだろうな)

 

 プレイヤーのハンターたちが、普段からこういったゲームをプレイしているのなら、原作のキルアと同じように街の住人に話しかけて情報を得るだろう。

 しかしゲームを全くしないタイプがグリードアイランドを始める場合、これが一番警戒が必要かもしれない。ゲームをプレイする上での”お約束”を知らなかったとしたら。最悪の場合、いきなりNPCの街の人を攻撃する可能性だってある。

 しかもゲーム開始1時間前には、キャラクター役の囚人たちも配置されるらしいので、どんなイレギュラーが発生するか全く不明だ。

 

 (これはもう一週間ぐらい引き籠っていたほうがいいかも?

 それくらい時間がたてば、ある程度プレイヤーたちもゲームの”お約束”を覚えてくれる、はず)

 

 それに加えて、今日の夜にやっと『マッド博士の筋肉増強剤』を飲み終わる。

 この薬を飲み終わったら、直後に効果が出るのか、次の日に効果が出るのかわからないが、いずれにしても忠夫の体には大きな変化が起きるのだろう。

 

(もし念が使えるようになっていたら!

 さっそく修行をしてみたいもんな!)

 

 せっかくハンターハンターの世界(だと思われる)にいるのに念を使えないなんて、とひそかにフラストレーションを貯めていた忠夫だった。

 

(よし引き籠ろう!)

 

 そうと決まれば準備が必要だ。

 念能力が使えるようになった場合に必要な、水見式用のガラスのコップと、長期間引き籠れる量の食料などを買い込んだ。

 

(それと高い方の島の地図を買おうかな、どうしよう?)

 

:::Dランク 島の地図::: 

街や地名などが細かく記載されている地図。特産情報やおすすめスポット、裏道マップなどお得情報満載!

 

 島の地図は2種類あり、Dランクの価格が高い方の『島の地図』は販売価格65万ジェニー。安い方の『島の地図』は販売価格2万ジェリーで、自分で訪れた場所しか記載されないものだ。ゴンとキルアはこちらを購入した。

 

(65万ジェニーは厳しい!

 買ってしまうと残額が500万ジェニーを下回る。

 目標のBランクカード購入からも遠ざかってしまう)

 

 しかし情報は超重要といえる。修行をするといっても休憩時間は必要だろうし、その休憩時間を利用して今後の方針を考えるには、詳細な『島の地図』があったほうが良いだろう。

 

(【アントキバ】のお得情報も載っているかもしれないし)

 

 忠夫は高い方の『島の地図』を購入することにして『文具書店』へ向かった。

 

(この前に探索したときはサラッとしか、本のラインナップを見てないんだよな)

 

 『文具書店』の中は、他の店と同じように商品がカードとしてたくさん並べてあった。

 もともと読書も好きで、移動時間にはインターネット小説などもよく読んでいた。当然ハンターハンターの世界の本にも興味がある。前回は時間もなく、しかもハンター文字で本のタイトルが書いてあったために、とても分かりにくくてじっくり確認しなかったため、今回は興味深く見て回る。

 

(ほうほう)

(小説とかミステリーの本のカード棚があるな)

(攻略に関わりそうなものはパッと見無いか?)

(実用書の棚に刃物の研ぎ方とかある!さすがハンター用ゲーム)

(内容を確認してみたいけど、カードの状態だと立ち読みもできないな)

(お金が沢山あったら全部買っちゃうのにな)

 

 そんなことを考えながら、少しばかり時間を忘れて店を見ていると、一冊のタイトルが目に飛び込んでくる。

 

『プロが教える神字の全て~本当に使えるテクニック集付き~』

 

(これは!絶対買わないと!)

 

 ”神字”とはハンター文字とはまた違った文字(というか模様?)で、これを書きこんだものは念を補助してくれる機能を発揮する。

 ”神字”が発揮する効果は様々で、『グリードアイランド』の『指輪』と『メモリーカード』を保管していた箱は10年以上たっても普通には開かず、念を込めたとたんばらばらに分解された。

 また、特定の物体を念能力発動の起点としている能力者は、”神字”を書いて能力の強化をしていることが多い。

 『グリードアイランド』編だと、『一坪の海岸線』をゲットするために海賊役の囚人たちと戦うことになるが、その中の一人がボクシングのリングに”神字”を刻んでいる。

 

(ハンターハンターのファンとしても、これは読んでおかないと!)

 

 日本では絶対に売っていない本。ハンターハンター好きとしてもこれは見逃せなかったので、10万ジェニーもしたが購入してしまった。

 

(買ってしまったからには、絶対にちゃんと勉強してマスターしないと。

 筆記用具とノートも必要だな)

 

 これで残額は470万ジェニーに減ってしまった。手痛い出費ではあるが、必要だったと自分を何とか納得させる。

 

 (それと念のために、変装用のメガネと帽子、服を買っておこう。何が起きるかわからないからな)

 

 用心のために、こういった小物も購入してから隠れ家に戻る。

 

 シャワーをあびたりしてさっぱりした後、ワクワクしながら『プロが教える神字の全て~本当に使えるテクニック集付き~』をカード化解除して軽く読んでみるが・・・

 

(うわー、これはちょっと見ただけじゃだめだ。しっかり時間をかけて取り組まないと)

 

 夜もふけているし頭がちゃんと回らない状態では、こんな複雑怪奇な内容を理解するのは無理だ、と判断して今日はあきらめる。そして、

 

(これを飲むのも今日で最後か。最後だと思うと名残惜しく・・・全然なんねーよ!バーカ)

 

 今日の締めに用意した『マッド博士の筋肉増強剤』を、仇のように睨みつける。

 

(さあこれを飲んで強くなったとしても、ハンターハンターの世界だったらやっとスタートラインに立てたぐらいだ。

 絶対に念を使える体をください!)

 

 そしてまずさを我慢しながら一気に飲み干して、やっぱり気絶するように寝るのだった。




※Bランクカードの販売価格は原作で書かれていないので捏造です。

「グリードアイランドからの脱出」
 →メインクエスト「アントキバの街からの脱出」:進行中

・1週間『マッド博士の筋肉増強剤』を飲む →完了
・アントキバの街をくまなく調べる →優先順位低下
・効率の良い懸賞クエストを探し出す →ほぼ完了
・チャレンジクエストでお金を稼ぐ →進行中
・交換ショップで有用なBランクカードを購入する→資金調達中
・街の人を覚える →不可能と判断し中止

所持品
・アントキバの街の地図(カード化解除)
・マッド博士の筋肉増強剤(カード化解除)
・島の地図【高額版】(カード化解除)
・神字の本(カード化解除)
・食料(カード化解除)
・生活用雑貨類(カード化解除)
・ガラスのコップ(カード化解除)
・葉っぱ(拾った)
・変装用セット(カード化解除)
・服(地球産)
・バックパックなど(地球産)

所持カード(使用ポケット/総ポケット数:1/15)
・Aランク『隠れ家不動産』×1

アントキバ交換ショップ 預金額
470万ジェニー

主人公の状態
 →ふつうのおじさん(身体能力変化中)
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