HUNTER×HUNTERの世界に転移した話   作:安滝 信

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20 おじさん、絶好調

(ん・・・?)

 

 忠夫は何とも言えない直感のようなものを感じて目を覚ました。

 

(なんだ・・・?)

 

「ジリリリリリリリリリリリ・・・・」

「!!!うるさっっ!」

 

 次の瞬間、部屋中に目覚まし時計の音が響き渡りあわててストップをする。この目覚ましは部屋の中に窓がないため、朝寝坊するのが怖かったので【アントキバ】の街で購入したものだ。

 毎朝5:30に鳴るようにアラームをセットしてあるが、今までは連日朝から晩までクエストをこなしてクタクタの状態で寝ていたので、目覚ましがなっても起き上がるまでに時間がかかっていた。

 もう何日も使用しているが、ここまで音がうるさく感じたことは今まで一度もなかった。

 

(それに・・・)

(いまアラームが作動する直前で)

(”鳴る”のがわかったような・・・)

 

忠夫は寝ていたソファーから起き上がる。

 

 40歳ともなれば普段は意識しないが、なんとなく体のどこかに不調な部位も出てくる。忠夫の場合は右肩がちょっと上がり辛くなってきていて、四十肩におびえていたのだが・・・。

 

(うわー)

(全然どこも痛くない)

(むしろ絶好調だ)

 

 肩をぐるぐる回してみるがまったく何の抵抗もない。むしろ10代の頃に部活をやっていた時と比べても、お話にならないくらい圧倒的な体の調子の良さを感じる。

 それに視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感全てが、今まで感じたことが無いほどひどく研ぎ澄まされている。

 

(しかも・・・)

 

 それだけではない。先ほどはアラームが鳴っていないのに、虫の知らせのような感覚があった。

 

(第六感か?)

(直感とか霊感とかそんな感じのやつ)

 

 第六感といわれるものは、五感のうちのどれかが異常に発達した人物が、自分でも意識しないうちに普段とは違う”何か”に気づいて周囲の人たちに教えてるから、普通の人たちはその異常が感知できずにその言動に驚く、という説もあるらしい。

 

 今回のケースを当てはめるなら、忠夫の聴覚が研ぎ澄まされていて目覚まし時計内部のからくり機構が、アラームを鳴らす前準備段階の音を聞き分けたのかもしれない。

 何にしても驚くべき変化が忠夫の体に起こったのは間違いないだろう。

 

(『マッド博士の筋肉増強剤』ありがとう!)

(ゲロまず薬とかこの世の終わり味とか思ってすまん)

 

 この薬を7日間分飲み続けるのは本当に苦行以外の何物でもなかったが、この身体変化を考えると納得できる、と言えなくもない。

 

(でももう二度と飲まないけどな)

 

『マッド博士の筋肉増強剤』が残り63パック入った段ボール箱から目をそらせるのであった。

 

***

 

 忠夫は身だしなみを整えた後、変化した体のスペックを調べるために色々テストをしてみた。

 隠れ家の床面積はだいたい4m×6m=24㎡程度で、運動をするのには少し物足りない大きさだが、ソファーを部屋の隅に寄せれば何とか走ったりもできる。

 

 そうして調べた結果だが。

 

 まず外見の背の高さは全くかわっていない。だが体は引き締まり、細マッチョになっている。

ムキムキの筋肉でないのは、忠夫がかっこいいと思う筋肉のつき方が無意識のうちに反映されているからだと思われる。だが想像通り、いや想像以上に身体能力はやばいものだった。

 

(おっそろしい体だ)

(走ろうと思った次の瞬間にもう反対側の壁にぶつかりそうになるし)

(残った『マッド博士の筋肉増強剤』63kgを持っても全然重くない)

(反復横跳びなんて永遠に続けられるんじゃないか?)

(しかも速度は残像ができるぐらいだ)

 

 リアルに忍者ごっこできるとは思わなかった。

 他にも片手逆立ちだったり、バク中バク転などの体操技など、思いつく限りのことをやってみたが全て問題なかった。

 またダンスが体育の授業になかった世代なのでダンスに苦手意識があったのだが、日本で見たことのあっただけのダンスを完コピして踊れるようになっていたのも驚きだ。

 

(これが一流ハンターになろうなんていう天才超人たちの世界なんだな)

 

 そしてそんな一流ハンターでもすぐ死んでしまう。それがハンター×ハンターだ。

 

(そうだ)

(身体能力だけでは生き残れない)

(念が使えないと!)

 

いよいよ念のもとであるオーラについても調べていこうかと思った時。

 

左手の『指輪』から煙と共に『本』が飛び出した。

 

 

***

 

アナウンスが『グリードアイランド』中に響き渡る。

 

「ゲームマスターおよびキャラクター役のみなさまにお知らせです」

 

「時刻は現在、午前9時をまわりました」

 

「予定どおり1時間後の午前10時より順次プレイヤーがゲーム内にログインいたします」

 

「キャラクター役は指定の衣装を着用して速やかに配置についてください」

 

「かならずプレイヤーがログインする前までに完了してください」

 

「キャラクター役の皆様は各担当エリアやイベント場所からの移動は禁止されております」

 

「プレイヤーに対しての行動や言動は、指定のロールプレイングに沿って対応してください」

 

「ロールプレイに沿わない内容の行動や発言があった場合や、担当イベント内容を覚えていない場合は厳罰に処されますのでご注意ねがいます」

 

「それではみなさま、『グリードアイランド』のスムーズな運営へ協力をお願いします」

 

***

 

(ついに)

(ついに『グリードアイランド』が始まるんだな)

 

ソフトすら入手困難で10年以上クリアされなかった『グリードアイランド』。

末期には殺戮ゲームなんて言われてしまうようになる『グリードアイランド』。

 

そんないわくのゲームがついにスタートされようとしていた。

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