HUNTER×HUNTERの世界に転移した話   作:安滝 信

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25 おじさん、懐かしい

「えっ、あっ、いや・・・」

 

 いきなり話しかけられてとっさに言葉が出なかった忠夫。そういえばハンターハンターの世界に来てから、最初の一週間はNPCとしか会話していなかったし、そのあとはひたすら籠って修行していたので、すっかり会話がへたくそになってしまっていた。

 

 忠夫に話しかけてきた人物は、一言でいえばオールドスタイルなオタクだった。

 

 ネルシャツにブルージーンズ。ネルシャツの中に着ているTシャツには、デカデカとカラフルなハンター文字が書かれていた。長髪で、手には指ぬきグローブ。背中に背負ったリュックサックからは棒状のものが突き出している。歳は20代から30代じゃないかと思われるが、年齢不詳っぽい見た目である。

 

(懐かしい!)

 

 90年代の秋葉原から抜け出してきたような恰好だ。

 

「おっと、警戒させた?ごめんごめん。僕はゲームハンターのマクトアっていうんだ。よろしく」

「はい、よろしくおねが・・・・」

 

「なんか、道に迷ってるみたいだったから話しかけたんだ。でもわかるよ。このゲームは凄すぎるもんね。街のマップがこんなに複雑なのもすごいし、住人キャラクターの会話パターンも多いし、これはやりこみがいがあるね!僕はたくさんゲームを持っているしほとんどすべてのゲームをやってきたと自負してるけど、こんなイケてるゲームは初めてだよ感動した。おたくもそう思わない?」

 

(長い長い長い! こういう友達いたわ)

 

 いきなり早口でまくし立てられて圧倒されてしまった。言いたいことがあふれ出して、止まらなくなるタイプ。忠夫の友人にも何人か同じタイプがいる。

 

「はい、すごいゲームですよね」

 

「だよねー、えっ、この【アントキバ】にはいつきたの?僕はさあ、開始からすぐにログインして一番乗りだったんだぜ。で、はじめは南側の【ルビキュータ】に行ったんだけど、昨日【アントキバ】に移ってきたんだ。なんかお金を稼ぐなら【アントキバ】で、情報をあつめるなら【ルビキュータ】ってことで、プレイヤーほとんどが【ルビキュータ】に集まってきちゃったから、なんか居心地悪くなっちゃったんだよね。ほらゲームとか普段はバカにしているひとも多いからさ。空気悪くて」

 

(多い多い多い! 何か重要なこと言ってる気がするけど、情報量で殴られてるみたいだ。 えーっと、【アントキバ】にいつ来たか?だっけ。どう答えよう?)

 

「あの、ゲームは始めたばっかりで、ここにはさっき来ました」

 忠夫はとっさに嘘をつく。いろいろと聞かれても困る。

 

「そっか、【アントキバ】に詳しいなら情報交換しようと思ってたんだけど、知らないならしょうがないね。あそうだ、道に迷ってるならその辺の住人キャラに聞いてみるといいよ。じゃあ僕は休憩も終わったし、街の外で『リモコンラット』でも狩ってくるね。なんか面白い情報があったら教えてよ、こっちも【ルビキュータ】の情報とか教えるからさ。いつもだいたい昼には街で昼食をとるようにしてるから、なんかあれば声かけてね。じゃあねー」

 

 ゲームハンターのマクトアはそう一方的にまくし立てると、街の外に向かって歩いて行ってしまった。

 

(なんかパワフルな奴だったな、疲れた・・・。彼が言ってた【ルビキュータ】って、たしか【シソの木】から南に向かって行った方だよな)

 

 ちょっとエネルギーに押されてぐったりしてしまったが、かなり親切に色々教えてくれていた。

【ルビキュータ】は原作では幻影旅団のシャルナーク、シズク、コルトピがそちらに行っていた。

 

(【ルビキュータ】にプレイヤーが集まってるって言ってたな)

 

 情報が集まりやすいが、街の雰囲気はあまりよくないらしい。

 

(親切そうな奴だったし、けっこう情報通ぽいな。あまりプレイヤーとは関わり合いになりたくないけど、プレイヤーがどんな動きをしているか、わからないのも困る。少しだけ【アントキバ】の情報を教えて、情報交換しておいてもいいかもな)

 

 警戒は必要だが、情報も重要だ。幸いなことにおしゃべり好きっぽいので、【アントキバ】の情報だけ渡して、忠夫自身のことはしゃべらないようにしても大丈夫な感じがする。

 

(昼に戻ってくるって言ってたから、それまでに買い出しとか、いくつかクエストをこなしておこう)

 

 気を取り直して、予定どおり『交換ショップ』にお金をおろしに行くことにする。ゲームハンターのマクトアがかなり大きい声で話しかけてきてしまったので、他のハンターからも認知されてしまったようだ。一般人に擬態するのはもう無理そうなので、そのまま”纏”をしながら大通りを歩いていく。

 

(しかし、さっきのマクトア君、服装がそのまんま昔の秋葉原迷彩だったな)

 

 ”秋葉原迷彩”とは、あえてベタなオタクファッションをすることで、逆に秋葉原の中では埋没して目立たなくなる服装のことで、古のオタクたちはよく自虐的にそんな風に言っていた。

 

(さすがに自分よりは少し上の世代のスタイルだけど、なんか懐かしかった。やっと今が1987年なんだなって実感したな)

 

 この世界にも秋葉原的なところがあるかどうかはわからないが、そんな話も少し聞いてみたい忠夫だった。




:::Hランク リモコンラット:::
念能力で物を操って身を守る操作系ネズミ。とても臆病でいきなり他の生物に会うだけで気絶してしまう。繁殖力旺盛で島中どこでも見かけることができる。
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