HUNTER×HUNTERの世界に転移した話   作:安滝 信

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29 おじさん、やっと街の外に出てみる

 先ほど自分の『本』を調べたときに、マクトアの名前がネームリストに追加されていなかった。

そこから考えると、ベータ用の『本』と正規プレイヤー用の『本』はシステムが連動していない。

 

(システムが連動していないということは)

(もし自分が呪文カードを得ても、相手プレイヤーに使用できない)

(そして、逆に相手プレイヤーからも呪文カードの対象にならない)

 

 呪文カードは使用すると様々な効果が発揮されるが、対プレイヤー用の呪文は口頭で相手の名前を言うか『本』の最後のページに呪文カードをはめて使用する。

 しかしシステム連動がしていなければ、ほとんどの呪文カードは意味をなさないだろう。

 

(他プレイヤーからの呪文攻撃を気にしなくていいな)

 

 マクトアとの情報交換によって、忠夫にとっては初期のグリードアイランドはかなり危険が少ないことが判明した。

 またシソの木の周辺であれば気を付けるべきは『リモコンラット』だけ。ということで、

 

(よし!街から出てみよう!)

(1週間も隠れ家で引きこもっていたから思いっきり運動したいし)

 

 『ゲームセンター』に行ったり情報交換をしたので時刻は午後3時頃だが、まだ日の入りまでは時間がある。

 隠れ家の中で念の修行はじっくりとできていたが、速力や筋力トレーニングは足りていない。

 

  こうしてゲーム開始から1週間目、ハンターハンターの世界に飛ばされてから2週間目にして、初めて忠夫は【アントキバ】から出るのだった。

 

***

 

 【アントキバ】の大通りを南方向に歩き、石畳が途切れると、そこから先は一面の草原だった。完全な真っ平というわけではなく緩やかにうねった草色の台地が続き、簡単には遠くまで視線が通らないような地形だ。

 

 足元をみると獣道のような薄っすらとした小道が、南東の方角にくねくねと伸びている。地図と見比べてみると、たぶん【ルビキュータ】の方に向かっていると思われた。

 

(道なんてあるんだな)

 

 これがもともと街と街を繋ぐ道なのか、プレイヤーが行き来するようになって踏み固められて出来た道なのかはわからないが、指針があるのはありがたい。

 

(【ルビキュータ】まではだいたい20kmぐらいか。道もあるしゴンたちのように走っていってみようかな)

 

 ハンターハンターの世界では長距離を走れるスタミナは必須だ。忠夫は警戒を怠らないようにしながら走り出した。そしてすぐに気づく。

 

「はやっ!」

 

 忠夫が一番運動をしていたのは学生時代だが、その時期と比べても格段に速く走れている。ビュンビュンと飛ぶように風景が後ろに過ぎていく。今は1月で本当なら風が冷たいはずなのだが、”纏”をしているおかげで風が当たっても辛くなく、気が付けば全力で走ってしまっていた。

 

(楽しい!マラソン選手が見てる景色ってこんな感じなのかな)

(しかも全然疲れにくい)

 

 一般的に市民ランナーは平均時速10km弱、プロのマラソンランナーは平均時速20km程度だが、あきらかに忠夫の速度はプロランナーの速度に近い。このペースなら1時間ぐらいで【ルビキュータ】に着けそうだ。

 

 周囲に気を配りながら走っていると、たまに地面に穴が開いていて中に微弱な気配を感じることがあった。あれがたぶん『シソラビ』という【シソの平原】にいるというウサギ型ノンアクティブモンスターだろう。

 

:::Hランク『シソラビ』:::

 シソの平原に生息する小型のウサギ。臆病で他の生物を見るとすぐに巣穴に逃げ込む。基本的に攻撃をしてくることは無いが、巣穴に子ウサギがいるときだけ攻撃をしてくることがある。肉は食用になる。

 

(うーん、一度戦ってみたほうがいいよなあ)

(これくらいなら倒せるよな・・・?)

(というかこれくらい倒せないと今後やっていけないよな)

 

 たぶん『グリードアイランド』内で最弱と思われるモンスター。喧嘩もあまりしたことのない忠夫の相手にはちょうどいいかもしれない。

 

 そんなわけで忠夫はドキドキしながら初戦闘を覚悟したのだった。




※次回、『グリードアイランド』版のスライム的なモンスターと初戦闘

※ベータ版と正規プレイヤーの『本』は連動していない
→お互いに『交信』不可
→お互いに攻撃呪文と防御呪文、移動呪文などが対象にならない
→お互いのネームリストに名前が載らない
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