次の日からは、身体能力に慣れる訓練と綱引きの特訓をひたすら行っていく。
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まず、オーラを使用しない状態の身体能力と、使用した状態の身体能力の把握だ。
”絶”の状態で全力立ち幅跳びを行い、オーラを使用しない状態(=筋力だけの状態)の記録を計ってみると、3m73cmだった。
続いて、足に”硬”をしてオーラ使用時の状態(=筋力+オーラ力)の記録を計ってみると、19m20cm。
オーラを使うかどうかで、現時点でも力の出力に約5倍の差があることが判明した。
(オーラ次第でこんなに差があるんじゃ、大人と子供の戦いといわれても納得だな)
しかも忠夫は1週間前に四大行を修行し始めたばかりなのにこの記録である。長年修行をしてきたネテロ会長やビスケの身体能力はやばいことになっているのだろう。
だがどんなに素晴らしい力も、使いこなせなくては意味がない。
残念なことに、ゴンとキルアにはビスケがいたが忠夫には師匠がいない。しかも身体能力が急にアップしたのを使いこなせるようにする訓練、なんていうものはなかなか存在しないだろう。忠夫はいろいろと我流の方法を考えて実践してみることにした。
訓練その1
ひたすら走る。
とにかく時間をかけて体を動かすことで、頭の中にある日本の時の身体情報を上書きしていく。コースは【シソの平原】まわりを囲む山岳地帯で、要するにトレイルランニングだ。アップダウンや樹木の根を避けながら走ることで単調な走りにならないようにした。
訓練その2
トレイルランニングをしながら、見つけた『シソラビ』と『リモコンラット』を捕まえる。
相手が生き物だと動きにランダム性が出てくるので、画一的な動きだけにならないようにするために行う。一匹あたりのカード売却額は『シソラビ』が1000ジェニー、『リモコンラット』が5000ジェニーになるので、金策の足しにもなる。
【シソの平原】周辺に出てくる『リモコンラット』は操作系モンスターで、原作のように中身が空の全身鎧か『シソラビ』をあやつっていたが、常に”凝”をするようにしながら走っていたため全く問題なかった。
【シソの平原】まわりの山岳地帯は、一周あたり80km程度。訓練初日は朝6時から走り始めて一周を走り切ったのがだいたい14時、約8時間近くかかってしまった。ランニングコースなどなく途中でモンスターを相手にしていたとはいえ、もう少しタイムを短くしていきたい。
訓練その3
1~20メートルの間に、1メートル間隔で地面に線を書いて立ち幅跳びを行い、手前から順番に線上に着地できるようにする。精密な体の操作ができるようになることを期待してこれを1時間行う。
やってみるとこれがなかなか難しかった。日本にいた時の感覚が邪魔してしまい、3mを超えたあたりから無意識に力をこめすぎてしまうのだ。上に飛び過ぎてしまったり線を通り過ぎてしまう。
理想は程よいオーラをこめてふわっと目標線に着地すること。これを目指して何度もジャンプを繰り返した。
慣れてきたらバックステップやサイドステップ、片足飛びでも行っていく予定だ。
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また、綱引き大会の対策もしなくてはいけない。
訓練1~3を順番に行うと、休憩も含めて午後3時頃になってしまうが、そのあとから綱引き特訓を行っていく。
忠夫は動画などでスポーツ綱引きの試合を見たことがあるが、体を斜め後ろに倒して空を見上げながら引いていた。つまり体重+腕筋+背筋+腹筋+足筋と、体中の筋力にバランスよく力をこめているのだと思われる。体重は一週間ではそこまでつけられないが筋力なら、そして念の修行ならできる。
まずはトレーニングするため、ロープを購入して山岳地帯に向かい直径1メートルぐらいの適当な太さの樹に縛り付ける。そして動物や虫の鳴き声をスタート合図として一気に引く練習をしていく。
なお、初めてその訓練をしたときはロープが切れてしまったので、2回目からはロープにもオーラをこめる”周”を行って強化しながら練習したため、念の修行にもなって一石二鳥だった。
”堅”で全身にオーラ強化を施した状態を維持して、動物の鳴き声などが聞こえた瞬間に、”流”を腕、足、腹筋、背筋に行って一気にロープを引いていくことにしたため、”練”の持続修行にもなっている。
”周””堅””流”の応用技の修行と”練”の持続時間を延ばす。はじめは”練”の持続時間が3分も持たなかったり、”流”がぜんぜん滑らかにいかなかったりとなかなか苦戦していったが、徐々にうまくできていくのが楽しくて、どんどん修行にのめりこんでいく忠夫。
(ウイングは、修行・休憩・睡眠をバランスよくって言っていたが、グリードアイランドに来てからのゴンたちは明らかに修行の時間が長くなっていた。きっと四大行の基礎を修めれば結構無理が効くようになるんだろうな)
ウイングの師匠であるはずのビスケが、寝ている間も岩を持たせて修行させていたので、問題ないだろう。こうして忠夫は我流ではあるが修行をしていったのだった。
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数日修行を繰り返していくと、成果が目に見えて発揮されてきた。
立ち幅跳びは精密さが上がり、最高到達も25mを超えた。山岳地帯トレイルランニングはタイムを30分縮められて7時間30分になった。
そして最も効果を感じられたのが、綱引き対策に行っていたロープ引きだ。なんとロープを結んでいた直径1mの樹を引っこ抜いてしまったのだ。
(今の感覚、これはすごいぞ!すべての力がバランスよく、そしてタイミングよく一点に集中できていた!)
体中の筋力と”流”が、≪ロープを引っ張る≫というただ一点にスムーズに集約した結果、ロープが切れたのかと錯覚するぐらいあっけなく樹が抜けていた。
(プロ野球選手が、特大ホームランを打った時は不思議と力が要らない、と言うことがあるけどそれと同じことなのかな)
忠夫は本番でもこの感覚を再現できるように、特訓をつづけていくのだった。
立ち幅跳び公式世界記録は2015年に記録された3m73cmだそうですので、そちらを参考にしました。この記録出した人、現実世界でもオーラ使ってないでしょうか、すごすぎる。