HUNTER×HUNTERの世界に転移した話   作:安滝 信

36 / 55
33 おじさん、準備万端?

 ハンター歴1987年1月14日。

 『グリードアイランド』が開始されて2週間がたったその日の夕方、忠夫は明日に控えた【アントキバ】1月度月例大会の準備をもう一度確認していた。

 

 

(変装用セットの準備、OK)

 

 変装セットは、以前に購入していた、帽子とメガネ、服だ。服は体形が分からないようにわざとオーバーサイズのだぼだぼ服を用意した。

 

 

(逃走経路の確認、OK)

 

 今現在の『グリードアイランド』はかなり治安がいい状態だと思われる。毎日のトレイルランニングの時に出会うプレイヤー達から、敵対的な行動を受けたことはない。

 

 しかし、月例大会の舞台上で多くのプレイヤーに『聖騎士の首飾り』を入手した、と知られることはやはり危険がある。

 万が一追手がかかったとしても大丈夫なように、【アントキバ】の裏道をくまなく覚えたり、隠れられる物陰や、わかりにくい場所にあるお店などをチェックしておいたのだ。

 

 忠夫の場合は、『本』がベータ仕様なので形状が特殊だ。『本』を他のプレイヤーに見せるわけにはいかない。

 今回の出場目的は、賞品の『聖騎士の首飾り』の特殊効果で山賊の村の病の呪いを解呪して、『奇運アレキサンドライト』をゲットすることなので、舞台上でカード化解除して装着してしまうのもありだ。

 しかし、カード化解除した『聖騎士の首飾り』を盗られてしまう可能性もある。入念に逃走シミュレーションを繰り返した。

 

 

(助っ人NPCの雇用、OK)

 

 今回の競技は二人綱引き。相方は懸賞ハンターNPCの住人(男)だ。

 一応ゲーム内の設定としては、生まれも育ちも【アントキバ】で家に帰れば2人の子供がいる良きパパ、ということらしい。【アントキバ】の街のことについてはかなり情報通で、色々質問しているうちに好感度が上がったらしく、雇えるようになっていた。

 最近増えてきた≪異国の人≫(=プレイヤー)の実力がどんなもんなのか、俺がためしてやるぜ!と、盛大な負けフラグを立てていたので、たぶん戦力としては期待できないと思っている。

 

 

(綱引き対策、やれることはやった)

 

 樹にロープを巻き付けて引っ張る綱引きの特訓だが、幹の直径1mの樹はほぼ100%抜けるようになってしまった。なので、どんどん太い直径の樹に挑んでいった結果、最終的に1.5mの直径まで抜けるようになっていた。

 

 スタート合図代わりの鳥や虫の鳴き声を聞いて、瞬時に力をこめる集中力。

 合図の瞬間に、必要な筋力へ一気にオーラを集中するオーラ移動の滑らかさ。

 筋力、姿勢、オーラの適切な配分を一点に集中する制御力。

 

 この3つの能力はかなり向上したと思われる。ここまで綱引きの対策をしてきたプレイヤーはいないだろう。

 あとは相方助っ人NPCの実力が不安要素ではある。

 

 

(対戦相手の確認、これはできなかった)

 

 これは一番確認したかったことなのだが、情報を得ることは出来なかった。というのも、あいかわらず【アントキバ】が過疎っているのだ。

 

 今でも【シソの木】から新規プレイヤーがちらほらログインしているようだ。しかし、【シソの木】まわり、現在ではほぼ常設となっているキャンプ地で、勧誘なのか説得なのか情報提供なのかわからないが、既存のプレイヤーから案内を受けてほとんどが【始まりの街ルビキュータ】へ行ってしまう。

 

 そしてランニング中に【ルビキュータ】に近づくと、プレイヤーたちがそこら中で真剣に何かを探している姿を見かける。確実にあちらのほうで、何らかのイベントが進行している気がする。

 

 大会当日だけ【アントキバ】にプレイヤーが大挙して押し寄せてくるのか、それとも月例大会自体が知られていないのか。

 

 どちらにしても、競争率があがらないように願うばかりだ。

 そうして忠夫が準備を済ませた時。

 

 

指輪から全体アナウンスが流れだした。

 

 

「プレイヤーの方々にお知らせです」

「たった今、あるプレイヤーが【ブンゼン】エリアを解放しました」

「これより【ブンゼン】およびその周辺地域に行けるようになります」

 

「【ルビキュータ】から【ブンゼン】の街道封鎖が解除されます」

「今後『グリードアイランド』の住人達が街道を歩くようになります」

 

「新店舗『ポケベル屋』が開業いたしました」

「『ポケベル屋』の配送先は解放された街のみとなります」

「詳細は『ポケベル屋』にてご確認ください」

 

 

 

:::『ポケベル屋』:::

 呪文カードが普及していない最初期に、プレイヤー同士の連絡手段として重宝されたサービス。店舗にて知り合いのプレイヤーに対して、20文字の『伝言』を送ることができる。届けることができるのは解放されたエリアの街のみ。『ポケベル屋』が開業していない街では『伝言』を送ることも受け取ることもできない。

 『伝言』は依頼者が送った次の日から、解放された街の『ポケベル屋』ならどこでも受け取ることができる。ただし伝言預かり期間は最長2週間まで。それを過ぎると破棄される。




※呪文カード『交信』が実装された時に『ポケベル屋』は無くなったという設定。

※現実の日本では、ポケベルが送信できる文字数は、最初は少なくて後期にどんどん増えていったみたいです。1990年代は20文字程度だったようなのでこの文字数にしました。しかし嘘みたいに少なく感じる。当時、よくこんな少ない文字で意思疎通できてたな・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。